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公爵令嬢の婚約者  作者: よしの
第一話 アリクレット男爵家
18/27

第十七話 武闘大会に向けて

闘技場を作り終えた俺は、武闘大会の準備に大忙しだった。

作り終えたと言っても大まかな形しか出来ておらず、そこに付随する施設はまだ出来ていなかった、そもそも何を建てるのかから議論しなければならなかった。

「アドルフ、闘技場周辺に建てる施設だが、何が必要だと思う?」

「そうでございますね、警備隊の詰め所と、それに伴い警備隊の増員でしょうか」

アドルフらしい答えだな、アドルフにしてみれば治安対策は最重要課題なのだろう。

「治安対策は重要だが、参加する選手たちに必要な施設を建てるべきだろう、その次に観客向けの施設だな」

「では、具体的にどの様な施設が必要か検討いたしましょう」

「その前に俺とアドルフだけでは良い案が浮かばないかも知れないから、他の皆も参加してくれ」

「そうですね、お前達も意見があったら発言する様に」

「「「承知しました」」」

アドルフがそう言うと他のアドルフの部下たちも手を止めこちらに向いてくれた。

「まずは選手たちに必要な施設からです」

「はい、宿泊施設は必要かと思います」

「武具の販売、修繕は必須かと思います」

「戦いで怪我をした人を治療する施設が必要だと思います」

皆意見を言ってくれて助かるな。

「他にありませんか?」

「・・・」

「エルレイ様から何かございますか?」

「特にない、次に行ってくれ」

「はい、では観客向けに必要な施設について」

「・・・・・・」

皆お互いを見回し意見が無いか考えている様だ、観客は見に来るだけだから何も必要無いと思っているのだろうか?

「エルレイ様、何かございますか?」

「そうだな、観客に必要なのは飲食店だろう、それに伴いトイレと清掃作業員だな」

「飲食店とトイレは分かりますが、清掃作業員はなぜ必要なのでしょうか?」

アドルフや他の皆も清掃作業員と聞いて首を傾げている。

「これは治安維持に関係している事なのだが、アドルフはこの前孤児たちを保護した時スラムを見たよな」

「はい、廃墟が多く、とても汚れておりました」

「その汚れている事が犯罪につながると言ったら、アドルフはどう思う?」

「・・・申し訳ございません、エルレイ様のおっしゃりたい事が分かりません」

「そうだな・・・スラムでゴミを捨てても気にならないだろう、しかし、リアネ城でゴミを廊下に捨てたら目立つし、誰も捨てようとは思わないよな?」

「そうですね、廊下にゴミを捨てる者はおりません、捨てる者がいるのなら悪意を持った者でしょう」

「そうだな、ではスラムでゴミを捨てる者は悪意を持っていると思うか?」

「・・・いいえ、思いません、元々汚れている場所ですから悪意を持たない者でも捨ててしまうでしょう」

「同じゴミを捨てる行為でも悪意のある無しが生まれる、その違いはその場所が汚れているかいないかの違いでしかない」

「つまりエルレイ様は汚れた場所では犯罪が起きやすい、と言いたいのでしょうか?」

「その通り、汚れている場所だと悪意が薄れ、犯罪にを犯しても悪いとは思わなくなる訳だ」

「分かりました、しかし、清掃作業員を確保するのは難しいかも知れません」

「そうだな、誰にでも出来る仕事で賃金は安くなるだろう、しかし賃金を普通に暮らせる程度渡して、武闘大会が無い時期は街や街道の清掃作業に当たって貰えば良くないか?」

「それでも難しいのではないでしょうか?今働いてる人が清掃作業に従事するとは思えません」

「そうだな、だから働いて無い人にやって貰う事にしよう」

「働いていない人とは?」

「それは勿論スラムの住人だ!」

「なっ、それは難しいのではないでしょうか?」

「そうか?保護してきた子供達は住む場所、食事、仕事を与えてから真面目にやっていると聞いているぞ」

「それは確かにそうですが・・・」

「スラムの住人に新しい住居と仕事を与えてやれば、まともな生活を送れるようになるはずだ」

「分かりました」

「住居はスラムの今ある建物を壊して俺が建て替えよう、スラムの住民には事前に知らせておいてくれ、また病人や怪我人の治療も俺が行う、この機会にこの街からスラムを無くす事にする!」

「承知しました、しかし治療は警備隊に任せます」

「そうか、その方が警備隊の訓練になるな」

「はい」

これで俺が懸念していたスラムの排除が出来るな、俺の街から犯罪の温床となる物はなるべく無くして行きたい。

「話がそれてしまってすまない」

「いえ、構いません、私もスラム街はどうにかしたいと思っておりました、またエルレイ様が危険な場所へ赴く事が無くなり安堵致します」

俺も好きで危険な場所に行っている訳では無いのだがな・・・。

「飲食店の話だったな、武闘大会は二、三日の予定だから、街の商店街に出店して貰えないか打診してくれ、建物も無料で貸し出そう」

「無料ででしょうか?」

「どうせ税金は取るのだ、場所代まで取っていては出店してくれないだろう」

「畏まりました」

「後は賭博だろうか」

「それにつきましてはこちらの資料をご覧ください」

アドルフは俺に資料を渡して来た、なるほど、お金が絡む事はアドルフの得意とする所なのだろう、軽く見た感じ問題は無さそうに思える。

「アドルフ、これで進めてくれ」

「はい、ありがとうございます」

賭け事は主催者が一番儲ける様に出来ている・・・アドルフの資料でもその辺りはしっかり売上金の中から何割出すのかも記載されていた。

賭け事は嫌いでは無いが、こう言うのを見せられるとやる気が無くなるよね・・・。

「建物に関してはこのくらいだろうか?」

「そうですね、今後気付いた時点で追加してくことに致しましょう」

「分かった、次はルール、開催時期、賞金設定辺りだが、これはトリステンを交えて話した方が良いだろう」

「はい、しかし開催時期に関しましては収穫期が終わった半年後の予定にしております」

「半年後は準備が間に合わないのでは無いのか?」

「間に合わせますのでご心配なく」

「別に無理して開催を急ぐ必要は無いんだぞ・・・」

「これくらいの事成し得なくては、ロイジェルク様や父に笑われてしまいます」

「わかった、俺も頑張るよ」

執事のメンツにかかわる問題の様だな、ロイジェルク様の所にも闘技場を作っている情報は流れているだろうから、ゆっくりしているとヴァイスさんから何か言われたりするのだろう・・・。

「トリステンを連れて来るよ」

「エルレイ様、呼びつければよろしいのでは?」

「時間が勿体ないから、俺が行って連れて来るよ」

「承知しました」

『トリステン、武闘大会について話したい事があるから時間を作れるだろうか?』

『エルレイ様、大丈夫です、どちらにお伺いすればよろしいでしょうか?』

『時間が勿体ないので俺が迎えに行く』

『警備隊の詰め所におりますので、よろしくお願いします』

『分かった』

警備隊の詰め所前へ転移で移動すると、中から慌ててトリステンとニーナが出て来た。

「急に呼び出して悪かったな」

「いえ構いません、それでどちらへ向かわれるのでしょう?」

「執務室へ向かう、手を握ってくれ」

俺が手を差し伸べるとトリステンと共にニーナも手を握って来た、ニーナはトリステンの護衛だから着いて来るのだろう。

ニーナを連れて行くとアドルフが良い顔をしないかも知れないが、ニーナからも意見が聞けるかもしれないしな

俺は気にせずそのまま執務室まで転移した。

「アドルフお待たせ、二人に椅子を用意してくれないか?」

「それは構いませんが、そちらはエルレイ様を襲った暗殺者なのでは・・・」

アドルフは兜を被り、バイザーを下げているニーナを警戒するような目で見ていた。

「今は警備隊で働いていて問題無いだろう、トリステンそうだよな?」

「はい、彼女は真面目に働いておりますし、何よりエルレイ様に忠誠を誓っております」

トリステンがそう言うと、ニーナも頭を何度も上下に振って頷いていた。

「と言う事だ」

「畏まりました、ではお二人はこちらへお掛け下さい」

アドルフの部下が椅子を用意してくれて、二人はそれに腰掛けた。

「では話を再開しよう、武闘大会のルールからだな」

「では、こちらの資料は私共で作り上げた物です」

アドルフは資料を皆へと配った、資料の内容は勝敗の決定方法、制限時間、武具の使用制限等、事細かに記載されていた。

トリステンは暫く資料を眺めてから意見を言って来た。

「いくつか気になる点が御座います、まず勝敗の決定方法ですが、降参、もしくは場外となっております、これに意識を失った場合と、審判による勝敗の決定も加えて頂きたい。

審判による判断は、急所に一撃を加えられた場合、例えば心臓を突かれたり、首筋に剣を当てられた場合ですね」

「武器は刃を潰した物が使用されるから、降参しなければ継続できる、安全の為そこで勝敗を付けた方が良いだろう」

「はい、それと防具に関してですが、革製のみを使用可能とし、頭部だけ金属製の兜を必ず着用する事、金属製の鎧だと、どうしても隙間を狙う攻撃になりやすく、大怪我のもととなります、それに試合時間も伸びますしね」

一見革製の鎧の方が大怪我になりそうに思えるが、腕や足に打撃を受け戦闘不能になった方が、命の危険は無くなるからな、死ななければ魔法で治療して元通りになるからその方が良い訳だ。

「アドルフさん、武具の貸与あるのでしょうか?」

「はい、準備する予定です、しかし種類は普通の剣と盾のみに限定させて貰います」

「それで構いません、防具は個人に合った物でないと意味がありませんからね、後は試合時間ですかね、予選はこのままで構いませんが、本選はもう少し伸ばした方が良いと思います」

「承知しました」

「ルールに関してはそれくらいでしょうか」

「次は賞金だな」

「賞金に関してはこちらの資料なります」

アドルフがまた資料を配る。

優勝賞金金貨一枚、準優勝銀貨五十枚、準決勝敗退者銀貨三十枚、準々決勝敗退者銀貨十枚、本選出場者銀貨五枚。

多いのか少ないのか俺には判断出来ないな、貨幣の価値は銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚となっている。

ちなみに俺の収納にはアドルフより渡された金貨百枚があり、使った分は補充してくれる、貴族は何かとお金がかかるから持っていてくださいとの事だった。

一番最初にロイジェルク様の所に行く際に、ルリアとリリーの三人で泊った宿は金貨一枚銀貨五十枚請求された、一人頭一泊銀貨五十枚だった訳だ、それでも安い方だとルリアは言ってた。

そう考えると優勝賞金の金貨一枚は安い様に思える、しかし、リアネの街で昼食代を払った時は十五人分で銀貨二枚からお釣りが来ていた。

トリステンも金額を見て悩んでいる様だった、ニーナは金額を見て驚いている、ニーナは暗殺者時代どんな生活を送っていたのだろう、警備隊の食事が美味しく天国の様だと言ってたから、厳しい生活だったのだろうか・・・。

「アドルフさん、金額をもう少し増やす事は出来ませんかね?せめて二倍、いや三倍は無いと厳しいかと思います」

「・・・分かりました、では三倍に引き上げましょう」

アドルフは暫く考えていたが了承した、多分だが十倍にしても賭博の儲けで赤字にはならないのだろうと思う、アドルフはそこを考えていたのだろう。

「なぁ、あたいも参加していいのか?」

ニーナが賞金に目が眩んだのか、身を乗り出して聞いて来た。

「身体強化は使用禁止だぞ?」

「うっ、そうなのか・・・」

「それに人が多い所で身体強化を使えば、ラウニスカ王国に知られるだろう?」

「確かに・・・」

ニーナはがっくりと肩落としてしまった。

「それにニーナは元暗殺者だろ、普通に勝てないのか?」

「身体強化無しに正面から男と戦って勝てるわけないさね!」

確かにそうかも知れないが、そこは威張って言う事では無いと思う、ルリアなら普通に男相手でも勝てると思うが・・・そうだな。

「アドルフ、女性部門を作る事は可能か?」

「女性部門ですか・・・それは可能ですが、参加者がいるのでしょうか?」

「トリステンはどう思う?」

「そうですね、兵士に女性はいませんでした、しかし、もし集まるのであれば盛り上がるのではないでしょうか?」

「あたいが出るから女性部門是非作ってくれさね!」

「一応募集して見る事にしよう、いざとなればリアネ城のメイドを出場させれば人数は足りるのでは無いのか?」

「分かりました、では女性部門も募集いたしましょう」

「あたい頑張るさね!」

ニーナは優勝賞金の金貨が自分の物になると喜んでいるな、優勝出来ればと言う事を忘れているんじゃないのか?

暗殺者だったから戦いには慣れているのだろうけど、身体強化を使わないでリゼと戦っていたのを見ていたが、そこまで強いとは思わなかったからな・・・。

まだ半年あるからここから鍛えれば変わって行くかも知れないな、そこはニーナの努力次第だろう。

「取り合えずこんな所だろうか?」

「はい、今日話した事はまとめておきます」

「アドルフよろしく頼む、トリステンありがとう、詰め所まで送って行こう」

「いえ、お気持ちだけで結構です、歩いて戻ります」

「そうか」

「では失礼します」

トリステンは一礼をし部屋から出て行き、ニーナも慌ててお辞儀をしてトリステンの後を追いかけて行った。

俺は机の上に積み上げられている書類に目を通す作業に移った、剣と魔法の訓練に行きたいが、アドルフ達は俺が思い付きで言った事を真剣に実現しようと努力してくれている、俺も自分が出来る事はやって皆の負担を減らさないとな。

その日の夕方、スラムの住民に伝える内容と一週間後に実行する事が決まった、内容は以下の通り。

・これより一週間後、この地域の住宅を全て撤去する。

・この地域の住民全員に新しい住居と一週間分の食料、そして仕事を与える。

・仕事の内容はリアネの街、及びその周辺街道の清掃作業。

・病人や怪我人の治療は無料でする。

一週間と猶予は短いが、長く取ってもこれに従わない者はいるだろうし、行く当ても仕事も無い者がいる所だから、早い方が良いだろうという事になった。


翌朝、スラムに通達する資料と立て札を持ってトリステンの下へやって来た。

「トリステンおはよう」

「エルレイ様おはようございます、今日はどの様なご用件でしょうか?」

「これの通達をお願いしたい」

俺は資料と立て札をトリステンに渡し、トリステンは資料に目を通し驚いていた。

「これはまた思い切った事を考えましたね・・・」

「子供達を保護した時からスラムをどうにかしたいと思っていたからな、それで引き受けてくれるか?」

「はい、お引き受けいたします」

「ありがとう、俺が自分で行くと言ったらアドルフに止められてな・・・」

「それはそうでしょう、私でもお止め致します」

トリステンは苦笑いをしながらそう答えた。

「トリステン達も気を付けてくれ、出来るだけ人数を多く連れて行った方が良いだろう」

「はい、承知しております」

「一応立て札は作ったが、大半の人が文字を読めないだろう、出来れば毎日通達を行ってくれると助かる」

「分かりました、しかし応じてくれますかね?」

「中には応じない人もいるだろう、だがそう言う人はその場所が無くなっては困る犯罪者か働きたくない人だな、厳しい様だが俺の街に働かない人は必要ない、出て行ってもらう」

「承知しました、それで新しい住居は何処にあるのでしょうか?」

「それは勿論、今ある場所に新しく俺が作るから心配しなくていい」

「以前見たあの家でしょうか?」

「そうだが、問題あるか?」

「問題と言うか、立派過ぎるのではないでしょうか・・・」

立派だろうか?見た目土色一色で立派には見えないと思うが・・・。

「でも今後またあの場所がスラムにならない様、綺麗な場所にしなくてはならないからな」

「承知しました、では今日から通達して参ります」

「よろしく頼む、ニーナもトリステンを守ってやってくれ」

「それがあたいの仕事さね!」

その後トリステン達によりスラムに通達が出された、やはり不満を持ち襲って来る者もいたそうだ。

しかしトリステンの指導により魔法を覚えた警備隊は、自ら障壁を張り相手を斬り伏せる事が出来る様になっており、簡単に追い返せたそうだ。

そして一週間後、俺はアドルフと数名の部下、それにトリステンの警備隊と共にスラムへとやって来ていた。

何故かルリア、リリー、ロレーナ、リゼ、ロゼが隣にいる、ロゼは元々連れてくる予定だったからいいのだが、今朝出かける時にルリアに声を掛けられた。

「エルレイ、私達もスラムに行くから連れて行きなさい」

俺はこの事を皆に内緒にしていた、勿論ロゼにも話してはいない、何処から情報が漏れたのだろうか・・・。

「ルリア、俺は今日スラムに行く予定は無いんだが?」

「知らない振りをしても無駄よ」

「エルレイ様、ニーナよりスラムの撤去を行うと教えて貰いました」

ロゼが俺を見て嘘は無駄だと情報源を教えてくれた、そうか、ニーナはリゼとロゼの親友だったな・・・訓練の時にでも教えて貰ったのだろう、完全な俺のミスだな、口止めしておけばよかった。

「分かったよ、危険だから連れて行きたくは無かったのだが・・・」

「そうね、でもどの様になるのかこの目で見ておきたいのよ」

「エルレイさん、病気の人や怪我人の治療は私がしますから、お願いします」

リリーもスラムがどの様になるのか気になっているのだろう。

「リリー、連れて行くが治療はしなくていいぞ、それは警備隊に訓練もかねてやって貰う事になっている」

「分かりました」

ロレーナはスラムと聞いて震えている様だな、人の世界に住んでいたからどの様な場所か分かっているのだろう。

「ロレーナ、無理に付いて来る必要は無いぞ」

「私は別に怖くないのじゃ、ただ・・・おばばが絶対に行ってはいけないと言っていただけなのじゃ・・・」

「ロレーナは留守番をしていてくれ」

「それは嫌なのじゃ、私は大人じゃからな皆を守らなければいけないから付いて行くのじゃ」

確かにこの中で年齢的には一番年上だが、精神的には一番幼く思えてしまう・・・。

「リゼ、ロレーナと手を繋いでやってくれ」

「はい、畏まりました」

「私は子供では無いのじゃ!」

ロレーナはそう言っているがリゼの手を離そうとはしていない、リゼと手を繋ぐ姿は、どう見ても姉に手を繋いでもらっている妹にしか見えなくて微笑ましい。

ルリアとリリーもそう思っているのか、優しい目をロレーナに向けていた。

と言う事があって皆でスラムへ来ている訳だ、ヘルミーネ、アルティナ姉さん、ラウラの三人は先生として部屋を出て行った後だったからここにはいない、ルリアもヘルミーネとアルティナ姉さんをここに連れて来れば大変だと思ったのだろう。

スラムの通路には、住人たちが不安そうにこちらを見ている、俺は一歩前に出て住人に大声で話しかけた。

「私はこの街の新しい領主となった、エルレイ・フォン・アリクレット侯爵、これよりこの地域の撤去を行う。

事前に通達した通り、ここの住人には新しい住居と食料そして仕事を与える。

そして病気や怪我人の治療もする、これを受け入れる者はこちらに並んでくれ」

俺の話を聞いて住人は暫くお互いを見合わせていたが、最初の一人が並ぶとそれに続き続々と並び始めた。

「アドルフ、後は任せた」

「畏まりました」

アドルフ達の仕事は住居を与える住人の登録作業、氏名、年齢、家族構成を聞き出す事が目的だ。

これを行っておけば後に問題が起こった時に対処しやすい、折角与えた住居を他人に奪われない様にしないとな。

俺の仕事は廃墟の撤去、及び住居の作成だな。

「ルリア、リリーを連れて家を壊して回ってくれないか?」

「分かったわ」

「エルレイさん、私は中に人がいないか確認すればいいんですね?」

「リリーその通りだ、危険だから絶対に中に入らないでくれよ」

「はい」

「ロレーナとリゼもルリアに着いて行ってあげてくれ」

「分かったのじゃ」

「分かりました、私も壊していいんですよね?」

「構わないぞ、ルリアと相談してくれ」

「はい」

「ロゼは俺と家作りだ」

「承知しました」

早速ルリアとリゼは近くにある住居を壊し始めた、大きな音と共に崩れていく住居を、住民達は恐怖の眼差しで見ていた。

しかしルリアとリゼは一軒の住居を壊す時、周りに被害が出ない様綺麗に壊して行くな、あれも訓練の成果だろう。

俺とロゼは瓦礫の前にやって来た、見事に粉々に粉砕されているなこれは作業がやりやすい。

「ロゼ、一軒作るから同じように作って行ってくれ」

「はい」

「ルリアとリゼが炎で壊しているから消毒もいらないだろう」

いつもと同じように瓦礫に土を混ぜて固めて行き家を形作って行く、色んな家族構成があるだろうが気にしてはいられない。

2DKの家を作り上げた、扉と窓は引き戸で全部閉めれば明かりが入らないが、そこは作れないからな我慢して貰おう。

最後に表の目立つところに番号を彫り込んで終わりだ、順番に番号を振って行けば、アドルフが何処に誰が住んでいるか管理しやすくなる。

そしてこれは清掃作業を受ける時に必要となる、当面ここの住人でなければ清掃作業をしてもお金を支払わない事にしている。

こうしておけば不正を防げるし、限度無く受け入れていたら予算がいくらあっても足りなくなるからな。

「ロゼ、こんな感じでお願いする、番号は順番に付けて行ってくれ」

「分かりました」

ロゼは一度家の中に入り内部を確認して出て来た、そしてロゼは隣に同じ家を作り上げた、流石に何度もやって来た事だから早いし正確だ。

それを見ていた住人は驚きの声を上げていて、早速アドルフの所で登録を終えた家族が食料を抱えて、出来上がったばかりの家へ恐る恐る入って行った。

その後家の中から歓喜の声が聞こえて来て、家の中から父親と思える男性が飛び出してきて、列に並んでいる住民に向け家が丈夫で綺麗だと説明をしていた、それを聞いて並んでいた住民は我先にとアドルフ達詰め寄るが、アドルフが大声でそれを制止しさせると大人しくまた並び始めた。

これは急いで家を作らないといけないと思い、ロゼと二人で黙々と同じ家を作り続けて行った。

順調に思えていたがルリアから念話が入る。

『エルレイ、家の前からどいてくれないおじいさんがいるのよ、手伝ってくれない?』

『分かった、そっちに向かうよ』

『ロゼ、ルリアの所で問題が起きた様だから、そっちに行って来る』

『承知しました』

ルリアの下へ飛んで行くと、確かに家の前に座り込んでいるおじいさんがいた。

『グール、敵意はありそうか?』

『全くねーな、それと家の中にもう一人いるぜ』

『わかった、ありがとう』

俺は一歩前に出ておじいさんに話しかけた。

「おじいさん、私はこの街の領主でエルレイと言います、今日この地域の撤去を行う事は聞いていますか?」

「・・・・・・」

おじいさんは無反応だ。

「家の中にもう一人いる様ですが動けないのでしょうか?もしそうであれば治療致します」

「・・・・・・治療できるのか?」

おじいさんはようやく反応してくれて、小さな声でそうつぶやいた。

「はい、出来ますよ」

「・・・今まで何度も高い治療費を払ってやって貰ったが治らなかったのだぞ!」

おじいさんは声を荒げてそう言って来た。

なるほど、回復魔法は万能に思えるが、実は使い手によって大きく差がつく魔法だ。

魔法は呪文を唱える事によって同じ現象を起こせるわけだが、回復魔法はそれに当てはまらない。

回復魔法は相手を触り、相手の魔力に合わせて治癒すると言う事が必要になる、当然患部の特定が出来なくては、適切な回復は見込めない。

今まで来た魔法使いはそれが出来なかったのだろう。

高位の回復魔法は唱えるだけで治癒するのだが、それには膨大な魔力が必要となる。

何故なら全身に対して治癒を行うからだ、呪文では部位を特定して治療する事が出来ず、その結果全身に魔法を掛ける事になる。

無駄な魔力を使う訳で、当然そんな魔力を持った魔法使いとなると、宮廷魔法使い辺りでないと無理だろう。

「大丈夫です、ちゃんと治療しますし、お金も頂きませんよ」

「本当だな!治らなければここを出て行かないぞ!」

「えぇ、構いませんよ」

「分かった、妻を治してやってくれ」

おじいさんの後に着いて家の中に入って行くと、ベッドに寝ているおばあさんを確認できた。

おじいさんはベッドの横にしゃがみこみ、おばあさんの手を握り締めた。

「今から病気を治してもらうからな」

「はい、ありがとうございます」

おばあさんはおじいさんの手を握り返しそうつぶやいた、その声は非常に弱弱しく、かなり衰弱している様だ。

「エルレイさん、私が診ます」

リリーとルリアも俺の後からついて来ていた様だ。

「リリー、任せるよ」

「はい」

リリーはベッドの傍に行きおばあさんの魔力を見ている様だ。

「これは・・・」

リリーが少し驚いている様だ。

「エルレイさんも診て頂けませんか?」

「分かった、おじいさん、俺におばあさんの手を触らせて貰えませんか?」

「お願いする」

おじいさんはゆっくりおばあさんの手を離し、俺に場所を譲ってくれた。

俺はゆっくりとやせ細ったおばあさんの手を握りしめ、おばあさんの魔力を確認した。

・・・なるほど、リリーが驚く訳だ、全身の魔力が乱れている、恐らく血液の病気だろう、これは普通に魔法使いには無理だな。

「リリー、多分血液が病魔の襲われている、やれそうか?」

「はい、おばあさんの手を貸してください」

俺はおばあさんの手を離し、リリーに場所を譲った、リリーはおばあさんの手を握り優しく微笑んだ。

「おばあさん、これから治療致します、力を抜いてゆっくりしていてください」

「はい、お願いします」

リリーは真剣な表情で治療に当たっている、魔力量には問題無いが、相手を気遣いながら行うのでとても疲れる。

しかもおばあさんは、体力も落ちているから、いきなり大量の魔力を送ると、おばあさんに負担を掛けてしまう事になるだろう。

・・・リリーはゆっくりと時間をかけて治療を行っていた。

「おばあさん終わりました、後は食事をすれば元気になりますよ」

「ありがとうございます」

リリーはおばあさんに優しく微笑み、ゆっくりと立ち上がり、振り向いたところで倒れかけた、俺は慌ててリリーを支え転倒を防ぐ事が出来た。

やはりかなりリリーは疲れた様で、ぐったりとしていたので抱きかかえてやった。

「エルレイさん、ありがとうございます」

「リリーよくやった、ゆっくり休んでくれ」

「はい」

リリーはそう言うと目を瞑り眠ってしまった様だ。

「妻の病気は治ったのか?」

「はい、ただ体力が落ちているので暫く起きられないでしょう、少しずつ柔らかく炊いた物を食べさせてあげてください」

「分かった、それでここを出て行かないといけないのか?」

「そうですね、おばあさんをベッド事新しい家に運びましょう、少し待っていてください」

本来であれば動かさない方が良いのだが、この不衛生な家に置いておく方がおばあさんには良く無いだろう。

『アドルフ、病気の老夫婦を優先的に家に入れるから、よろしく頼む』

『畏まりました、家が決まりましたらお知らせください』

『分かった』

「ルリア、おばあさんをベッドごと運べるか?」

「えぇ、問題無いわ」

「お願いする、ゆっくり運んでくれ」

「分かっているわよ」

「おじいさん、おばあさんを運びますので着いて来て下さい」

「妻は大丈夫なのだろうか?」

「大丈夫よ、任せなさい」

おじいさんはルリアを心配そうな目で見ていたが、ルリアは邪魔だと言わんばかりにおじいさんを跳ね除けていた。

『ロゼ、病気の老夫婦をそちらに運ぶから家を一軒確保していてくれ』

『承知しました』

リリーを抱えて外に出ると、ロレーナとリゼが心配そうにこちらを見ていた。

「リリーは無事なのじゃろうか?」

「疲れて眠っているだけだから心配ないよ」

ロレーナはまだリゼと手を繋いでいたのか・・・もう怖く無いだろうに。

「リゼ、済まないがリリーをお願いできないか?」

「はい、ロレーナ様、申し訳ありませんが手を離しますね」

「勿論問題無いのじゃ!」

ロレーナは手を繋いでいた事を今思い出したかのように慌てて手を離していた。

俺はリリーをリゼに渡してロレーナの手を握った。

「エルレイ、もう手を握る必要は無いのじゃ」

ロレーナは抗議してきたが今はおばあさんを運ぶことが先決だ。

「ルリア、おじいさん、行きましょう」

「・・・」

「分かりました」

ルリアは集中している様で答えない、普通の物を運ぶのとは訳が違う、弱っているおばあさんだから揺らしたり出来ないからな。

家に向かう途中、手を繋いでいるロレーナは繋いでいる手を大きく振り楽しそうに歩いていた、なるほど、リゼがずっと手を繋いでいた意味が分かった、ロレーナ可愛すぎる、これで百五十歳は反則だろう。

ロゼが待っている家に到着し、ルリアはおばあさんが寝ているベッドを慎重に家の中に入れていた。

『アドルフ、食料を持たせてこちらに一人寄こしてくれ』

『承知しました、今から向かわせます』

暫くするとベッドを運び終えたルリアが、疲れた表情を見せながら家から出て来て、ちょうど入れ替わるようにアドルフの部下と食料を抱えた警備兵が家の中に入って行った。

「ルリア、うまく運べたようだね、ありがとう」

「えぇ、かなり疲れたけど訓練のおかげで無事運べたわ」

ルリアは疲れてはいるが無事運べたことで喜んでいる様だった。

「ルリアは少し休んでいてくれ、俺は家を作らないと待っている人がまだ沢山いる」

「分かったわ」

俺は家の作成に戻ろうとしていたら、おじいさんが慌ててこちらにやって来た。

「領主様ありがとうございます、それで家を壊すのを少し待ってください、家財道具を急いで出します」

「分かった、君たち手伝ってやってくれないか?」

「分かりました」

俺の護衛に付いていた警備兵におじいさんの手伝いをお願いした、トリステンが護衛を付けてくれたのだが、ここまで襲われたりはしていないから大丈夫だろう。

多分この一週間警備兵が通達して回った事で、抵抗するような人達は出て行ったのだと思う、無料で家と食料それに仕事を与えると言っているのを拒否するのは、お金に困ってなく、普通の場所では暮らせない人なのだろうから。

昼食を挟み午後も家を建て続け、通路も綺麗に石畳上に敷きなおして、夕刻ごろ全ての作業が終わった。

もう誰もこの場所をスラムとは思わないくらい綺麗になった。

「終わったな、皆協力ありがとう」

「エルレイ、ロゼお疲れ様」

「エルレイさん、ロゼお疲れさまでした」

「エルレイ様お疲れさまでした」

「皆よく頑張ったのじゃ」

リリーは途中で目を覚まし、今はもう元気になっていた、精神的に疲れただけだったからな。

それよりロゼが疲れ果てていて、リゼが支えている状態だった。

ロゼには途中で俺が魔力を供給して頑張って家を作って貰ったからな、ロゼがいなかったら今日中には終わって無かっただろう。

俺の魔力はグールに蓄えていて、膨大な魔力があるから全く問題は無かった。

今日ばかりはグールがいてくれて本当に助かったと思う、グールに感謝の言葉を継げると調子に乗ってうるさくなりそうだから言わないが・・・。

アドルフ達も住民の処理が終わった様でトリステンと共にこちらへやって来た。

「エルレイ様、住民の登録は全て終わりました」

「アドルフご苦労、トリステンは明日からの清掃作業の分担をお願いする」

「はい、しかしこんな事でお金を渡していいんですかね?」

トリステンは清掃作業にお金を支払う事に疑問を抱いている様だった。

「トリステンはこんな事と言うが、これは警備隊の仕事にも関わって来る事だぞ、この地域がこの状態で維持されていれば一年後には犯罪件数が減っていると断言できるぞ」

「エルレイ様がそう言うのであれば、一年後を楽しみにしたいと思います」

「そうだな、この街で不用意にゴミを捨てた者には、罰として一日清掃作業に従事して貰おう」

「エルレイ様、良いお考えです、数日中に街の数か所に立て札を建てて置きます」

こうしておけば街で不用意にゴミを捨てる者は減って行き、徐々に街からゴミが無くなり綺麗になって行くだろう。

一度綺麗になればその場所にゴミを捨てたり汚したり出来なくなるはずだ、それを行う事は悪い事だと思うだろうからね。

それでもやってしまう者には罰を受けて貰うだけだ。

「アドルフ、よろしく頼む、では帰るとしよう、流石に今日は疲れたよ・・・」

「私はまだやる事があるので失礼します」

トリステンはそう言うと警備隊が集まっている所へ戻って行った、警備隊は明日から忙しくなるからな、苦労を掛けるが頑張って貰いたい。

皆でリアネ城へ戻り、すぐさまロゼを休ませた、本人は大丈夫だと言っていたがこれ以上無理はさせられない。

夕食も部屋に運んで貰い、皆疲れていたのでその日はすぐ就寝となった。


翌日清掃作業の様子を見に行きたいと思いつつ取り合えず執務室へ向かった、ここの所剣の訓練は出来ていないが、本来俺の仕事は訓練では無くこっちだからな。

俺もアドルフ達の様に朝早く起きて訓練しないといけないのだろう・・・。

執務室の席に座るとアドルフがやって来て資料を俺に手渡して来た。

「アドルフ、清掃作業の様子を見に行きたいのだが?」

「エルレイ様、それはトリステンから報告が来るので不要です」

俺の希望をバッサリと斬り捨てられた、確かにトリステンから報告は上がって来るだろうが、自分の目で見たいじゃないか・・・。

俺はアドルフに抗議する様に睨んだが、アドルフは涼しいかをでそれを受け流し、書類を見てくれと俺の前に差し出して来た。

仕方なくそれを受け取り目を通す、闘技場に併設する施設の建設ですね・・・。

昨日一日中家を建てていたから疲れた、と言うか飽きたと言うか・・・まぁやるけどね。

「これを建てればいいのだな?」

「はい、内装作業が御座いますので出来るだけ早くお願いします」

「分かった、今から行って来るよ」

「はい、よろしくお願いします」

アドルフは笑顔で俺を送り出してくれた、さてロゼを連れて行きたいが、流石に昨日の疲れが残っているだろうから、話し相手にリゼを連れて行くか。

『リゼ、今何処にいるのだろうか?』

『エルレイ様、今まだ部屋におります』

『用事があるから執務室まで来てくれないか?』

『分かりました、すぐ向かいます』

リゼを呼びつけたのはロゼに出かける事を知られたくなかったからだ、しばらくしてリゼがやって来たところで一緒に闘技場へ転移した。

「エルレイ様、ここは闘技場ですよね、何をしに来たのでしょう?」

リゼはなぜここに連れて来られたのか不思議そうにしていた、闘技場ではすでに多くの人が仕上げるために働いている。

「宿泊施設等建てるために来た、リゼは俺の護衛だな」

「何故ロゼではなく私なのでしょう?もちろん私は連れて来られて嬉しいのですが・・・」

「昨日ロゼには頑張って貰ったから、今日は休んでもらおうと思ってね」

「それ、ロゼが聞いたら怒りますよ・・・」

「そうだろうな、だからリゼ、黙っていてくれないか?」

「そうですね、では今日一日手を繋いでくれたら黙っていましょう」

「俺はロレーナの様に可愛くないぞ?」

「いえ、エルレイ様はロレーナ様と同じくらい可愛いですからね!」

「まぁ俺が可愛いかどうかは置いておくとして、その条件に問題は無い」

そう言ってリゼに手を差し伸べると喜んで手を繋いできた、俺は図面を取り出し見ようとしたが片手が塞がっていて不便だな。

「リゼ、半分持ってくれ」

「分かりました」

リゼに半分持ってもらい図面を確認する、必然的に体が密着しリゼの良い匂いと体温が伝わってくる、それに二人で図面を覗き見ているため顔も近い、リゼは図面を見る必要ないんだが・・・。

「ふふっ、こういうのなんか良いですね」

リゼはさらに顔を寄せて来て幸せそうに笑っていた、若干照れ臭いがリゼが幸せそうならそれでいいか。

「まぁそうだが、ずっとこうしている訳にもいかない、どんどん作っていくぞ」

「はい」

リゼと楽しく会話しながら建物を建て続けて行く、昼食は家を出してリゼに作って貰って美味しく頂き、午後も作業を続けアドルフに頼まれた建物を建て終え、リアネ城へと戻って来た。

そして夕食後、まさかこのような事になるとは思っても見なかった。

「エルレイ様、今日はリゼとどちらへ行かれていたのでしょうか?」

ロゼが真剣な表情で問い詰めて来た、正直に言う訳にもいかず、とっさに嘘をついてしまった。

「ロイジェルク様の所に呼ばれて行っていた」

それを聞いてロゼが手で顔を覆い泣き出してしまった。

「エルレイ様は私が不要と言う事ですね・・・」

もしかしてリゼが話したのか?そう思ってリゼを見たが首を横に振り私じゃないと訴えかけていた。

俺はどうしていいのか分からず、周りに助けを求めようと見回したが、皆冷たい目で俺を見ていた。

「エル、嘘をつくのは良くないぞ、私がこれで確認したからな!」

ヘルミーネは俺に向けて手鏡を見せて来た、あれは確か宝物庫で見つけた魔導具で、望んだ人が見られるのだったな・・・すっかり忘れていた。

つまりあれでリゼと手を繋いで建物を建てている所を見られたわけか・・・これは不味い事になったな、ロゼを連れて行かなかったばかりか嘘まで付いてしまった。

俺は何とかロゼの機嫌をなおして貰おうと説得を試みた。

「ロゼ、嘘をついたことはすまなかった、ロゼを今日連れて行かなかったのは、昨日の疲れが残っているだろうと思い、今日は休んで貰おうと思った訳だ、それに建物を作る作業自体、俺一人で終わらせられる物だったからな」

「・・・・・・」

ロゼはまだ泣き続けていて何も答えてくれない・・・。

「そうだ、明日はロゼを一日中連れて回る事にするよ!」

「・・・一日だけですか?」

ロゼはようやく反応してくれたが、一日では納得してくれない様だ・・・。

「二日・・・三日・・・一週間・・・」

「一週間ですね!約束しましたからね!」

先程まで泣いていたロゼは顔を上げ、にっこりと笑っていた・・・嘘泣きだったのか、でも今回は俺が全面的に悪いからしょうがない、一週間ロゼを連れて行動するだけで、俺に不都合な事は何も無いな。

「ロゼ、良かったですね」

「リリー様、ありがとうございます」

一週間俺の傍にいられる事になって、ロゼとリリーは喜び合っていた、ただ一人納得できなかった人が・・・。

「ロゼ、一週間は多くない?それにもしかしてエルレイ様の着替えや入浴も含まれるんじゃないでしょうね?」

「リゼ、勿論そうですよ、ルリア様とリリー様のお世話お願いしますね」

「それはやりますけど、だけど私は今日一日だけだったのに、一週間は長すぎる!」

「リゼは今日一日エルレイ様と手を繋いでいたのでしょう?それは私に黙っておくからと、エルレイ様にお願いしたのでは無いのかしら?」

「うっ・・・確かにそうだけど・・・」

「私に黙っていた罰です」

「・・・エルレイ様~」

リゼが俺に泣きついて来たが今回の事はどうにもできない・・・お世話で思い出したがラウラの負担が増えて大変なのでは無いだろうか?

今までリゼが俺の世話、ロゼがルリアとリリーの世話、ラウラがヘルミーネとアルティナ姉さんの世話をしていた。

そこにロレーナが加わってラウラが三人の面倒を見ている事になっている。

「ラウラ、三人の面倒を見ていて大変では無いのか、メイドを増やして貰った方が良くないか?」

「エルレイ様、私一人で十分です」

ラウラはそう言うが無理だと言いそうにないよな。

「エルレイ、心配しなくても大丈夫よ、お姉ちゃん自分の事は出来るだけ一人でやってるし、それにロレーナちゃんも何でも一人で出来るからね」

アルティナ姉さんがそう言うのなら大丈夫なのだろう、しかしロレーナちゃんか・・・見た目は確かにロレーナちゃんと呼んだ方がしっくりくるが、本人が良い顔をしていないな。

「アルティナ、ちゃん付けは止めて欲しいのじゃ」

「だって、ロレーナちゃんが可愛いから仕方が無いじゃない」

アルティナ姉さんはそう言ってロレーナに抱き付いていた、抱き付かれたロレーナは特に嫌がっている訳でもなく気持ちよさそうにしていた。

それは置いておくとして、メイドの事は考えておいた方が良いかな、リアネ城には多くのメイドが働いていて足りない訳では無い。

単に俺達に付き添っているメイドがリゼ、ロゼ、ラウラの三人と言うだけで、この部屋の掃除や洗濯などは別のメイドがやっている。

ラウラが信頼できるメイドを連れて来るまで、皆の髪の手入れなど手伝って貰った方が良いのでは無いのだろうか?

皆長くて綺麗な髪を持っているから、朝と夜の手入れには時間をかけてやっているからな。

俺がしばらく考え込んでいると、ロレーナを解放したアルティナ姉さんがこちらへやって来た。

「エルレイ、本当に大丈夫よ、もうすぐ新しいメイドが来るから安心してなさい」

そうなのか、しかしなぜその事をアルティナ姉さんが知っているのだろう・・・疑問は残るが新しいメイドが来るのなら安心だな。

「分かったよ」

その後は何事も無く寝る事となった。


翌朝ロゼに着替えさせて貰い、朝食後執務室へロゼと一緒にやって来た。

「エルレイ様、おはようございます」

「アドルフおはよう、すまないがロゼに椅子を持って来てくれないか」

「承知しました、しかしなぜロゼが?」

部下がロゼに椅子を持って来てくれて、ロゼも俺の横に座った、以前ならアドルフは使用人が席に座る事を許さなかっただろうが、今はアドルフも俺の前に椅子を置いて座って貰っているからな。

「昨日色々あってこの様な事になったが、詳しく聞かないでくれると助かる・・・」

「はぁ、分かりました」

アドルフは俺が何かやったのだろうと気が付いたようだが、それ以上追及してこなかった。

「アドルフ、トリステンから報告は来ているのだろうか?」

「はい、昨日清掃作業に参加したのは三分の一程度だったそうです、清掃作業で本当にお金を貰えるのか不安だったのでしょう、ですがお金を渡すと喜んでいたそうですから、今日は参加する人数も増えている事でしょう」

「そうだな、徐々に増えて行ってくれればいいだろう、その為に一週間分の食料も渡したのだからな」

「はい、それでエルレイ様、昨日の作業は終わったのでしょうか?」

昨日夕方遅かったからアドルフに報告しなかったんだよな。

「終わったぞ、昨日少し遅くなったから報告が遅れてすまなかった」

「いえ、それは構いません、それと昨日ベッドが届いております」

「そうか、それは良かった、早速アベルティア様に持って行ってやらないといけないな」

「エルレイ様、ついでにこちらをロイジェルク様に渡して頂けないでしょうか?」

アドルフは分厚い紙の束を渡して来た。

「アドルフ、これは何だい?」

「武闘大会の詳細を書いた資料にございます、ロイジェルク様にお渡し頂ければ王国中の貴族に配布して頂けると思います」

「なるほど、ロイジェルク様に宣伝して貰う訳か、しかし借りを作る事になるのでは無いのか?」

「いえ、この程度ロイジェルク様は借りとは思わないでしょう、エルレイ様の収入が増えればロイジェルク様も増える訳ですからね」

「それもそうか、この資料は午後持って行く事にするよ、午前中はベッドを完成させないといけないからな」

「よろしくお願いします、それとこちらはゼリクイム様とヴァルト様にお渡しください」

父上とヴァルト兄さんの分もか、久々に顔を見に行くのも良いだろう。

「分かった」

ベッドを作りに行く前に、ヴァイスさんに連絡しておかないといけないな。

『ヴァイスさん、今よろしいでしょうか?』

『はい、エルレイ様、御用でございますか?』

『以前アベルティア様に頼まれていたベッドが届いたので、午後からお持ちしたいのですがよろしいでしょうか?』

『はい、お願いします』

『それとロイジェルク様にも渡したい物があるのですが』

『ロイジェルク様は現在出掛けております、ネレイト様ならご在宅ですが』

『ではネレイト様にお渡しするのでお願いします』

『はい、お待ちしております』

これでいいな、ロイジェルク様はポメラニア公爵の件で忙しいのだろう、ネレイト様に渡しても問題無く宣伝してくれるはずだ。

ロゼを連れ、ベッドを作るために郊外の山の麓に来ていた、流石に訓練場で土を大量に採取する訳にはいかないからな。

「俺はベッドを浮かせておくから、ロゼ作ってくれないか?」

「分かりました、水をお願いします」

綺麗に作って貰ったベッドを地面に置いて汚したくなかった、拭けばいいけど、二人いるからこのような方法がとれるわけだ。

ロゼと二人で話しながら作業を進めて行く、昨日のように手を繋ぎながらとはいかないが、ロゼが楽しんでくれている様だからいいだろう、ロゼには本当に悪い事をしたから、この一週間で罪滅ぼしをしたいものだ。

ベッド二十台を完成させ、昼食を摂ってからロゼと共にロイジェルク様の館へやって来た。

ベルを鳴らすとヴァイスさんが迎え入れてくれた。

「ヴァイスさん、こんにちは」

「エルレイ様、いらっしゃいませ、アベルティア様がお部屋でお待ちです」

「案内お願いします」

「畏まりました」

ヴァイスさんの案内でアベルティア様の部屋まで来た。

「アベルティア様、エルレイ様をお連れしました」

「入って頂戴」

「失礼します」

ヴァイスさんがドアを開けてくれて、俺とロゼは部屋の中へ入って行った。

「エルレイ君いらっしゃい」

「アベルティア様、ご無沙汰しております、本日は頼まれていたベッドをお持ち致しました」

「エルレイ君ありがとう、こちらにおいて下さらない?」

「分かりました」

既にベッドは撤去されており指定された場所にベッドを置いた、するとメイドがすぐさまやってきてベッドメイキングを始め数分で完成した。

流石ロイジェルク様に仕えるメイドだけあって丁寧に仕上げられていた、多分うちのメイドも同じ様に出来るとは思うが、やっている所は見た事が無い、俺が出掛けた後作業しているからな。

完成したベッドにアベルティア様は座って感触を確かめていた。

「やっぱりこの感触はいいわね~、エルレイ君ありがとう」

「いえ、遅くなりまして申し訳ございません」

「いいのよ、しかし見事な作りね、待っていた甲斐があるという物よ」

アベルティア様に贈ったベッドは、天蓋付きで細工がきめ細やかにされており立派な出来だった、俺達が使う分は天蓋は無く簡素な作りとなっている、並べて使うから天蓋は邪魔だったわけだ。

「ところでエルレイ君は、この後何か用事があるのかしら?」

「はい、ネレイト様に用事が御座います」

「あら残念ね、エルレイ君とお茶でもどうかと思ったのだけど、お仕事があるなら仕方ないわね」

「申し訳ございません、今度ルリアとリリーを連れてゆっくりお伺いいたします」

「あら、私はエルレイ君と話がしたかったのだけど?また今度時間がある時訊ねて来て頂戴ね」

「はい、そうさせて頂きます」

アベルティア様の部屋を出てヴァイスさんの案内でネレイト様の所へ歩いて行く、アベルティア様と話すのは構わないが、間違いなくルリアの事を聞かれるだろうから出来れば遠慮したい・・・。

いつもの応接室に案内されると思っていたら、ヴァイスさんは違う方向に歩いている様だった、しばらく歩き部屋に案内され中に入ると、ネレイト様は書類と格闘している所だった、他にも執事が働いているどうやら執務室に案内された様だ。

「ネレイト様、ご無沙汰しております」

「エルレイよく来てくれた、そこに座ってくれないか」

俺はソファーに案内されそこに座り、ネレイト様もやってきて正面に座ると、すぐさま執事がお茶を用意してくれた。

「まだ仕事に慣れていなくてな、応接室でゆっくりと出来なくて、ここへ呼び寄せてすまない」

「いえ、私も最近執務室に籠っていますのでお気持ちはよく分かります」

「そうなのか?先日街で楽しそうな事をやっていたと聞いたぞ!」

ネレイト様はにやりと笑ってこちらを見て来た、あれだけ派手にやったからな街中に知れ渡っているし、ネレイト様がそれを知らない訳がない。

「犯罪を減らすにはスラムを無くす事が手っ取り早いですからね」

「そうだが、普通簡単に出来る事では無いぞ」

「そうですね、アドルフや警備隊の皆が協力してくれたので助かりました」

「それは関係無いだろう、エルレイがいたから出来た事だろう?」

「私だけでは出来ませんよ、皆の協力あっての物です」

「まぁそう言う事にしておこう、ところで要件は何だろうか?」

「はい、こちらになります」

俺はアドルフから預かった紙の束をネレイト様の前に置いた、ネレイト様は上から一枚取り読み始めた。

「・・・エルレイは次々と楽しい事を始めるな、羨ましいぞ!」

「楽しいですか・・・そうですね、作業は大変ですが皆でやっている事ですから楽しいですね」

「私はこれを王国中に広めれば良い訳だな」

「はい、お願いできますでしょうか?」

「勿論構わない、こんな楽しい事に協力できるのは私としても嬉しい事だからな」

ネレイト様は心底嬉しそうに笑っていた。

「それと武闘大会は私も見に行きたいから、迎えに来てくれると助かる」

「是非いらしてください」

「うむ」

「では、これで失礼しますね」

「エルレイ、また遊びに来てくれ、ゆっくりは出来ないがな・・・」

ネレイト様は苦笑いをして俺を送り出してくれた、ロイジェルク様の後を継ぐのは大変そうだ・・・。

俺はこれ以上しょう爵しない事を願いつつリアネ城へと戻って来た、しかし父上とヴァルト兄さんの所へ出かけなくてはいけない。

「ロゼ、飛んで行くから抱えるぞ」

「はい、お願いします」

ロゼを抱きかかえて飛び立った、父上とヴァルト兄さんの所へはまだ一度も行った事が無いから転移で行く事が出来ない、街道は作ったから近くまで行こうと思えば行けるが、ロゼを抱きかかえる好機をわざわざ逃す必要もあるまい。

ロゼも喜んでくれているし良い事尽くめだ、ヘルミーネに見られているかも知れないから変な事は出来ないな、いや、今の時間だと女の子達の魔法の訓練中だろう、手鏡を持ち歩く事はしないだろうから、見られるとしたらお昼の時間帯だな、気を付けておこう。

街道沿いを飛んで行き、やがて大きな館が見えた、ロイジェルク様の館より少し小さい感じだが、広大な庭と立派な館で男爵の時の家とは比べ物にならないな・・・。

玄関前に降り立つと中から執事が慌てて出て来て一礼をした、普通飛んで来る人はいないし連絡も入れて無かったからな。

「エルレイ様、いらっしゃいませ、本日はどの様なご用件でしょうか?」

「父上かマデラン兄さんに用事があるのだがいるだろうか?」

「はい、お二人ともご在宅です、ご案内いたしますのでお入りください」

執事に案内され館内に入る、中は立派な作りだが装飾品が少ないな・・・引っ越して間も無いし、父上はあまり飾り立てるのが好きでは無かったからな、派手に飾り立てているよりかましだろう。

執事に案内されて廊下を歩く、使用人の数も増えている様で、俺とすれ違うたびに端により一礼してくれる。

男爵の時は執事はジアールだけで、メイドもリドとヘレネの二人だったからな、大きく変わった物だ。

部屋に案内され中に入ると、そこは執務室のようで皆忙しそうに働いていた、奥に父上とマデラン兄さん、それにジアールがいた。

「これはエルレイ坊ちゃま、お元気そうで何よりです」

「ジアールも元気そうだな」

「はい、まだまだ倒れる訳には行きませんからな」

ジアールはもう結構な歳だろうに、忙しくなった今休んでいる訳には行かないのだろう。

「あまり無理はしないようにな」

「エルレイ坊ちゃま、ありがとうございます」

ジアールと挨拶を交わした後父上とマデラン兄さんの下へ向かった。

「父上、マデラン兄さん、お久しぶりです」

「うむ、エルレイ元気そうで何よりだ」

「エルレイ久しぶり、連絡してくれればちゃんと出迎えたのに」

「家族ですから気を使うことは無いと思って、そのまま来ました」

「まぁそうだな、それで今日は何か用事があって来たのか?」

「はい、こちらを領内の貴族に渡して宣伝して貰いたくて来ました」

俺は紙束をマデラン兄さんに手渡した、マデラン兄さんは一枚取り残りを父上へと渡した。

「・・・武闘大会か、面白そうだな、結婚する前なら出て見たかったが今は無理だな」

マデラン兄さんは残念そうに肩を落としていた。

「ふむ、半年後か、丁度収穫期が終わった後で皆参加しやすいだろう」

父上は紙を見てうんうんと頷いていた。

「それとベッドを作ったので、使って貰えないかと思って持って来ました」

「エルレイが作ったベッドか、母さんが喜ぶだろう、二階でロルフの面倒を見ているだろうから持って行ってやってくれ」

「分かりました、では失礼しますね」

「エルレイ、もう行ってしまうのか?」

「すみません、この後ヴァルト兄さんの所にもいかないといけないので」

「そうか、今度ゆっくり遊びに来るといい」

「はい」

執務室を出ようとするとジアールが扉を開けてくれた。

「エルレイ坊ちゃま、ご案内いたします」

「ジアール、お願いするよ」

ジアールの案内の下長い廊下を歩き、二階へ上りまた廊下を歩きだす、前の家だと狭くて楽だったのだがな・・・。

「ジアール、家が大きくなって不便になったな・・・」

「そうでございますね、しかし旦那様が伯爵になられましたから、これは必要な事ですので」

ジアールはにこやかに微笑みながらそう答えた、それからしばらく歩きようやくジアールは歩みを止めた。

「大奥様、エルレイ坊ちゃまがお見えになられました」

「まぁ、エルレイ、入って頂戴」

ジアールが扉を開けて俺は室内へ入ると、母上は椅子に腰かけ孫のロルフを抱きかかえていた。

隣にはセシル姉さんも座っており、周りにはリドとヘレネが控えていた。

「母上、セシル姉さん、お久しぶりです」

「エルレイ、お帰りなさい」

「エルレイさん、お久しぶりですね」

俺は母上の傍により抱きかかえられているロルフの顔を覗き込んだ。

「ロルフも元気そうですね」

「そうなの、元気過ぎて大変なのよ」

母上はにこやかに笑ってそう答えたが全然大変そうに見えないな、むしろ大変なのを喜んでいる様だった、子供は元気なのが一番だからな。

「母上とセシル姉さんに、ルフトル王国で買ってきたお土産です」

俺はそう言って母上は手が塞がっているので目の前のテーブルに装飾品を置き、セシル姉さんには手渡しした。

「エルレイ、ありがとう」

「エルレイさん、ありがとうございます、とても綺麗ですね」

「それとベッドを作ったので試しに使って貰いたいのですが・・・」

「エルレイさんが作ったの?私使ってみたいわ、そちらに置いてもらえるかしら?」

ここはセシル姉さんの部屋だったのか、ロルフがいるからそうだろうな。

今置いてあるベッドの横に俺が作ったベッドを設置した、部屋が広いからベッドを一台置いたくらいでは問題ないな。

「エルレイ、私の部屋にも置いて頂戴、リド、案内お願いね」

「畏まりました、エルレイ様こちらです」

リドの案内で母上の部屋に行きベッドを設置して、また先程の部屋に戻って来た、ヘレネの手によってベッドメイキングを終わっておりセシル姉さんがベッドに座って感触を確認していた。

「エルレイさん、これ凄く気持ちいいわね、それに作りも綺麗、これも魔法で作ったのかしら?」

「セシル姉さん、周りの装飾は職人さんに作って貰いました、流石に魔法でその装飾は作れません」

「あらそうなのね、エルレイさんなら魔法でこれくらい作れるかと思ったわ」

セシル姉さんは笑ってそう答えた、その時ロルフが突然大声で泣きだした。

「あらあら、ロルフはお腹がすいたのかしら?」

母上があやしているが一向に泣き止む様子は無い。

「私はこれで失礼しますね」

「あらエルレイ、もっとゆっくりして行って構わないのよ?」

「母上、これからヴァルト兄さんの所にもいかないといけないので」

「そうなのね、また今度いらっしゃい」

「はい」

部屋を出てジアールの後を歩き玄関へとやって来た。

「ジアールありがとう」

「エルレイ坊ちゃま、またのお越しをお待ちしております」

ジアールに別れを連れてロゼを抱えて飛び立った、ヴァルト兄さんの所に行く訳だが連絡入れて置いた方が良いな。

『イアンナ姉さん、今よろしいでしょうか?」

『あらエルレイ君、何かしら?」

『ヴァルト兄さんに用事があって今から伺いたいのですがよろしいでしょうか?」

『えぇ構わないわよ、伝えておくわね』

『お願いします』

さて、ここからヴァルト兄さんの屋敷まではかなり離れている少し急がないといけないな。

「ロゼ、少し速度を上げるからしっかり掴まっていてくれ」

「はい、分かりました」

首に巻かれているロゼの腕に力が入ったのを確認し速度を上げた。

暫くそのまま飛び続け、ヴァルト兄さんの館が見えて来た所で速度を落とした、ヴァルト兄さんの館も父上の物と同じくらい大きく立派な庭と建物だった。

逃げ出した貴族の所有していたのをそのまま使っているから、このような立派な建物になっているのだろう。

ヴァルト兄さんは子爵だから、本来であればもう少し小さな館にしないと駄目なのだが、俺の領地として考えれば、父上とヴァルト兄さんは半分ずつ、同じ規模の領土を管理しているから妥当だとも言える。

玄関前に降り立つと連絡していただけあって、すぐさま執事が出迎えてくれた。

「エルレイ様、お待ちしておりました」

執事に案内され館の中に入り応接室へと通された。

「ヴァルト様をお呼びしますので、しばらくお待ちください」

執事はそう言って立ち去ると、入れ替わりメイドがお茶を用意してくれた。

俺はお茶を頂きながら待っていると、ヴァルト兄さんとイアンナ姉さんが部屋に入って来てソファーに座った。

イアンナ姉さんの腕の中には赤ちゃんが眠っていた。

「イアンナ姉さん、赤ちゃん生まれたんですね、おめでとうございます」

「エルレイ君ありがとう、アンジェルと言う名前で女の子よ」

「ヴァルト兄さんもおめでとうございます」

「エルレイありがとう、それで要件と言うのは?」

「はい、こちらを配下の貴族に配って貰いたくて来ました」

俺は紙束をヴァルト兄さんに渡した。

「武闘大会か、面白そうだな、俺も見に行って構わないのか?」

「えぇ、勿論来てください」

「あら女性部門もあるのね、私も出たいわね!」

「イアンナ、止めてくれ・・・」

「冗談よ、アンジェルを育てないといけないですからね」

イアンナ姉さんはヴァルト兄さんが読んでいる書類を横から見ながら楽しそうにしていた。

「イアンナ姉さんは、剣の腕が凄いのでしょうか?」

「いいえ、自分を守れる程度に習っただけよ、でもこういうお祭りには出て見たいじゃない?」

「そうですね、賭け事も出来ますのでそちらで楽しんではいかがでしょうか?」

「それも面白そうね」

「イアンナ、そんな遊びに使うお金は無いんだが・・・」

「少し位いいじゃない?」

「ヴァルト兄さん、賭け事と言っても誰が優勝するか予想するだけですし、金額も銀貨一枚程度ですので、そこまで気にする事無いですよ」

「そうなのか?」

「えぇ、庶民の娯楽ですから、大金はかけられない様にしてますよ」

「なるほどな、それで要件はこれだけなのか?」

「後はイアンナ姉さんにルフトル王国のお土産と、ベッドを作ったので持って来ました、よければ使って貰いたいのですが」

俺はお土産の装飾品をヴァルト兄さんに渡し、イアンナ姉さんに見せて貰った。

「まぁ綺麗ね、エルレイ君ありがとう」

「ルフトル王国に行ってたのか、エルレイは相変わらず大変そうだな・・・」

ヴァルト兄さんは苦笑いをしていた。

「えぇ、出来れば平穏に暮らしたいのですが、なかなかそうはいきませんね・・・」

「それでベッドだったな、そこに置いて貰って構わないぞ」

「いえ、かなり重いので部屋まで持って行った方が良いと思います」

「そうか、では部屋まで案内しよう」

ヴァルト兄さんは立ち上がり扉へ向かった、それに合わせてイアンナ姉さんも一緒に付いて来る様だった。

やはりと言うか部屋までは遠く、二階へ上がり廊下をしばらく歩きやっと部屋へと辿り着いた。

階段から上がってすぐの部屋にならないのは防犯上の理由だろうが面倒だ・・・。

ヴァルト兄さん達の部屋に通されベッドを設置した。

「ヴァルト兄さん、重いですので動かす時は六名ほどで行ってください」

「分かった、それにしてもいいベッドじゃないか、エルレイがこれを作ったのか?」

「作ったのは中だけで、外枠は職人さんに作って貰いました」

「中とは?」

「まぁ座ってみてください」

「分かった」

ヴァルト兄さんはベッドに座り感触を確かめていた、イアンナ姉さんはアンジェルを抱いているのでソファーに腰掛けていた。

「なるほど、変わった感触だな」

「はい、中に水が入っていますので堅く無いのです」

「漏れ出たりしないのか?」

「しないよう丈夫に作っていますが、万が一漏れ出た場合は連絡ください」

「わかった、エルレイありがとう」

「ではヴァルト兄さん、イアンナ姉さんこれで失礼しますね」

「エルレイ君もう帰ってしまうの?ゆっくりして行けばいいのに・・・」

「ゆっくりして行きたいのですが、ゆっくりした分だけ仕事が貯まってしまいますので・・・」

「まぁそれは大変ね」

「それは俺も同じだな・・・」

ヴァルト兄さんも忙しいだろうからな。

「では失礼しますね」

「玄関まで送って行こう」

「いえ、ここから転移して戻ります」

「そうだったな・・・」

ロゼがスッと俺の横に来たので手を取って、リアネ城の玄関へ転移で戻って来た、そこで気になっていた事を思い出しロゼを抱きかかえた。

「エルレイ様、どうしたのでしょうか?」

「少し元スラムの様子を見て見たくてね」

「承知しました」

ロゼを抱えて飛び上がり元スラムだった所へ移動し、家の前に降り立った、そこは治療したおばあさんとおじいさんの家だ。

「すみません、どなたかいらっしゃいますか?」

俺がそう声を掛けると家からおじいさんが顔を出してきた。

「これは領主様、どうかなさいましたか?」

「いえ、おばあさんの状態は良くなったのかと思ってね」

「はい、おかげさまで元気になり、食事もたくさん食べられるようになりました」

「それは良かった、少し診させて貰っていいだろうか?」

「はい、お願いします」

おじいさんは俺とロゼを快く家の中に招き入れてくれた。

部屋に入るとおばあさんはまだベッドに寝ていたが顔色はいい様だった、ずっと病気で寝ていたのだろうから、急には起きられないだろう。

「おばあさん、こんにちは、お身体の調子はいかがでしょうか?」

「はい、すっかり良くなりました、ありがとうございます」

おばあさんはそう言うとゆっくり体を起こした。

「無理をしなくて大丈夫ですよ」

「いえ、少しは体を動かさないとね、以前は体を動かすだけで痛みが走っていましたが、今は何ともないですからね」

「そうでしたか、では診て見ますので手をお貸しください」

「はい、お願いします」

俺はしゃがみこんでおばあさんの手を握ると、以前やせ細っていたが幾分ましになってきている様だった、魔力も安定しているし悪い所は無さそうだな。

「もう病気は無いようですね、食事をしっかり取って少しずつ体を動かせば元のように元気になりますよ」

「はい、ありがとうございます」

俺はおばあさんの手を離して立ち上がりおじいさんに話を聞く事にした。

「おじいさん、仕事の方は行かれましたか?」

「いや、すまない、妻の世話があるからまだ行ってない」

「そうですね、申し訳ありません」

「しかし、もうそろそろ行って見ようと思っている、妻も元気になって来た事だしな」

「えぇ、そうしてください、きちんとお金はお支払いいたしますので」

「あぁ、皆もとても喜んでいるよ、本当に掃除をするだけでお金が貰えるとは思っていなかったからな」

「掃除だけとおっしゃいますがとても大切な事なんですよ、この街の治安に関わって来ますからね」

「そうなのか?いや、確かに以前スラムを根城にしていた奴らはさっさと出て行ったからな・・・」

やはり事前に出て行ったんだな、もう少し詳しく聞いて見るか。

「おじいさんは出て行った人たちの事を知っているのですか?」

「ん?まぁスラムの住人で知らない奴はいないだろう、窃盗、殺人、人攫い、何でもやっていた奴らだからな、スラムの住人なら恐れて誰も近寄らなかったものだな」

「そうだったのですね、その人達はスラムを出てどこに行ったのでしょう?」

「さぁな、この街のどこかにある隠れ家か、それとも街を出て行ったかは分からない」

「そうですか、出て行ってくれたのなら嬉しいですが、まだこの街にいるとなると厄介ですね・・・」

「まぁ奴らも領主様の凄い魔法を見たり聞いたりして、きっと逃げ出してますよ」

おじいさんはそう言って笑っていた。

「そう願います、ではおじいさん、おばあさん、お邪魔しました」

「ありがとうございました」

「領主様、ありがとうございました」

二人に別れを告げ、ロゼの手を取り転移で警備隊の詰め所へやって来た、トリステンがいればいいが・・・。

中に入りトリステンの居場所を聞くと、奥にいるとの事だったのでそのまま奥の部屋まで行った。

「トリステン、邪魔をする」

「エルレイ様、急用でしょうか?」

「いや、特に急ぎでは無いのだが、用事があって元スラムに寄って来たんだよ」

「エルレイ様・・・」

トリステンは俺が元スラムの場所に行った事が気に入らなかったのか、絶句していた。

「ロゼさんも一緒の様ですが、行く前に声を掛けて貰いたかったですね」

「すまなかった、急に思いついて行ったからな、アドルフには黙っていてくれると助かる・・・」

「はぁ、分かりました、それでどの様な用件で行ったのでしょうか?」

「治療したおばあさんのその後の容体が気になって診て来た」

「それならば私に言ってくれれば代わりに診て来たのですが・・・まぁいいでしょう」

「それで、そこのおじいさんから情報を得て来てな、トリステンの方でも知っていると思うが、スラムを根城にしていた悪党の件だ」

「はい、それは存じております、アイロス王国の時から頭の痛い問題でしたからね」

「それでおじいさんが言うには、この街の隠れ家にいるか出て行ったかと言う事だったが、隠れ家の情報はあったりするのだろうか?」

「流石に無いですね、あれば叩きに行きたいのですが、奴らは狡猾で誰が首謀者なのかも分かりません」

「そうか、しかしそう言う奴らは素直にこの街を出て行くとは思えない、何らかの報復措置があるだろうから注意しておいてくれ」

「そうなのでしょうか?」

「あぁ、この街を根城にしていたという事はお金を稼げる土台がある訳だ、それを簡単に手放すとは思えないからな」

「なるほど、承知しました」

「しかし、いきなり派手に動いて来ないだろう、狡猾な奴らだとしたら徐々にこちらの隙に入り込めないか探って来るはずだ、それをこちらが逃さなければ、捕まえる事は出来なくても出て行ってくれるだろう」

「分かりました、しかし、なぜエルレイ様はその様な事が分かるのでしょうか?」

トリステンが首を傾げて俺を見て来た、確かに子供がこのような考えを持っている事はおかしいのかもしれない・・・。

「それはあれだ、自分が悪党の立場になって考えれば分かる事だ!」

少々苦しい言い訳だろうか・・・トリステンも考えている様だった。

「悪党にですか・・・確かに自分の縄張りを荒らされたら、やり返したいと思いますね・・・」

「そうだろう!」

「では、何かあったらエルレイ様にもお知らせしますね」

「よろしく頼む、では失礼するよ」

「はい」

何とか誤魔化せたようだから、さっさと帰る事にしよう、ロゼと共に警備隊の詰め所から出てリアネ城の玄関に転移した。

アドルフに報告を済ませ部屋に戻ると、皆もソファーで寛いでいる所だった。

「リリー、さっきおばあさんの容体を診て来たけど、元気になっていたよ」

「そうなのですね、とてもよかったです」

「それは良かったのじゃ」

リリーとロレーナはは自分の事のように喜んでいた。

「エルレイ、まさか一人で行ってきたの?」

「いや、ロゼと行って来たぞ?」

「同じ事じゃない、教えてくれれば私も付いて行ってあげたのに!」

ルリアは連れて行かなかった事でお怒りのご様子。

「大勢で押しかけてもおばあさんに迷惑が掛かるかと思ってね・・・」

「そうかも知れないけど・・・」

ルリアは渋々納得してくれた様だ・・・。

「エルたちばかり楽しい事しおってからに・・・」

「そうよ、お姉ちゃん達をずっと留守番させて酷いんだから!」

今度はヘルミーネとアルティナ姉さんがお怒りだ・・・一難去ってまた一難。

確かに子供達の教育を任せてから、ずっとリアネ城に籠っているからな・・・しかし二人は本来王女と伯爵令嬢だから、出歩か無いのが普通だと思うが、今更そう言う言い訳は通用しないよな・・・。

何とか切り抜けられ無いか知恵を絞る・・・。

「そうだ!子供達の教育はどのくらい進んだのだろうか?」

「エル、露骨に話を逸らすのはどうかと思うぞ・・・」

「そうよ、お姉ちゃん騙されないんだから、今度どこか連れて行きなさいよ」

見事に失敗しました・・・しかしどこかに連れて行くとはそう簡単な事では無いよな・・・。

「そうだな、今日父上の所とヴァルト兄さんの所に行ったのだが、どちらの家にも可愛い赤ちゃんが生まれていて、それを見に行くと言うのはどうだろう?」

「「・・・・・・」」

二人とも沈黙したままだった、お気に召さなかった様ですね・・・。

「では、ルフトル王国に遊びに行くと言うのは?」

「「・・・・・・」」

駄目ですか・・・何処に行きたいのか大体わかっているけど危険だし、またアドルフに迷惑をかける事になるからな。

「言っておくが、街には当分行く事は出来ないからな?」

「何故なのだ!」

「なんでよ~」

二人は猛烈に抗議をして来た。

「スラムを綺麗にした事は知っているだろ?その事で今までそこにいた悪い人達が街に出ているから、俺達が出歩く訳には行かないんだよ」

「そんな奴ら私がやっつけてやるのだ!」

「そうよ、お姉ちゃんがやっつけてやるわ!」

逆に焚きつけてしまったか・・・俺達が出歩けば悪人が出てくる可能性はあるが、皆を危険に晒したくはない、それにアドルフはトリステンが絶対許してくれないだろう・・・。

「悪い人達が襲ってきたらやり返す事は出来るが、街の人達に被害が及ぶかも知れない、そんな事は許されないから、今の時期に街に出歩く事は禁止です!」

「むぅ・・・」

「そうだけど・・・」

俺が強く言うと二人は観念したのか黙り込んでしまった、しかしどこかに連れて出かけないといけないな。

頭を悩ませているとロゼが意見を言って来た。

「エルレイ様、川に昼食を食べに行くと言うのはどうでしょう?」

それは以前アイロス王国が攻めて来た時、ルリア、リリー、リゼ、ロゼの五人で昼食を摂った事があったな、確かにあれば楽しいし外での食事は美味しく感じられる。

それに昼食なら子供達の教育を中断する必要も無いからいい考えだ。

「それはいいな、二人共構わないだろうか?」

「・・・わかったのだ」

「しょうがないわね、それで手を打ちましょう」

「では、明日の昼食は皆で川に食べに行く事にしよう、ロゼ、準備をお願いする」

「畏まりました」


翌日アドルフに許可を得て領内の川へ昼食を食べに皆と来ていた、川は道路作った時に橋を作った場所で、景観が良い所を選んだ。

しかしアドルフはこうやって郊外に来る許可はすんなり出してくれるのだが、街へ出かける許可は出してくれないだろう、どちらが危険かと聞かれれば確かに街の方が危険だが、郊外に危険が無いかと言えばそうでもないと思うのだが、解せぬ・・・。

一緒に子供達も来ているが、こう言うのは人数が多いほど楽しい物だからな、俺は早速川辺にテーブルと椅子に日除けを作って設置した、そこにロゼがテーブルクロスを張りリゼとラウラが持参した食べ物をお皿に分けて並べて行き、最後にリゼがお茶を入れて準備が整った。

「では頂きます」

「「「頂きます」」」

川から聞こえてくるせせらぎの音と、涼しい風を感じながらの食事はとても美味しく感じられる。

「エルレイ、こうやって川辺で食事をするのは久しぶりだけど、良い物ね」

ルリアが珍しく笑みを浮かべながら食事をしていた、ルリアは公爵令嬢なだけあって厳しく躾けられたのか、いつも食事の時は微笑む事はあっても笑みを浮かべながら食べることは無い。

リリーは王女だからだろう、いつも笑みを浮かべて食事をしている。

「エルレイさん、外での食事は気持ちいいですね」

「そうじゃな、いつもと同じ食事なのに美味しいと思うのじゃ」

ロレーナも満面の笑みを浮かべて食事をしている。

「そう言えば、ロレーナはこっちの食事には慣れたのだろうか?」

「大丈夫なのじゃ、美味しく頂いているのじゃ」

「それは良かった」

「エル、こういう場所で食べるのは初めてだが美味しい物だな」

「お姉ちゃん、エルレイの隣ならもっと美味しかったと思うのだけど・・・」

ヘルミーネは満足して貰えたようだな、これでまたどこかに連れて行けとは言われないだろう。

アルティナ姉さんは放置しておいて構わないだろう・・・隣に座らせたらお姉ちゃんが食べさせてあげる、とか言って来るから遠ざけたのだ、食べさせて貰うのは嬉しいのだが、それをやると皆から同じことを言われるだろうからな・・・。

ちなみに俺の両隣にはルリアとリリーが座っている、この二人なら特に俺に何かしてくることは無いし、皆も納得してくれる。

ヘルミーネはラウラと仲良く食事をしているので問題は無い、リゼはこの前手を繋いでから仲良くなったのか、ロレーナと楽しそうに食事をしている。

ロゼも皆の食事の光景を珍しく微笑んで楽しそうに見ている。

ふむ、しかし子供達はやけに静かだな、以前はもっと騒がしかったと思ったのだが・・・。

「エリオット、食事は美味しくなかったのだろうか?」

「エルレイ・・・いえ、エルレイ様、その様な事はございません、美味しく頂いております」

エリオットの話し方が妙に礼儀正しくなっているな、そう言えば皆の食べ方も行儀良くなっている、これは三人の先生による教育の賜物なのだろう。

ラウラはそんな子供達の言動を見て微笑んでいる様だ。

俺としては読み書きに計算が出来る様になれば、どこでも働けるようになるからそれでいいと思っていたのだが、ラウラに頼んだから礼儀作法まで教えたのだろう、悪い事では無いから構わないか。

となると、もう既に読み書きに計算は出来る様になったという事なのだろうか?

「ラウラ、子供達の教育はどの辺りまで終わっているのだろうか?」

「はい、皆さん優秀で大方終わっております、もうすぐ教えることは無くなりそうですね」

「そうなのか、それならば仕事先を見つけてやらないといけないな・・・」

意外と早かったな、それだけラウラの教えが良かったのだろう、仕事先でいい所があればいいが、アドルフに相談してみるか・・・。

「エルレイ様、仕事先はアドルフさんと相談して決めておりますので、ご心配無用です」

「分かった、出来れば子供達の希望に沿った形にしてやって欲しい」

「承知しました」

「エルレイ、心配しなくても大丈夫よ、お姉ちゃんがちゃんと働ける様に教育したからね、そうよね皆!」

アルティナ姉さんがそう言うと子供達は勢い良く頷いていた、どうやら子供達はアルティナ姉さんに逆らえない様だな・・・。

「うむ、私も教えたから大丈夫だぞ」

ヘルミーネも自信満々といった感じだ。

子供達の仕事先に関しては、アドルフに相談しているという事だし心配しなくていいかな、俺が世話するにしてもアドルフに相談するだけだしな。

昼食も終わり、食後のお茶を楽しみながら皆とまったり過ごしている。

ヘルミーネとロレーナは子供達と共に川で遊んでいる、リゼとラウラが監視している様だから大丈夫だろう。

このままここで昼寝なんかして、何も考えずぼーっとして過ごせたらどんなに楽だろう・・・。

アドルフ達が頑張っているのにそう言う訳には行かないよな・・・俺は気合を入れて立ち上がり、リアネ城へ帰る事にした。

「エルレイ、もう帰るのかしら?」

立ち上がった俺を見てルリアはそう言って来た。

「あぁ、余りゆっくりしていられないからな」

「まぁそうよね・・・」

「はい、帰りましょうか」

ルリアとリリーも立ち上がり帰る準備をする、と言ってもロゼがカップを片付けているのを手伝う程度だが・・・カップの片付けを終えテーブルクロスを仕舞って終了だ。

「ヘルミーネ、ロレーナ、帰るぞ!!」

大声で呼ぶと皆戻って来てくれた。

「もう帰るのか?」

ヘルミーネがもっと遊びたそうにそう言って来た、ヘルミーネにしてみれば、こういう機会はめったにない事だからもっと遊びたいのだろうがそう言う訳にも行かない、またこの様な時間を作ってあげないといけないだろう。

「ヘルミーネ、すまない、もっと遊ばせてやりたいが仕事があるからな、我慢してくれ」

「うむ、エルが忙しいのは知っている、帰るとしよう」

ヘルミーネはニコッと笑って手を繋いで来た、明らかに無理に笑っているのがまる分かりだが、ヘルミーネが我慢してくれているのを指摘する必要はあるまい。

「皆も手を繋いでくれ」

ヘルミーネに続いて皆も手を繋ぎ、全員繋いでいるのを確認してリアネ城の玄関に戻って来た。

皆とはそこで別れ俺は執務室へ向かい仕事をする事となった。


数日間は平穏に過ぎ、朝食の後執務室へ向かっているとトリステンから連絡が入った。

『エルレイ様、問題が発生しました』

『そうか、それで内容は?』

『はい、清掃作業の受付をしている所に、十数名の男が押しかけ仕事を寄こせと言って来ているそうです』

『分かった、俺もそこへ向かう、トリステンは男たちを逃がさない様、警備隊の人数を増やしてくれ』

『はい、もう既に送っております』

『それなら後は、ニーナも現場に寄こしてくれ』

『ニーナをですか?』

『ニーナには騒動を見学している奴らを見張らせてくれ、きっとその情報を持ち帰る奴がいるはずだ、それとニーナには追跡と場所の確認だけさせてくれ、襲撃する必要は無い』

『なるほど、分かりました』

「ロゼ、街で問題が発生した様で今からそこに向かう」

「分かりました、アドルフさんに連絡は致しましたか?」

「して無いが、した方が良いだろうか?」

「文句を言われる前にしておいた方が賢明かと思います」

「それもそうか」

俺は玄関を出てロゼを抱えて飛び上がってからアドルフに連絡を入れた、行く前だとアドルフも着いて来ると言うだろうからな・・・。

『アドルフ、トリステンから街で問題が起こっていると連絡を受け、今そこに向かっている』

『エルレイ様・・・そう言う事は向かう前に言って欲しい物です』

『そう言う事だから、詳細は後で報告する』

『承知しました、くれぐれも気をつけて下さいませ』

『分かった』

アドルフから後で小言を言われるだろうが、まぁいつもの事だ、気にするまい。

清掃作業の受付は元スラムの入り口で行われている、俺はその上空まで行き周囲を確認する。

警備隊の周りに詰め寄る人達に、それを周りで見物している人達がいるな、トリステンも到着している様だ、俺はトリステンの隣に降り立ちロゼを下ろした。

「俺達にも仕事を寄こせと言っているだけだ!」

「ですから、ここの住人以外には仕事の斡旋は受け付けていないと言ってるのですよ!」

警備隊と詰め寄っている男たちのやり取りが聞こえて来る。

「トリステン、ずっとこのような状態なのか?」

「はい、一向に帰る気配はありませんね」

『ニーナは来ているのか?』

『はい、警備隊の装備を外して群衆に紛れております』

『分かった、ニーナには無理をしないよう言ってくれ、危なくなったら身体強化を使ってでも逃げる様にな』

『畏まりました』

俺は言い争っている所に出向き、男達を見回して大声で宣言した。

「俺はエルレイ・フォン・アリクレット侯爵、この街の領主だ!お前たちは何が望みだ!」

一瞬静まり返り、男たちの中からリーダーだと思われる人物が俺の前にやって来た。

「領主様、俺達は元々ここの住人でな、俺達にも家と仕事を寄こしてくれるとありがてぇんだが?」

男は俺を睨みつけてそう言って来た、俺も睨み返しながら反論した。

「お前達は家も仕事も必要無いから出て行ったんじゃないのか?」

「そうじゃねぇよ、俺達は領主様の言葉がちょーっと信じられなくて逃げ出していただけなんだよ、なぁそうだろう?」

「「「そうだ、そうだー!」」」

男は後ろにいる男達にけしかけ数で俺を威圧したいのだろう、そう言う意図は分かっているから動じないが、悪党ってのは群れないと威張れないんだな・・・。

こいつらは捕まえた所で何も知らない小者だな・・・。

「そうか、お前達は俺から逃げないといけない犯罪者なのだな?」

「まさか、俺達はこの街の善良な住民だぜ!」

「分かった、それならお前達にも家と仕事を与えよう、そうだな、ラウニスカ王国との国境辺りに家を建て、そこで農業をして貰おうか」

俺がそう言うと男達は怒った様で、声を上げて俺に文句を言って来た。

「ふざけんじゃねーよ、俺達はこの街の住人だって言ってるだろ!この街に家を作ってくれよ!」

「残念だが、家を建てる場所が無い、諦めてくれ」

「あるだろうーがよ!、貴族様が住んでた場所に沢山空いているだろーがよ!」

なるほど、こいつらに入れ知恵をした者はその辺りの事情にも詳しい奴か・・・。

「そうか、そこに建ててやってもいいが、税金はそうだな・・・一月金貨五十枚って所だな」

「そんなの払える訳ねーだろ!!ふざけるのもたいがいにしろよ!!」

「ふざけて無いぞ、お前達が知らないだけであの場所に住むのはそれなりにお金がかかる物だぞ」

実際お金がかかるのかは俺も知らないが、アイロス王国があった頃、あの場所に別荘を建て維持するにはそれなりにお金がかかる物だっただろう。

今となってはどうでもいい事だ、そう言えば俺もソートマスの王都に別荘とか必要だったりするのだろうか?

転移があるから俺的には全く必要が無い物だが、貴族とは面子を気にする物らしいからな・・・必要ならアドルフが何か言って来るだろう。

等と関係ない事を考えていたら、男達は俺と話しても無駄だと思ったのか引き上げようとしていた。

「家も仕事も貰えねーのなら俺達は帰るぜ!領主様またな!」

「お前達は馬鹿か!これだけ騒ぎを起こして無事帰られる訳が無いだろう?トリステン!」

「はい、もう既に取り囲んでおります」

「そう言う訳だ、大人しくするんだな!」

俺がそう言うと男達は周囲を確認し、自分たちが包囲されている事にようやく気が付いた様だ、俺も単に無駄話をしていた訳では無い、包囲が完了するまでの時間稼ぎをしていただけなのだ、それと街の住人に対して悪人は許さないと言う見せしめという意味合いもある。

「ちっ!お前ら領主をやっつけてしまえ!!」

まぁそう来るよな、こっちは子供だから狙いやすい、ロゼがスッと俺の前に出て俺を守ろうとするが、それは必要ない事だろう。

何故ならトリステンは剣を抜き、男達に警備隊と一斉に斬りかかっていたからだ。

「ロゼ、ここはトリステンに任せよう」

「はい、私が出る必要はありませんね」

ロゼは現状を見てそう言ったが警戒は解いていない様だった。

戦闘はあっという間に終わり、全員取り押さえられていた、警備隊と悪党に使い捨てにされる下っ端とでは元々話にならないからな。

「エルレイ様、終わりました」

「何も知らないだろうが、一応こいつらから話を聞き出してくれ」

「承知しました」

『それと、ニーナが怪しい者の追跡を開始したようです』

『分かった、ニーナが戻ったら知らせてくれ、俺は城に戻りアドルフに報告して来る』

『承知しました』

「ロゼ、リアネ城へ戻るとしよう」

「はい」

ロゼの手を取り転移でリアネ城の玄関へと戻り、そのまま執務室へ向かった、部屋に入り席に座る、隣には当然の様にロゼも座っていた。

アドルフも俺の前にやって来て席に座る。

「エルレイ様、ご説明をお願いいたします」

アドルフの表情はいつも通りだが、声が怒っているように聞こえた・・・。

「アドルフも薄々は気付いているだろうが、スラムから逃げ出した悪党共が、家と仕事を寄こせと騒いでいるのを鎮めて来た」

「やはりそうでしたか、それで捕まえたのでしょうか?」

「全員トリステンが確保した、今頃警備隊の詰め所まで連行されている事だろう」

「それはようございました、しかしそいつらから情報を引き出せますでしょうか?」

「無理だろうな、それに関しては別の手を打ってある、今ニーナが現場から立ち去った怪しい者の追跡をしている、上手く首謀者の所に案内してくれるといいのだが・・・」

「そうでしたか、その情報が手に入れば後は私の仕事でしょうか?」

「その通りだ、トリステンから連絡が来たらアドルフも一緒に来てくれ」

「畏まりました」

首謀者の居場所が分かってそいつを捕まえたとしても、何も知らないと言われればどうする事も出来ない、確実に捕まえるには悪事をしていると言う証拠が必要だ、それを集めるのはアドルフの得意分野だろう、何せヴァイスさんの息子だからな。

俺はトリステンからの連絡を待つ間書類を片付けて行く、暫くしてトリステンからの連絡を受け、ロゼとアドルフと共に警備隊の詰め所にやって来て、そのまま奥のトリステンの部屋へと入った。

「エルレイ様、お待ちしておりました」

部屋の中にはトリステンとニーナが俺達の到着を待っていた。

「それで何か掴めたのだろうか?」

「それはニーナからお話致します」

話を振られたニーナは私が!といった感じで驚いていたが渋々話し始めた。

「あたいが怪しいと思った人物は、騒ぎが終わると急いでその場を離れて行ったさね、そしてそいつが向かった先は商店街にあるカラヤン商会って店だったよ」

「「カラヤン商会!」」

アドルフとトリステンは店の名前を聞いて驚いていた。

「トリステン、知っているのか?」

「はい、アイロス王国時には王城にも商品を納めておりました、この街では大店ですね」

「それは現在も同じで、城に商品を納入して貰っています」

なるほど、表で商会を営みながら陰で悪事に手を染めている訳か、いや、まだそうだと決まったわけでは無いな、決めつけてかかるのは視野を狭めてしまうだろう。

しかし、そうだとすると貴族街の土地が空いている事は知っていて当然だな・・・。

「商品の納入はカラヤン商会だけなのか?」

「いえ、ブランティエ商会と半々と言った所です」

「商品の納入を取りやめた方がよろしいでしょうか?」

「いや、今はまだ確証が取れていない段階だ、急に取りやめては相手に警戒されてしまうだろう?」

「そうですね」

「それで、私達はカラヤン商会を警備した方がよろしいのでしょうか?」

「アドルフ、どうなのだ?」

「いえ、警備は不要です、ですがニーナさんを貸して頂けないでしょうか?」

「あたいを?!」

「それは構いませんが、使い捨てにはしないで下さい」

ニーナは指名されて困惑していた、トリステンはアドルフを睨みつけニーナの安全の確認をお願いしていた、トリステンらしいな。

「それは勿論、そんな事をしてはエルレイ様に私が殺されてしまいます」

「まぁ殺しはしないが、部下を大切にしない奴は必要では無いな」

「それなら、ニーナをお貸しいたします」

ニーナを差し置いてアドルフに貸し出す事が決定してしまった、ニーナはと言えばため息をつき諦めた様子だった。

「はぁ、それで、あたいは何をすればいいのさね?」

「それは後程念話でお伝えいたします、まずはこちらで情報を集めてから動いて頂きますので」

「分かったよ」

「俺達は戻ろうか、トリステン、捕まえたやつらの取り調べが終わったらアドルフに報告してくれ」

「承知しました」

俺達は執務室へ戻り、俺はまた書類を片付ける仕事に移った。

ここから先俺にはどうする事も出来ないからな、アドルフに任せておけば何とかしてくれるだろう、俺が必要ならその時頑張ばいいだけだな。


≪カラヤン商会視点≫

わしはカラヤン商会の店主ハンネマンじゃ、長年アイロス王国で王族、貴族相手の商売をしてきておった。

これまで順調じゃった商売も、アイロス王国の敗北によって多くの貴族がこの地を離れて行ったことにより下火になってしもうた。

しかしそれは時代の流れじゃと思い、新しく来た領主と貴族相手に細々とやって行くしか無いのじゃ。

まぁ裏の商売の方がはるかに重要じゃからの、裏の商売は簡単に行ってしまえば奴隷商じゃ。

アイロス王国、ソートマス王国共に奴隷は禁止されておるから表立って出来ないだけで、ちゃんとした商売じゃとわしは思うておる。

現に奴隷を欲しがるものは、貴族や娼館等いくらでもおるからの、その中で一番のお得意様はラウニスカ王国じゃ。

あの国は子供なら高値でいくらでも買ってくれる、アイロス王国とソートマス王国の戦争は稼ぎ時じゃったのだが、王国軍が降参したため兵士が死ぬ事無く戦災孤児もほとんどいなく儲け損ねた。

その分は逃がしてやると言って、貴族の子供達をアイロス王国に売りつけたからまぁよい。

新しい領主だがまだ子供だという事じゃ、それは良くある事で、大方上の貴族の傀儡じゃろう、そう思うておったが道や畑を魔法で作り上げた時は驚いた。

戦争の時に敵側に凄腕の魔法使いがおると言う噂話は耳にしておった、しかしそれは軍が敗北の理由にでっち上げたものだと思っておったのじゃが、どうやら本当の事だったのじゃな。

それは商売人からするととても喜ばしい事じゃった、真っすぐで広い道が出来ておったのじゃからな。

しかし喜んでばかりはおられなかった、その領主何を考えているのか、スラムの孤児たちをさらっていきおったのじゃ。

そいつらはわしの大事な売り物なのだ、死ぬ間際まで腹を空かせた奴らに餌をやると、喜んでわしの言う事を聞き売られていくからの。

その領主、孤児たちをさらうだけでは飽き足らず、スラムその物を無くしてしまったのじゃ。

スラムはわしの商品を仕入れる大事な場所じゃったのだから、わしは怒りを覚え領主を亡き者にしようと、ラウニスカ王国に暗殺を依頼したのじゃが、戦争が激しく今それどころでは無いと断られてしもうた。

仕方なくわしは子飼いを使い、嫌がらせをして相手の出方を見極める事にしたのじゃ、結果は嫌がらせは失敗に終わり、全員掴まったと報告を受けたのじゃ。

どうやら領主はわしの思ってる以上に出来る様じゃの、となればこの地で商売を続ける理由は無い、幸い今まで貯め込んだ金はたんまりあるからの。

ルフトル王国かリースレイア王国辺りで新たに商売を始める事にするかの、しかし今すぐ出て行くと怪しまれるから、半年後に予定されている武闘大会で旅費を稼がせて貰ってからでも遅くはあるまい。

店は裏の仕事を知らない部下に任せて置けばうまくやるじゃろう。

わしはゆっくり新しい商売先でも見つける事にするかの・・・。


≪ニーナ視点≫

トリステンの命令を受けあたいは装備を外し、顔もむき出しのまま恥ずかしい思いをして群衆の様子を伺っていたのさね。

騒動がトリステン達の手によって押さえ込まれた時、誰よりも早く群衆を抜け移動を開始する者がいたのを見つけ、長年の感であいつが怪しいと思い追跡したのさね。

感と言うのは馬鹿に出来ない、あたいは暗殺者として自分の感を信じて生き抜いて来たさね。

まぁその感も、リゼに敗北した事によって見事に打ち砕かれた訳だけど、それでもあたいは信じたいと思うさね。

追跡している相手は時折後ろを振り返り、誰かつけてきていないか確認していた、それにわざと遠回りしていたみたいで長い事歩きようやく一つの店に入って行ったのさね。

カラヤン商会・・・あたいはその名前を覚えトリステンの下へ戻ったのさね。

どういう訳かアドルフに使われる事になった、その事はまぁいい、あたいはトリステンに使われている身だが、正確にはエルレイ様に捕らえられて今の状況になっている訳だからね。

暫くアドルフから連絡待ちをしていたが一向に無く、それならそれであたいは構わないと思っていた所に連絡が来たさね。

今夜カラヤン商会に盗みに入るとの事だったさ、襲撃では無く盗みに入ると言う事で、あたいは驚いたさね。

深夜、あたいは以前の衣装に身を包み、月明かりの無い路地に身を潜めていたさね。

久しく感じていなかった懐かしい感じさね、以前のあたいは夜が主な活動時間だったからね。

アドルフに与えられたあたいの仕事は、カラヤン商会に忍び込み、中から表の扉の鍵を開けるだけだったのさね。

中にいる住人は殺してはいけないと厳命された、あたいとしては殺した方がはるかに楽なのだけど、意識を刈り取り拘束しておけと言われたからには面倒でもそうするしかないさね。

窓から音を立てずに屋敷内に侵入する、何度もやって来た事だから楽な物さね。

屋敷内は静まり返っていたけど一つの部屋から明かりが漏れて来ていたね、あたいは明かりが漏れている扉に近づき隙間から中の様子を伺ったさ。

中には四人の腰に剣を下げた男が酒を酌み交わし談笑していて、扉に鍵は掛かっていない、あたいは身体強化を使い一気に中に入り込み四人の男をナイフの柄で殴り意識を刈り取って行ったさ、一発で上手くいかなかったから何発か殴ったが、死にはしていないだろうさね。

殺さない事で多少てこずってしまったけど、うまく行ってよかったさね。

値は倒れている男達を縛り上げ、起きても騒がれない様さるぐつわも噛ませて完成さね。

後は表の扉の鍵を開けてあたいの仕事は終わりさね。

『アドルフ、鍵を開けたさね』

『ニーナさん、ありがとうございます』

アドルフに連絡をするとすぐ扉が開き、全身黒ずくめのアドルフと部下十人ほどが入って来たさね。

「ここの様ですね」

アドルフは先程あたいが四人の男を縛り上げた部屋に入り、すぐさま地下に続く隠し扉を発見したのには驚いたさね。

この短期間で隠し扉の位置を探り当てるとは、以前のあたいでも無理な事さね。

「ニーナさんはここを見張っていてください」

アドルフはそう言うと部下と共に地下に入って行き、暫くすると中から金貨が入っていると思われる箱を運び出して来たね。

それは次々と運び出されていき、外に待機している馬車へと積み込まれていったさね。

十分ほどで全て運び出したようで、アドルフが地下から出てきたさね。

「ニーナさん、帰りましょうか」

その言葉はとても盗みから逃げ帰るのとは違い、いつもと変わらない様子だったさね。

あたいは慌ててアドルフの後を付けて屋敷を出たさね。

「ニーナさん、少し狭いですが乗って下さい」

あたいは馬車の一番後ろに座り、追手が来ないか見張る事になったのさね。

馬車は街を抜け貴族街に入り城に向かうのかと思いきや、一軒の大きな屋敷へと入って行ったさね。

「ニーナさん、ありがとうございました」

アドルフはあたいにそう言うと部下に屋敷の中に箱を運び込むよう指示を出していた、あたいの仕事は終わった様だからさっさと帰って寝る事にしたさね。


≪カラヤン商会視点≫

「旦那様!大変です起きてください!」

部下に朝から大声で叩き起こされた。

「なんじゃ、やかましい!」

「旦那様大変です、地下の金庫からお金が全て盗まれました!」

「なんじゃと!!」

わしは飛び起き、着替えもせず一階に降り地下の隠し扉ががある部屋に飛び込んだ!

そこには縛られた部下が転がっており、地下への扉も開いたままになっておった。

わしは地下に駆け下り金庫の前にやってくると、鍵のかかった扉は開かれ中には何もなかった、わしは愕然とし、膝と両手をついてしまった、そこで冷静になる事が出来た。

「まだ盗んだ奴は遠くに行っておらん筈じゃ、絶対に探しだせ!!」

「はい!!」

まだ夜が明けて間もないはずじゃ、となれば街に出入りする城門は開かれていないはずじゃ、あれだけの金貨を運んでいるからには馬車の速度も出ないはずじゃ。

地下を出て部下に次々と指示を出し街中を探させた!街の警備隊に頼る訳にはいかん、あの金は裏の商売で稼いできた金で、もし警備隊に発見されてはどうやって稼いで来たのか追及されかねん!

懸命に探させたが、城門から出て行った馬車に金貨を積んだ形跡を見つける事は出来なかった、となればまだ盗んだ者はこの街にいるはずじゃ、街中の宿屋に警備隊にもそれとなく夜間怪しい者や馬車を見かけなかったか聞いたのじゃが、何も見ていないとの事だった。

悪い事は続く様で、城に商品の納入に行っていた者が慌てて店に帰って来て、商品の納入を断られたと言ってきおったのじゃ。

金を盗まれた上に城に商品の納入が出来なくなっては食うに困ってしまう、わしは慌てて城に駆け込んだのじゃ。

「この度カラヤン商会の商品の納入を断られたのはどの様な理由があっての事でしょうか?」

わしは必死の思いで対応に当たった執事から理由を聞き出そうとしたのじゃ。

「ブランティエ商会の方から全て納入するとお安くすると言われ、そちらにお任せする事にした次第です」

何じゃと、今までブランティエ商会とは半々でと秘密裏に約束しておったのに、裏切りおってからに!!

しかし、そうなればこちらが更に安くすれば済む話だ、儲けは少なくなるが全部なくなるよりましじゃ。

「ではブランティエ商会よりお安く提供いたしましょう」

「それはありがたいですね、では金額はこれくらいでよろしいですかね?」

執事から提示された金額を見てわしは怒りを覚えた!しかしここで表情に出しては元も子もない。

その金額はほぼ原価に近く、儲けはほぼ無いに等しい、いや従業員の給与を考えると赤字じゃ。

「流石にこの金額ですと即答しかねます」

「そうですね、では一日お待ちしましょう、良いお答えを期待しております」

執事はそう言うと去って行ってしまった。

わしは帰り道対策を必死に考える、このままではわしが路頭に迷うてしまう、兎に角盗まれた金を取り戻す事が先決じゃ。

しかし、それが出来なかった場合何としても城に商品の納入して暫く食い繋がなくてはならんのじゃ、だがあの値段ではそれも無理。

だとすると邪魔なブランティエ商会を潰すしかないのじゃ!

猶予は今夜のみ、わしは部下に指示を出しブランティエ商会を襲撃する事にしたのじゃ。

わしはその日の夜、眠る事も出来ず部下の報告を待っておった、深夜部下が慌てて戻って来て襲撃は失敗したと報告を受けたのじゃ。

ブランティエ商会に向かう際、警備兵に発見され全員掴まったとの事じゃ・・・わしは目の前が真っ暗になり意識を失ってしまった。

翌朝目を覚まし、少しでも商品の納入をして貰おうと再び城へと向かった、昨日提示された金額では流石に無理じゃがもう少し上乗せした金額なら何とかなるじゃろう、いや何とかしなければならんのじゃ!

そう思い城に着いた馬車から降り立った・・・。


≪エルレイ視点≫

俺は執務室でアドルフよりカラヤン商会の報告を受けていた。

結果は黒で、裏でスラムを牛耳っていたのは間違いないとの事だった。

何でも喜んで馬車に乗り込み、この街から出て行く子供達を警備隊は何度も目撃していたとの事、そして、その子供達は二度とこの街に戻って来る事は無いのだと。

今まで無理やり連れ去っている訳では無いので、気に留めた事も無かったそうだ。

普通その時点で可笑しいと気が付きそうだが、城門に勤務する兵士達は買収されていた様だ。

「それで、カラヤン商会を俺が襲撃すればいいのか?」

「いえ、その様な危険な事は必要御座いません、すでに手は打っております、明日には決着が付くでしょう」

「どの様な手を使ったのだ?」

「それは秘密でございます」

アドルフは涼しげな表情でそう言い放った。

「俺にも話せない様な事をしたのか?」

「そうですね、明日全てが終わった後お話致します」

アドルフは珍しく楽しそうに笑っていた、それなら俺も明日どの様な決着が付くのか楽しみに待つ事にしよう。

翌日、アドルフとリゼと共にリアネ城の玄関へとやって来ていた、ロゼとの約束の期間を終え、やっとリゼが俺の傍にいられることをとても喜んでいた。

そこに一台の馬車がやって来て一人の男性が降りて来た、男性は少し小太り気味の四十歳位で、平民にしてはいい服を着ていた。

「これは領主様自らお出迎え頂けるとは、恐悦至極にございます」

男はにこやかな表情でそう述べた。

「別にお前を待っていた訳では無い、それにおまえは誰だ?」

「これは大変失礼いたしました、私はカラヤン商会のハンネマンと申します、以後お見知りおきを」

ハンネマンがそう言った所で別の馬車が来て止まり、中からトリステンとニーナが降りて来て、執事数人も加わり荷台の中身を下ろし始めた。

それを見てハンネマンが驚きの表情を見せた。

「領主様、あれはいったいどうやって手に入れたのでしょう!」

「知らないが?アドルフは知っているのか?」

「はい、盗賊を捕らえた際、その隠れ家にあった物の様です」

アドルフがそう言うとハンネマンは顔をしかめていた。

「領主様、あれは先日我が家から盗まれた物が一部が含まれている様でして・・・」

「アドルフ、そうなのか?」

「さぁ分かりません、捕らえた者の証言にカラヤン商会を襲ったとの報告は受けておりません」

「そんなはずはありません!きっとその盗賊が嘘をついているのです!」

「その事は調べればわかる事だろう、それでお前が盗まれた物はどれくらいの量なのだ?」

「はん・・・いえ、三分の一程度です」

「分かった、確証が取れ次第返却する事にしよう」

「領主様、ありがとうございます」

トリステンとニーナは荷物を下ろし終えるとこちらへやって来た。

「エルレイ様、荷物を下ろし終えました」

「ご苦労」

俺がそう言った所でニーナが叫び声を上げた!

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

『マスター!!』

グールの緊迫した声が聞こえたと思ったら、ハンネマンの頭がボトリと地面に落ち、それに続いてゆっくりとハンネマンの体が地面に倒れた・・・。


≪ニーナ視点≫

あたいはトリステンと共にカラヤン商会から盗んだ金を再び馬車に積み込み、城へと運ぶようアドルフに命令された、こんな事なら最初から城に運んでいればよかったのにと思ったが今更さね。

城へ着き、金を下ろしてトリステンと共にエルレイ様の所へ行った所で、あたいの頭は真っ白になったのさね!

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

身体強化を使い、加速された思考の中あたいは幼い頃の記憶を思い出していたのさね。

父は見た事が無く、母はいたが食事をまともに貰った事は無かった、常にお腹がすいていて考える事は食べ物の事ばかりだったさね。

やがて母に捨てられ、幼かったあたいは食べ物を碌に見つける事が出来ず、このまま死ぬのかと思っていた時にある男に食べ物を与えられ助けて貰ったのさね。

あたいはその男の家に連れていかれ、毎日お腹いっぱい食べさせて貰った、その事を嬉しく思いその男を当時は神様だと思ったさ。

その男はさらに美味しい物をいっぱい食べさせてくれると、あたいを馬車に乗せ、そこには他にも子供達がにこにこと笑い皆どんな食べ物が食べられるのか楽しみにしていたのさね。

馬車での旅でも食べ物をいっぱい食べさせてくれて、どんな所に着くのだろうと期待に胸を膨らませていたさね。

しかし辿り着いた先は地獄だったさね。

食べ物は最低限しか与えられず、訓練と称した物は頭が割れる様な激しい痛みを伴う物だったさね。

何度も死のうと思ったけど、そこにいたリゼとロゼに励まされて何とか生き延びる事が出来たさね。

そして今、目の前にあたいを地獄へ送り込んだ張本人がいるのさね!!

ナイフを抜き一気に首を斬り割いた!

次の瞬間リゼに背後から羽交い絞めにされたけど、もう抵抗する気は無かったさね。

「ニーナ、なんてことをしたの!」

「あたいを地獄に送り込んだ奴を殺しただけさね」

「・・・分かりました、エルレイ様には私が説明しますのでニーナは黙っていてください」

「リゼ、ありがとう、しかし自分で説明するさね」

「ではエルレイ様に殺されない様守っておきます」

あたいは身体強化を解き、エルレイ様に向き直ったのさね。


≪エルレイ視点≫

『って遅かったようだな・・・』

『グール、その様だ』

目の前には死体と、ニーナを抱きしめるリゼの姿が見えた。

「さてニーナ、何故この様な事になったのか説明してくれるか?」

俺はなるべく優しくニーナに問いかけた。

「エルレイ様、あたいを地獄に、いえ、ラウニスカ王国に送ったこいつを殺しただけさね」

ニーナは無表情でそう答えた。

「そうか、アドルフ、それとトリステンも警戒を解いていいぞ」

「しかし・・」

「よろしいのですか?」

アドルフとトリステンも今にもニーナに斬りかかろうとしていた。

「問題無い、それでアドルフ、この死体どうしたらいい?」

「街に犯罪者として晒しましょう」

「せっかく綺麗にしている街を、この様な物で汚したくないんだが?」

「それもそうでございますね、ではこちらで処分いたしましょう」

「いや、俺がやるよ、ニーナもそれで構わないか?」

「あたいの気はすんだからね、エルレイ様に任せるさね」

「分かった、塵も残さない様にしよう」

俺は死体を浮かび上がらせ、高温の炎で包み込み燃やし尽くした・・・。

「さて、ここで話す訳にも行くまい、場所を変えよう」

「承知しました」

アドルフは応接室へと言ったが、どうせアドルフの部下たちにも説明しないといけないだろうから執務室へやって来た。

皆も席に座って貰った、トリステンはニーナが勝手な行動をした事に責任を感じている様で、ニーナの隣に座り監視をしていた。

「アドルフ、カラヤン商会への対応はどうなっている?」

「はい、今頃警備隊により全員捕らえられていると思います」

「トリステン、そうなのか?」

「はい、その様に指示しております」

「それならもう慌てる必要は無いな、アドルフ、経緯を説明してくれ」

「はい、昨日ご説明した通りカラヤン商会は裏で人身売買を行っておりました、しかし証拠が無く、罠にはめるべくニーナさんに手伝って頂き、カロヤン商会の地下金庫より先程積み下ろしていた金貨を盗んでまいりました。

更にこの城に納入していたのを止め、ブランティエ商会を襲わせるように仕向けて、それを捕縛し。

今日その証拠と共に全て喋らせようとしたのですが、あのような事になってしまいました」

なるほど、ニーナが殺さなければうまく行っていたのか・・・しかし金貨を盗むとはアドルフは凄い事をやる物だな。

良いか悪いかと問われれば、悪いのだろうが、相手も悪い事で手に入れた金貨だったのだろう。

運び降ろされる金貨を見て全部とは言えず、三分の一と言っていたからな・・・。

「奴の証言は得られなかったが、ニーナの証言があれば十分だろう?」

「はい、それに部下たちからの証言も得られるでしょうし、問題ありません」

「それで盗んで来た金はどうするのだ?」

「勿論領地の為に使わせて貰います」

それでいいのか・・・まぁ売られていった人達に渡そうにもどこの誰だか分からないしな。

「ニーナ、あのお金は必要なら好きなだけ持って行っていいぞ」

「あんな奴が持っていた金なんていらないさね・・・」

ニーナは悔しそうに俯いていた、ニーナの心情を俺が分かる事は出来ないだろう・・・。

「さて、ニーナの処分だが、トリステン、どうしたらいいと思う?」

俺は真剣な表情でトリステンに問いただした。

「はい、暫く牢屋に入れ、その後この領地より退去させます」

トリステンにしては厳しい対応だな、もっとニーナの事を庇うのかと思っていたのだが・・・。

「エルレイ様、どうかニーナに寛大な処置をお願いします」

リゼはトリステンの判断に驚き、慌ててニーナを庇って来た、勿論俺はそんな厳しい処分を与えるつもりは無いが、何かしら罰は与えなければならない。

「アドルフはどう思う?」

「妥当な判断かと思います、本来であればあの場で私が斬り伏せていたのですが、自分の不甲斐なさを嘆くばかりです」

アドルフ、あれはどれだけ訓練しても対応出来る物では無いと思うぞ・・・。

何かいい落としどころは無い物だろうか・・・。

「ニーナはどう思っている?」

「あたいはどんな罰も受け入れるさね」

「分かった、ところでトリステンは確か独身だったよな?」

「まぁそうですが、今それが関係しますか?」

「それではニーナの処分を言い渡す、ニーナはこれから一生トリステンの世話をする事とする!」

俺の処分を聞いて皆呆然としていた。

「・・・ちょっと待ってください、私はニーナと結婚しろという事でしょうか?」

トリステンは俺を問い詰めて来て、ニーナは結婚という言葉を聞いて顔を赤くしていた。

「ん?誰も結婚だとは言って無いぞ?」

俺はにやっと笑いながらトリステンにそう答えた。

「確かにそうですが・・・」

「あたいが結婚、結婚・・・」

ニーナはブツブツと結婚を繰り返しつぶやいていた。

「エルレイ様、処分が軽すぎる気が致します」

「アドルフ、そう思うか?俺は一生かけて償わせるつもりだぞ?それともアドルフは優秀な人材を他の所にやるつもりか?」

「いえ、その様な事は思っておりません、分かりました、では処分はその様に致します」

「トリステンも構わないな?」

「分かりました、男として責任をもってニーナの管理を致します」

トリステンも今度は結婚とは言わず管理と言い直した、しかしトリステンならきちんと結婚するだろう。

「ニーナ、おめでとう」

リゼは立ち上がりニーナを抱きしめていた。

「リゼ、処分したのにおめでとうは無いと思うぞ」

「いいじゃないですか、それに誰も処分だとは思っていませんよ」

「だがしかし、建前と言う物があってだな・・・」

「はははっ、エルレイ様、リゼの言う通りでしょうな」

アドルフは珍しく声を上げて笑っていた、まぁ周りの執事達も祝福している様で構わないか・・・。

「それでニーナ、その処分受け入れるのか?」

「はい、あたい立派な嫁になるさ」

ニーナはもうすっかり結婚する気だな、トリステンもそんなニーナを見て微笑んでいた。

これで後は悪党の事を住人に公表してこの問題は終わりかな。

武闘大会に向け、もうこれ以上の障害は無い事を願うばかりであった・・・。

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