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公爵令嬢の婚約者  作者: よしの
第一話 アリクレット男爵家
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第十三話 忙しい日々

リアネ城へ戻った翌日、俺は真っ先にロゼを連れてウォーターベッドの作成と改良を試みる事にした。

作り方をロゼに教えると簡単に作ってしまった、流石に俺と色々作って来ただけの事はある。

「ロゼ、基本はこれで、後は軽量化を施して行きたいのだが、どうすればいいだろうか?」

「そうですね、土台の方を木に変えるのはいかがでしょう」

「木にすると軽くはなるだろうが、水で腐らないか?」

「確か腐らない木か、それを作る方法があるのではないでしょうか?樽や桶等、木で作られております」

確かにロゼの言う通りだな、木材を扱っている所を調べるといいかな。

「ロゼの言う通り、木材を扱っている所に行って見るか」

「はい、ですが私はその場所を知りません」

「俺も知らないが、アドルフに調べて貰おう」

「承知しました」

「では、取り合えず人数分ベッドを作って戻るとしよう」

「はい」

ウォーターベッドを人数分作ってからリアネ城へ戻り、アドルフがいるであろう執務室へ向かった、部屋に入るといつもの様にアドルフとその部下たちが忙しそうに作業をしていた。

「アドルフ、少しいいだろうか?」

「エルレイ様、何か御用でございましょうか?」

「今ベッドを作っていてな、その材料で、水にずっと浸けていても腐らない木材が無いか探してほしい、お願いできないだろうか?」

「承知しました、数日ほどお待ちください」

「特に急ぎじゃないからゆっくりでも構わない、それとは別にブルーモスと言う昆虫を知っているだろうか?」

「ブルーモスですか?存じ上げません、誰かブルーモスを知っている者はいないか?」

アドルフが作業中の部下に尋ねると、一人手を上げてくれた。

「私が知っております、それがどうか致しましたでしょうか?」

俺は自分が貰った服と、少しだけ分けて貰ったシルクの糸を取り出しテーブルに置いた。

「これはルフトル王国で買ってきた物で、ブルーモスの繭で作った糸、シルクで作られている」

「あの虫の繭ですか・・・」

アドルフと部下は俺が出した服と糸をまじまじと見ていた。

「エルレイ様、触ってもよろしいでしょうか?」

「触って確かめてくれ、とても肌触りが良いぞ」

アドルフと部下、さらにほかの部下も作業を止めて服を見て触っていた。

「これは素晴らしい感触ですね、すべすべしていてとても気持ちがいい」

「これがブルーモスから作られているとは信じられません」

「そこで我が領でもブルーモスを飼育し、この糸を作りたいと思うのだがどうだろう?」

「エルレイ様、素晴らしいお考えです、すぐ手配させましょう、ですが糸を制作出来る様になるまで数年はかかると思います」

「それは構わない、特に予算で困っていたりするのか?」

「いえ、予算は有り余っております、何せ一国家分の予算がエルレイ様の下に集まってきております、逆に予算をどう使うかに頭を悩ませておりました」

言われてみればそうか、アイロス王国丸ごと手に入れた訳だから、予算は潤沢な訳か、贅沢し放題だな。

と言っても贅沢とは何か、といわれたら平穏な日常が一番の贅沢だよな、衣食住は十分整っている、これ以上の贅沢とか無いだろう・・・。

「そうか、それならお願いする、部下が足りない様ならアドルフの裁量で増やして構わないからな、皆が忙しくて倒れない様にしてくれ」

「お心遣いありがとうございます、先程の件了解致しました、それとこれはエルレイ様が出掛ける前に仰っていた資料となります」

アドルフは分厚い資料の束を渡して来た、この領内の産業と生産物を調べて置くように言っていたな忘れていたよ・・・。

「アドルフ、ありがとう、皆も無理しない程度に頑張ってくれ」

「「「ありがとうございます」」」

資料は就寝前にでも見る事にしよう、資料を収納に収め執務室を後にする。

魔法の訓練に訓練に行くとしよう、ソフィアさんの精霊ミルの魔法を見てから、自分でもやって見たくてずっとうずうずしていたのだ。

訓練場へ着くと皆も魔法の訓練を行っている所だった。

「エルレイとロゼお帰りなさい、ベッドはもう出来たのかしら?」

「ベッドは出来たが、改良は材料となる木を手に入れてからだな」

「そう、頑張ってね、それとエルレイも魔法の訓練に来たのかしら?」

「その通りだ」

「エルレイも同じ考えの様ね」

やはりルリアも考える事は同じか。

「勿論その通りだ、あんなのを見せつけられたら自分でやりたいと思うのは当然だろ」

俺とルリアはお互いを見て笑った。

「私も一緒に練習を致します」

ロゼも同じ気持ちだった様だ。

「では、三人でやるとするか」

「分かったわ」

「はい」

いきなり人で試すのは危険なので土で人形を数体作った。

「まずはこれを一体飛ばす事を練習しよう」

「やってみるわ」

集まっていては危ないから三人とも離れて練習をする。

俺も練習を始めようとすると、リゼに後ろから抱き付かれ止められてしまった。

「エルレイ様、どうかお止め下さい」

「今から練習するつもりだったのだが、何が不味いのだ?」

「その練習は精霊がやったように複数人同時に飛行する物ですよね?」

「そうだ、使える様になるととても便利だと思わないか?」

「それが出来てしまうと、私が抱きかかえられて飛べなくなってしまうではありませんか!」

・・・それは確かに不味いな、リゼを抱きかかえて飛ぶのは俺の楽しみの一つだ、失う訳には行かないな、しかし覚えておいて損はないはず。

「分かった、魔法が使える様になっても、リゼを抱えて飛ぶ事を止めることは無いと約束しよう」

「本当ですか?」

「本当だ」

「エルレイ様、ありがとうございます」

リゼはさらに強く抱きしめて来て、とても喜んでくれた様だ。

「では訓練頑張ってください」

リゼはそう言うと楽しそうに自分訓練に戻って行った。

では訓練を始めるとするか、人形と自分に飛行魔法を掛け飛び上がる・・・そこまではよかったが、同じ様に飛ぶ制御がとても難しい。

それはルリアとロゼも同じようで人形が変な方向に飛んでいた、一時間ほど続けたが結果は同じで、簡単に習得出来る様な物では無かった。

ルリアとロゼの下へ向かい話を聞いて見る事にする。

「ルリア、ロゼどんな感じだろうか?」

「そうね、思うように飛ぶ事が難しいわね」

「人形を動かそうとすると自分の姿勢が崩れてしまいます」

「俺も同じだな、自分の制御と人形の制御を同時に行おうとすると混乱する」

「ミルは大勢を同じように飛ばしていたわ、私達には無理なのかしら?」

「どうだろう、俺達の魔法とミルが使っていた魔法は、もしかしたら違う物だったりするのだろうか?」

「ウィル様に聞いて見てはいかがでしょう?」

「それもそうだな、ウィル、出て来てもらえないだろうか?」

「ご主人様なに?」

「風の精霊ミルが使っていた魔法と、俺達が使っている魔法は違う物なのだろうか?」

「うん、全然違う、私達は精霊を動かしているだけ」

精霊を動かしている?魔力で現象を起こしているのとは違うという事だろうか?

「精霊は魔力を使わないのだろうか?」

「魔力は私達が活動するために使うよ、風の精霊は風そのもの、魔力で風を起こしている訳ではないの」

つまり精霊にお願いをするだけで、制御とか難しい事は考えなくていいという事なのだろうか?

「ミルは皆を運んでと、風の精霊にお願いしただけという事かしら?」

「うん、そうだよ」

ルリアがウィルに問いかけるとその様に答えてくれた、精霊は凄いと言うかずるいと言うか・・・。

「分かったわ、ウィルありがとう」

「うん」

ウィルはルリアを怖がることはもう無くなった様でよかった。

「ウィル、ありがとう、もう消えて貰って構わないよ」

「ご主人様、またね」

ウィルはにこやかに微笑んで消えて行った。

「この訓練はやるだけ無駄なのかしら?」

「そうじゃないと思うよ、皆人形と飛ぶ事は出来たんだから、訓練を続けて行けば出来る様になると思う」

「そうね、分かったわ」

「頑張ります、ですがお昼の様です、一度切り上げましょう」

昼食後も訓練を続けたが数日で習得できるような感じでは無かった、だからやりがいがあって楽しく思える、当面この訓練を続けて行こう。

夕食後皆ソファーで寛いでいる中、俺はアドルフより貰った資料を取り出し読み始めた。

領内の主な産業としては、農業、畜産、林業、沿岸部の漁業、鍛冶、建設業、その他生活必需品の生産業。

いたって普通だな、戦争に必要だと思われる産業は発展しているが、それ以外は生きるために必要な物と言う感じだ・・・。

何か人々が楽しめる娯楽が必要ではないだろうか?

しかし、この世界の娯楽とは何だろう、男爵とはいえ一応貴族だったから街の人との交流はあまり無かった。

遊びと言えばアルティナ姉さんかヴァルト兄さんと遊んだ程度、後は剣と魔法の訓練をしていたからな・・・皆に聞いてみるか。

「皆教えて欲しいのだが、娯楽と言えば何かあるだろうか?」

「そうね、読書とか」

「私も本を読むくらいしか思いつきません」

「エルレイを愛でる事ね」

「うむ、魔法を使う事だな」

ルリアとリリーは読書か、アルティナ姉さんとヘルミーネの意見は無視してと・・・。

「リゼとロゼとラウラは何かないか?」

「特に思いつく事はありません」

「私も無いですね」

「エルレイ様、私は物後ごろついた頃よりメイドとして教育されてきましたので、遊んだ記憶がございません」

三人ともメイドとしてずっとやってきたのだろう、申し訳ない事を聞いた様だ。

一般の娯楽について、ここにいる皆に聞いたところで分からないだろうしな。

読書として図書館を建てるのもいいかもしれないな、問題は皆文字が読めるのだろうか?

「読書は良いとして、どれくらいの人が文字を読めるのだろう?」

「そうね、貴族と商人くらいではないかしら」

「文字や計算を教える場所とか無いのだろうか?」

「聞いた事無いわね、貴族なら個別に教育する人を雇って教えているでしょうし、商人は詳しく分からないけど、親が子に教えるんじゃないのかしら?」

なるほど、文字や計算を教える学校の様な物が必要だな、娯楽とは少し離れたが識字率を上げて行く事は悪い事では無いだろう。

その他に魔法を教える学校を作ってもいいな、無詠唱を教えなければ問題は起きないだろう。

「エルレイさん、文字や計算を教える場所を作るつもりなのですか?」

「そうだなぁ、娯楽として読書と言う事だったが、文字を読める人が少ない、となれば文字が読める人を増やすのが先だなと思っただけだ。

作るかどうか今の所未定だな、他に何か皆が楽しめる様な物は無いだろうか?」

「それならば闘技場はどうだ?」

闘技場か、それはいいかもな、問題は治安が悪くなるかもしれない事だろうか、警備強化も併せてやればいいだけだな。

「ヘルミーネ、闘技場と言う案はいいかも知れないな」

「そうね、ヘルミーネにしてはいい考えだわ」

「そうだろう、そうだろう」

ヘルミーネは自分の意見が通ったのが嬉しかったのだろう、満面の笑みを浮かべていた。

「こんなものだろうか、改めて俺達が世間知らずだという事が分かったな」

「そうね、でもそれは仕方がない事だと思うわよ」

「うむ、城より出た事が今まで無かったからな」

「と言う事で、明日は街に皆で出かけて見ると言うのはどうだろう?」

以前約束していた事を思い出したので、街を見て回るのもいいかと思った。

「それはいいわね」

「街に行けるのか!!」

「この街を見て回った事無いものね、良いと思うわ」

「私は遠慮したいです・・・」

ルリアとヘルミーネとアルティナ姉さんはは乗り気だがリリーはやはり無理だろうか・・・。

「リリーにはフード付きのローブを着て、髪が見えない様にすればよくないか?」

「それはそうかも知れませんが・・・」

リリーは皆に迷惑が掛かるのが嫌なのだろう。

「ロゼとリゼはどう思う?」

「私は反対と言いたい所ですが、構わないでしょう」

ロゼに反対されるだろうと思っていたが意外だった。

「そうですね、私も大丈夫だと思います」

リゼはいつも通りだな。

「ラウラも構わないだろうか?」

「はい、構いません」

「では、明日は街へ皆で出かけよう」

「楽しみね」

「うむ、早く明日になってほしい」

「美味しい物があるといいわね」

皆楽しそうにしていたがやはりリリーはまだ少し不安な様子だ。

「リリー心配することは無い、もし見付かったとしても撃退すればいいだけの事だ」

「エルレイさん、そうですね私も楽しむ事にします」

リリーが笑顔を取り戻してくれてよかった。

「後、皆この資料が領内の主な産業と生産物だ、暇な時にでも一度目を通しておいてくれ」

「結構な量ね」

「アドルフ達が頑張って作ってくれた物だ、無駄には出来ない」

「そうね、でも今日はもう寝たいわ」

「あぁ、読むのは何時でも構わないさ」

その日はそのまま就寝となった。


翌朝、朝食時に出掛ける事をアドルフに伝える。

「アドルフ、今日はこの後皆で街に出掛けて来る」

アドルフは目を見開きとても驚いた様子だ。

「エルレイ様、何か必要な物があれば私が購入して参ります」

やはり俺達が出掛けるのは不味いのだろうか?

「いや、何か欲しい訳では無い、街の様子を見て回りたいだけなのだ」

「そうなのですか、しかし危険すぎます、出来ればお止めになって頂きたいのですが・・・」

「心配することは無い、何かあっても対応できるよ」

アドルフはしばし考え込んでしまった、俺が引かない事をわかってくれたのだろうか?

「・・・分かりました、私もお供します、それと警備兵を数名お付けします」

「分かった、迷惑かけるがお願いするよ」

「承知しました」

警備兵とか必要無かったが、同意しないとアドルフが許可しないだろうと思い妥協した。

「エルレイ様、警備兵を連れてまいりますので、玄関でお待ちください」

「分かった」

アドルフはそう言うと急いで食堂を出て行った、俺達も食堂を出て玄関へと向かった。

「一応外では皆固まって行動するが、二人ずつ組んでおこうと思う」

「それはいいかも知れないわね」

「組み合わせだが、俺とヘルミーネ、ルリアとラウラ、リリーとロゼ、アルティナ姉さんとリゼにしようと思うがどうだろう?」

「問題無いわね」

「エルレイと一緒じゃ無いのが残念だけど、仕方無いわね」

「エルと一緒でいいのか!」

ヘルミーネは俺と一緒で喜んでいる様だが、一番問題を起こしそうなので俺が見る事にした。

「ロゼ、リゼ、構わないか?」

「問題ございません」

「大丈夫です」

「ラウラはルリアをしっかり見張っていてくれ」

「承知しました」

「エルレイ、なぜ私が見張られなければならないのかしら?」

それはヘルミーネの次に問題を起こしそうだからですとは言えない、誰かに絡まれたら絶対魔法で吹き飛ばすと思う。

「街では貴族の常識が通じないだろうから、用心のためだよ」

「本当かしら?」

ルリアが疑いの眼差しで俺を睨んできているが、俺は笑顔を見せ、悟られないよう努力した。

暫く玄関で待っていると、アドルフが警備兵を六人連れてやって来た。

「エルレイ様、お待たせしました」

「アドルフ、ありがとう、それに警備兵の皆さんも無理を言って来て貰ってすまなかった」

「いえ、構いません」

警備兵の一人が前に出て来て俺に挨拶をして来た、どこかで見た事がある顔だが思い出せない・・・。

「エルレイ様、私は警備隊長を務めさせて頂いているトリステンと申します、以前一度戦場でお会いして以来ですね」

あぁ思い出した、敵の軍団長だった人だ、そう言えばアイロス軍をそのまま警備に就かせたとアドルフ言っていたな・・・。

「トリステン、久しぶり、今日はお世話になるよ」

「はい、しっかりお守りさせて頂きます」

「アドルフはまだこの街に詳しく無いだろうから、トリステン、街の案内を頼む」

「承知しました、具体的に何処へ向かえばよろしいのでしょうか?」

「この街全部だな、特に商店や娯楽施設を見てみたい」

「娯楽施設ですか・・・」

トリステンは俺の背後を気にしながら小声で耳打ちしてきた。

「娯楽施設と言えば女性を買う所しかございませんが・・・」

あぁそれしか無いのか、そこに案内されても困るな。

「分かった、そこの案内は不要だ」

「畏まりました、では参りましょう」

俺とトリステンを先頭に、歩いて街へと出かけた、俺ははぐれない様ヘルミーネの手を握った。

「エル、何を?」

ヘルミーネは俺がいきなり手を握った事に驚きの声を上げた。

「折角出かけるのだから手を握ったのだが、まずかったか?」

「い、いや構わない、むしろ喜ばしい・・・」

ヘルミーネは顔を赤くして俯きながらも手を握る力が強くなった、ヘルミーネも随分と可愛くなったものだ。

ラウラの教育の成果だろう、ヘルミーネが我儘を言う事はほぼ無くなったからな、城で会った頃とは大違いで可愛いばかりだ。

そんなヘルミーネの表情を俺が楽しんでいると、トリステンはにやにやと笑ってこちらを見ていた。

「トリステン、何かまずかっただろうか?」

「いえ、微笑ましく見ておりました、とても私達を打ち負かした相手だとは思えませんでしたので」

「それはそうだろう、俺は多少魔法が得意な十一歳の子供だぞ」

「多少ね・・・そう言う事にしておきましょう」

「そう言えばトリステン、先程の娯楽以外に何かあったりしないのだろうか?」

「そうですね、施設が無い物だとすれば賭け事くらいでしょうか」

「どんな賭け事なのだろうか?」

「色々です、酒の飲み比べや訓練での勝負、後は馬での競争ですね」

競馬かそれもいいな、訓練で勝負しているのなら闘技場もやれそうかな。

「トリステン、それとアドルフも聞いてくれ、昨日皆と話していて闘技場を作ってはどうかと意見が出たのだが、どうだろう?」

「闘技場ですか、案としては素晴らしい物だと思いますが、治安の悪化が懸念されます」

アドルフは俺と同じことを思った様だな、トリステンは少し考えてから話してくれた。

「エルレイ様、それは見世物として殺し合いをさせるという事でしょうか?」

「いや、殺し合いをさせるつもりは無い、単に剣の腕前を披露する場を作るだけだ、勿論賞金も出そうと思う」

「それでしたら賛成致します、警備兵達も訓練に身が入るでしょうし、隊を抜けた者達も戻ってくるかもしれません」

「アドルフ、治安の方は俺も悪化すると思っている、その分警備を強化して対応出来ないだろうか?」

「そうですね、今即答はしかねますが、戻ったら検討いたしてみます」

「アドルフ、ありがとう、しかし是非とも闘技場を作らないと駄目という事では無い、あくまで何か娯楽施設があった方が皆楽しく暮らせるのでは無いだろうかと思ったまでだ、他にいい案があれば遠慮無く言ってくれ」

「承知しました」

トリステンは怪訝そうな顔で俺の事を見ていた。

「トリステン、俺は何か変な事を言っただろうか?」

「いえ、皆が楽しく暮らせるとは考えた事が無かったものですから少々驚いただけです」

「今までどのような考えだったのか聞いても構わないか?」

「そうですね、エルレイ様、私は今まで兵士としてアイロス国に仕えて来て、生き残る事に必死でした、そして隊長になり仲間の兵士達を生かす事しか考えて来なかったのです。

とても楽しく暮らす余裕など無かった事ですからね、しかしエルレイ様に仕える様になって、楽しく暮らしている自分に今気が付いたのです」

「それはいい事なのでは無いのか?」

「そうですね、しかしそれはずっと続く物なのでしょうか?」

「それは分からないが、俺は皆と楽しく暮らしていきたいとずっと思っている、そしてそれを守って行く為の努力は惜しまない。

アイロス王国に攻め込んだのもその為だ、トリステンは知らないだろうが、俺は男爵家三男で普通なら平民になる所だが、魔法が得意だったためこの様になってしまった訳だ。

その事を俺は後悔して無いし、アイロス王国の人達にも悪いとは思っていない、しかし俺の領地となった今ではこの地に住むすべての人を守り、楽しんで暮らして貰いたいと思っている。

その為に出来る事が無いか色々考えているが、所詮子供の知恵で皆の協力が必要だ」

「分かりました、私も警備隊長として、エルレイ様の下で皆が楽しく暮らして行けるよう全力で協力致します」

「トリステン、ありがとう、話は変わるが今この辺りに人は住んでいないのだろうか?」

俺達は王城を出て貴族街だった所を歩いていた。

「エルレイ様、現在誰も住んでおりません、警備兵の者に巡回はさせておりますのでこの辺りは安全です」

アドルフが答えてくれた、何かに使うことは出来ないだろうか、豪華な屋敷が立ち並んでいるのに勿体ない気がする。

「アドルフ、ここは何かに使う予定があるのか?」

「今の所ございません、しかし豪華な建物ですから一般に開放する訳にもいかず困っております」

そうだよな、こんな豪華で広い屋敷を貰っても使い道が無さそうだ。

「警備隊の宿舎にする訳にはいかないだろうか?」

「エルレイ様、私達がこのような屋敷を頂いても管理できません」

トリステンは苦笑いしてそう答えた、まぁそうだよな・・・。

「そうか、何か使い道をみんなで考える事にしよう」

貴族街を抜けトリステンの案内されて、商店街へやってきた。

「エルレイ様、この辺りは街の生活必需品を売っている店が立ち並んでいる場所です」

通りの左右には様々な店が並んでおり活気に満ち溢れていた。

「エル、店の中を見てもいいだろうか?」

ヘルミーネはつないだ手を引っ張り店の中へ入りたそうだった、俺も覗いて見たいし構わないだろう。

「ヘルミーネ、商品を触ったりしない様にな」

「うむ、分かった」

「ではあの店に入ってみよう」

俺達は近くの店へ入って行った、そこは食器やコップなど所狭しと並べられていた。

「いらっしゃいませ、随分大人数だな」

「店主、少し見せて貰う」

「そりゃー構いませんが・・・」

店主と思われるオヤジさんが俺達を見て驚いていた、子供が警備兵を連れてくれば驚くのも仕方が無いか。

「エル、見たことが無い物ばかりだな」

「そうね、こういうので食事をするのも楽しそうね」

普段使い慣れた食器は真っ白で美しい物ばかりだが、この店の食器は土の色がそのまま出ていて味わい深い物だった。

「エルレイさん、このティーセット可愛いです」

リリーが見ていたティーセットは、さまざまな動物が描かれており見る人を楽しませてくれそうな物だった。

「確かに可愛いわね、エルレイ、これ買って帰りましょう」

ルリアも気に入ったようだ、何も買って帰らないというのも店主に悪い気がするしな。

「店主、これを貰えないだろうか」

「ありがとうございます」

店主はそう言うとティーセットを割れない様包んでくれた、代金を支払いティーセットを受け取って店を出る。

店の中で収納して店主に驚かれても困るから、外に出てから収納した。

商店街を歩きだすと、店先で何か食べ物を売っているのをヘルミーネが見つけた。

「エル、あれは何だ?とてもいい匂いがするぞ」

「分からない、トリステン、あれは何かわかるか?」

「あれは木の実が入った焼き菓子です、甘くておいしいので、よく子供のころ食べておりました」

「甘いのか!エル、食べてみたいぞ」

ヘルミーネが上目遣いで俺を見て来た、俺も食べたいから買ってやるのは問題ないのだが、あれもこれもと買われてはよくないのでくぎを刺しておこう。

「買ってやるが、食べ物はこれが最後だいいか?」

「うむ、分かった」

俺は十五個の焼き菓子を買い、警備兵も含めて全員に配った、アドルフは断ってきたが無理やり食べさせた、そうしないとリゼ、ロゼ、ラウラが遠慮するかもと思ったからだ。

「エル、美味しいな」

確かにこれは美味しい、軟らかい生地の中に甘酸っぱい木の実が入っていて食べ応えもある。

「このような物初めて食べたけど、美味しいわね」

「とても美味しいです」

「子供のころ見かけたことはあったけど、食べさせて貰えなかったのよね」

皆美味しい物が食べられて喜んでくれた、しかしアドルフだけは厳しい表情のままだ。

「アドルフ、美味しくなかったのか?」

「いえ、美味しかったのですが、仕事中にこのような物を頂くのは他の者に示しが付かないと言いますか・・・」

なるほど、アドルフはの立ち位置は他の使用人たちの頂点だ、確かに示しがつかないかもしれないが。

「アドルフ、今日ここに来たのは街の様子を実際に見て雰囲気を感じ取る事だ、アドルフもこういう物を買って食べた事は無いだろ?」

「はい、ございません」

「これは勉強だ、何事も知っておかなければ物の良し悪しを判断する事が出来ない、と言う事できょう一日俺達と一緒に楽しんでいこう」

「アドルフ殿、エルレイ様の言う事は正しい、見分を広げるため楽しんだ方がよろしいかと思いますよ」

「承知しました、確かに私もこの様に街中を歩いて見て回る事等ありませんでしたので、楽しみたいと思います、しかしそう頻繁に出歩かれては困ります、今後はなるべく控えていただきたく思います」

トリステンがアドルフにそう言うとアドルフも納得した様だ。

「分かっている、そう頻繁には出歩かないさ」

暫く店を回っていると、俺は武器屋を見つけ中に入ってみる事にした。

「皆武器屋を見たいのだが構わないだろうか?」

「エルレイ、私も見てみたいわ」

「エル、私は武器は使えないが面白そうだな」

特に反対する者はいなかったので武器屋へと入った。

「いらっしゃい」

「武器を見せて貰いたいが構わないだろうか?」

「構わねぇが、子供用の武器は置いてませんぜ」

店主がこちらを見てそう言ってきた、気にせず店内の武器を見て回る。

特に高価な武器が売られているわけでは無く、一般に出回っている程度の物だった。

俺の身長ほどの長さのロングソードを手に取ってみる、ずしりと重くこの体で振り回すには少々厳しい様だ。

ルリアもショートソードを手に取ってみているがいまいちの様だ、ルリアの剣は立派な業物だからな、あれと比べるのはちょっとかわいそうだ。

「マスター、俺様と言うのもがありながら他の剣を使うっていうのか!!」

グールが大声で叫ぶものだから注目が集まってしまった。

「グールは普段使うのに使いにくいんだよ、それともう遅いが静かにしていてくれ」

「エルレイ様、今の声は?」

トリステンが俺に近づいてきて聞いてきた、今更隠すことは無理だと思い懐からグールを取り出した。

「この魔剣、喋るんだよな・・・」

トリステンに見せるととても驚いていた。

「それはまさか呪いの魔剣!!」

店主がグールの事を知っていたようで声を上げ、少しカウンターから離れるような仕草を見せた、呪いの魔剣だから逃げたくなる気持ちはわかる。

「確かにこれは呪いの魔剣と呼ばれる物だが、呪われている物では無いぞ」

「そうなのですか?私が聞いた話だとその魔剣の能力を使うと死ぬと聞きました」

トリステンもグールの話は知っていた様だな、城の宝物庫の中にあったからな、トリステンが知っていても不思議ではないか。

「この魔剣は能力を使う際大量の魔力を失う、それは魔力が無い人が使えば死に繋がる、しかし俺の場合魔力があるから死ぬ事は無い」

「なるほど、理解しました、持ってみてもよろしいでしょうか?」

「構わないがたぶん持てないと思うぞ、この魔剣、持ち主以外には使えない様になっているからな」

俺はそう言ったがトリステンは興味があったのだろう、グールを持ち上げようとして落とした。

「本当の様ですね、以前この魔剣の持ち主をカールハインツが魔剣ごと切り捨てたという話を自慢していましたが、このようなナイフではどうやら嘘だったようですね」

カールハインツ確か俺と剣で勝負した人だったよな、あの豪剣ならグールごと切り捨てたのは嘘では無さそうだな。

「トリステン、その話は嘘ではないと思うぞ、俺がこの魔剣を見つけたとき折れていたからな」

俺はグールを手に取り剣の形に変化させた。

「ナイフが剣に・・・」

店主は驚きの声を上げていた。

「それが魔剣の能力なのですか?」

「あぁ、その通りだ」

俺は再びグールをナイフに戻し懐に収めた、そこで違和感を覚えた、今グールの形を変えたとき魔力を持っていかれなかったよな。

『グール、今魔力が減らなかったがどうしてだ?』

『マスター、この前魔剣と戦った時に吸収した魔力があったからな、後一回分くらいはまだ残ってるぜ』

なんと、魔力を吸収する事は教えられていたが蓄える事も出来るのか、その能力の方が凄いのではないのか?

『グール、その魔力は俺も使えるのか?』

『もちろん使えるぜ、クロームウェルが魔法を使いまくるために俺様を作ったようなものだからな』

『それで魔力はどれくらい貯める事ができるのか?』

『そいつは分からねぇ、限界まで貯めた事が無いからな、しかしかなりの量貯められるぜ』

『俺も魔力も貯めることは出来るのだろうか?』

『出来るぜ、俺様とマスターは魔力で繋がってると言っただろ』

なるほど、それはいい事を聞いた、こいつの能力で一番有用な物では無いだろうか、毎日こいつに魔力を貯める事にしよう。

「エルレイ様、いかがなさいましたか?」

俺がグールと念話で話していて周りを見ていなかった、トリステンが俺を心配そうにのぞき込んでいた。

「すまない、少し考え事をしていた、そろそろ出るか、店主騒がせてしまってすまなかった」

俺はカウンターに硬貨を置き、魔剣の事は見なかった事にしてくれと一言言って店を出た。

店を出ると日が真上に来ていた、昼食時の様だ。

「エルレイ様、昼食時ですので城へお戻りになりませんか?」

アドルフはそう言ってきたが俺は戻る気は無かった。

「アドルフ、今日一日と言ったはずだ、トリステン、どこか食事が出来る所に案内してくれないか?」

「それは構いませんが、皆様が普段食べるような物はありませんよ」

トリステンはやや困ったような顔でこちらを見て来た。

「普段トリステンが食べている所で構わない」

「そうですか、分かりました、ご案内いたします」

トリステンに案内された先は食事処と言うより酒場だった。

店内に入ると、胸が大きく綺麗なお姉さんが出迎えてくれた、周りを見ると見事に男性客ばかりだ、そこに女と子供が警備兵と入って来たから注目を集めている。

「いらっしゃい、トリステンさん、お久しぶり~」

「エルザ、少し人数が多いのだが席は空いているだろうか?」

「奥の方が空いているからそこに座って頂戴、しかし可愛らしいお連れさん達ね、トリステンさんの子供かしら?」

「いや、このお方はこの街の新しい領主様だ、それと俺は独身だ」

「領主様!!」

エルザと言う店員が俺が領主だと知ると驚きの声を上げた、それは周りの人達にも聞こえ、さらに注目を集める事となった。

「あの子供が領主様かよ」

「とても凄腕の魔法使いには見えないな・・・」

「なんで領主がこんな所に来ているんだ?」

様々な声が周りから聞こえて来る。

「えーと領主様、席の方へどうぞ・・・」

「ありがとう」

エルザさんはびくびくしながら俺を席へと案内してくれた。

「ご注文が決まりましたら呼んでください」

そう言うとエルザさんは逃げるように去って行った。

「トリステン、俺は怖がられているのだろうか?」

「そんなことは無いと思いますが、この店に貴族が来る事はありませんからね」

トリステンも苦笑いしてその様に言った、確かにそうかも知れないな、でも今はそんな事より食事だな。

「メニューは何処にあるのかしら?」

「お嬢様あちらの壁に描いてあるのがメニューになります」

ルリアが問いかけるとトリステンが壁を指さして答えた。

「・・・よく分からないわね、トリステンに任せて構わないかしら?」

「そうだな、俺もよく分からないから皆の分お願いしていいだろうか?」

「承知しました」

「それと立っている皆も座って注文してくれ」

警備兵は皆周りに立っていて座ってはいなかった、俺の言葉を聞いてトリステンの許可を求めている様だった。

「エルレイ様がこう言っている、お前たちも座って一緒に食事をして構わないぞ」

トリステンが許可を出すと皆喜んで席に座り、何を食べるか相談していた。

「噂には聞いていましたが、使用人と共に食事をするのは本当だったのですね」

トリステンは座っているアドルフ、リゼ、ロゼ、ラウラを見て感心していた。

「やはり変な事だろうか?」

「いえ、とても素晴らしい事です」

トリステンがエルザさんを大声で呼ぶと、エルザさんは急ぎ足で此方に駆け付けてくれた。

「ご注文お決まりでしょうか!」

「領主様達に適当に美味い物とジュースを頼む、俺はいつものやつを、後部下たちの注文も聞いてやってくれ」

「分かりました、しばらくお待ちください」

エルゼさんは注文を聞くと落ち着いた様で、部下たちの注文を聞きに行った。

「トリステン、ここは酒場だよな、酒の種類はどんなのがあるのだろう?」

「エルレイ様はお酒を嗜むので?」

「いや、俺が新しい農地を作った事は知っているか?」

「存じております、多くの兵士達が路頭に迷わず助かりました」

「その農地で作る作物で酒を造ろうと思っているのだが、今どの様な酒があるのかと思ってな」

「なるほど、この店に、と言うよりこの街にあるのは麦を原料としたエールだけですね」

「そうか、果実酒などは無いのだろうか?」

「ありませんね、お酒にするほど果実が作られていないのだと思います」

「なるほど、やはり新しい農地は果樹園にして果実酒を作ろう」

「それは楽しみですね」

「そうだろう」

トリステンと俺はにやりと笑い合った。

「そう言えばアドルフ、酒造所の方はどうなって居る?」

「はい、現在建設中で人材の確保の方は出来ております、建物が出来次第、今ある材料で試作品を作らせる予定です」

流石アドルフ、もうそこまで準備が進んでいるとは。

「アドルフ、ありがとう、その調子で頼む」

「畏まりました」

そうしているとテーブルに大皿に乗った料理が、次々とエルゼさんによって運ばれてきた。

「以上です、ごゆっくりどうぞ」

目の前の大皿に盛られた料理に皆戸惑っている様子だ。

「皆様、これは小皿に好きな分だけ取り分けて食べるものです」

トリステンが説明してくれて、そしてリゼ、ロゼ、ラウラの手によって取り分けられる事になった。

俺達が普段食べているのは、一人ずつ小皿に少量の料理が乗せてあり、それを食べ終えると次の小皿に乗せられた料理が運ばれてくるから、こうやって置かれていては、どうやって食べるのか分からないのも無理は無い。

「貴族様は自分で取り分けないんだな」

「俺達と同じもの食べられるのかよ」

周囲からまた声が聞こえて来るが気にしても仕方がない、取り分けが終わったので声を掛ける。

「では頂きます」

「「「頂きます」」」

料理はやや香辛料の効いた肉や野菜の炒め物や、何かの肉を揚げたものとパンだった。

「悪くない味ね」

「少し辛い」

「そうですね、香辛料が強すぎるのでしょう」

「私は美味しいと思うわよ」

ヘルミーネに香辛料が効いた料理はまだ合わない様だが、おおむね皆満足している様だった。

「ここは酒場だから酒に合う料理なのだろう、なかなか美味いと思うぞ」

俺もこの味は気に入った、酒が飲めないのが残念だがしょうがないだろう。

フルーツを絞ったジュースも爽やかな味で、とても美味しかった。

結構な量があったが皆残さず食べる事が出来てよかった、ここで残したら貴族の口に合わなかったと言われたら、お店にも迷惑が掛かるだろうしな。

俺達が食べ終えた頃、おずおずとエルザさんが此方へ向かって来た。

「あの~、いかがだったでしょうか?」

「とても美味しかったよ、ありがとう」

「それはよかったです」

エルゼさんはにこやかに微笑んだ、笑顔がとても素敵で胸も大きいからモテるのだろうな。

「代金を払うよ、いくらになるだろうか?」

「いえ、領主様からお金を頂く事は出来ません」

「そう言われても俺も金を払わないで出て行く訳には行かない」

「しかし・・・」

「エルゼ、金を払って貰わないとこの領主様は毎日ここに食いに来るぞ」

「それは困ります、あっいえ・・・」

トリステンがそう言うとエルゼの本音が聞けたな・・・まぁ俺がここに毎日来たら確かに迷惑だろう。

「そう言う事で、お金を受け取ってくれ」

「はい、分かりました」

俺は料金を支払い店を出た。

「やはり俺がこうやって街に出歩くのは皆に迷惑が掛かるのだろうか?」

「そうですね、しかしたまにはいいのではないでしょうか?」

「またここに食べに来られるのか?」

「ヘルミーネの口には合わなかったのではないのか?」

「確かに辛かったが、たまに食べる分には問題無いぞ」

「そうか、また機会があったら食べにくるもの良いだろう」

「うむ、そうしよう」

ヘルミーネは上機嫌だ、他の皆も普段食べなれて無い物だったから新鮮で良かったのだろう。

「トリステン、午後は何処に行く予定だ?」

「そうですね、この時間だと市場が賑わってていいでしょう」

市場か、アドルフに農産物の資料を貰って知ってはいるが、今どの様な物がこの街に入って来ているのか知るには丁度いいな。

「では市場に案内を頼む」

「承知しました」

トリステンの案内の下市場へ辿り着いた、そこは思ってた以上に賑わいを見せていた。

「凄く賑わっているな」

「そうですね、以前より活気が増しています」

「そうなのか」

「はい、エルレイ様が作った道によって各地から素早く物が集まる様になったからですね」

なるほど、俺とロゼの苦労が報われたようでうれしくなった。

市場を見て回る、様々な野菜や果物に肉や魚と言ったもが売られており、中には串焼きを売っていたり、また違ったお菓子を売っているのもあった。

それを見つけるたびヘルミーネが食べたそうな顔をしていたが、口に出して要求してくることは無かった。

昔の様に我儘は言わない様になったものだ、俺も買ってやることは問題無いのだが、折角我慢しているのに俺が甘やかしては意味が無い。

他の皆もヘルミーネが我慢しているのを分かって欲しいとは誰も言わない。

そうして市場を見て回っていると、遠くから大きな声が聞こえて来た。

「泥棒!!誰か捕まえておくれ!」

声がした方を見ると誰かがこちらに向け走って逃げて来た。

「エルレイ、捕まえた方が良いかしら?」

「そうだな、俺がやるよ」

「任せたわ」

俺は昨日練習した飛行魔法を逃げて来た泥棒に向かって掛け、五十センチほど浮かび上がらせた。

泥棒は浮かび上がって驚いていたが、必死に足を動かしどうにか逃げようと暴れていた。

近づいて泥棒をよく見ると俺と同じくらいの子供の男の子だった。

「おろせよーーー」

「あら、まだ子供じゃない」

「そうだな、お前名前は?」

「誰が教えるかよ!」

「そうか」

俺は泥棒の子供を更に浮き上がらせる。

「やめろー、分かった、言うから下ろしてくれ」

少し可哀そうになったので元の位置に下ろしてやった。

「それで名前は?」

「・・・エリオット」

エリオットが名前を告げると同時に、盗まれた店主の女将だと思われる人が息を切らせてやって来た。

「はぁはぁはぁ、捕まえてくれて助かったよ」

「エリオット、手に持っている物を素直に返せば見逃してやろう」

「誰が返すもんか」

「そうか、また上がりたいんだな」

俺はゆっくりとエリオットを浮かび上がらせる。

「分かった、返す、返すから上げないでくれ!」

エリオットは高い所が怖いのだろうか、いや魔法で上げられているのが怖いのだろうな。

俺の手が届く位置までエリオットを下げ、手に持った果物を受け取り女将さんに渡す。

「これで構わないか?」

「あぁ、ありがとう、物が戻ってくれば文句はないさね」

そう言って女将は果物を受け取り戻って行った、俺はにやりと笑いトリステンに目配せをする。

「さてトリステン、この子の処分はどうすればいいだろうか?」

「そうですね、取り合えず牢屋に入れましょうか」

トリステンは俺が何を言いたいのか分かってくれた様だ。

「お前、果物は返したから逃がしてくれるんじゃなかったのかよ!」

エリオットはそう言って再び逃げようと空中で暴れ出した、どんなに暴れても逃げられないのだが・・・。

「エリオット、どうして盗みをしたのか?」

「そんなの生きるために決まってるじゃないか!」

「エリオットに親はいないのか?」

「そんなものいる訳無いだろ!」

「戦争孤児か娼婦にでも捨てられたのでしょう」

「そうだよ、文句あるか!」

エリオットはもう泣き出しそうな感じだ、これ以上追及するのはいじめている様で不味いな。

「分かった、エリオット、他にも仲間はいるのか?」

「い、いねーよ」

エリオットは目をそらしてそう答えた、いるんだろうな。

「そうか、これからエリオットを下ろすが逃げないでくれ、逃げたらまた浮かべるからな」

「・・・分かった」

エリオットを地上に下ろす、勿論飛行魔法はかかったままだからいつでも浮かせる事が出来る。

「助かった・・・」

「さてエリオット、お前が住んでいる場所に案内して貰えないか?」

「どうしてそんな事をしないといけないんだよ」

「それは俺がエリオットが住んでいる所を見たいからに決まっている」

エリオットは呆然としていた。

「エルレイ様、それは危険ですのでお止め下さい」

アドルフがエリオットが住む所へ行くのを止めて来た、エリオットが住んでいる場所はスラム街かそれに類するような所だろう。

「危険なのは分かるが、その為にトリステン達が着いて来ているのでは無いのか?」

「そうですね、しかしエルレイ様に護衛が必要なのか疑問ですが、その役目は果たしますよ」

「トリステンも守ってくれると言っているから大丈夫さ」

「はぁ、分かりました、くれぐれも用心してください、エルレイ様が倒れるとこの領地は終わってしまうのですから」

アドルフも渋々納得してくれたし後はエリオットだけだな。

「エリオット、お前の住んでいる所に案内してくれ」

「・・・分かったよ」

逃げられないと観念したのか、エリオットは肩を落としてとぼとぼと歩き出した。

「皆障壁を維持していてくれ、リゼとロゼは何時でも動ける様頼む」

「「承知しました」」

「やはり、私達の護衛は不要ですよね・・・」

トリステンはため息交じりにそうつぶやいた。

「いや、必要だぞ、俺たち子供だけだとカモだと思われてしまい、余計な揉め事に巻き込まれるからな」

「まぁ、そうですね、その程度の役目は果たしましょう」

エリオットの後をついて歩き市場を抜け、人通りが少ない怪しげな場所を通っていた。

「トリステン、この辺りは例の歓楽街か?」

「そうですね、そしてここを抜けて行った先が彼らの住むスラムです」

昼間だから流石に客引きとかいないし女性も立ってはいなくて良かった、流石にヘルミーネに夜の姿を見せるわけにはいかないだろう。

そして、いよいよスラムへと入り込んだ。

「エル、何か匂うな」

「そうだな、ここもいずれは綺麗にしたいな」

俺達がスラムに入ってから周囲から視線を感じる、身なりのいい子供たちと兵士が入って来れば何事かと思うだろう。

エリオットはやがて半分ほど崩れた廃墟の前で立ち止まった。

「ここが俺達の家だ、もういいだろう、帰ってくれよ」

「いや、帰る訳にはいかない、これ以上エリオットに盗みをさせる訳にはいかないからな」

「エリオット、ここにお前の仲間は何人住んでいるんだ?」

「・・・八人だ」

「そうか、今皆いるのだろうか?」

「皆食べ物を探しに出かけている」

「ならば、皆が帰ってくるまでここで待つ事にしよう」

俺は収納より旅の時に準備していて食べて無かった果物を取り出し、エリオットに差し出した。

「何だよこれは」

「果物だが食べないのか?」

「いらねーよ」

「そうか、なら俺が食おう」

俺が口元に果物を持って行くとエリオットはそれを目で追っていた、再度エリオットの前に果物を差し出すと今度は俺の手から果物を奪い取った。

その時廃墟から一人の女の子が顔を覗かせ、此方の様子を伺っていた。

「こほっ、お兄ちゃんお客さん?」

「アンナ、寝てなきゃダメじゃないか、ほら、これを食べて横になっていてくれ」

「うん、お兄ちゃんありがとう」

エリオットはアンナを連れて廃墟の中へ消えて行った。

「リリー、様子を見に行こう」

「分かりました」

「グール、建物内に危険な人物はいないよな?」

「いねーぜ、中にいるのはさっきのガキ二人だけだ」

「という事でいって来る」

「もう何を言っても無駄の様ですが、お気を付けください」

アドルフは諦めて俺とリリーを見送ってくれた。

リリーと二人で廃墟の中に入って行く、中はとても汚れていて雨水も振り込んでいる様な感じだった。

奥の部屋に行くと、そこは皆が寝泊まりしているのだろう、僅かだが敷物が敷いてあり、そこに先程見たアンナが横たわっていた。

「なんでお前たち入って来たんだよ」

エリオットは俺とリリーを見て警戒している様だった。

「そこの女の子の病気を治療しようと思ってね」

「金なんて持ってないぞ、治療されても払えないからな!」

「別にお金は必要ない、ただ治療するだけだ」

「嘘だ、俺を騙してアンナを連れて行くつもりだろう!」

相当警戒しているな、今までも誰かが連れ去ろうとした事があるのだろうか?

「そんなつもりは無い、病気を治すだけだ、それとも治療されたら困る事でもあるか?」

「・・・それは無いが、本当に治療するだけなんだな」

「本当だ」

「それならお願いだ、アンナの病気を治してやってくれ」

「リリー、お願いするよ」

「分かりました」

俺が治療しても構わないのだが、エリオットには警戒されてるし、やはり女の子の治療はリリーに任せた方が問題が起きないだろう。

「エルレイさん、胸の病気と栄養不足ですね」

「直せそうか?」

「はい、大丈夫です」

リリーはアンナの胸に手を当て魔力を流し込み病気を治療した。

「後はきちんと食べれば元気になるでしょう」

「お姉ちゃんありがとう、胸が苦しくなくなったよ」

「それはよかったですね」

リリーは優しく微笑んでアンナの手を握っていた。

「アンナはこの果物食べられそうか?」

俺はアンナに果物を一個差し出した、アンナはそれを受け取り微笑んでくれた。

「お兄ちゃん、ありがとう」

お兄ちゃん、そう呼ばれたのはこの世界に来て初めてではないだろうか、弟とか子ども扱いされた事しか無かったから、とても新鮮だ。

体を起こし果物を食べるアンナを見ていると、エリオットが物欲しそうな目でそれを見ていた。

「エリオットも食え」

果物をエリオットに差し出すと、今度は素直に受け取り勢いよくかぶりつき食べ始めた、よほどお腹が減っていたのだろう、瞬く間に果物は無くなり俺はもう二個ほどエリオットに渡した。

「エリオット、俺達は外で他の仲間が帰って来るのを待っているよ、リリー行こう」

「はい、分かりました」

俺とリリーは二人がいる部屋を出て皆がいる所に戻った、そこにはエリオットの仲間の子供と思われる三人が宙に浮いていた。

「おろせよー」

「はなせよー」

「こわいよー」

「逃げないと言うのなら、下ろしてあげるわよ」

ルリアが腕を組み子供たちを睨み付けていた、俺もあんな感じだったのだろうか、どう見ても弱い者いじめしているようにしか見えないな・・・。

「ルリア、降ろしてあげてくれ」

「分かったわ、何か私が悪者みたいだしね」

やはりルリアもそう思っていた様だ、子供たちは地面に降ろされるとよほど怖かったのか座り込んでしまった。

「お前たち名前は?」

「「「・・・・・・」」」

返事が無いな。

「名前を教えてくれたらこの果物を上げよう」

俺は子供たちの前に果物を差し出した、子供たちは果物に目を奪われて素直に名前を教えてくれた。

「ラルフ」

「エレン」

「オスカル」

名前を名乗った順に果物を一個づつ渡した。

『アドルフ、気付いていると思うがこの子達を城へ連れて行くぞ』

『承知しております、すでに手配は済ませました』

『流石だな、詳しい事は城に行ってから説明する』

『よろしくお願いします』

流石アドルフ、俺がこの子達を連れ帰る事は分かったようだ、理由はきちんと説明しないといけない様だが・・・。

「さてラルフ、エレン、オスカル、お前たちの仲間はエリオットとアンナ以外にまだいるのか?」

「・・・あと三人いる」

逃げられないと思って観念したのか素直に教えてくれた、エリオットが言った人数とも合うから間違いでは無さそうだ。

全員やせ細っているが病気はしていない様だな、しかし一応聞いて見てみるか。

「ラルフ、エレン、オスカル、俺は回復魔法が使える、中にいるアンナの病気も先ほど治療して元気になった、お前たちはどこか痛い所とかないか?」

「俺達は特に病気は無い」

「でも、マリーちゃんが・・・」

「マリーは病気じゃないだろ」

「マリーとはまだここに戻って来ていない子だな、その子がどうしたんだ?」

「マリーちゃんは左腕が無いの・・・」

「そうか、それも治療してやるから他の三人もここに連れて来てくれないだろうか?」

「マリーちゃんの腕治るの?」

「あぁ治るぞ、だから連れて来てくれないか?」

「分かった、行ってくる」

エレンと言う子が立ち上がり駆け出して行った。

「俺も行ってくる」

「俺も」

残りの二人もエレンを追いかけて行った、暫くするとエレンたちが残りの三人と思われる子供達を連れて戻ってきた。

マリーと呼ばれていると思われる女の子のは腕の肩から先が無かった、あの傷は斬られたのだろう・・・。

「連れて来たよ、マリーちゃんの腕、治してあげて」

エレンに手を引かれてマリーと言う子が俺も前までやってきた。

「少し触るぞ」

俺はマリーの左肩に触ると、マリーはびくっと震えて怯えていた。

ゆっくりと魔力を流し腕の治療を始めた、魔力で腕の形を作り、やがて綺麗なマリーの左腕が作り上げられた。

「「「すげー」」」

回りの子供たちは驚きの声を上げ、マリーは自分の左腕を確認するように手の平を握ったり開いたりしていた。

「ありがとう」

そう言うとマリーは泣き出してしまった、それをエレンがマリーを抱きしめて慰めていた。

マリーが落ち着きを取り戻したころ、俺は話を始めた。

「さて名前教えてくれないか?」

「私はマリー」

「トーマ」

「フリスト」

名前を教えてくれた順にまた果物を渡していった。

「リゼ、建物の中からエリオットとアンナを連れて来てくれないか、アンナは抱えてきたほうが良いかもしれない」

「承知しました」

リゼが二人を連れてきて、なぜかエリオットがアンナを抱えていた・・・少しふらついていて危なそうだが、リゼがいるから大丈夫か。

「俺の名はエルレイ、この街の新しい領主だ」

俺がそう言うと、皆信じていない様でこちらを怪しげな目で見つめて来た、まぁ同じ子供にそう言われても信じてはもらえないだろうな、俺が逆の立場でも信じないな。

「お前たちに俺の領地で盗みを働くのを許すわけにはいかない、そこで提案がある、ご飯と寝る場所を俺が提供する、その代わりお前達には働いてもらおうと思うがどうだろう?」

子供たちは皆で相談を始めた、こんな場所で生きて来たのだから協力していかないと駄目だったのだろう。

暫くするとエリオットが皆を代表して質問してきた。

「エルレイ、一つだけ条件がある」

「なんだ、言ってみろ」

「俺たちが働くのは構わないが、アンナ、エレン、マリーを働かせないで欲しい」

女性を守るとは、エリオットはなかなかいい男じゃないか。

「その約束は出来ない、彼女達にも働いてもらう、しかし厳しい仕事をさせない事は約束しよう」

俺の言葉を聞いてまた彼らは相談し始めた。

「エルレイ、女の子達は働かせなくてもよかったんじゃない?」

「そうです、エルレイさん酷いです」

ルリアとリリーに責められた、かなりショックだ、しかし引く訳にはいかない。

「ルリア、リリー、ただでご飯を食べさせる訳にはいかないんだよ、三人だけなら構わないが、この先また彼らと同じような子供達が出て来た場合、その都度たたでご飯を食べさせていては働く意欲が無い子供達ばかりになってしまうんだよ。

それにリゼやロゼにラウラも立派に働いている、女性だから働かせないと言うのは彼女達にも失礼だ」

「それはそうかもしれないわね」

「エルレイさん、ごめんなさい、先のことまで考えていたのですね」

ルリアとリリーの頭を撫でる、そうしていると話は纏まったのかエリオットが話してきた。

「分かった、皆働く事にする、しかしアンナはまだ病み上がりだ、暫く働かせないでやって欲しい」

「分かった、では契約成立だな、皆魔法で帰るから手を繋いでくれ」

「なんだ、帰りは魔法なのか?」

ヘルミーネが残念そうにそう言ってきたが帰ってからやる事が多いからな。

「この子達の世話があるから時間が無いんだよ」

「そうか、その通りだな」

ヘルミーネは納得したようで手を繋いでくれた、警備兵と子供達は少し戸惑っていた様だが、何とか全員手を繋ぐ事が出来た。

「いいか、手を離すなよ」

皆が手を繋いでいることを確認し転移でリアネ城の玄関へと戻ってきた。

「ここはどこだ!!」

「すげー城だぜ」

「お城綺麗」

子供達や警備兵は驚き周囲を見渡していた。

「アドルフ、子供達を風呂に入れて着替えさせてから食事を摂らせてくれ」

「承知しました」

アドルフは城内に入り、使用人たちを引き連れて出て来ると子供達を連れ城内へと消えて行った。

「噂には聞いておりましたが、すごい魔法ですね」

トリステンは驚いた様子で俺に話しかけてきた。

「まぁね、所でトリステン、あの子達の訓練を警備隊に任せるかもしれないが構わないか?」

「それはお安い御用です、しかしあの子達をどうなされるおつもりでしょうか?」

トリステンは俺が子供たちに仕事をさせる事が気になっている様子だ。

「そうだな、とりあえず読み書きに計算と、体を鍛える事が仕事だな、子供とはそういう物だろう?」

「それが仕事ですか・・・確かに普通の子供にはそれが仕事と言えるかも知れませんね」

「そうだろう、これからスラムの警備は強化してくれ、もし同じような子供がいたら保護して城に連れて来てくれ」

「承知しました」

「今は子供だけだが、将来的には俺の領地の人全てが読み書きが出来るようにしたいと思っている、そのための第一歩だな」

「すべての人が読み書きを覚えるとどうなるのでしょう?」

「トリステンは本を読む事があるか?」

「はい、主に兵法等の本になりますが」

「本とは先人の知識が詰まった物だ、それを読み書きを出来る人が増える事によって人は知識を蓄え、その知識を進化させて行く事が出来るようになる。

例えば今は馬車が乗り物だが、知識を進化していく事によって空を飛べる乗り物が出来るようになるかもしれない、そう言う事だ」

「それは壮大な考えですね」

「そうだな、しかし今出来る事は子供達に読み書きを教える程度だ、焦らずゆっくりやっていくつもりだ」

「私も微力ならがエルレイ様の力になっていきたいと思います」

「今日は付き合わせて悪かったな、他の者たちもすまなかった」

「いえ、大変勉強になりました、またお出かけの際はお声がけください」

トリステンはそう言って警備に戻って行った。

「俺達も部屋に戻ろう」

「歩き疲れたわ」

「うむ、とても楽しかったが疲れたな」

「そうですね、ゆっくり休むことにしましょう」

「私もう歩けない、エルレイ抱っこして部屋まで連れていって頂戴」

アルティナ姉さん、俺としてはそうしてやりたいが、それをやると皆俺にしがみついてくるような予感がする。

「アルティナ姉さん自分で歩いてください」

「エルレイのけち」

アルティナ姉さんはそう言うと、しっかりとした足取りで部屋へと歩いて行った。

「俺はアドルフの所へ行ってくるよ」

「後で私達にも説明しなさいよ」

「分かったよ」

俺はアドルフがいる執務室へと向かった、室内に入りアドルフの席を見ると書類が積み上げられていた、今日出かけていた分だろう、俺も手伝わないといけないな。

俺も自分の席に座るとアドルフがやってきた。

「アドルフ、今日はすまなかった、俺も仕事を手伝うから書類を回してくれ」

「それは勿論やって頂きますが、その前に説明をお願いいたします」

アドルフは珍しく怒っている様子だ、あんな子供を受け入れたのが気に入らないのだろう、今回だけならアドルフも怒らないだろうが、今後も続いて行く事はアドルフならば気が付いているだろうからな。

「あの子達を保護したのは情けをかけた訳でも無くちゃんと考えての事だ。

あの子達には働けるようになるまで読み書きに計算、それと体を鍛えて貰う事にする。

今は城でやるしかないが、今後あの子達を同じような子供を保護し教育する施設を作ろうと思う。

その事の意味は犯罪の抑制とより良い人材の確保にある。

その施設とは別に一般向けに教育の施設も作りたいと思う、そこではお金を貰い読み書き計算と魔法も教えたいと思う。

ここにいる皆はすでに気が付いていると思うが、魔法は誰でも使えるようになる、今使えない者は魔力が少ないだけでそれを補う事が出来れば使えるようになるだけだ。

幸いなことに貴族街に住宅は有り余っているからな、そこを使えば教育する人材さえ確保できれば難しい事ではないと思うのだが?」

「承知しました、しかしエルレイ様一つお伺いしたい事があります、魔法を教えるのは構いませんが、それには無詠唱も含まれるのでしょうか?」

「いや、無詠唱は教えない、無詠唱は強すぎて危険だからな、だが独学で習得できる者がいるかもしれないが、それはどうしようもないだろう」

「そうですね、人材の確保には時間がかかります、今日保護してきた者達はエルレイ様にお任せしてもよろしいでしょうか?」

「分かった、今日の所は食事をした後は休ませてやってくれ」

「承知しました、では書類をお渡ししますのでよろしくお願いします」

俺は夕食前まで書類と格闘する羽目となった・・・。

夕食後、部屋に戻り皆と今日の事で話し合いをしないといけないな。

「ロゼ、お茶をこれに入れてくれないだろうか?」

今日買ってきたティーセットを出すと、ロゼが受け取りお茶を入れに行ってくれた。

「そう言えばそんなのも買ったわね、すっかり忘れていたわ」

「子供達を保護した事が印象的だったからな仕方がない」

「そうですね、あの子達ゆっくり眠れるといいのですが」

「大丈夫だろう、使用人の話ではお腹いっぱい食べていたそうだからな、ゆっくり眠れているだろうさ」

「それでエルレイ、あの子達に読み書きを教えるのはどうするの?」

誰に教えさせるかはもう決めてある、後は本人に確認するだけだ。

「そうだなぁ、ラウラ、あの子達の教育係をお願いできないだろうか?」

「私がでしょうか、自信がありません・・・」

ラウラは大人しい性格だからな、そう言うと思ってはいた、しかしラウラは我儘だったヘルミーネを教育してきた実績がある、これ以上適任なのはいないと思うからどうにかやる気にさせないといけない。

「ヘルミーネはラウラが教育係になるのをどう思う?」

「うむ、ラウラは教えるのが上手だからな大丈夫だと思うぞ」

「そうか、アルティナ姉さんもラウラを手伝ってくれないだろうか?」

「いいわよ、お姉ちゃんに任せなさい」

「ラウラ、どうだろう、引き受けて貰えないだろうか?」

「・・・承知しました、アルティナ様よろしくお願いします」

ラウラは暫く考えてから同意してくれた、俺も時々様子を見に行って手伝わないとな。

「ラウラ、よろしくね」

「まぁ、全てをラウラとアルティナ姉さんに任せるわけでは無い、教えるのが上手く行かなかったり困った事があったら皆に遠慮なく相談してくれ」

「はい、よろしくお願いします」

「午前中は読み書きを教えるとして、午後は警備隊に任せて体を鍛えて貰おうと思う」

「エルレイ、女の子も警備隊に任せるつもり?」

「そうだな、女の子は魔法を覚えさせ、体を鍛えるのはリゼとロゼにやって貰おうか」

「それならいいわね」

「「承知しました」」

「魔法の事に関してだが、無詠唱は家族だけにしてあの子達には教えない様注意してくれ」

「エルレイさん、どうして教えてはいけないのでしょうか?」

リリーが首を傾げて聞いて来た。

「それは無詠唱が強すぎて危険だからだ、あの子達が無詠唱を使って暴れるかも知れないし、他の誰かに教えてその人が悪事に使うと大変だろ」

「そうですね、分かりました」

「今回あの子達だけ保護したが、他にもいるかも知れない、今後もあの子達の様な子供を保護して行くつもりだ。

暫くは城で預かるしか無いが、貴族街の空き家を使って保護する施設を作るつもりだ。

それが出来たら次は昨日話していた一般向けの教育施設も作りたいと思っている、そこでは魔法も教えるつもりだだから無詠唱は他人には教えない様にしないといけない」

「ちゃんと考えていたのね、あの子達が可愛そうだから連れて来たのだと思っていたわ」

「可哀そうだと思ったのは確かだが、犯罪者を減らす事の方が大きい、彼らが犯罪者と言う訳では無いぞ、彼らを利用して悪事を働く者がいるという事だ。

犯罪を無くす事は無理だが減らす事は可能だからな」

「そうだったのねごめんなさい」

「エルレイ、偉いわ、お姉ちゃんが抱きしめてあげる」

アルティナ姉さんはそう言ってソファーに座っている俺目掛けて飛びついて来た、何とか受け止める事は出来たが流石に痛かった。

「アルティナ姉さん、無茶しないで下さい」

「だってエルレイが可愛かったものだから仕方ないじゃない」

「アルティナ、今真面目な話をしているのだから離れなさい!」

「は~い」

ルリアが怒ると、アルティナ姉さんはゆっくりを俺から離れて元に位置に座った。

「ルリア、聞きたい事がある、三人の子供たちを捕まえた時どうやったんだ?」

「難しい事はしてないわよ、私とアルティナとロゼの三人で一人ずつ上げただけだから」

アルティナ姉さんは練習して無かったよな・・・。

「アルティナ姉さんも練習していたの?」

「して無いわよ、ただエルレイ達がやっていたのを見ていたから出来るだろうと思ってやっただけよ」

・・・ぶっつけ本番で持ち上げられた子供は練習台になったのか。

「ちゃんと子供に障壁を掛けてからやったから安全だったのよ・・・」

アルティナ姉さんも不味い事をしたのだと思ったのだろう、弁解する声が少し震えている。

「はぁ、やってしまった事は仕方が無いですが、今後練習していない魔法の使用を禁止します」

「ごめんなさい・・・」

アルティナ姉さんはしゅんとして肩を落として反省してくれた様だ。

「他の皆も魔法は危険な物だからきちんと練習しておくように、それからグール」

「俺様、何も悪いことしてねーぜ」

ついでにこいつも注意しておこう。

「お前知らない人の前では話さない約束だったよな」

「あれはマスターが他の剣を使おうとするからつい・・・」

「と言う事でグールは一週間話すの禁止な!」

「そんな・・・もう二度と約束は破らねーと誓うから許してくれ・・・」

「分かった、次約束を破ったら実行して貰うからな」

「約束するぜ」

「エルレイ、甘いんじゃない?」

「てめーよけーな事言うんじゃねーよ」

「エルレイ、グールを寄こしなさい、溶かしてやるわ」

「姐さん、ごめんなさい許してください」

「口の減らない奴ね、ずっとしゃべらせない方が良いんじゃないかしら」

「ルリア、気持ちは分かるが少し我慢してやってくれ」

「ふんっ!」

「後は街の様子で気になった所はあるだろうか?」

「エル、街は初めて見たのだ気になった所など分からないぞ」

「ヘルミーネの言う通りか、俺も初めて見たしよく分からなかった、頻繁にはいけないがまた出かける事にしよう」

「うん、もっと色々食べたい物があったからな」

「そうね、市場で見かけたものは食べてみたかったわね」

「いい匂いがして美味しそうでした」

「私ももっと食べたかったわ」

やはりみんな我慢していた様だな、今度行くときはその場で食べなくても買って持ち帰ればいいか。

「今度行く時は買って帰る事にしよう、そうすればいつでも食べられるだろう」

「うむ、エル約束だぞ」

「あぁ約束しよう、ではそろそろ寝るとしようか」

「そうしましょう、おやすみなさい」

「おやすみ」

皆歩き疲れていたのだろう、ベッドに入るとすぐ眠ってしまった様だ、それは俺も同じだった。


翌朝朝食後、ラウラとアルティナ姉さんを連れて子供たちの部屋へと向かった、部屋に入ると朝食を食べてお腹いっぱいになったのだろう、ベットで皆寛いでいた。

「皆おはよう」

俺が早に入り挨拶をすると皆飛び上がりベッドから降りて俺の前に来た。

「エルレイ、いやエルレイ様ありがとうございました」

「「「ありがとうございました」」」

エリオットが代表してお礼を言って頭を下げると皆続いて頭を下げた。

風呂に入って着替えた事で皆見られるようになっているな、多少服が大きい様だが急に用意したにしては上出来だろう。

「皆気にする事は無い、お前たちには食事に見合う分の仕事をして貰うからな、それと俺の事はエルレイと呼び捨てで構わないぞ」

「・・・いいのか?」

エリオットは頭を上げおずおずと聞いて来た。

「構わないぞ、年齢が近いお前たちに様付けで呼ばれるのは嫌だからな」

「エルレイ、分かったよ、改めてありがとう」

「さて、お前たちにやって貰う仕事だが、午前中は文字の読み書きを覚えて貰い、午後は体を鍛えて貰う」

「・・・それが仕事なのか?」

「そうだぞ、厳しく教えるから覚悟するんだな」

「本当にそれで飯が食えるのか?」

「本当だ、それともこの仕事は嫌か?」

「やるよ、やってやるよ、こんなので飯が食えるなら簡単な物さ」

エリオットはそう言ったが簡単な物では無いぞ、ラウラの厳しい教育が待っているのだからな。

「ではまず自己紹介をしよう、俺の名はエルレイ・フォン・アリクレット、覚えにくいだろうからエルレイで構わない、年齢は十一歳だ。

こちらがお前たちの先生で、ラウラ先生とアルティナ先生だ、よく言う事を聞くように」

ラウラとアルティナ姉さんに自己紹介をするよう目配せする、アルティナ姉さんは気付いてくれたがラウラは緊張している様だ。

「私がアルティナ先生よ、皆よろしくね・・・ラウラ?」

「はい、ラウラです、よろしくお願いします」

「じゃぁ、エリオットから名前と分かれば年齢を教えてくれ」

「分かった、俺はエリオット、十四歳だ」

「アンナ、十二歳です」

「ラルフ、十三歳」

「エレン、十三歳よ」

「オスカル、十四歳だ」

「トーマ、十一歳です」

「フリスト十二歳」

「マリー、八歳です」

子供たちは俺より年上が多かった、皆背丈は俺と同じか、小さいくらいなのだが、栄養が足りて無くて成長が遅れているのだろう。

これだけ年齢が高いと女の子と部屋も分けた方が良さそうだな。

「アンナの体調は良くなったのか?無理なら寝ていて構わないぞ」

「大丈夫、元気になりました」

「エリオット、そうなのか?」

「あぁ咳もしなくなったし、ご飯を食べてから元気になったよ」

「それはよかった、マリーも手は問題無いだろうか?」

「はい、エルレイ様もう大丈夫です、ありがとうございました」

マリーは笑顔で左手を俺に向け手を振り、動くのを見せてくれた。

「他の者も気分が悪かったり痛い所があれば治療してやるから遠慮なく言ってくれ、それと無理もしなくていいからな」

「「「はい」」」

「ラウラ、アルティナ姉さん、後は任せる」

「はい、お任せください」

「エルレイ、安心して任せておきなさい」

「エルレイ様、行ってしまうの?」

マリーが寂しそうに俺の事を見て来た。

「俺も仕事があるからな、さぼると怒られるんだ、午後また来るよ」

俺はそう言って笑いかけると、マリーもにこやかに笑ってくれた。

部屋を出て執務室へ向かった、昨日の仕事が終わらなかったからだ・・・。

午前中いっぱい書類を片付けて昼食後また子供達・・・俺より年上が多いが、まぁ子供達だな、その部屋にリゼとロゼを連れてやって来た。

「読み書きの勉強はどうだったか?」

俺が部屋に入り声を掛けると皆死んだ魚のような目をしていた、余程厳しかったのだろうか?

「エルレイ、確かにあれは仕事だった・・・」

「そうか、しかしお前たちには食べた分しっかりやって貰うからな」

「分かってるよ・・・」

「それと、今夜から寝る部屋を男女別にするからな」

「なんでそんな事を?」

「お前たちは知らないかも知れないが、普通男女別に寝るものだ、別に何か酷い事をする訳では無いから心配するな、部屋は隣だしな」

「そう言う物なのか?」

エリオットは皆の方を向き尋ねた。

「そうよ、エリオット、私は別の部屋で眠られるのなら嬉しいわ」

「私も別が良い・・・」

エレンとマリーはやはり別に寝たい様だ、しかしアンナはお兄ちゃんと離れたく無いのか考え込んでいる様だ。

「アンナ、何時までもお兄ちゃんと一緒にいる訳には行かないのよ」

「そうなのかな・・・」

「そうなのよ、エルレイ、私達三人別の部屋で寝るからお願いね」

「分かった、手配しておくよ、では午後の仕事に行こうか、男は俺と一緒に、女の子はこちらのリゼとロゼに着いて行ってくれ」

「「「はい」」」

エリオット達を連れて城の警備隊の詰め所へと歩いて行く。

「エルレイ、アンナ達は何処へ行ったのだ?」

妹のアンナの事が心配なのかエリオットが俺に聞いて来た。

「エリオット達と同じ仕事をさせたら厳しいだろ?だから魔法を覚えて貰うために城の訓練場へ行って貰った」

「魔法だって!!」

「俺も魔法を習いたい」

「僕も魔法使いたい」

「俺も!」

「俺も!」

皆魔法を覚えたい様だな、それは後で教えるとして、まずは体力作りだな。

「勿論エリオット達全員魔法を覚えて貰うぞ、でもまずは体力を付けてからだな」

「本当に俺達も魔法を覚えられるんだな?」

「本当だとも」

「よーし、皆頑張ろう」

「「「おー」」」

魔法に釣られて元気になった様だが、この先地獄が待っているとは思うまい。

詰め所へ着きトリステンを呼んで貰う。

「エルレイ様、お待たせしました」

「トリステン、すまないな、この子達の訓練頼めるだろうか?」

「お任せください、立派な兵士に仕上げて見せましょう」

トリステンはかなりやる気の様だ、やり過ぎないか心配だな・・・。

「でもまだこいつら今まで栄養が足りて無くて痩せ細っているから、あまり無理はさせないでくれ」

「心得ております」

「お前たち、トリステンの言う事をよく聞いて頑張ってくれ」

「「「はい」」」

エリオット達をトリステンに預けて俺は転移で訓練場へ来た。

丁度リリーが魔法を教えている所だった。

「リリー、どんな感じだ?」

「エルレイさん、皆普通に使える魔力を持っています」

「そうか、それは楽でいいな」

「はい、エルレイさんも教えてくれませんか?」

「分かった、手伝おう」

俺もリリーたちが座っているベンチに腰掛ける。

「さてアンナ、エレン、マリー、これから魔法を教える訳だが守って欲しい事がある。

魔法はこの訓練場以外で使わない事、そして今ここにいるリリーか俺がいる時にしか使ってはいけない。

それは魔法がとても危険な物で、簡単に他人を傷付けてしまうからだ。

これが守れないなら魔法は教えられない」

俺は少しきつめに皆を睨みつけた、ヘルミーネみたいに城内で魔法を使われたら城から追い出さないといけなくなるからな。

「エルレイ分かったわ、守るから教えて下さい」

「私も守ります」

「エルレイ様、ちゃんと守るよ」

皆真剣な表情で約束してくれた

「よろしい、では俺は誰を教えよう?」

「エルレイ様、私に教えて下さい」

マリーが俺の横に来て座りお願いしてきた、腕を治したせいで懐かれてしまった様だな、可愛いから問題無いが。

「分かった、マリーに教えよう、初めて魔法を使うと魔力切れで気絶してしまうが、誰でもなるので気にしない様に」

「はい」

マリーに呪文を教えて唱えさせる、水属性は駄目で地属性を使える事が出来た、その後マリーは気を失ったので倒れないよう意識が戻るまで支えてあげた。

アンナとエレンもリリーに呪文を教えて貰い、無事魔法を使う事が出来た様だ。

三人とも意識を取り戻すと魔法が使えた事を皆で喜びあっていた。

「エルレイ、それとリリーさん、ありがとう」

「「ありがとう」」

「今日はこれで魔法の訓練は終わりだ、無理をしてはいけないからな。

心配しなくても毎日魔法の訓練を行って貰う、これからいっぱい魔法が使える様になるからな」

「「「はい」」」

「では少し運動して貰おうか、運動の指導をしてくれるのはロゼ先生とリゼ先生だ、見ての通り双子で見分けがつかないかも知れないが慣れてくれ」

「「「よろしくお願いします」」」

「はい、よろしくお願いします」

「リゼ先生って、なんだか不思議な感じです」

「そうか?似合っていると思うぞ」

「そうでですか!じゃ頑張って教えますね」

「二人とも頼んだ、リリー、魔法の訓練に行こうか」

「はい、エルレイさん」

ロゼはいつも通りだがリゼは張り切っていた、まぁロゼが居るから無茶な事はさせないだろう。

リリーを連れて他の皆が魔法の訓練をしている所にやって来た、ルリアとアルティナ姉さんは飛行魔法の練習をやっていた。

俺もそちらに行こうかと思ったが、ヘルミーネとラウラの練習一度も見てないかったからな、先に様子を伺ってみるか。

「ヘルミーネとラウラは魔法はどのくらい使える様になっただろうか?」

「エル、変化は使える様になったぞ、強化と圧縮も感じは分かって来た」

「そうか、ヘルミーネはやはり魔法が上手い様だな」

「えへへ」

ヘルミーネの頭を撫でてやるととても嬉しそうにしていた。

「ラウラはどうだ?」

「はい、ようやく上級魔法が使える様になりました」

「ラウラ、凄いじゃないか」

上級魔法が使える様になったと言うのにラウラは浮かない表情だ。

「ですが無詠唱が出来ません」

そうか、魔力を上手く感じる事が出来ないのか、こればかりは上手く教える事が出来ないんだよな。

「リリー、何か問題でもあるのだろうか?」

リリーは暫く考えてから話して来た。

「・・・特に問題があるわけでは無いのですが、魔力を上手く感じる事が出来ないだけだと思います、エルレイさん、私とルリアに最初にやった方法を試しては貰えませんか?」

「最初にやった方法?何か特別な事をしたつもりは無いと思うが・・・」

「エルレイさんが背中から抱き付いたやつです」

リリーが少し顔を赤くしてそう答えてくれた、あれは魔力を見ただけで特に何も無いと思うけどな。

「やるのは構わないが、それで魔力を感じられるようになるのか?」

「はい、私はエルレイさんの魔力を感じて出来る様になりましたから」

リリーがそう言うならやってみるか、別に悪い事でもないしな。

「ラウラ、後ろから抱き付くけどいいか?」

「はい、よろしくお願いします」

ラウラは若干緊張している様だがまぁいいか、ゆっくりとラウラの背後から抱き付きラウラの柔らかい感触と暖かな体温を感じる。

「ではラウラ、力を抜いて目を閉じ、ゆっくり呼吸して体内の魔力を感じてくれ」

「はい、分かりました」

ラウラの緊張は徐々に抜けて行き呼吸も落ち着いて来た、リリーは俺の魔力を感じたと言ってたな、少し魔力を流し込んでみるか。

ゆっくりと俺の魔力をラウラに流して行く。

「ラウラ、魔力を感じ取る事は出来るだろうか?」

「はい、暖かなエルレイ様の魔力が私に入って来るのが分かります」

「いいぞ、目を閉じたまま魔力を感じながら魔法を唱えてくれ」

「はい、大地を潤す恵みの水よ、我が魔力を糧として水球を作り給え、ウォーターボール」

呪文は問題なく成功した、魔力を感じ取る事は出来ただろうか?

「ラウラ、魔力の動きが分かっただろうか?」

「はい、分かりました」

「それでは、今の魔力の動きを再現する様に魔法をイメージして、呪文を唱えないでやって見てくれ」

「はい、やってみます」

ラウラの前に先程と同じよう水玉が出来魔法は成功した。

「ラウラ、上手くできたぞ」

「はい、エルレイ様ありがとうございます」

「今のを忘れない様に何度か練習しよう、今まで見てやれなかった分、今日はラウラの訓練に付き合うからな」

「はい、よろしくお願いします」

後ろから抱き付いているためラウラの表情を伺う事は出来ないが、声は先程の様に沈んでいないから元気になってくれたのだろう。

ラウラはその後も無詠唱で魔法を使う事が出来、完全に習得出来た様だ。

ラウラの訓練を終え、エリオット達の様子が気になったので警備隊の詰め所の前に転移した。

詰め所の中に入るとエリオット達はソファーでダウンしていた、そこにトリステンもいたので話を聞いて見る事にする。

「トリステン、皆疲れ果てている様だが訓練はどうだった?」

「エルレイ様、先程訓練を終えた所です、初日ですから無理はさせない様手加減致しました」

「そうか、暫く午後預けるからよろしく頼むよ」

「承知しました」

「お前ら帰るぞ」

「動けません・・・」

「歩けないー」

「もう少し休ませてくれー」

「もう無理・・・」

「死ぬー」

・・・トリステンに相当鍛えられたのだろうか、しかし話せる元気はある様だな、手加減したのは本当だろう。

「そうか、俺は先に戻ってる、お前らの食事はエレン達が食べてしまうかも知れないな・・・」

食事と聞くと皆勢い用立ち上がって俺に詰め寄って来た。

「食事を抜かれたら本当に死んでしまう」

「飯をくれー」

「ごはんー」

「では帰るとしよう、しかしお前らは食事の前に風呂だ!汗臭い・・・」

「「「そんなー」」」

皆を連れて歩いて城に戻り後の事は使用人に任せた、俺も風呂に入り、夕食後部屋で紙とペンを執務室より持って来て本を書く事にした。

今後魔法を教える際に使う入門書だ、今まであった本は不親切なうえ魔力が少ない人用では無いからな。

皆が寛いでいるソファーに俺も座り紙とペンを置いた、本を書く前にウィルに話を聞いて見よう。

「ウィル、姿を見せて貰えないか?」

「うん、ご主人様なに?」

「ウィル、少しは安心出来るようになっただろうか?」

「う~ん、この部屋なら安心出来るかな」

「そうか、それならウィルが安心できる場所ならいつでも出てきて構わないからな」

「うん、ご主人様分かった」

「ウィルが怖くなったら隠れて構わないから」

「じゃぁ、この部屋にいる時は姿を出しているね」

「そうしてくれ」

ウィルは楽しそうに飛び回ってから肩に座った、さて本を書く事にするか。

「エル、勉強するのか?」

隣に座っていたヘルミーネが何も書いて居ない紙を見てそう聞いて来た。

「初心者向けの魔法書を書こうと思ってね、今後必要になるからな」

「エル、凄いな、手伝ってやりたいが私には無理だな」

ヘルミーネは残念そうに肩を落とした。

「そんな事はないぞ、横で見ていて気になる所があったら言ってくれればいい」

「そうか、分かった」

ヘルミーネはにっこりと笑って元気を取り戻してくれた。

「それならお姉ちゃんも手伝うわよ」

アルティナ姉さんも俺の隣に座ってきた。

「アルティナ姉さん、お願いするよ」

「任せておきなさい」

俺は本を書きながら、今日の事を聞く事にした。

「ラウラとアルティナ姉さん、あの子達の教育は上手くいったのだろうか?」

「はい、あの子達は素直で頑張ってくれました」

ラウラは即答して答えてくれたが、アルティナ姉さんは少し考えていた。

「・・・そうね、やり方はともかく覚えてくれたと思うわよ」

「まぁ、一日で結果が出る訳では無いから、あの子達が読み書きを覚える努力をしてくれる様なら問題無いさ」

「それなら大丈夫、皆必死だったから・・・」

アルティナ姉さんが遠い目をしている、ラウラの教え方が厳しかったのだろうか?

「うむ、ラウラが教えるのだから皆すぐに読み書きが出来る様になる」

ヘルミーネがそう言うのなら大丈夫だろう。

「リゼとロゼ、運動の方はどうだった?」

ラウラにずっと抱き付いていたため見えなかったんだよな。

「アンナは病気していたせいでしょう、少し体が弱かったですが、エレンとマリーは訓練に付いて来る事が出来ました」

「分かった、アンナも少しずつ体を鍛えてやってくれ、数年後本当に働く事になった時に体力が無いと困るからな」

「承知しました」

「エルレイ、男の子の方はどうだったのかしら?」

「警備隊長のトリステンに鍛えて貰った、帰りに迎えに行ったが歩いて帰る元気は残っていたから大丈夫だろう」

「それなら問題なさそうね」

話をしているうちに大方魔法書を書き終える事が出来た、初心者向けだから呪文と魔力の増やし方等基本的な事しか書いて無いからな。

「エルレイ、ここの表現難しく無いかしら?」

アルティナ姉さんの指摘を受けた部分を書き直す。

「こんな感じでどうだろうか?」

「さっきより分かりやすいわ」

「ヘルミーネ、どうだろう?」

「私もそう思う」

「他にはないか?」

「ここもかしら」

アルティナ姉さんとヘルミーネに確認して貰い、数か所書き直して皆にも見て貰った。

それを清書して初心者向けの魔法書が完成した。

「出来上がった、皆ありがとう、少し遅くなったからもう寝よう」

「そうね、おやすみなさい」

「「「おやすみなさい」」」


翌朝昨日書いた魔法書を持って執務室へ向かった、室内に入り自分の席に座る。

「エルレイ様、おはようございます」

「アドルフ、おはよう、これを複数写本して貰えないだろうか?」

「エルレイ様、これは?」

「魔法が使えない人の為の魔法書だ」

「拝見してもよろしいでしょうか?」

「勿論構わない、読んで気になる点があれば言ってくれると助かる」

「少々お待ちください」

アドルフは魔法書を受け取ると自分の席に戻り読み始めた、暫くして読み終えたアドルフは再び俺の前へやって来た。

「初めて見る魔法が御座いますが、これはエルレイ様が考えたものでしょうか?」

「そうだ、誰でも持っている魔力量で使える様、初級魔法より使用魔力量を抑えてある物だ」

「分かりました、本の内容について訂正するところはございません、しかしこれを一般に広めるのは控えて頂きたいのですが・・・」

「信頼がおける者にしか渡さないようにするよ、それが出来上がったら警備隊長のトリステンに一冊渡して警備隊に魔法を覚えて貰おうと思うがどうだろうか?」

「承知しました、但しこの本は私が管理致します、そして渡す人物も私が調べてから判断させて頂きます」

アドルフが管理してくれるなら問題が起きることは無いだろう。

「すまないが、アドルフに任せるよ」

「はい、ありがとうございます」

「仕事が無ければ訓練に行こうと思うが?」

「エルレイ様、仕事ではありませんが、以前頼まれておりました木材を売っている場所が分かりました」

アドルフは俺に地図を差し出して来た、そう言えばベッドの材料を頼んでいたな、すっかり忘れていたよ。

「ありがとう」

地図を受け取り見ると街の郊外にある様だ。

「そこは貴族向けの家具や調度品を作っている所で、木材も売ってくれるそうです」

「分かった、行って来るよ」

「お気を付けて行ってらっしゃいませ」

俺は執務室を出て行く、アドルフは街に出る時は危険だと言うのに郊外に買い物に行くのは問題無いのだろうか?

まぁ護衛を付けると言われても困るからいいのだが、何か納得できない、俺の事だからロゼかリゼを連れて行くから安全だと思っているのだろうか?

勿論連れて行くけどね、ベッドの件だからロゼを連れて行こう。

『ロゼ、今何処にいる?』

『エルレイ様、皆様と訓練場におります』

『分かった、そっちに向かう』

転移で訓練場へ移動し皆がいる場所に向かった。

「エルレイ、剣の相手をして頂戴」

ルリアは訓練用の剣を持って俺の所にやって来た。

「ルリア、すまない、用事で出かけて来なければならない」

「そうなの?所でどこに行くのかしら?」

「ベッドの材料を買いに行くんだよ」

「それなら仕方が無いわね、行ってらっしゃい」

ルリアは元いた所に戻り型の練習を始めた。

「ロゼ、今から買いに行くが着いて来て貰えるだろうか?」

「承知しました」

「場所はここだ」

俺はロゼに地図を渡した、リゼは自分が呼ばれなかったから残念そうにしていた、俺もリゼを抱えられなくて残念だ。

そこでふと思った、別にロゼを抱えて飛んでもいいよな?そうしよう、いい考えだ。

「ロゼ、抱きかかえるぞ」

俺はロゼの返事を待つ事無くロゼを抱きかかえた。

「エルレイ様、私は自分で飛べるのですが・・・」

「もちろん知っているが、何時もリゼばかり抱えているからロゼも抱えないと不公平だろ?」

「そこは私の指定席なのにぃぃぃ!!」

リゼが叫んでいるが無視して飛び立った、ロゼは腕を俺の首に回してしっかりと掴まっていた。

「ロゼ、嫌だったか?」

「その様な事はありませんが、少し恥ずかしいです」

「今は誰も見ていないから気にすることは無いぞ」

「それはそうですが・・・分かりました、エルレイ様を堪能させていただく事にします」

ロゼはそう言うと俺の胸に顔を寄せて抱き付いて来た、ロゼのいい匂いと柔らかな感触が感じられてとてもいい。

「ところでエルレイ様、ベッドの事で思ったのですが、ベッドを作って貰い、その中にはめ込む形にしてはいかがでしょう、今置いているベッドの見た目が部屋に合っていないのです」

それは俺も気にしていたが、誰も何も言わなかったから大丈夫なのかと思っていた。

「やはりそうか、これから行く所は貴族向けに家具を作っている所だから頼んでみよう」

「はい、お願いします」

ロゼを堪能するためゆっくりと飛び、目的地へと辿り着いた、そこは山の麓に作られた大きな建物だった。

ここなら木を切って運ぶ手間が少なくて済むわけだな。

建物内に入り作業場を覗くと、人はいるが暇そうにしていた。

「すみません、責任者の方はいらっしゃいませんか?」

俺が声を掛けると体つきが良い五十歳位の男性が近寄って来た。

「俺がここの責任者のトレンツだ、何の用だ?」

「私はエルレイと申します、作って貰いたい物があり、ここへ伺いました」

「エルレイ?どこかで聞いた事がある名だな・・・それで何を作って欲しいのだ?言っておくが値段は高くなるぞ」

貴族用の家具を作っている所だから当然高いのだろう、俺も一応見た目は貴族でメイドも連れているが、子供だからお金が払えるか心配したのだと思う。

「お金は持っております、作って貰いたいのはベッドなのですが少々形を変えて欲しいのです」

「金を持っているのなら作ってやるぜ、どうせ暇だったからな、どんな形でも構わないぞ」

「どうして暇なのでしょうか?」

「そりゃあ、この国が戦争に負けて今まで贔屓にして貰ってた貴族がいなくなっちまったからな」

なるほど、確かに暇になるよな・・・。

「それは大変申し訳ございませんでした」

「なんでお前が謝るんだ?」

「それは私がアイロス王国を滅ぼし、新しい領主になったからです」

「ええええええ、お前が、いや貴方様が新しい領主様!!大変失礼致しました!!」

トレンツは後ろに下がり頭を下げて謝って来た、俺が領主だと分かると周りにいた職人たちも慌てて頭を下げていた。

「頭を上げてください、私は気にしておりませんから」

「しかし、領主様とは知らず無礼の数々申し訳ございません」

「私は子供ですから今まで通りで構いませんよ、それよりベッドの注文をお願いします」

「分かりました、それでどの様な形の物がよろしいでしょうか?」

「ベッドの見た目が分かる物はありますか?」

「はい、ございます、中へどうぞお入りください」

トレンツに案内され綺麗な応接室のソファーに座った、家具を作っている所だけあってソファーもテーブルもとても良い物だった。

「此方になります」

トレンツは数枚のベッドの絵を差し出して来た。

「ロゼ、どれが部屋に合うか選んでくれないか?」

「承知しました」

ロゼと二人で絵を見比べて落ち着いた感じのベッドをロゼが選んだ。

「こちらでしょうか」

「俺もそれが良いと思う、トレンツさん、見た目はこれでお願いします」

「承知しました、それで形を変えるとはどの様な感じなのでしょうか?」

「そうだな、取り合えず見て貰った方が良いでしょう、先程の作業場へ向かいましょう」

「作業場でしょうか、分かりました」

トレンツは俺が作業場で何を見せるのか分からず困惑している様だ、作業場に着き予備で作って置いたベッドを取り出した。

「いきなりベッドが出て来た!!」

トレンツや周りの職人達も目の前にベッドが出て来てとても驚いていた、事前に説明するの忘れていたな・・・まぁしょうがない。

「このベッドは私が魔法で作った物だが非常に重くて見た目も悪い、そこで先程のベッドにこれを小さくした物を入れられるように作って欲しいのだが、出来るだろうか?」

「領主様、このベッド触ってもよろしいでしょうか?」

「構わない、横になってみるといい」

「ありがとうございます」

トレンツはベッドに近づき色んな角度から眺めてからベッドに寝ころんだ。

「この感触は素晴らしい、おい、お前たちも触らせて貰え」

トレンツはベッドの感触を確認し終わるとこちらに戻って来た。

「領主様ベッドの感触は今までに無い物でした、よろしければ中に何が詰まっているのか教えて頂きたいのですが・・・」

「勿論構わない、中には水が入っているだけだ、ただ、水が漏れ出ない様にするのがとても難しいと思う」

「水ですか・・・」

「今回作って貰いたいベッドには、中にあれのサイズを小さくしたものが入るよう作って欲しい、重量もかなりあるから入れても壊れない様お願いしたい」

「何台ほどお作り致しましょう?」

「取り合えず一台作ってみてくれないか、それが上手くいけば十台、いや二十台位注文しよう」

「ありがとうございます、十日、いや七日でお作り致します」

「急ぐ必要は無い、良い物を作って欲しい」

「それは勿論でございます」

「それでは七日後、またここ訪れるからよろしくお願いする」

「こちらから城へお運びいたしますが」

「いや、ここで構わない」

「承知しました、最高のベッドをお作り致します」

俺はベッドを収納して作業場を後にした、またロゼを抱きかかえて飛び上がった。

「エルレイ様、転移でお戻りにならないのでしょうか?」

「ロゼとこうして空の散歩を楽しみたかったからだが、嫌だったか?」

「分かりました、ではゆっくりお願いいたします」

ロゼと二人空の散歩を楽しんでリアネ城へと戻った。

その日の午後訓練を終え城内に戻ると、アドルフに本を二冊渡された。

「エルレイ様、本が出来上がりしましたのでご確認ください」

俺が書いた本は写本され丁寧に製本されていた、内容を読んで問題が無い事を確認した。

「アドルフ、問題無い、ありがとう」

「一冊はエルレイ様がお持ち下さい、もう一冊はトリステンへお渡しください、その際運用に注意するようお伝えください」

「分かった」


翌朝警備兵の詰め所にやって来てトリステンを呼んでもらう。

「エルレイ様、お待たせ致しました、本日はどの様なご用件でしょうか?」

「二人で話せる場所はあるだろうか?」

「はい、私の執務室へどうぞ」

トリステンに案内され詰め所の奥にある部屋へと入り、ソファーにトリステンと向き合って座った。

「トリステンに渡す本があって来た」

俺は本を取り出しトリステンの前のテーブルに置いた。

「この本ですか、中を見てもよろしいでしょうか?」

「構わない、中身は初心者向けの魔法書だ」

トリステンは本を手に取り読み始めた、そんな分厚い本じゃないからな、少ししてトリステンは本を閉じこちらを見て来た。

「この本の通り行えば誰でも魔法が使える様になると?」

「そうだ、そしてその本はトリステン以外読む事を禁止する」

「そうでしょうね、、この本は危険すぎる・・・」

「とは言えトリステンが本内容を理解をして部下に魔法を教えて見てくれないか?」

「よろしいのでしょうか?」

「その為に書いた本だ、でもまずはトリステンが魔法を使えるようになるか試してみてくれ」

「それは勿論行います」

「今時間があれば試してみないか?その本に書いてあるように最初は魔力切れで意識を失う、誰かが付いていないと危険だからな」

「エルレイ様、よろしくお願いします」

「では訓練場へ行こう」

「少しお待ちください、部下に連絡してきます」

トリステンが部下に連絡を終えた後、転移で訓練場へと来た。

「ではその本に書いてある通り行ってくれ」

「分かりました」

トリステンはもう一度本に目を通し呪文を唱えた、魔法は正しく発動されトリステンは魔力切れで意識を失った。

横で倒れない様支えたが重いな、ずっと支えているのはきついし、男を支えるのは趣味じゃないから横に寝かせた。

しばらくするとトリステンは意識を取り戻し起き上がって来た。

「私の魔法は上手く出来たのでしょうか?」

「出来たぞ、魔法が発動し魔力が無くなったから意識を失った訳だ、これを毎日続ける事によって魔力量が増えるかも知れない」

「確実に増える訳では無いのでしょうか?」

「今の所教えた人は全て魔力が増えている、しかしこれは二十歳未満の者に対してしか行っていない。

魔力が増える事が出来る年齢、と言うのがあるのか無いのか分からないんだよ」

「なるほど、それで私達を使って調べたいと?」

「その通りだ、魔法を教えた部下の年齢と魔力がどれくらい増えたか資料を作って貰えると助かる」

「承知しました、魔法が使える様になる代償がそのような物ならお安い御用です」

「それと、その本の内容を出来れば覚えてアドルフに返却して欲しい」

「すぐにとは行きませんが、なるべく早くお返しいたします」

「ついでにあの子達にもそれで魔法の指導をしてやってくれないだろうか?」

「承知しました」

「では戻ろうか」

トリステンを詰め所に送り届けた後、訓練所へまた戻ってルリアと剣の訓練を行った。


六日後俺とロゼは再びトレンツの所を訪れていた。

「領主様出来上がっております」

トレンツに案内され出来上がったベッドを見せて貰う。

とても上品な見た目に仕上げられており、中は俺の注文通り空けてあり、重い物が載っても大丈夫なよう分厚い板が張られていた。

「では中に入れる物を外で作って来る、少し土を貰うが構わないだろうか?」

「それは構いませんが、今からお作りになるので?」

「すぐ出来るからな、少し待っていてくれ」

「私達も見せて貰って構わないでしょうか?」

「構わないぞ」

俺が外へ移動すると皆ぞろぞろと見学に来た、見ていても何が起こっているのか分からないだろうがな。

俺は土を掘りだし圧縮して先程のベッドに合うように調整して箱を作った、それに水を入れて上に動く仕掛けを施して完成だ。

ここまで五分かかっていないだろう、あまりの速さに皆呆然としていた。

「では中に戻ってベッドにはめ込んで見るとしよう」

作った物を収納してベッドの所へ戻る。

「はめて見るぞ」

「はい、お願いします」

収納より取り出し飛行魔法で浮かせて、ゆっくりとベッドにはめ込んでいく、少し大きめに作ったのでサイズを微調整しながら隙間なくはめ込むことが出来た。

小さいと隙間が出来て動いてしまうからな。

俺は出来上がったベッドに乗り水漏れしていないか確認する、大丈夫の様だな。

「完成だ」

「「「おぉ~」」」

「領主様、お見事でした」

「代金を支払おう」

「ありがとうございます」

トレンツに請求された金額はそれなりにしたが、この前ロイジェルク様が買った机よりは安かった・・・。

「このデザインと同じものを十台、デザインが違うのを十台、全部で二十台お願いする」

「承りました、出来次第お城へお運びいたします」

「頼んだ」

ベッドを収納し城へ戻る事にする、行きは転移できたが、焦って帰る必要は無いのでロゼを抱えてゆっくり飛んで帰った。

『エルレイ様、よろしいでしょうか?』

飛んでるさなかソフィアさんから念話が入った。

『ソフィアさん、何か御用でしょうか?』

『はい、女王様がお呼びでございます、明日こちらへ来て頂けないでしょうか?』

『分かりました、明日の朝お伺いします』

『ありがとうございます、ではお待ちしております』

ソフィアさんとの念話が終わった、女王様から呼び出しとはリースレイア王国が攻めて来たのだろうか・・・。

「ロゼ、今ソフィアさんから念話が入り明日ルフトル王国に行かなくてはならなくなった」

「戦争でしょうか?」

「分からない、急な話だから明日はリゼと二人で行く事にするよ、ロゼはラウラと共に準備をしていてくれないか?」

「畏まりました」

戦争はまだ先の様に話していたが、予想外の事は何時でも起こるからな。

俺は気を引き締めこれからの事に思案しながら城へと戻った・・・。

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