表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢の婚約者  作者: よしの
第一話 アリクレット男爵家
13/27

第十二話 精霊の街

テーヌの街へ到着し、門を通過する所で街の警備兵に馬車を停止させられ、一人の兵士が俺たちが乗る馬車へと近づいてきて声をかけてきた。

「失礼します、ソートマス王国の使者様御一行とお見受け致します、間違いございませんでしょうか?」

「うむ、私はロイジェルク・ヴァン・ラノフェリア公爵、陛下の名代として参った」

ロイジェルク様は馬車の窓を開け応じた。

「宿の準備が整っております、ご案内いたしますので、本日はごゆっくりお過ごしください」

「ありがとう」

兵士は戻っていき、馬車の前後を警備兵に囲まれながら宿屋へと向かった。

「警戒されているのでしょうか?」

「そのようだな」

「アイロス王国を滅ぼした張本人が来ているのだもの、当然じゃない?」

ルリアの言う通りかも知れないな、俺がこの国に攻め込むつもりが無くても、向こうはそう取ってはくれないだろう。

「そうかも知れないな、しかし街並みはあまり変わりませんね」

「そうね、精霊がいるのなら、もう少し神秘機的な物を期待していたのだけど・・・」

俺もそう思っていたが、いたって普通の街並みだ。

「この街は人が住んでいる街だからな、精霊は王都にいるらしい」

「そうなのですね、所でその王都は何処にあるのでしょう?」

街に入るときに周りを見たが山と森が広がっているだけで、この街の近くに王都がある様な感じでは無かった。

「私も話を聞いただけだが、あの高い山の麓に王都への入り口があるらしい」

ロイジェルク様が指さした先には高い山がそびえ立っているが、とても都があるとは思えなかった。

「山が見えるだけで、お城は見えないわね」

「門の前までは行けるらしいから、帰りにでも寄って見よう」

「ぜひ、行きましょう」

精霊が是非とも見てみたい、ここまで来て見れないとか悲しすぎる。

「お父様、それもいいけど、帰りに買い物くらいしてもいいわよね?」

「勿論構わない、この街と言うか、ルフトル王都からこの街に卸される木工加工品やアクセサリー等は繊細で美しい物だからな」

それはいい事を聞いた、リゼとロゼの髪飾りが古くなってきたから新しいのを買ってあげよう、勿論他の皆にも買ってやらないと怒られてしまうからな。

馬車は街並みを進んで高級住宅街へと向かい、豪華な館へと辿り着いた。

「ここは迎賓館でしょうか?」

「うむ、以前の使者もここへ通されたと聞いている」

馬車を降りると、使用人達に出迎えられて部屋に案内された、その際一部屋にベッドを七人分用意して貰った。

旅先だから油断は出来ない、いつも通り皆で一部屋に寝泊まりする。

内装はロイジェルク様が先ほど言っていたように、木工品への装飾が見事で派手では無く、とても上品な仕上がりとなっていた。

「とても落ち着く部屋ね」

「そうですね、どれも美しい装飾がなされているのに派手では無く、落ち着いた雰囲気で過ごしやすいです」

ルリアとリリーはこの部屋が気に入ったようでソファーに座り寛いでいた。

「私はもう少し派手なのが好きだ」

「そうねぇ、少し地味な感じがするかしら」

ヘルミーネとアルティナ姉さんはもう少し派手なのが好きなようだ、好みは色々あるからな、アクセサリーを買う際の参考にさせて貰おう。

「失礼します、お風呂の準備が整いました、よろしければお使いください」

俺達が部屋で寛いでいると、メイドがお風呂を用意してくれた様だ、俺達は交互にお風呂に入らせてもらった。

勿論未だにリゼに体を洗って貰っている、リゼには毎日裸を見られているのでもう気にもならない。

お風呂の後は山の幸を贅沢に使った夕食が用意されており、とても美味しかった、普段は肉とパンが中心の食事だったから、ここの料理は俺にあっていた。

「エルレイさん、このお料理美味しいですね」

「そうだな、とても美味しくて気に入ったよ」

リリーもこの料理が気に入ったようで美味しそうに食べていた。

「私は野菜ばかりで好かん」

ヘルミーネはまだお子様だから、このような料理は苦手の様だ。

「私もちょっと苦手ね」

「少し物足りないかしら」

ルリアとアルティナ姉さんもお気に召さなかった様だ、普段食べなれている物が良いのだろう。

「でも、こういう普段とは違う事を楽しむのが旅行だと思うぞ」

「むっ、そうだな、頑張って食べるとする」

「確かにそうだわ、これも旅のいい思い出になるのね」

「エルレイ、ごめんなさい、味わって食べる事にするわ」

食事は残さず食べて貰いたい、作って頂いた人たちに申し訳ないからな。

夕食を終え寝ようとすると、アルティナ姉さんに止められた。

「エルレイちょっと待って、この前砦で寝た時ラウラと寝なかったわよね」

確かにあのベットは広く作って無かったから三人で寝るのは無理だったからな。

「そうだが、それがどうかしたのか?」

「だから、今日はラウラと二人で寝なさい」

「えっ、私はその・・・」

アルティナ姉さんの指示にラウラが困惑していた。

「アルティナ姉さん、俺は別に強制してまで一緒に寝たいわけじゃないんだが・・・」

「エルレイ、そうじゃないのよ、ここにいる皆は家族よね?エルレイは皆を平等に愛する必要があるのよ」

なるほど、確かにその通りだが、ラウラはヘルミーネに付いて来たメイドだ、俺の家族とは違う様な気がする、勿論ラウラの事が嫌いなわけでは無い、むしろこの中で一番常識があり安心して一緒にいる事が出来る人だ。

「それは分かっているが、ラウラはヘルミーネ付きのメイドだろ?」

「エル、それは違うぞ、ラウラはすでにエルのメイドだ」

ヘルミーネが否定してきた、何時からそうなったのだろう・・・。

「エルレイ、ヘルミーネが婚約者としてあなたの元に来た時点で、ラウラは貴方のメイドになったのよ」

ルリアが説明してくれた、そうだったのか、そう言う事なら俺はリゼやロゼと同じようにラウラも扱わないといけなかったのか。

「ラウラ、すまない、俺は勘違いをしていた、一緒に寝てくれるだろうか?」

「・・・はい」

ラウラは俯き顔を赤くして、小さな声で返事をしてくれた。

「エル、ラウラの事頼んだぞ」

ヘルミーネはそう言って自分のベッドへ入った。

俺もラウラと一緒にベッドに入る、さてどうしたものか。

「では、明かりを消します」

ロゼが窓と扉を魔法でロックしてから明かりを消してくれた。

ラウラは仰向けに真っすぐ寝てとても緊張している様で力が入っていた、このままでは疲れを取るどころか、逆に疲れてしまうだろう。

「ラウラ此方に体を向けてくれないだろうか?」

「分かりました」

ラウラはゆっくりと体を此方に向けてくれた、俺も向き合いラウラの体を抱きしめた。

ラウラは最初戸惑っている様子だったが、ゆっくりと、そして優しく俺を抱きしめてくれた。

ラウラの体は胸もそこそこあり、とても柔らかかった、リリーも柔らかいのだが、やはり年齢の事もありラウラに軍配が上がる。

ルリア、リゼ、ロゼは体を鍛えているから若干固い、そんな事は口が裂けても言わないが・・・。

アルティナ姉さんの場合は柔らかいと言うより安心する感じの方が大きい。

ヘルミーネにはまだ抱き付いたことは無いが、多分リリーと同じような感じだろう。

その中でラウラの柔らかさはとてもいい感触だ、ずっとラウラに抱かれていたいと思える。

ラウラも力が抜けて来た様だ、これならラウラもゆっくり眠られるだろう、

ラウラの柔らかい体に抱きしめられたまま、俺はいつの間にか眠りについていた・・・。


翌朝目を覚ますと、ラウラに優しく微笑まれた。

「ラウラ、おはよう」

「エルレイ様、おはようございます」

なんと良い目覚めだ、ラウラの柔らかい体をもう一度抱きしめてから起き上がった。

いつもの様にリゼに裸に剥かれて着替えさせてもらい、食堂へ向かおうとすると、ヘルミーネに後ろから蹴られた。

「ヘルミーネ、何をするんだ?」

「何でもない!」

ヘルミーネは怒った様子でそう言うと、スタスタと速足で食堂へと向かって行った、ラウラを俺に取られたような感じなのだろうか?

ラウラとはずっと一緒だったのだろうから仕方がない事だろう、蹴られた痛みはほとんど無かったし、俺を蹴る事でヘルミーネの気が済むなら好きにさせよう。

朝食を終え部屋に戻り寛いでいると、メイドが部屋に入って来た。

「失礼します、迎えが来ておりますので玄関までお越しください」

「私達も一緒に行ってもいいのかしら?」

「分からないが、取り合えず皆で玄関へ行って見よう」

「分かったわ」

ロイジェルク様とアベルティア様と一緒に、皆で玄関へ向かった、そこには一人の立派な身なりの、若く金色の髪が美しい女性が俺達の事を待っていた。

「私はソフィアと申します、エルレイ・フォン・アリクレット様、王がお呼びです、私と共に来ていただけませんでしょうか?」

ソフィアと名乗るこの女性は俺の名前を知っていた、調べれば俺の名前くらいわかるだろうが、ロイジェルク様では無く何故俺なのだろう。

「ソフィアさん、私だけなのでしょうか?」

「はい、エルレイ様のみお連れしろとの事です」

ここは敵国、出来れば皆と離れたくはないな・・・。

「ここにいるのは私の家族です、出来れば全員で伺いたいのです、もしそれが叶わぬようでしたら、私もそちらに行くことは出来ません」

「それは困ります、少々お待ちください・・・」

俺が行かないと言うと、ソフィアさんは困った様子で顔を歪めて考え事をしている様だった。

「・・・分かりました、皆さんご一緒に来て頂いて構わないそうです、しかし、人数が多く、もう一台馬車を用意いたしますので少々お待ちください」

誰かと念話で会話していたのだろうか、皆で行く事を許可してくれた、それからソフィアさんは玄関前に用意された馬車の所へ行ってしまった。

「ロイジェルク様、王様はこの街にいらっしゃるのでしょうか?」

「いや、この街には街長だけだと聞いている、王と言う事は結界の中に呼ばれたという事だろう」

ロイジェルク様は先ほどから驚いていたから気付いていたのだろう、結界の中に入れると言う事は精霊が見られるかもしれない、王様と話すのは嫌だが、結界の中に入れるのなら我慢出来るな。

「エルレイ君、すまないが、王に送る金品を運んで貰えないだろうか?」

「そうですね、分かりました」

俺は馬車へと向かい、ロイジェルク様の献上品を収納していく、作業を終え皆の所に戻ると結界内に行ける事を喜んでいた。

「エル、精霊は見られるのだろうか?」

ヘルミーネは目を輝かせて俺に尋ねて来た。

「見られると良いな、俺も見てみたいよ、しかし中では大人しくしていてくれよ、ここにいる全員ソートマス王国の代表なのだから」

「うむ、分かっている」

ヘルミーネはそう言うが今にもはしゃぎ出しそうだ、そう言う俺も嬉しくてたまらないのだが・・・。

そうしているとソフィアさんがこちらに戻ってきた。

「お待たせしました、馬車へお乗りください」

「ありがとうございます」

二台用意された馬車に、いつものように分かれて乗り込んだ、俺が乗る馬車にはソフィアさんも乗っている。

「あのソフィアさん、少しよろしいでしょうか?」

「エルレイ様、なんでしょうか?」

「私達はこれから結界の中へ入るのでしょうか?」

「はい、その通りです、しかしその際、約束を守って頂く事になります」

「約束ですか、それはどのような物でしょう?」

「まず、中で見聞きした事を漏らさないようお願いします、それと魔法の使用も禁止させて頂きます、それには念話も含まれます」

当然だろうな、中に何があるのか分からないが、結界で守っているのだから漏れ出たらまずい物があるのだろう。

「分かりました、中の情報を漏らさないとお約束いたします」

馬車は結界の前の門へたどり着いた、ソフィアさんは馬車を降り後ろの馬車へと向かった、先程の約束事を言いに行ったのだろう」

「エルレイ、いよいよ中に入れるのね」

ルリアは嬉しそうに馬車の窓から門の先に見える森を見つめていた。

「そうだな、俺もドキドキして来たよ」

「私も楽しみだ、エルレイ君がいなければ中に入る事は出来なかっただろうからな」

「そうですわね、エルレイ君ありがとう」

ロイジェルク様、アベルティア様も嬉しそうにしていた。

ソフィアさんが戻って来て馬車が進みだす。

「皆様結界を通る時、目の前が暗くなりますが驚かない様お願いします」

ソフィアさんがそう言った後、結界を通り抜けたのだろう、目の前が真っ暗になり、すぐまた明るさを取り戻した。

転移魔法の様な感じだったな、結界も空間魔法なのだろうか?

結界を抜けた先に街並みが見えてきた、森の木の中に家が作られている様だ。

「エルレイ、見て、家から木が生えているわ」

「そうだね、とても不思議な光景だ」

「何とも素晴らしい造形だ」

「ルリア、あれば木をくり抜いて家が作られているのではないかしら?」

皆驚き、それぞれ感想を述べている。

「あれが私達の一般的な住居となります、木にお願いして住まわせて貰っているのです」

「木にお願い出来るのですか?」

「はい、私達は精霊と契約し力を使わせて頂いております、その中に木の精霊と契約した者がお願いをし、あのような建物を作らせて貰うのです」

それは素晴らしい、俺も精霊と契約できるのだろうか?

「ソフィアさん、私も精霊と契約できるのでしょうか?」

「それは難しいでしょう、精霊は私達エルフとしか契約してくれません」

ソフィアさんはそう言うと、今まで見ていた姿から変わって、エメラルドグリーンの綺麗な髪と長い耳が姿を見せた。

皆驚きのあまり声が出せない様だ、エルフは勉強の際見た歴史書には大昔に滅んだと記されていた。

「滅んではいなかったのか・・・」

ロイジェルク様が皆を代表して聞いてくれた。

「はい、私達はずっとこの結界の中でのみ生き続けてきました、たまに外に出ますが、先ほどの様に見た目を変えエルフとは分からない様にしています」

「そうだろう、この事が世間に知れたら大騒ぎになってしまう」

「ですので、皆様には決して外に漏らさない様お願い致します」

「うむ、ラノフェリア家の名誉に掛けて口外しないと誓おう」

馬車は木々の街並みを通り、やがてとても大きな樹の下へたどり着いた、巨大な樹のお城そう表現するべきだろう。

何十メートルもある樹の幹の部分に作られており、それが違和感も無く調和されていてとても美しかった。

馬車を降り皆で城を見上げた。

「これは素晴らしく、とても美しい」

「そうですわね、今まで見たことが無い美しさですわ」

「エルレイ、私達のリアネ城もこのように出来ないかしら?」

ロイジェルク様、アベルティア様は城を見上げ感動していた、ルリアも気に入ったのだろう、リアネ城もこのようにしたい様だ。

「ルリア、出来れば俺もこの城の様にしたいが、流石に無理だろう」

「そうよね、言ってみただけよ」

「フフフッ、この城はセシリア女王様が作られた物、真似をすることは私達でも不可能なのですよ」

ソフィアさんはそう言って微笑んでいた、後ろの馬車の皆も降りてきて城を見上げている。

「エル、凄いな、ソートマス城より格好いいぞ」

ヘルミーネ、格好いいと表現するのはどうだろう、格好良さではソートマス城の方が俺はいいと思うが。

「エルレイさん、私が見てきたどのお城より美しいです」

リリーはこれで城が四か所目か、リリーがそう言うのだから、やはりこの城は誰が見ても美しい物なのだろう。

「エルレイ、私このお城に住みたいわ」

アルティナ姉さんも気に入ったようで住みたい様だな、出来れば俺もここに住みたい、そうすれば外の問題に苦悩する事は無くなるだろう。

「では皆様、城の中へご案内いたします」

ソフィアさんが先導してくれて、俺達は城の中へ入って行った。

城の中はからっと乾いた空気が漂っていて、とても心地良かった、樹の中だから湿気が多くじめっとしていると思ったのだが全く違っていた。

木造の内装は調和がとれており清楚な感じだ、暫く廊下を歩き一つの部屋へ通された。

「ここで暫くお待ちください」

「エルレイ君」

ロイジェルク様が俺に声を掛けて来た、あぁ、献上品を渡すのか、俺は慌てて部屋を出て行こうとするソフィアさんに声を掛けた。

「ソフィアさん、王様へ献上する品をお渡ししたいのですが・・・」

「別の者を寄こしますので、そちらにお預けください」

ソフィアさんは部屋を出て行き、俺は入り口の脇に献上品を収納より取り出し積み上げて行った。

暫くして別の人が取りに来たが、こんなに量があると思っていなかった様で、慌てて別の人を呼びに行っていた。

ここに来る時、手に荷物を持ってなかったからな、収納魔法が使える事はどうやら知られていない様だ。

「エル、エルフだ、エルフを見たのは初めてだぞ」

ヘルミーネはとても興奮している、少し落ち着かせるために頭を撫でてやる。

「ヘルミーネ、皆も初めて見たんだと思うぞ」

「そうだな、物語の中でしかエルフは存在しなかったからな」

「そうね、子供の頃に読んだ英雄のお話だったかしら?」

英雄か、以前の俺みたいにこの世界を救った人物なのだろうか?

「うむ、英雄と共に旅をして、この大陸の魔物を滅ぼした話だ」

「そのお話なら私も読んだ事があります」

リリーも知っている様だ、家の書斎には無かった様な気がするな。

「アルティナ姉さんは知っていますか?」

「私は知らないわね」

やはり家には無かった様だ。

「その話なら俺様も知ってるぜ」

グールも知っているのか。

「グール、教えてくれないか?」

「残念、時間切れだ」

グールがそう言うと、ソフィアさんが部屋に入って来た。

「お待たせいたしました、皆様、女王様の所へお連れ致します」

ソフィアさんの後を皆で付いて行く、廊下の一番奥の大きな扉の前着き、扉が開かれ中へと進み膝をついて頭を下げる。

「皆さん、頭を上げてください」

とても優しそうな澄み切った声が響き渡る、俺達は頭を上げ前を見ると、玉座に座った若く美しいエルフの女王様がこちらを見ていた。

「初めまして女王様、私はソートマス王国のロイジェルク・ヴァン・ラノフェリア公爵と申します、この度は拝謁を賜り誠にありがとうございます」

ロイジェルク様が女王様への挨拶が終わると、此方に目配せしてきた。

「は、初めまして女王様、私はエルレイ・フォン・アリクレット侯爵と申します」

この場はロイジェルク様が全て応対してくれるだろうと思って油断していた。

「私はセシリア、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、堅苦しいのは嫌いですので普通に話して頂いて構いませんよ」

女王様は微笑んでそう言ってくれたが、普通に話すのも難しい気がする。

「女王様、こちらソートマス王からお預かりしてきた書簡です」

ロイジェルク様が書簡を差し出すと、脇に控えていた侍女が受け取り女王様へ渡そうとしたが、女王様は受け取らなかった。

「こちらの話は時間が掛りますので、後で拝見させて頂きます」

「承知致しました」

ロイジェルク様も特に何も言わなかった、確かに今ここで読まれて待っているのも辛いから助かった。

「今日来て貰ったのは、エルレイと話がしたかったのです」

「私とでしょうか?」

「えぇ、女神の加護を持つ貴方とね」

俺はとても驚いた、今まで誰にも話した事が無い事だ、加護がある事は知らないが、女神様からこの地へ送って貰ったのは確かだ、その事で加護が付いているのかもしれないな。

周りの皆も驚いて此方を見ているが、女王様の手前口をはさめない様だ。

「女王様、女神の加護とはどの様な物なのでしょう?」

「エルレイは気が付いてなかったのかしら?女神の加護があるから貴方は全ての魔法を使う事が出来るのよ」

なんと、俺が全属性使えるのは女神様のおかげだったのか、女神様には感謝しなければいけないな。

「そうだったのですね、知りませんでした」

「その女神の加護を持つエルレイが、英雄クロームウェルの魔剣を持っている、これはどの様な意味があるのでしょうか?」

グールは上着の中にナイフの状態で仕舞ってあって外からは見えないはずだが、女王様に隠し事は出来ない様だな・・・。

しかし、こんなうるさいグールを作った人が英雄か、下品すぎてとても英雄が使う武器とは思えないな。

「はっ!やつが英雄?俺様を作ったクロームウェルは狂人だ!!」

「グール、相変わらずの様ね」

「セシリアも変わってねぇーな、つーか何で生きてるんだよ!!」

女王様もグールもお互い知り合いの様だな。

「私は大樹と一体化して、この地を守るために生かされてるのよ」

女王様が座っている椅子を見ると木の根が女王様に絡まっている様に見える。

「マジかよ、あれから千五百年ずっとそうなのかよ、たまんねーな!」

「フフッ、ここにいても世界中の出来事が分かるから結構楽しいわよ」

「はーん、俺様にはとても無理だな」

グールじゃないが、俺も千五百年ここにいろと言われたら気が狂うな。

「女王様、先程グールを持つことの意味と言われましたが、私も偶然グールを手に入れよく分からないのです、英雄クロームウェルとはどの様な事を成し遂げたのでしょうか?」

「そうね、その事については私よりグールの方が詳しいでしょう、グール、説明してくれないかしら?」

「構わねーぜ、少し長くなるが話してやるぜ。

千五百年前この大陸は多くの魔物に支配されていた、人が住める場所は城壁で囲った狭い場所のみだ。

そんな中、人々は魔物を倒し、それを食らう事で生きながらえて来た。

クロームウェルも剣士として魔物を倒し生活をしていた、その時一人の魔法使いの女と出会い恋に落ちた。

仲良く二人で魔物を倒す生活が続いたが、強力な魔物の前その生活は終わりを告げる事となった。

魔物は倒したが、クロームウェルが愛した女性は亡くなり、クロームウェル自身も瀕死の重傷を負った。

その事でクロームウェルは狂い、魔物をこの世界から滅ぼすための活動を開始する。

己を鍛え、魔法を極めて次々と魔物を倒して行った、しかし魔物の数は一向に減る事が無かった。

ある時クロームウェルは魔物の発生原因を突き止めた、吸魔石とクロームウェルが名付けた白く輝く魔石だ。

吸魔石は周囲の魔力を吸収し、一定量の魔力が貯まると、吸魔石から小さな破片が落ち、それが核となり魔物が生まれる。

魔物はその核と融合し、白い魔石は色を変え能力を持つ、これが魔物特有の能力となって表れる。

その事を知ったクロームウェルは、吸魔石を破壊するため研究を続け、十年の歳月を経て俺様を作る事に成功した。

俺様と共にクロームウェルは次々と魔物を倒し、吸魔石を破壊して行った。

その時一緒に旅をしたのがそこにいるセシリアだ、長い年月を経て、遂にクロームウェルはこの大陸から魔物を排除する事が出来た。

しかしクロームウェルはここで止めようとはしなかった、セシリアからこの大陸とは別に魔大陸があり、そこにはまだ魔物がいると知らされたからだ。

しかしクロームウェルに魔大陸に渡る手段が無く、そして年老いていた。

そこでクロームウェルは未来にその夢を託すべく、弟子を集め魔剣の製造方法を伝授して行った。

しかし弟子たちに俺様を作れるほど技量を持ったものは現れず、ごく簡単な魔剣の制作方法しか伝授する事が出来なかった。

クロームウェルは全ての技術を俺様に託し、受け継ぐものが現れたら教える様言われた。

そして今、俺様はその技術を教えられるマスターを得た訳だが・・・マスターには作れないから教えねぇ」

えええええええええ、ここまで来て俺に教えないとかなんだよそれ!!

「グール、なぜ俺には作れないんだ?」

「俺様を作るには狂人でなければ作る事は出来ねーぜ」

狂人ってなんだよ。

「グール、私も気になるわ、どうしてエルレイが作れないのか教えなさい」

女王様も気になる様だ、是非ともその理由は聞きたい。

「しょうがねぇな、俺様を作るには大量の人の魂が必要だ、分かったか!!」

なるほど、狂人出なければ作れない、確かにその通りで俺にはとても作れないな。

「そうでしたのね、確かにそれは英雄では無く、グールが言う通り狂人だったのでしょうね」

女王様は何処か寂しい表情をされていた、知り合いが大量の人を犠牲にして魔剣を作っていたと分かれば落ち込むだろうな。

「グールの言う通り俺には作れない、二度と魔剣の制作方法は聞かないよ」

「俺様もマスターには教えねぇーから心配すんな」

「私はクロームウェルと旅をした事を後悔したわ、私が付いて行かなくても結果は同じだったのでしょうけど」

「まっ、そうだろうなぁ、クロームウェルがまともならまだ世界は救われたかもしれねぇが・・・」

「グール、この大陸から魔物がいなくなって救われたのでは無いのか?」

「人間ってのは何処までも愚かな者でねぇ、魔物と言う脅威がなくなっちまったら土地の奪い合いを始め、今の争いが絶えない世界になっちまったって訳よ」

あぁなるほど、今もって俺も体験している争いが絶えないこの世界は、そうやって出来上がったのか・・・。

「そしてエルフである私達も例外ではなく争いに巻き込まれ、それを回避するべく、このような結界を張り世界と隔絶した生活を送ってきました」

エルフも生き残るために必死だったのだろう。

「女王様、私はグールを使って何かをするつもりもありませんし、世界を滅ぼしたいとも思っておりません」

「分かっています、エルレイの事は調べされてもらいましたし、それにこの国に入ってから色々試させてもらいましたからね」

女王様はにこやかに微笑んでいた、ここに来るまで色々問題があったのは仕掛けられていた様だ、でもその事で信用して貰ったのなら良しとしよう。

「しかし世界はエルレイがアイロス王国を攻め滅ぼした事で大きく動き出しました、そしてエルレイにはお願いがあります」

「女王様、なんでございましょう?」

「どうかこの国を守ってください」

俺がアイロス王国を滅ぼし世界が動き出してこの国も危うくなったと・・・まぁ責任は取らないといけないな。

「分かりました、微力ながらお手伝い致します」

「ありがとう、エルレイには後で精霊の所へ案内させます、女神の加護を持った貴方なら契約出来るかも知れません」

やったね、女神様ありがとう、精霊と契約出来るかも知れないと知り、俺は嬉しくてたまらなかったが、周りの皆から俺だけ精霊と契約出来ると羨む視線が痛い。

「今日は皆さん、この街を自由に見て貰って泊って行ってください、明日国としての話し合いを致しましょう」

「女王様、お心遣い感謝いたします」

ロイジェルク様はそう挨拶をすると、後ろの扉が開き退出するよう促された。

「皆様、私が町をご案内いたします」

ソフィアさんの先導の元、女王の部屋を後にする。

「エルレイだけ精霊と契約できるなんて、ずるいんじゃない?」

「そうだぞ、私も精霊が欲しい」

ルリアとヘルミーネが俺に言い寄ってくる、そう言われても困るんだが・・・。

「ソフィアさん、皆も契約できるか試すことは可能でしょうか?」

「それは構いませんが、たぶん無理だと思います・・・」

「何故契約出来ないのか、理由があるのでしょうか?」

「はい、女王様のご説明によると、この世界を作り出した神が一部の種族のみ強くなりすぎるのを回避するため、魔法属性の習得数に制限を掛けられたそうです、皆様の場合二属性習得出来ると思いますが、エルフは精霊魔法しか習得する事が出来ません」

なるほど、それで皆は全ての属性を使う事が出来ないのか。

「それでエルレイ以外、二属性しか使えない訳だったのね、所でエルレイ女神の加護とはどういう物なのかしら?」

ルリアが目を細めてこちらを睨んで来た、女神の加護に関して言えば間違いなく、女神クローリスが授けて下さった物だろうが説明する訳にはいかない。

「俺にも分からないよ、女神の加護があったこと自体知らなかったのだから」

「本当かしら?でもエルレイがどうして強いのか理解したわ」

ルリアの疑いの眼差しは消えなかったが、この場で俺が何も言わない事は分かったようだ、いずれ機会を見て皆には話してもいいかもしれない。

「エルレイさんには女神の加護が付いていたのですね、素晴らしいです」

リリーは崇拝するような眼差しで俺を見ていた。

「リリー、俺は加護は得ているかも知れないが、神様じゃないからな」

「そうでしたか、残念です」

リリーは俺に何を期待していたのでだろう、すごく残念そうに肩を落としていた。

「エルレイには、お姉ちゃんの加護も付けちゃいましょう」

アルティナ姉さんが俺の腕にしがみついて来た。

「それならメイドの加護も必要でしょう」

リゼも反対側にしがみついて来た。

「貴方達、場所を考えなさい!」

「ごめんなさい」

「申し訳ございません」

ルリアに怒られ二人共離れて行った、何故かヘルミーネが後ろから俺と蹴っている・・・。

「ヘルミーネ、何度も蹴られると痛いのだが・・・」

「ふんっ!」

ヘルミーネは何が気に入らなかったのだろう、蹴るのは止めてくれたがどうやらお怒りのご様子。

普段ならラウラが注意するのだが、こちらを見て苦笑いを浮かべているだけだ、俺が何かヘルミーネの気に入らない事をしたのだろうか。

皆と話しながらソフィアさんに付いて行ってるのだが、階段をどんどん上へと登って居る。

やがて階段を上り詰め扉を抜けると、そこはとても広い屋上の様だった。

「皆様、ここは城の一番上になります、ここから街全体が見渡せます」

屋上の端に行くと、そこには眼下に広がる緑に包まれた街並みを見渡す事が出来た。

「美しいわね」

「とても綺麗です」

「おぉ、凄い景色だ」

「これは見事な景色ですわね」

「うむ、とても美しく今まで見た事が無い景色だ」

「まぁ、素晴らしい」

皆美しい景色に暫く見とれていた。

「では皆様、精霊との契約儀式が行われる場所へ案内いたしましょう」

ソフィアさんはそう言うと、屋上と大樹が繋がっている場所へと移動した、大樹の幹の中に緑色に輝く物が見える。

「あれは魔石でしょうか?」

「はい、あれが吸魔石と呼ばれる物です」

先程グールが魔物が生まれると言っていた吸魔石か。

「ソフィアさん、魔物が出現したりするのでしょうか?」

「いえ、御心配なさらず、この吸魔石はこの大樹より魔力を得ており魔物は出現いたしません」

「マスター、魔物が出てくる吸魔石は色が白だ」

この吸魔石は緑色だな、ではこれから精霊が生まれる?

「ソフィアさん、この吸魔石から精霊が生まれるのでしょうか?」

「正確には違います、精霊は何処にでも存在します、しかし自我を持つ者は少なく、この吸魔石を用いて精霊に自我を持たせ、私達と契約出来るようにするものなのです」

「それで私はどうすればよろしいのでしょうか?」

「エルレイ様には吸魔石に触れて頂くだけです、契約出来る様であれば精霊が集まり姿を現すでしょう」

なるほど、触れるだけでいいのか、少しドキドキしてきたな。

「では触ります」

皆が見守る中、精霊が出て来てくれるよう祈りつつ緑色に輝く吸魔石に触れた。

暫くすると大樹の上から光の粒が複数降りて来た、それはやがて一つに固まり眩い光を放った。

眩しさのあまり目を開けられていられなくなり目を閉じた、暫くしてゆっくり目を開けると、そこには二十センチ位のうっすら光を放ち背中に大きな羽が生えた精霊がいた。

「私の名前はウィル、貴方が私のご主人様?」

目の前の精霊はとても小さな声でそう言って来た。

「あぁ、私の名前はエルレイ、ウィルよろしく」

「うん」

ウィルは頷き、小さな声で答えてくれた。

「信じられません、まさか光の精霊が降りて来るとは・・・」

ソフィアさんがとても驚いている、光の精霊なのか、これは多分女神の加護のおかげだな、女神様に感謝を。

「エルレイ、とても可愛いわね、触ってもいいかしら?」

ルリアがそう言うと、ウィルはルリアから逃げる様に俺の陰に隠れたてしまった。

「皆様、精霊はとても怖がりなのです、出来るだけ優しく接してあげてください」

「私は別に怖がらせたつもりは無いのだけど・・・」

ルリアが落ち込んでいる、精霊に逃げられた事がショックだったのだろう。

「ソフィアさん、私はこれからどうすればいいのでしょうか?」

「そうですね、まずは精霊に姿を消して貰ってください」

ウィルにお願いすればいいのだろうか?

「ウィル、姿を消して貰えないだろうか?」

「うん」

ウィルは小さな声で返事をすると姿が見えなくなった。

「ソフィアさん、これでよろしいのでしょうか?」

「はい、姿が見えなくなっても、エルレイ様と常に一緒にいますのでご安心ください」

「分かりました、それで魔法を使うにはどうすればいいのでしょう?」

「精霊魔法はいきなり使う事は出来ません、精霊と会話をし、仲良くなって行かなくてはなりません。

そうする事で精霊は魔法を使ってくれるようになるのです、私達が魔法を使うのではなく、精霊にお願いして魔法を使ってもらうのです」

なるほど、大変そうだな、しかし仲良くなって魔法を使ってくれる様になれば、光の魔法が使えるのはとても嬉しいな。

「分かりました、精霊と会話するのはどうしたらよろしいのでしょうか?」

「難しい事はありません、名前を呼んで話しかければいいのです」

「ありがとうございます、ところで光の精霊は珍しい物なのでしょうか?」

「えぇ、光の精霊と契約出来るのはごくわずかの選ばれた者のみです、これも女神の加護のおかげなのでしょうね」

やはりそうだよな、女神様にまたお会いする事が出来たらお礼を言わないといけないな。

「私達も触っていいかしら?」

「はい、どうぞ順番でお触り下さい」

ルリアがソフィアさんに許可をもらい、緑色に輝く吸魔石に触れた・・・暫くしてソフィアさんがルリアに告げた。

「やはり精霊は降りてきませんね」

ルリアはがっくりと肩を落とし、吸魔石から手を離した。

その後全員触っていたが精霊が降りてくることは無かった、ロイジェルク様とアベルティア様まで触っていたのには驚いた。

「ロイジェルク様も精霊と契約したかったのでしょうか?」

「うむ、私とアベルティアは魔法が使えないから、もしかしたらと思ったが残念だ」

なるほど、その考えは無かったな、それが可能だったら魔法が使えない人全員が精霊と契約出来る事になるな。

出来たら凄かったが、俺は魔法が使えない人も使える様になる事を知っている、多分生まれながらに使える属性が決まっているのでは無いだろうか?

「そう言えば先程、ウィルが皆さんには見えたのでしょうか?」

「うむ、見えたぞ」

「ええ、見えましたわ」

「エルレイ様、精霊は望めば姿を見せてくれます、魔法を使うときも姿を現しますね、ミル、出てきなさい」

「は~い、ミル様参上!!」

ソフィアさんの肩の上に精霊が座っていた。

「ミル、ここにいる皆様にご挨拶なさい」

「私は風の精霊ミル、皆よろしくね~」

ウィルと違って明るく元気な精霊だな。

「ミル、もう消えてしまって結構よ」

「え~今出たばかりなのに~」

「いいから消えなさい」

「は~い」

ミルは結構我儘の様だな・・・ウィルが素直でありますように。

「このような感じで姿を見せてくれます」

言う事を聞いてくれないミルに若干ソフィアさんが恥ずかしそうにしているが、知らない振りをしてやるのがいいだろう。

「ミルは我儘の様だな」

ヘルミーネが空気を読まずに言ってしまった。

「えぇ、まぁその通りです・・・」

ソフィアさんは恥ずかしそうに顔を少し伏せてしまった、俺もウィルとはよく話し合わないと言う事を聞いてくれなる訳だな・・・。

「ソフィアさん、他の場所に案内して頂けませんか?」

「はい、えーと、次は街をご案内いたします、皆様、私の周りに集まってください」

ソフィアさんの周りに皆集まった、どうするんだろう?

「では、皆様を街まで運びますので暴れないようお願いします、ミル、街まで運んで頂戴」

「は~い、じゃぁいっくよ~」

ミルがそう言うと俺達の体は風に包まれ、ふわっと浮き上がり上空へ飛び出した。

「これは素晴らしい」

「まぁ、素晴らしいですわ」

「エル、凄い空を飛んでいるぞ」

ロイジェルク様、アベルティア様、ヘルミーネは空を飛んだことが無いからだろう感動していた、恐怖は無い様だ。

ラウラは驚いている様で声を出せないでいる様だ。

飛行魔法とまた違っているな、こんなに大勢一度に運べるとは凄い。

「ソフィアさん、精霊とは凄いですね」

「えぇ、とても強い力を持っています」

「どうよ~凄いでしょう~」

ミルはドヤ顔で胸を張り自身の魔法を自慢していた。

「ミル、あそこに降りて頂戴」

「まっかせなさ~い」

ソフィアさんの命令の後、俺達はゆっくりと衝撃を受け無いで地面に降り立った。

「ミル、ありがとう、消えて頂戴」

「は~い、まったねぇ~」

ミルはそう言うと姿が見えなくなった。

「ソフィアさん、ミルは全然怖がっている様には見えなかったのですが・・・」

「あの子は特別で表に出たがるのです・・・しかしウィルも話をして仲良くなれば、皆様の前に姿を見せても怖がらない様になると思います」

「分かりました、頑張って仲良くなれる様にします」

「はい、では皆様、街をご案内します、と言ってもお店が数軒ある程度ですが・・・」

「ソフィアさん、お店で買い物する事は可能でしょうか?」

「はい、お金は使えますのでご自由にご購入して下さい」

俺は収納よりお金が入った革袋を取り出し皆に渡して行く、基本的に貴族の皆は使用人が支払うのでお金を持っていないのだ。

俺は収納があるので自分で持っている、出かける時にアドルフより旅費として渡されていた、ロイジェルク様とアベルティア様にもそう言った理由でお金を持っていないので少し多めに渡した。

「エルレイ君すまない」

「構いません」

ソフィアさんに案内されて小さな商店街へと来た、皆それぞれ気になる店へと向かって行った。

俺は迷わず装飾品が売っているお店に入った、俺の後ろには何故かリゼが付いて来てた。

「リゼも好きな物を買っていいんだぞ」

勿論リゼ、ロゼ、ラウラにもお金を皆と同じ金額を渡している。

「お気になさらず、私もこの店に欲しい物がありますので」

「そうか」

リゼに構っている余裕は無いな、皆の分の装飾品を選ばないといけない。

装飾品はどれもきめ細やかな細工がなされている物ばかりで、目移りしてしまう。

ルリアとリリーはやはり色違いが良いだろうか?それと母上、セシル姉さん、イアンナ姉さんの分も買わないといけないな。

あれこれ悩みながらなんとか皆の分を選び終えた、あと一個欲しいのだが、着けられる物ってあるのだろうか?

「店主、精霊に着けられる物ってあるかい?」

「あっちの棚に飾ってある物なら大丈夫だ、大樹の枝で作った物で精霊が着けても問題ない、しかし兄ちゃん人間だろ?そんなもの必要なのかい」

「あぁ、先程精霊と契約出来たから必要なんだよ」

「そりゃ驚いた、女王様が人間をこの街に招き入れたのにも驚いたが、それ以上だな」

俺は棚からウィルの為に一つ選びだした。

「これを全部下さい」

店主に俺が選んだ装飾品を渡すと、結構いい値段を請求された、でも、これで皆が喜んでくれるなら安い物だろう。

リゼも何か買っていた様だが俺には見せてはくれなかった。

店を出て皆を探す、まだ店の中にいるな、ルリア達は全員服を選んでいる様だ、あれには近づいてはいけない・・・。

ロイジェルク様とアベルティア様は家具を選んでいる様で、覗き込んだら中に呼ばれた。

「エルレイ君、ここの支払いを頼む」

なるほど、やはり高価な物を買うのですね。

ロイジェルク様は執務室に置くのだと机と椅子をご購入、確かにいい品物だ。

アベルティア様はソファーをお買い上げ、こちらも見た目が非常によく、座った感じも気持ちよかった。

お金を支払い、机と椅子にソファーを収納する。

「エルレイ君、ありがとう」

アベルティア様はいい買い物が出来て嬉しそうだった。

お店の外へ出ると皆買い物終わったようで、ロゼとラウラが服を抱えていたので受け取り収納に入れた。

「皆様、お昼の準備が整いましたのでご案内いたします」

ソフィアさんがまたミルを呼び出し、城へと送ってくれて城内の食堂へ案内された。

食事の内容は、やはり野菜中心の料理に果物が添えられていた。

「皆服を買っていた様だが、いいのがあったのか?」

「ええ、良い物が買えたわ」

「とても肌触りが良い物でした」

ルリアとリリーはとてもいい笑顔を浮かべていた。

「あの服は何で作られている物なのかしらね?」

アルティナ姉さんは素材が気になるのか、服を受け取った時に触った感じだとシルクだろうか?とてもすべすべしていたな。

俺達が普段着用している服は羊毛が主で、綿は少なかったと思う、理由としては綿花を作るより食料が優先せれるからだろう。

「エルフの服は全てシルクで作られております」

ソフィアさんがそう説明してくれた、やはりシルクか、俺の街でも作れるだろうか?

「シルクとは何かしら?」

アルティナ姉さんと言うか全員知らない様だ、俺もこの世界で見た事は無かった。

「昆虫の繭を使い、それを糸にした物です」

ソフィアさんが説明すると皆とても驚いている様だ、あんな物から服が出来るとは思わないよな、そもそも繭自体見た事が無さそうだな。

「ソフィアさん、午後はそちらの見学をさせて貰えないだろうか?」

「勿論構いませんが、あまり楽しい物ではありませんよ」

「私が見たいだけですので」

「分かりました」

昼食後ソフィアさんの案内のもと織物工場へと向かった、皆別に付いて来なくてもいいと言ったのだが全員付いて来た。

「ここでエルフが使う分だけの洋服が作られております」

織機や様々な色の糸や布が整理されて置かれており、その中で数人のエルフが作業を行っていた。

「ここで先程買った洋服が作られていたのね、作業も見ていて綺麗だし、熟練の職人さんなのでしょうね」

「はい、皆さん百年から三百年のベテランの方々です」

「凄いわね、人には真似できないわ」

「そうですね、エルフは四百年から五百年生きますので、必然的に技術も重ねた年数だけ上がって行く事に成ります」

五百年生きるのか、エルフ凄いな、そう考えると俺が買った装飾品も、ロイジェルク様たちが買った家具も素晴らしい出来だったのには納得だな。

「ソフィアさん、実際に昆虫を育てている所へ案内して頂けませんか?」

「分かりました、少々離れておりますのでお運びいたしますね」

工場を出てミルに運んでもらい、畑の一角に見える小屋へと辿り着いた。

「こちらの小屋の中で育成しております」

中に入ると台の上に虫の餌である葉っぱが敷き詰められており、二十センチ位の大きな芋虫が葉を食べていた。

「これはちょっと気持ち悪いわね」

「うむ、あの洋服からもう少し可愛い物を想像していた」

ルリアとヘルミーネはかなり引き気味だ、流石にこの大きさだとは俺も想像していなかった・・・。

「ソフィアさん、この虫はここにしかいないのでしょうか?」

「この虫ブルーモス言いますが、何処にでも生息していますよ、成虫はとても綺麗な青色の羽を持っていますので見つけやすいです」

「なるほど、私が領地でシルクを作っても構いませんでしょうか?」

「はい、勿論構いません、私達は自分たちで使う分しか作れないので問題ありませんよ」

「ありがとうございます」

「エルレイ、この虫を飼うのかしら?」

アルティナ姉さんもこの見た目は嫌なようだ、ルリアとヘルミーネはすでに小屋から出て行っている。

「城では飼わないよ、ちゃんと飼育場を作るってやるから心配しなくていいよ」

「それなら安心ね」

「でもこの虫さんからあの服が作られているのですよね、不思議です」

「リリー、このブルーモスが吐き出す糸を使うんだよ」

「そうなのですね、それならよかったです」

リリーがどういう想像したのか気になるが、何となく聞いてはいけない気がした・・・。

「ふむ、エルレイは領地で先程見たシルクを作成するつもりなのか?」

「はい、すぐには無理でしょうが、数年後にはと考えております」

「それは楽しみだな」

ロイジェルク様はにやりと笑い、良い儲け話だと思っている様だ、俺が恨みを買わない様ロイジェルク様には儲けて貰い、俺の盾になって貰った方が良いだろう。

その後、いろいろな作物を栽培している畑を見学させて貰ったが、こちらは精霊にお願いして肥料や水やりをしていたので参考にはならなかった。

領地の戻ったらブルーモスを見つけてシルクを作りたい、アドルフとよく相談して出来たらやる事にしよう。

街の見学を終え城に戻り、夕食を終え部屋へ案内された、誰かお願いしたのか、皆泊まれる大部屋だった。

皆ソファーで寛いでいる今、ウィルを紹介しないといけないな。

「ウィル、出て来てもらえないだろうか?」

「・・・うん」

小さな返事が聞こえ、ぼんやりと光る姿のウィルが姿を現し俺の肩に座った。

「ウィル、俺の家族を紹介するよ、赤い髪がルリア、銀色の髪がリリー」

「ウィルよろしくね」

「ウィルちゃんよろしく」

「栗色の髪で可愛らしいのがヘルミーネ、金色の髪のお姉さんがアルティナ」

「ウィルよろしく」

「ウィルちゃんよろしくね」

「青い髪の双子がリゼとロゼ」

「「ウィル様、よろしくお願いします」」

「茶色の髪のお姉さんがラウラ」

「ウィル様、よろしくお願いします」

俺は一人ずつウィルに紹介して行った。

「そしてウィルが新しい俺の家族だ、よろしく」

「うん、よろしく」

小さな声だったが皆に怯えた様子は無かった、無事紹介が終わったと思った所で大きな声で邪魔が入る。

「ちょーーーーとお待ったーーーーーー、俺様、俺様の紹介は無しかよ!!」

「怖い・・・」

グールの突然の声でウィルが怯えていた。

「グールうるさい、もう少し静かにしゃべれないのか?ウィルが怖がってるじゃないか」

「あーうん、そのーすまなかった・・・」

「ウィル、忘れていたがこいつも一応俺の家族でグールと言う」

俺は懐からグールを取り出しテーブルに置いた。

「剣がしゃべるの?」

「そうよ、俺様の名はグール、ウィルの嬢ちゃんよろしくな!!」

「うん、よろしく」

何とかグールも受け入れられた様だ、素でグールのこと忘れていた、家族と言ったがこいつは道具なので違う気もするが、意思はあるしまぁいいか。

昼間に買った装飾品を渡す事にしよう。

「ルリア、リリー、ヘルミーネ、アルティナ姉さん、これを・・・」

俺は一人ずつ違った花柄のペンダントを着けてあげた、花の名前は分からないが、それぞれに似合うと思う物を選んだつもりだ。

「エルレイ、気が利くじゃない、ありがとう」

ルリアは嬉しそうに首にかけてあげた花柄ペンダントを手の平に乗せ眺めていた、ルリアには美しい模様の花を選んであげた、良く似合っている。

「エルレイさん、ありがとうございます」

リリーも嬉しそうに貰った花柄のペンダントを眺めている、リリーにはやや可愛らしい花を選んだ。

「エル、ありがとう」

ヘルミーネも喜んでくれたが、その上目遣いでこちらを見て来るのは止めて欲しい、ヘルミーネには子供らしい可愛らしい花を選んだが、似合っている様でよかった。

「エルレイ、ありがとう」

アルティナ姉さんには美しくも洗礼されている感じの物を選んだ、付け終えた瞬間抱きつかれたが、いつもの事だ俺も抱き返しすぐに離れた、まだ渡してない人がいるからアルティナ姉さんも空気を読んでくれた様だ。

「リリーとロゼにはまた同じで悪いが髪飾りだ、前のが痛んできた様だったからな」

以前ピンク色の髪飾りをロゼにあげたが少し子供っぽいかなと思い、今回は赤色の花の髪飾りにした。

「エルレイ様、ありがとうございます」

リゼには黄色だったが、ロゼも色を変えたからリゼのも色を変えて、今回はオレンジ色の花の髪飾りにした。

赤色とオレンジ色似ているが、もう誰もリゼとロゼを間違えることは無いだろうと思い、色は気にしない事にした。

「エルレイ様、ありがとうございます」

リゼも手を広げて俺が抱き付くのを待ち構えている、今更気にしても仕方が無いので大人しくリゼの懐に入り抱きしめた。

「ラウラには櫛だ、これは大樹の枝で作られていて、使うたびに髪が綺麗になるそうだ」

「エルレイ様、ありがとうございます」

ラウラは涙を流して喜んでくれた、実はこの櫛が一番高かった、やはり大樹の枝は貴重な物の様で、さらに清い魔力を帯びているらしい、魔力お帯びているのは分かるが清いかどうかは俺には分からなかった。

「エル、ラウラだけ何故櫛なのだ?」

ヘルミーネが首を傾げて俺に聞いて来た。

「ラウラには髪飾りより櫛の方が喜んで貰えるんじゃないかと思ったのだが、やはり髪飾りの方が良かっただろうか?もしそうならまた明日別のを買ってくるよ」

「いえ、エルレイ様が選んでくれたこの櫛で大変満足しております」

「そうか、ラウラが満足しているのなら私も構わない」

ラウラも満足してくれたようで良かった。

「ウィルにもあるぞ、これだが着けられるだろうか?」

俺は大樹の枝で作られた小さな腕輪を手の平に乗せ、ウィルの前に持って行った。

「ご主人様、これ貰っていいの?」

「勿論だとも」

「ご主人様ありがとう」

ウィルは俺の手の平から腕輪を取って腕にはめて、俺の周りを飛び回って喜んでくれた。

「エルレイ様、私達が買った服を出して頂けないでしょうか?」

ロゼがそう言って来た、今から試着でもするのだろうか?収納から服を取り出しロゼに渡した。

「ありがとうございます」

ロゼは何やら買った服の中から一着取り出した。

「エルレイ様、これは私達からエルレイ様に購入したものです、こちらへおいで下さい」

どうやら俺にも服を買ってくれたようなのだが、今からそれを着ないといけない様だった。

ロゼとリゼそれにラウラも混ざって俺の服を脱がし着せ替えられた、少し恥ずかしかったが今更の様な気もする。

服の上下に靴も履かせられ、最後にリゼが買ったのであろう、ブローチを胸元に着けて完成した様だ。

全体的に緑色と白色の服装で、いかにもエルフと言う感じの姿になっていた。

「ふふっ、エルレイ、とても似合っているわよ」

「ルリア、本当に似合っていると思っているのか?まぁ服はありがたいが・・・」

ルリアは若干笑いながらそう言って来た、街中で見たエルフも同じような恰好していたが、男性のエルフはスタイルが非常に良かった。

それを身長が足りていない俺が着ると、エルフと言うよりホビットと言う感じだな・・・。

「エルレイさん、可愛いです」

リリーは俺を見て目を輝かせ今にも抱き付いてきそうな感じだった、勿論リリーが抱き付いて来るのは大歓迎だが、それより先にアルティナ姉さんが抱き付いて来た。

「エルレイ、可愛い!!」

「アルティナ様、抜け駆けはずるいです」

リゼは抱き付いたアルティナに文句を言っていた。

「早い者勝ちよ、でも、リゼも一緒に抱き付けばいいのよ」

「そうですね、では遠慮なく」

リゼはアルティナ姉さんで俺を挟み込むように抱き付いて来た、正直苦しいのだが、前と後ろから柔らかいものに挟まれているこの状況は非常に気持ちよかったので、我慢できると言う物だ。

いつもなら、ここでルリアが割って入って来るのだが、室内だからだろうか、何も言って来ることは無かった。

暫くして二人から解放されると、リリーがこちらを見つめていた。

「リリー、おいで」

俺が手招きするとリリーは少し俯きながら俺の前までやって来た、それを優しく抱きしめてやる。

「エルレイさん」

リリーも俺を抱きしめる腕に力を入れている、リリーの柔らかな感触と温かさが俺をとても幸せな気持ちにしてくれる。

リリーを堪能していると、此方を見ているルリアと目が合った、ルリアにこっちへ来てと言っても来ないだろうから、手を伸ばしルリアを引き寄せリリーと供に抱きしめてやる。

「しょうがないわね・・・」

ルリアも悪い気はしていない様だ、アベルティア様にも言われたしな、ルリアももっと可愛がってやらないとな。

リリーとルリアを解放して思った、ここは全員公平にしないといけないよな。

しかしヘルミーネを抱きしめるのは厳しいだろう、ラウラは陛下から結婚まで俺が暴走しない様に言われてる事は想像できる。

俺はヘルミーネの所へ行き頭を撫でてやる、ヘルミーネは嬉しそうに頭を撫でられていた。

「エルレイ様、お願いがございます」

俺がヘルミーネの頭を撫でているとラウラから声が掛かった、頭を撫でるのも不味かったのだろうか?

「ラウラ、何だろうか?」

「ヘルミーネ様を皆様と同じように抱きしめてあげてください」

まさかラウラがそう言うとは思わなかった、それはヘルミーネも同じだったようで。

「ラウラ、私はエルにその様な事望んで等いないぞ・・・」

ヘルミーネはそう言うがラウラは俺をしっかりと見据えていた、ヘルミーネの思惑はどうであれラウラさんのお願いだ、きっと抱きしめてやる事がヘルミーネにとっていい事なのだろう。

「ヘルミーネ、嫌だったら離れてくれ、俺も無理やり抱き付いたりするのは嫌だからな」

「そ、そんなことは無いぞ、決してエルの事が嫌な訳では無い、ただ・・・」

ヘルミーネの声はだんだん小さくなり最後はよく聞き取れなかった、でも嫌じゃない様だからヘルミーネを優しく抱きしめた。

ヘルミーネは抱き付かれたのに驚いたのか若干力が入っていたが、暫くすると力が抜け俺の体に腕を回して抱き付いて来た。

「ヘルミーネは暖かいな」

「エ、エルもあったかいぞ」

どうやらよかった様だ、その状況をラウラは微笑ましく見ていたので、ラウラもヘルミーネを一緒に抱いた方が良いだろうと思い。

「ラウラもおいで」

ラウラは一瞬戸惑った様子だが、ゆっくりと近づきヘルミーネの背後から優しく抱きしめた。

先程の俺と同じようにヘルミーネは二人に挟まれる事に成ったが、幸せそうに微笑んでいたので良かった様だ。

ヘルミーネを解放して最後に残ったロゼに抱き付く、身長差があるため抱きしめるでは無く抱き付いているだけになってしまうが仕方が無いだろう。

ロゼを十分堪能してから解放しそこで就寝となった、今日の相手はルリアで、今まで以上に布団の中で抱きしめ愛でてから就寝した。

翌朝朝食後、ソフィアさんに連れられてまた女王様の所へやって来た、昨日ロイジェルク様が渡した書簡を基に交渉する予定だ。

「皆さんおはようございます、昨日はエルフの街を楽しんで頂けたようで何よりです」

「とても素晴らしい街で、エルフの技術力には驚かされました」

ロイジェルク様は本心からそう答えていた様だ。

「それで昨日いただいた書簡に関してですが、不可侵条約の締結に異はありません、ただし、いくつか条件があります。

一つ、私たちエルフはこの地を離れる事が出来ませんので、そちらの戦争に協力する事は出来ません。

二つ、此方が攻め込まれた際には、昨日本人の許可をもらったエルレイのみを出して貰います。

三つ、貿易の自由化ですが外の街とのみ許可致します、理由は私達が作る物は基本的に自分たちで使う物で、外に販売する量を作る事が出来ないからです。

以上です」

ロイジェルク様は女王様の発言を受け問題が無いか考え込んでいる様だ、特に問題は無い様だが、俺個人として聞いて置く事はあるな。

「女王様、いくつか教えて欲しい事があります」

「エルレイ、なんでしょう?」

「攻め込まれた際私のみとおっしゃいましたが、ここにいる家族も連れて来てはいけないでしょうか?」

「それは勿論構いません、彼女達も優れた魔法使いの様ですから、こちらとしては大歓迎です」

「ありがとうございます、それと、この国にリースレイア王国は攻めて来るのでしょうか?」

「そうですね、直ぐにではありませんが、近いうちに攻めて来るでしょう」

「昨日ソフィアさんの精霊ミルを見せて頂きましたが、とてもすごい力を持っていました、私が協力する必要があるのでしょうか?」

俺は素朴な疑問を女王様に投げかけてみた。

「そうですね、今まで私達のみで敵を退けて来た訳ですからエルレイが疑問に思うのは当然の事、確かに精霊の力は普通の魔法使いに比べればとても強いでしょう。

しかし、今回敵は兵士全員に魔剣を装備させていて、精霊の力だけでは対処する事が難しいのです。

それにエルフ全体の数も少なく、戦場に出られる者の数は千にも満たないのです」

なるほど、敵がどれだけの数いるのか分からないが、全員ポメラニア公爵が持っていた魔剣を装備していると考えると厳しいな。

しかし魔石は現在入手が困難だとロイジェルク様が言っていた、どの様にして大量の魔剣を作る事が出来たのだろう。

「リースレイア王国は魔剣の材料である魔石を大量に手に入れる事が出来たのでしょうか?」

「はい、魔石は魔物を倒す事によって手に入ります、しかし、今この大陸に魔物はいなくなっていたのですが、どうやらミスクール帝国で生産されており、それがリースレイア王国へと流れている様なのです」

生産と言う事は魔物を作り出している?

「馬鹿な、生産だと・・・ミスクール帝国は再びこの大陸を魔物が住まう土地にするつもりなのか!」

ロイジェルク様が驚きと共に怒りをあらわにして叫んだ。

「その事は私には分かりません、私の目は精霊を通しており、精霊の目が届かない所で起こっている事を知り得る事は出来ません」

精霊の目が届かない場所があるのか、それは女王様の弱点にもつながるだろうから詳しくは教えてくれないだろう。

「グールは魔物が出現しているとか分からないのか?」

「マスター、流石の俺様も遠く離れた地で起こっている事は分からねーぜ、精々目が届く範囲までだな」

まぁそうか、流石に無理を言った様だな。

「女王様、ありがとうございました、私が必要な際は何時でもお呼びください、出来る限り協力致します」

「エルレイ、ありがとう、遠慮なく呼ばせて頂くわね」

女王様はにっこりと微笑みこちらを見て来た、あっ、必要な際とか言葉を間違えたな、戦争以外でも呼ばれそうな気がして来た・・・。

「女王様、先程の条件、我が国としても問題ございません」

「では文章にまとめますので、そちらの王にお渡しください」

「はい、ありがとうございます」

「ところでエルレイ、精霊とはうまくやって行けそうかしら?」

「はい、ウィル姿を見せてくれないだろうか?」

「うん、ご主人様・・・それと女王様、初めまして」

ウィルは姿を現し女王様の元へ飛んで行った。

「ウィルと言うのね、腕輪もとてもよく似合っているわ」

「うん、ご主人様に貰ったの」

ウィルは嬉しそうに嬢様の周りを飛び回っていた。

「エルレイ、ウィルは強い力を持っていますが、決して無理はさせないで下さいね」

「承知しております、ウィルも私の家族ですから決して無理はさせないとお約束致します」

「ウィル優しい主人で良かったですね、あなたもエルレイの力になってあげてくださいね」

「うん、分かった」

ウィルは女王様の周りをもう一周回ってから俺の肩へと座った。

「ウィル、姿を消して構わないよ」

「うん、ご主人様またね」

ウィルはそう言うと姿が見えなくなった

「エルレイ、ウィルはまだ生まれたばかりで力を使う事は出来ませんので守ってあげてくださいね」

「はい、分かりました」

「まー俺様がいるから精霊とか必要ねーと思うがな!!」

グールはそういうが、どちらかと言うとグールの方が要らないよな、俺魔法使いだし、ただ、こいつの知識だけはすごい物があるから機嫌を損ねるような事は言わないけどね。

「ふふふっ、グールもウィルを守って上げてください」

「しゃーねーな、守ってやるよ」

「それとエルレイ、転移魔法ではこの結界を通過する事は出来ませんので、来て貰う時は門の前にお願いしますね」

「分かりました」

転移魔法の事も知られているのか、でもこれで遠慮なくこちらに来られる様にはなったな。

横からエルフの女官とも思われる人が紙を持って女王様の元へ行くと、女王様はそれを拝見、サインをしてまた女官にそれを渡した。

それは封筒に入れられ蝋で封印が施され、ロイジェルク様に渡された。

「お預かりいたしました、我が王へ確実にお届けいたします」

「此度の話大変有意義でした、旨く行く事を願っていますよ」

「心得ております」

ロイジェルク様の挨拶を最後に女王様の元を後にした。

ソフィアさんの案内の下、エルフの城を出て馬車に乗り込みテーヌの街の宿屋に戻る事となった。

「エルフの街ともお別れね」

ルリアは馬車の窓からエルフの街を眺めて少し残念そうな表情をしていた。

「また来ることになるんじゃないのか?」

「その時はゆっくり出来ないのでしょう?」

確かに、ここに呼ばれてくるときは戦争に駆り出される時だろうからなぁ・・・。

「いつでもいらして構いませんよ、でも、来るときは私に連絡してから来て頂かないと結界の中へ入れないのでご注意ください」

「分かりました、ソフィアさん、ありがとうございます」

馬車は結界を抜けテーヌの街に入り宿屋にたどり着いた。

「では皆様、ありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました」

ソフィアさんと別れ宿屋へと入る。

「ロイジェルク様これからどう致します?」

「うむ、特に用事も無いな、これからエルレイの魔法で戻ろうと思うがどうだろう?」

「私は構いません」

「では街の外で人目に付かない所を見つけ、戻る事にしよう」

「承知しました」

俺達は帰る準備と言うか準備する事は特になく、ロイジェルク様の使用人達が馬車の用意を待つだけだった。

再び馬車に乗り込み街の外の人目が無い所へ行き、そこからは俺がロイジェルク様の屋敷の玄関まで何度か行き来し輸送し終わる。

「もう帰ってきてしまった」

ヘルミーネが残念そうにしていた。

「また行く機会があるからな」

俺はヘルミーネの頭を撫でてやっていると、ロイジェルク様が近づいてきた。

「エルレイ君、すまないがこのまま私と王城へ向かおう」

「分かりました」

「ルリア、皆と留守番頼む」

「分かったわ、行ってらっしゃい」

俺はそのままロイジェルク様を連れて王都の別邸へ転移した。

すでに連絡が行っていたのだろう、馬車が用意されておりそのまま馬車で王城へ向かった。

王城へ着き前と同じく、陛下一人だけいらっしゃる部屋へと向かった。

「「失礼します」」

ロイジェルク様と部屋の中に入ると陛下は書類と格闘していた。

「ご苦労、そちらに掛けてくれたまえ」

ソファーに座ると陛下も対面に座った。

「陛下、こちらルフトル王国の女王様よりお預かり致したものです」

ロイジェルク様が書簡を陛下に渡し、陛下はそれを読み始めた。

暫くして読み終えた陛下は俺達の方を見据えた。

「大儀であった、これでこの国は安泰だ、後で大臣たちに説明し正式な書類を作成しよう」

「陛下、こちらからルフトル王国へ向かう際、ポメラニア公爵配下の貴族に襲撃され、それを撃破いたしました」

「うむ、その事はこちらでも把握しておる、その貴族の領地を没収し、のちの管理をロイジェルクに任せようと思う」

「はい、ありがとうございます」

なるほど、ルフトル王国と隣接する領地の管理をロイジェルク様に任せる事で不要な争いを防げるわけか、もしかしてポメラニア公爵とその配下の貴族の暴走を止めなかったのもこのためか?

その気になれば正規軍動かして止められたはずだよな、二人共にやりと笑い合ってるからそう言う事なのだろう。

深く関わりたくないから問い詰める事はしない。

「ではエルレイ、書類が出来次第またルフトル王国へ運んでもらえるかな?」

「はい、承知しました」

「追って連絡する」

「では失礼致します」

ロイジェルク様と共に部屋を出て、皆がいるロイジェルク様のまで戻って来た。

「エルレイ君にはまた連絡するよ」

「はい、よろしくお願いします」

「本来であれば泊って行って欲しいのだが、まだこの前の事が落ち着いていなくてね」

「承知しております」

俺はロイジェルク様とアベルティア様が購入された机とソファーを使用人に預け、ルリアの部屋へ向かった。

「ルリア、入っていいか?」

中からロゼがドアを開けてくれ部屋の中に入った。

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

皆はソファーで寛ぎお茶と楽しんで居た。

「エルレイ、お帰りなさい、もう終わったのかしら」

「あぁ今日の所は終わりだ、寛いでいるところ悪いがリアネ城に帰ろうと思う」

「分かったわ」

皆で手を繋ぎ問題無くリアネ城の寝室へ戻って来た。

「帰って来るのはあっという間だな」

ヘルミーネは旅が終わってしまった事がとても残念そうだな。

「ヘルミーネは馬車で帰って来た方が良かったのか?」

「うむ、馬車での旅はいろんな景色が見られて楽しかったぞ」

「私は暫く馬車には乗りたくないわね」

ルリアは馬車での旅が疲れたのだろう、そう言ってベッドに倒れこんでしまった。

「私もそうね、疲れたわ」

アルティナ姉さんもベッドに横になってしまった。

「私も今回の旅はとても楽しかったです」

リリーは疲れた様子もなく元気だった。

「俺はアドルフに報告して来るよ」

「エルレイさん、行ってらっしゃい」

リリーに見送られ部屋を後にし、アドルフがいるであろう執務室へと向かった。

「アドルフ今戻った、変わりは無いだろうか?」

「エルレイ様、お帰りなさいませ、こちらはいたって順調でございます」

「そうか、それはよかった、こちらも交渉は上手くいき、後は陛下が皆に承認させるのを待つばかりだ」

「それはよろしゅうございました」

「こちらからは以上だ、特に何も無ければ今日は休みたいが構わないだろうか?」

「はい、構いません、ごゆっくりお休みください」

部屋に戻ろうと思ったがアドルフにウィルを紹介しておかないといけないな。

「アドルフ、今回の旅で精霊と契約する事が出来た、今から呼び出すから皆も驚いたり大きな声を上げたりしないでくれ」

「承知しました」

アドルフは若干驚いている様子だったがすぐに元に戻り周りを見回した、周りで作業している使用人もアドルフの部下だけあって変に騒ぎ立てたりはしないだろう。

「ウィル、姿を現してくれ」

「うん」

ウィルは小さな声で返事をし姿を現してくれた。

「ウィル、この人は私の部下でアドルフ、これからよく見かけると思うからよろしく頼む」

「うん、アドルフよろしく」

「これはご丁寧に、ウィル様、こちらこそよろしくお願いします」

「アドルフ、ウィルは怖がりな所がある、これから城内でウィルの姿を見ても驚かない様、皆に言っておいて貰えないだろうか?」

「承知しました」

俺は部屋に戻るとルリアとアルティナ姉さんは寝入ったようで、リリーとヘルミーネはソファーで寛いでいた。

「ウィルは姿を消していた方がいいのか?」

「うん、まだ怖い」

「分かった、それなら姿を消していてくれ、ウィルが安心出来る様になったらいつでも出てきて構わないから」

「ご主人様、ありがとう」

ウィルはそう言って姿を消した。

「精霊とは怖がりなんだな」

「そうかも知れないが、女王様も言っていたように、ウィルはまだ生まれたばかりで周囲の事がよく分からなくて怖いのだと思う」

「確かに、エルの言う通りかもな」

「あの森の中なら違ったかもしれないけど、ここは見知らぬ場所、私達もいきなり連れて来られたら怖いと思いますよ」

「リリーの言う事が正しいな、もうしばらく様子を見よう」

「はい」

「うむ、わかった」

俺も旅で疲れていたのだろう、夕食後すぐに寝てしまった。

数日後陛下に呼ばれて書簡を受け取り、ルフトル王国の女王様の下へそれを運び、正式にソートマス王国とルフトル王国の不可侵条約が結ばれたのだった。

この事は国中に通達され、各国に知れ渡る事となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ