24 やっぱり一攫千金で
「ああ……そういえばこれからボスと戦うんだよな?」
『……そうだ。そうだったな。そのために君たちはここまで貴重なアイテムを運んでくれたんだったな』
なんかやる気を取り戻したっぽい。
『勝てそうですかー?』
『絶対に――勝つさ!』
カインのやる気は十分のようだ。しかし……仲間たちの顔には陰りが見えた。
『みんな、こうしてアイテムも補充できたんだ。勝機はある!』
『だがカイン……ボスはあのキングドラゴンベビーなんだぜ』
また強いんだか弱いんだかわからない名前のモンスターだな……。
『へぇードラゴンの赤ちゃんかーかわいいのかなー?』
「おまえちょっと黙ってろ」
『ははは、かわいいとありがたいんだがな。なあみんな?』
緊張がほぐれたのか仲間たちの顔に笑顔がもどる。アンのやつまさかこれを狙って……。
『ああーでも二十年前の情報だからもう成長してるのかなー』
『――ッ!』
「おまえいきなり突き放すようなこと言うなよ!」
ほらもうみんな怯えちゃった……。どうすんのこの空気?
「えっと……ドラゴンってどーせ寿命が長いんでしょ? きっとまだ成竜になんてなってないって!」
『た、たしかにな……ドラゴンは千年生きると言われている。たかだか二十年ほどでは成長などしないだろう』
カインが頑張って否定してくれたことで少しは空気が変わったな。よし、ここでだめ押しだ。
「俺たち予備のポーションあるからそれも提供するよ。これで生存率もアップして勝てるってきっと!」
『――ッ!』
あれ……? なんか空気が固まったな。まずったか?
『いや……しかしそれでは君たちが……』
「俺たちのことなら心配いらないって、なあアン?」
『うん。みーくんがいればぜんぜん余裕だよー』
「ほらな」
アンの屈託のない笑みがきいたのか受け入れてくれそうな雰囲気だ。報酬も大目にもらったことだし渡してしまっても問題はないだろう。
そんなわけであるだけ提供した。こんなことなら餞別のゴミを捨ててだぶついた在庫を持ってくるんだった。
『こんなにも……本当にいいのか?』
「ああ、ぜんぜん。どーせ俺たち使わないし」
『――ッ!』
なんかいちいち驚かれるな……。リアクションの多い連中だわ。
『リーダー……これだけあれば!』
『ああ……やれるかもしれねえぜ!』
お仲間もやる気が出てきたみたいだしいい雰囲気だ。
『すまない……正直ここまで来るのにかなりのアイテムを使ってしまっていたから依頼した分では心許なかった。感謝する……』
カインに号泣された。厳ついおっさんの涙とか絵面がまずい……。もうこのへんでおいとましよう。
「アン、そろそろ行こうか」
『そうだねーみんなも待ってるしー』
『――ッ!』
別れ際に呼び止められたような気がしたが、カインは首をふってやさしく微笑むと感謝の言葉と共に見送ってくれた。
『すごーく喜んでもらえたねー』
「俺はなんか誤解されてたよーに思えたがなぁ」
とはいえ依頼は達成。あとは帰るだけだ。
『せっかくだから帰りに宝箱あけて帰ろうよー』
「は? 嫌だよ」
『ええーもったいなーい』
「もうお前の仄暗い心とか覗きたくないんだけど」
『意味わかんなーい』
どうもあのときの記憶はないらしい。だけど俺は忘れないよ……。
『でもさーこのままだとお金増えないよー』
「くっ……」
たしかにその通りだ。転売に失敗した俺たちには楽に大金を稼ぐ手段がない。
『だからさー宝箱で一発逆転だよー!』
「お前はギャンブルで身を滅ぼすタイプだな……」
とはいえ一発でかいお宝を引き当てれば旅費と鍵の問題をクリアできるのは魅力的だと思う。
「う~ん……罠さえなければなぁ……」
『罠って全部あるのかなー?』
「知らないけどさすがに全部はないんじゃないか」
『なら運しだいー?』
「そうだな……あとは罠対策に後ろからでも開けるか」
『それだー! みーくんあったま良いー!』
「え? 冗談なんだけど……」
しかしアンはテンションが上がりすぎて聞いちゃいない。そしてなんだか俺も名案のように思えてきた。案外ありじゃね?
まあ探すだけならとマップの詳細から宝箱を検索する。すると……。
「ん? なんだこれ……」
『どーしたのー?』
「いや、見間違いかな……。宝箱が移動したように見えたんだよ」
そんなわけないな……。ないよな?
しばらくじっとマップを見つめていると……。
「あ……やっぱり。変なのいるわ……」
見間違えかと思ったのだが、部屋から部屋へと移動している宝箱がある。ほら、動いた。
消えたと思ったら隣の部屋に現れる。マップをじっと見ていなければ気がつかなかっただろう。
『歩き回るミミックとかー?』
「なにそれ怖い!」
しかしミミックといえば宝箱に偽装して待ち構えているものなのでは?
「歩き回る意味がないな。それにどっちかっていうとワープしてる感じだぞ」
こっちでいえば転移の魔法にあたるのだろうか。それにしてもワープする意味がわからない。
『それってさー……すっごいお宝なんじゃない?』
「え? そう……なのか?」
たしかに容易に探し出せないお宝と考えればすっごい中身が入っている可能性がある。よほど奪われたくないお宝か……。
「気にはなるな……うん」
『でしょー!』
俺は再びマップを見ながらしばらく思考した……。
『ねーねーみーくんいこうよー』
「…………」
『わたし我慢できないよー』
「…………」
『お願いーいかせてー』
「お前そういう誤解をまねくよーな言い回しするなよ!」
声だけ聞いてるとドキドキするわ……。
まあいい。俺の考えもまとまったところだ。
「よし。行くか!」
『やったー!』
こうして再度、俺たちはお宝へチャレンジすることにした。




