19 宝箱
結論から申し上げると成功しすぎて次の日ギルドでめちゃくちゃ怒られた。
『まったく前代未聞ですよ!』
「すんません……」
あんなに優しかったエリスお姉さんが檄オコだ。途中まではうまくいっていたのだがうまくいきすぎてしまったのが敗因だろう。
あのあとハイポーションを積み込んだ俺たち順調に下層を降りていき商売をこなしていった。なんせ相場の三倍、四倍でも飛ぶように売れるのだ。期待に応えて売らなわけにもいかないだろう。冒険者たちには歓迎されるし俺たちは大儲けできるしウィンウィンというやつだ。しかしそれがいけなかった……。
『九層から依頼が来たときは何事かと思いましたよ!』
どーも買いそびれた冒険者がギルドに依頼を出したらしい。しかもいきなり相場の五倍の提示してきたとこで俺たちの悪行に気づいたようだ。その後ダンジョンから戻ってきた冒険者たちから聞き取り調査をして商業ギルドに問い合わせ。もぐりの商人であったメリッチが今朝方捕まり俺たちも冒険者ギルドに来たところで捕まったしだいだ。
『ごめんなさーい。みーくんにそそのかされてー……』
「おーい! 俺が回想してる間になに自分だけ助かろうとしてんだよ!」
『お黙りなさい! アンさんのような純情な子がこんな悪巧みするなんておかしいと思ってました。ぜんぶ石版さんのせいだったんですね!』
「いや違――わなくもないですけど……」
たしかに調子に乗った俺が全面的に悪い気もする。
『あのねー。もう二度とみーくんにこんなことをさせませんから許して下さい』
『しかたありませんね。初犯ということもありますしマジックアイテムの暴走ということで処理しておきます。アンさんも大変でしょうけど頑張って下さいね』
『はーい』
「……なんか釈然としないんだけど」
俺のせいってことで丸く収まったのはいいんだけど……随分と悪目立ちしてしまった。
俺たちの様子をうかがっていた冒険者たちの囁き声が聞こえてくる。
『聞いたかよ……ソロで九層まで潜るとかやべえな』
『でもよう……ソロで七層の軍隊アリってどうやって攻略すんだ?』
『それ言ったらお前……なんであの軽装で八層のミノタウルスを突破できんだよ?』
『そもそも命綱のポーションまで売りさばくとかいかれてるぜ……』
『クレイジーアンか……』
いつの間にか妙なあだ名が……。
居心地も悪いしさっさとギルドを出てしまおう。
「エリスさん、真面目に働くので仕事下さい」
『……やけに素直ですね。今度は何を企んでいるんですか?』
「信用ねーな……」
『仕方ないよー。悪いのはみーくんだもん』
「他人事みたいに言わないでくれる?」
ともかく仕事だ。昨日の売上が結構な額になったのだが、ミスリルの鍵を作るにはまだ足りない。
「そういえば九層から依頼があったんでしょ? 行きますよ俺たち?」
『その依頼なら破棄されました』
「え? 何故に?」
『ご氏名の相手が転売に忙しくてなかなか戻ってこられませんでしたから』
顔はニコニコ、でもその目は決して笑ってない。まだ怒ってますわこれ……。
「えっと……言い訳をさせてもらえるなら俺たちには大金が必要でしてね――」
今後の旅に必要な鍵を作るための資金が必要であることを話した。これで少しは同情とかしてくれないかなあと思いながら……。
『なるほど……それで金儲けに走ったと?』
「まあ……そうです」
『事情はわかりました。たしかにダンジョンを疾走する荷車の話しはギルドでも既に知れ渡っていますしね。いくら所有者しか使えないマジックアイテムとはいえ盗まれる不安は理解できます』
「でしょ? いえ、すんません。反省してます」
お姉さんの蔑んだ瞳に堪えられませんでした。
『ふぅ……まあいいでしょう。お金が必要ならドロップしたアイテムや素材を買取ますから出して下さい』
「…………」
『どうしました? そういえばいつも手ぶらですが……ドロップしたものはどうされているのですか?』
「えっと……」
ドロップって……あれか? ゲームみたいに倒した敵が何か落とすのか?
お姉さんにそれとなーく聞いてみると……。
『ひょっとしてアンさんたちはドロップ運が悪い方たちですか?』
『そうだねー。みーくんはイベントのたびに落ちない落ちないってツ●ッター荒れてるかなー』
「ややこしくなるからちょっと黙っててくれる?」
ソシャゲの悪夢が蘇ってきたが今は脇に置いておく。
「ええまあそうなんですよー。ラックが低いのか、てんで落ちなくて……」
『なるほど……。そういう冒険者の方って何故だかいますもんねえ……。心中お察しします』
どうもリアルなファンタジーダンジョンでもそういった現象があるらしい。俺のアカウントは絶対に落ちないやつだ! ……的なの。
『そうなると直接宝箱を探した方がいいかもしれませんね』
「宝箱?」
『ええ……希にダンジョン内で生成される貴重なアイテムや武具の入ったものなのですが見かけませんでしたか?』
『見てないよねーみーくん?』
「ああ……ほとんどの部屋は素通りしてたからなぁ」
部屋の隅などに置いてあれば見落としていた可能性はある。
『でしたらモンスターのいない部屋を通るときはくまなく探してみるといいでしょう』
「そうしてみます」
まあモンスターのいない部屋しか通らないわけだがいい話を聞いた。
『そっかー。ダンジョンならあってしかるべきだよねー』
そんなことはないと言ってやりたいが、ここは非常識なファンタジー世界だ。あっても不思議でない。
こうして俺たちは運送の仕事の傍ら……というかメインで宝箱を探すことにした。新たなる金の匂いを感じて俺は一人ほくそ笑んだ。




