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◆決戦!地下の秘密と不明生物⁉︎


「グフ、グフフフフ!これで平和な世界はオシマイなのである!」


 町の郊外、かつて何かの工場があっただろうその跡地。誰も近づかないその地下深くに、悪意の種が芽を出した。

「我が究極の研究成果、これで全人類は我輩の思いのまま……、アア、待ちわびたぞこの時を……ッ」

 声のヌシは一人の老人、いや老人のカタチをした鉄の塊と言うべき形容か。

 全身から蒸気と紫電を上げて動く鉄塊の目の前には、緑色の液体で満たされた巨大な水槽が鎮座する。

その中では、何かヌメッとした嫌な質感の、巨大な生物らしきものが蠢いていた。


――あれは、危険です。一度作戦を立て直すべきかと。


 いつも冷静で、聡明な落ち着いた声が今日はいつになく取り乱す。

「オイオイ、冗談はせめて笑えるものにしろ、今まで危険じゃないものがあったか?」

 その慌てたような声を受け、俺は眉をピクりと上げて、ため息と共に一言ぼやく。


 ――ですが、アレはこの世の(ことわり)を超えています。例えるのであれば、それこそ魔術、魔力……、でしょうか。

とにかく、凄まじい量の不可思議なエネルギーを内部に蓄えています。


 それでも尚、声は重ねて警告をする。

「魔力……ねえ、それでどうだ? 逃げて隠れて、多くの犠牲者を出してから、その立てた作戦とやらで立ち向かうのと、今この場で勇気を出して攻め入るの、お前はどっちが利口だと思う?」


――フフッ、貴方らしい意地悪な質問ですね。しかしその強い思いこそ、我が主君にふさわしい。

 いいでしょう、ならばそれに全力で応えてこそ貴方の(つるぎ)というもの、我が騎士の誓いは貴方の元に……、マスター。


「ああ、頼むぜ相棒……! ……ところで、やっぱり最近観たあのアニメの言い回し気に入ってんの?」

――ええ、できれば私のブームが去るまで"セイバー"と呼んでいただけると、

「……却下だ。集中しろ、一気にいくぞセイバー!」

――あ、今! 今呼んでくれましたね、そういうとこ、私アナタのそういうとこ好きです!


 怪しげな地下の研究施設に、大剣を構えた男が壁を突き破って乱入する。


「ゲギョギョ⁉︎ 何者だキサ……ゲバァーーーッッ!」

「グッドナイト、じーさん。今度はスチームでパンクな世界に生まれ変わるんだな」

 言葉一つ交わすことなく男は鉄塊を斬り伏せる。

怪しげな研究者は中ボスっぽい叫びと共に、チープに爆散した。


「さーて、お約束の展開なら、ここでこの気持ち悪いのが暴走かな。それじゃそうなる前に、一撃で仕留めるぞ!」

――ええ、決着をつけましょう。……あの、せっかくならこのまま大きく振りかぶって、ですね、その、アレやりましょうよアレ。私アレ大好きなんです。


 大剣を振りかぶると、刀身は魔力を蓄え始めたのか光輝き、握る手にも強い力が溢れてくる。

 刀身は巨大な光の刃を形成して、その力は渦巻く奔流となって大気に捻れを生みだした。


「いや、お前ちょっと語呂悪いしなあ」

――えーっ! そんなぁ、お願いしますよぉっ! あ、じゃあフルムーン、フルムーンとっちゃいましょ!せ〜の……、


「ダーク……キャリバアアァァーーッッ!」


 掛け声と共に大剣を振り下ろすと、その衝撃はまるで巨大なビームのように放たれる。

 目の前の奇怪な生き物は縦に真っ二つに裂け、汚い叫び声と共に光の柱となって消滅した。

 

――キャーーッ!かーっくいい〜!ん〜……キャリバー!

「わかったわかった、でも今日限りな。結構恥ずかしいから、色々問題あるから」

――ええ、もう大満足です! いやー、聖剣としてはやっぱ憧れですよエクスカリバー。夢が一個叶った気がしますよー。


 さて、諸君。色々とすまない。

これが俺、天草イルと『月夜(フルムーン)宵闇穿(ダーク)魔剣(キャリバー)』の日常である。


 別に他の高校生達が放課後に部活をするのとなんら変わりはない。

自称いつも冷静、女子マネの後輩みたいなテンションでベラベラ喋るこの(つるぎ)と共に、俺はこうして各地に眠る悪意を戦っているのだ。

 いずれも放っておけば世界や人類、地球を(おびや)かす災害になり得る種、それらを探知し、一時的に強化される肉体と大剣でこれを制す。

 どちらかと言えば、日曜の朝やってるヒーロー物よりかはサブタイのノリの魔法少女みたいなもんだ。

でも彼女らは部活してたり、弟や妹の世話をしてたりしながら悪と戦ってるので尊敬する。


「それで相棒、今朝のことなんだが」

――ええ、決して気のせいではなく、確実にミサイルのようなものは飛来していました。なぜ消えたのか、あの女は何者か、そちらは依然不明です。

「うーん、やっぱりそうか」

 俺個人としてもあのミサイルとお嬢様は、いっぺんに来ただけの別の災害だと思うわけで。

 そうなると、まずはミサイルの原因究明を急ぐべきだろう。明らかに人々に対する負荷がデカい。

 あっちの女は一旦後回しだ。もう既に学校に潜入されている以上、常に警戒は必要だが、どうにも俺以外に敵意を向ける様子はなかった。


「そういえば今朝、俺の記憶があやふやなんだが、相棒、お前の記録はどうだ」

――残念ですが、貴方の意識と私はリンクしているので、詳細は依然不明です。

周囲にいたのは謎の女と、角でぶつかった新入生の少女しか観測していません、……あちらの新入生にも接触は試みるべきかと、何か証言を得られるかもしれません。


 なるほどなあ、そういえばあの新入生の子からは逃げるように去ってしまった。

もしかしたら彼女はミサイルの行方や正体を見たかもしれないし、改めて口封じもしておかなくちゃな。


「オーケー、分かった。じゃあ明日はあの新入生から情報を出すことにするよ」

――ええ、賢明な判断です。共に脅威を打ち払い、平穏な世界維持を目指しましょう、マスター。


 ハァ、やれやれ、魔剣のドヤ顔も見飽きたな。

相変わらず忙しい、なんて大変な使命を持ってしまったんだ、かわいそうな俺。


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