☆家無き女神は童貞オッサンに夢をみせるか 〜海より深き罪の精算、お触りはNGですが膝枕ナデナデぐらいならば赦しましょう〜
☆
ふーむふむふむ、困りました困りました。
家が無い。
本来の予定であれば、この世界の人々の邪魔にならないよう、お空の上の雲にでも魔法で家を立てて生活する予定でした。
しかし大気中のマナが低いとは言いましたが、よもやコレほどとは、家立てるどころかこの回復力では小枝一つ出すのに精一杯。
まさかこの大女神様が家なき子となろうとは、誰が予想できたでしょう、誰もできるわけねーだろ大女神様が困ってるんだぞ。
家無き女神が途方に暮れてとぼとぼ歩いていると、大女神様に内蔵されたメガミセンサーが、突然緊急メガミアラートを鳴り響かせる。
「ハァ、四十手前になって平社員、結婚もできず童貞のままボロアパートで一人住み、夢も希望もなくこのまま会社に使い潰されて消えていくんだろうか……、オレは何のためにこの世界に居るんだろう……」
それが捉えたのは間違いない、大女神様の美しき世界を汚す怨敵が一人、ツカレタオッサン。
説明しよう、ツカレタオッサンとは、昨今コーコーセーダンシと同じく異世界で猛威を振るう悪しき存在として認知されつつある存在だ。
その多くは異世界人の意識を乗っ取り、その人権を無視し、欲望の限り好き勝手するという、とんでもない巨悪そのものなのだ。
もちろん、この大女神様がそんな存在を放っておくワケがない、処罰、処分、その業は煮て焼いて土に埋めるべき大罪であるが、家無き女神は一つ良いことを思いついた。
コーコーセーダンシへの予行練習も兼ね、尚且つこのツカレタオッサンの魂も現世に留め、そして家を得るたった一つの方法、超高性能ハイメガミブレインが導き出した圧倒的解決策。
「すみまセン、そこのオジサマ……、しばらく、ワタクシを泊めていただけまセンか?」
――金髪、爆乳、美人、外国人。
とんでもない美少女が、とんでもないことを言ってきた。
すぐにオレは周囲を見る、いじめの罰ゲームか、もしくは悪ふざけか、ヤの人の美人局か何かか。
確かにオレのような疲れたおっさんなど、そういう連中にとっちゃカモか何かだろう。
しかし、どこを探しても人の影一つ見えず、少女はオレのくたびれたスーツを弱い力できゅっと握りしめた。
「ワタクシ……、事情があって家に帰れず困っていマス……、どうか助けてくだサイませんか……?」
震えた唇と濡れた蒼い瞳、その奥に映る純粋無垢な可憐さに、嘘偽りの影など一つも見えやしない。
本当にこんな事があるのだろうか、だが本当にこの子は困っている、それは間違いない。
何か深い闇を抱えた中、こんなみすぼらしいオレを頼りにしてくれたのだ。
彼女には、きっと優しい大人が必要だ。
ああ、服装から見るに未成年を連れ込むなど犯罪になるのだろう、なるのだろうが、そんなことなどどうだっていい。
困った少女の願い一つを叶えることができない大人など、それこそ世界に居る必要がないってもんだ。
「……わかった。オジさんで良ければ力になるよ」
「マア! ありがとございマス! ワタクシに出来ることだったらお手伝いします、何でもいってくだサイね!」
……フゥ〜、チョッロい。
これだから童貞こじらせて自分を主人公かなんかだと勘違いしたオジさんは。どうしてこうもクソしょーもないんでしょうね、自身の力や意志の弱さ至らなさを、他人や世間に責任を押し付け一人で吠える。ただの一度でも努力をしたことがあるのでしょうか、他人の声に反発し、自身の思いを示す行いを一度でもしたと言えるのでしょうか、恐らくはノーですね。
所詮この程度の者など、大したことも考えず挑戦せず反抗もせず、誰かに示されるがまま流されるがまま、コレまでダラダラと年を重ねてきたのでしょう。私の登場が初の冒険と言ったところか、やれやれ。
まあ、家さえ手に入れてしまえばあとはこちらのもの。クク、あとはこのメガミハンドで徹底的に骨抜きにして、毎日生きるのが楽しいぐらい充実した幸せを与えてやる……!
その世界に絶望した顔が出来るのも今日が最期だということを、これまでの人生を振り返りながら泣き崩れるがいい……!
あ、えっちぃコトはいたしませんので、そこんトコロよろしくっ!




