道の駅に、彼と行く
今日はいつもと違っていた。
何が違うのかというと、私も彼も自転車に乗ってきたのだった。
今は下校の時で、自転車にまたがる。
「よし、行くか」
彼が明るい声で言ってくるので、私も「行こう!!」と弾んだ声を出す。
2人ともヘルメットをし、カバンを前のカゴに入れて走り出す。
外はまだ明るく、昼間のような空の色だった。
ただし、自転車をこいでいると、汗が流れてきて、目に入ってくる。
しみるのを我慢しながら、彼の後に続いて進んでいく。
今日、何故、自転車なのかというと、その理由はすぐに分かる。
「大丈夫か?」
彼が前を走りながら、聞いてくる。
ヘルメットをかぶった彼は、まるでたてがみを隠したライオンのようで、近寄りがたい印象を受ける。
でも私にとっては頼れる人であり、
「大丈夫!!」
と遅れまいと、足を動かすのだった。
自転車をこぐこと30分だろうか。
「あ、見えてきた!!」
彼のはしゃいだ声に、私はふーふーと息を吐きながら、前を見る。
すると目的地の道の駅に辿り着いたのだった。
私は嬉しくなって、
「やった!! もう着くね」
「おう」
彼と笑い合う。
道の駅に着くと、彼が速度を落とし、駐輪場へ行く。
私も滑らかに走り、彼の隣に自転車を置く。
「早く!! 早く!!」
私がヘルメットを脱いでカバンを持つと、彼も
「きっと美味しいぞ」
と手を繋いでくる。
道の駅は夕方でも賑やかで、キャンピングカーや、遠出してきたのか、県外ナンバーの車が並んでいる。
まるで自分の県ではなく、他県のジャングルに来たみたいと思いつつ、彼と真っ直ぐに道の駅に入る。
そして受付に進むのだった。
「あの!!」
彼が声をかけると、女性スタッフが少し驚いたように対応してくる。
「何でしょう?」
「ソフトクリームを2つください」
「何味ですか?」
「何味にする?」
私は彼に聞かれ、「普通のバニラ味」と答える。
50円足せば、トッピングできるようなのだが、学生の身分なので、普通の味にしたのだった。
「分かりました。少々、お待ちください」
スタッフが動いている間、私と彼は道の駅のエアコンの涼しさにリラックスしていた。
まるで身体が洗われるようだと、汗がひいていく。
「良かったな。わざわざ自転車をこいできて」
「うん!! たまにはコンビニとかじゃなくて、違う場所に行きたいもんね」
私と彼はグータッチし、ソフトクリームを待つ。
スタッフは慣れているらしく、手際良く、ソフトクリームを作っていく。
「はい、1つめ」
「ありがとうございます。…お前が先に食べろ」
「え? いいの?」
「いいから。溶ける前に食べてみろ」
彼に勧められ、一口、舐めてみる。
すると、何と美味しいことか。
30分かけて来ただけあると、涙が出そうになる。
「はい、もう1つ」
スタッフが彼にソフトクリームを渡してくれ、会計を済ます。
「ありがとうございました」
私と彼はソフトクリームを持ちながら、道の駅から出る。
まだ陽は強く、熱気が襲いかかってくる。
ソフトクリームが溶けては困るので、涼しい場所はないかと探すと、彼が
「あそこのベンチに座ろう」
と言ってくる。
私は彼に従い、ベンチに座ると、ソフトクリームを口に運ぶ。
「うーん!! たまらない!!」
手足をばたつかせると、彼がははっと声を立てて笑う。
彼の手にソフトクリームは、象にりんごを与えるように、小さく感じられるが、美味しそうに口に運ぶので、幸せになる。
「頑張った甲斐があるね」
「おう。ご褒美だ」
彼がコーンを齧ると、車から降りた子どもが、「あ!! いいな!!」と指差してくる。
彼は驚いたようだが、手を振ったのだった。
ソフトクリームを食べて優しい顔をしているお陰か、子どもは手を振り返し、道の駅の中に入っていく。
「最後の一口」
ぽいっとコーンを口に放る。
私も遅れずに口に運ぶと、2人でふふと笑い合う。
「また来ような」
「うん。自然を感じたいもんね」
軽いやり取りをし、立ち上がったのだった。




