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第二章 4

「おい!!あったぜ!」

「…何がっすか?」


いきなりのカスカの報告に心底不信そうな声で返すトッドさん。


それもそうだろうね、

もうそう言ってカスカは四回くらいガラクタを掘り当ててるんだ。


まぁそんなことを気にするようなカスカではない。


「な、な、これどうだ?」


そう言ってカスカが持ち上げたのは、

僕なら体育座りすればすっぽり収まってしまいそうな程大きい木箱だった。

ところどころ腐食していて、

それでも元の作りが良いのだろう、

ちょっとやそっとじゃびくともしなさそうながっしりとした造りだ。


「…んーっ、たしかにしっかりした箱っすね…。

ちょっと開けてみますか。」


と、トッドさんが腕を一振りすると…


シャキーンっ!!


いつの間にかスパナ、トンカチ、バール、千枚通しなどの工具が彼女の手に握られていた。


「…えっ!?えっ!?いつの間にっ!!」

「だから前言ったじゃないすか。腕隠しは色々と便利なんすよって」

「じ…じゃあ今のって、全部その中に入ってたん……ですか?」

「そっすよ?」


普通みたいに返されてしまったけども。


まず、工具当たって痛くないんですか?とか、

その腕隠しアナタの腕にフィットしてるように見えるんですが、とか、

そんなもんどうやって収まってるんですか?とか、

聞きたいことはたくさんある!!

むちゃくちゃだよ!!


僕が独りで悶々と考え込んでいると、


むしろ工具の方が壊れそうな音を立てて悪戦苦闘していたトッドさんが


「も、無理っす!!開かないんすよこんなもんは!!」


と叫んで文字通りさじではなく工具を投げた。


「あっ危なっ!!

やめてくださいよ工具投げるの!!

っていうか諦めるの早すぎますって!!」

「だって開かないんすもーん!開かないんすもーん!!」

「何そのふてくされ方っ!!」


思わず自分の立場も忘れて怒鳴ってしまったとき、(いや、ある意味悲鳴だよこれは…)

カスカが天井にささった工具類を引き抜いて、事も無げに言った。



「これ、俺あけよっか?」

「開けられるのか?カスカに?」

「箱はぶっ壊しちゃってもいーんなら。」

「あっ!!その手があったすね!」


トッドさんがガバッと振り返る。それを受けニヒルに微笑み、


「じゃ、いっちょやってみっか!」


そう言ってカスカは腕を大きく振りかぶった。


ごぅーーーん…


「っあ゛ーーーーーーーっ!!」

「うわっ!!スッゴい鈍い音した!今!!」

「だ…大丈夫すか?」

「なわけあるかっ!

信じらんねえこいつ!

木じゃね~よ!木じゃね~よぉっ!!

あ゛ーーーーーーーっ!!」


よっぽど痛かったんだろうな…

カスカがここまで感情を明け透けに表してるのを初めて見た気がする。


しばらくネズミ花火のように床をのたうち回っていたカスカだったが、

ふいにスッと立ち上がり、


木箱に対しちびりそうなぐらい暗く剣呑な目を向けた。


「てんめぇ…

ブッ壊してやる…」


冷静になって考えれば、なにそこまで木箱に本気になってんの?って話ではある。


しかし、僕らは今、

あの物言わぬ挑戦者を完膚なきまでに叩き潰す為に一致団結したのだ!


カスカは無言で腰に着けていた底の破けた皮袋のような物を手にはめ始めた。

グローブだ…!!


そして、こちらも爪先がボロボロになって穴まで開いているブーツをトントンと床に打ちつけ、

助走の準備を入念にし、


「あ゛ぁぁぁぁぁぁあっ!!」



腹の底から野太い声で…雄叫びをあげた。

すると…



メギメギメギメギメキ…

何だ…この音…

見ればさっきまでカスカの指が垣間見えていたグローブから、セイウチの牙のような物が生えてきていた。


「な…なんだ……?」

「あれは…まぁ、カスカがよく使う武器……みたいなものっすよ。

隠し爪みたいなもんです。」

「隠し爪…?」

「んーと、普段は身体に埋め込んでいる刃物を必要な時にだけ出して使う武器っす。」

「痛くないんですか!?」

「激イタっすよ」

「えぇっ!!じゃ、なんでカスカは…」

「あっ!!そろそろっすよ!!」


そう小声で叫ぶとトッドさんはカスカを指差した。


メギィっ!!



右手の五本の爪の分、全て生え揃った不格好なまでに長いそれをギチギチ言わせながら、


「…ぶっ壊してやんよ」

舌なめずりをし、

箱の上面だけを凪ぐように


一閃した。




いやまぁ、ホントに何やってんの?って話なんだけどね?



ゴト…と重厚そうな音を立てて箱の上面が滑り落ちる。


この満足感はなんだろう。

僕何もしてないのに。



「ここまで手こずらせたんすからねぇ…

よっぽどのモンが入ってないと割に合わないっすよォ…」


意味もなく揉み手しながらトッドさんが中をのぞき込む。

僕もカスカもそれに続いた。


そして石化した。




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