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08

 俺たちは地下鉄に乗り、ダウンタウンへ向かった。俺はもちろんだが、二人もダウンタウンは初めて行くらしい。それだけよくない場所、ということのようだ。


「ダウンタウンなんて緊張するねぇ」


 あの明るい蘭玲(ランレイ)すら、不安からか暗い表情をしている。ベアクロウは普段と変わりない。 ダウンタウンに向かう地下鉄なんていたずら書きだらけだろうと思っていたが、ここの電車は綺麗なもんだった。その点で俺はなんとなく、そんな酷い場所じゃないんじゃないかって気がしていた。


「緊張するけどさ、実際、俺らに勝てるほどの高歩者(こうほしゃ)なんているのかな?」


 自画自賛するわけではないんだが、客観的に見ても俺たちは強いほうだと思う。いくら治安が悪いところとはいえ、対戦に持ち込めば負けることは考えにくい。


高歩者(こうほしゃ)などほとんどいない。あそこには小悪党ばかりいる」

「ベアクロウ、なにか知ってるのか?」

「詳しくは知らん。だが、この街の犯罪は99パーセントがダウンタウンで起きている。そういうところだ」


 対戦外の戦いというのは存在するし、それは違法行為だ。盗みや詐欺など前世で犯罪とされるものはここでも犯罪である。警察だってもちろんいる。


「なーるほど。財布はスられないように気をつけないとな」


 ダウンタウンの駅に降り立つが、ざっと見たところ、そこまで様子がおかしいということはなさそうだ。ただ、街の壁には落書きがあったり、食べかけのハンバーガーが落ちていたり、地べたに横になって眠っている者がいたりとアッパータウンではお目にかかれない光景が目に入ってきていた。


「まずは聞き込みしないとな」


 目指すは闘技場とやらなんだが、師匠ですら詳しくは知らないという。ってことで自力で探すことになった。俺たちは手分けして手当たり次第に情報収集を始めた。


「すいません、闘技場というところを探しているんですが、ご存知ありませんか?」

「邪魔だ、うせろ!」


「そこのお兄さん、闘技場って知らない?」

「闘技場? んなことより俺と遊ぼうぜ、お姉ちゃん」


「闘技場を知らんか?」

「いきなり、あんだてめぇ? やんのか?」


 一時間ほどやっていたが、三人とも成果なし。そろそろ違う方法を考えたほうがいいかも知れない。

 などと考えていた矢先、こちらに声をかけてくる者がいた。


「おい、そこの三人。闘技場を探してるらしいな?」


 黄色に染めた長いモヒカン。鋲だらけの黒い革ジャン。鋭い目つきに2メートル以上の身長。世紀末覇者みてぇな風貌だが、こいつ、ただもんじゃねぇ。その物腰、ちょっとした足運びを見れば強いことが伝わってくる。


「ええ。ご存知なんですか?」

「知ってるぜ。よければ紹介してやろうか? 俺は関係者なんでな」


 なんと。幸運にも内部者が釣れたらしい。聞き込みも無駄じゃなかったな。


「そうしていただけると助かります」

「ああ。だがなぁ。タダってわけにはいかねぇ」


 俺は眉一つ動かさなかったが、やはりダウンタウンてのはそういうところかと落胆してしまった。闘技場が見つかったとて、本当に修行になるのだろうか。ふつふつと疑問が湧いてくる。


「悪いが金ならない」

「金だぁ? ちげぇよ。俺と対戦しろって言ってんだよ。お前らの実力を見てやろう」


 萎えかけていた俺の気持ちが完全に復活した。そうこなくっちゃなぁ!


「よし。ならば俺がやろう。あとの二人も俺と似たような力量だ」

「ふうん? それじゃあよ、本当かどうかはともかく、お前が負けたなら三人とも失格にするぞ」

「え? え、えーと、それでいいか?」

「別にいいけど負けないでよね!」|


 蘭玲ランレイは腕組みして頬をフグのように膨らませている。ベアクロウも無言で首肯した。


「決まりだな? なら対戦形式はオーソドックスな三本勝負だ」

「よし。受けよう」


 両者の合意が得られた瞬間、そこは対戦フィールドに移行した。このときに発生するゴングのような音で暇人たちも集まってくる。

 どこからともなくやってきた野良の審判による3からのカウントダウンの後、対戦が開始された。


「ドラァ!」


 モヒカン男の、バレーボールほどもある巨大な拳がいきなり飛んでくる。しかもその指にはメリケンサックが装着されている。システムでは武器の使用も認められている。武器を使っても計算によって適切なダメージに変換されるからだ。ただし、リーチの関係から長さは1メートル以内という規定がある。

 俺はパンチをガードするが、すごい衝撃だ。本来ならこの一発で骨が折れていたかもしれない。次に丸太のような太い腿が俺の視界に迫ってきた。


 だが、遅い。

 普段、師匠たちとトレーニングしている俺からしたらハエが止まりそうなスピードだ。


 俺は相手の足の下に潜り込み、右拳で突き上げるように魔空昇(まくうしょう)を撃った。浮かび上がった巨体にさらに数発の攻撃を打ち込む。空中で身動きが取れない相手に対する追撃、空中コンボだ。

 すぐに起き上がった男は、まるで猛牛のようにモヒカンから突撃してきた。俺はそれに魔導砲(まどうほう)を撃ったが、なんと当たると同時に霧散してしまった。


「効かねぇ!」


 意表を突かれた俺はモロにそれを食らってしまい、後ろにゴロゴロと転がってしまう。


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