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その言葉を聞いた途端に、さくやは急に不安になってきた。
なにせ島中の草木が完全に枯れているのだ。
その異様な光景。
なにかあるのではないか。
いやなにもないと考える方がおかしいのだ。
さくやの心配をよそに、友樹はもうクルーザーのへりから島にとりついた。
そして登り始めた。
最初はロッククライミングに近い体制だったが、すぐに手が前に伸ばせるくらいになった。
その時、友樹はひどく苦しそうな顔をした。
と同時に、なにかに気づいたかのように、島の先を見た。
下にいるさくやの位置からは、友樹の視線の先は見えなかった。
すると色が一瞬で変わった。
服の色はそのままだが、友樹の服から出ている顔、髪の毛、手の先が少し薄い灰色になったのだ。
――えっ?
さくやは友樹を見ていたが、友樹はそのまま動かない。
さくやは慌てて島に張り付き、友樹のそばまで来た。
そして友樹を見た。
それはどう見ても生身の人間ではなく、石像のようだった。
さくやは友樹に触ってみた。
触った感触も石そのものだ。
人間を触った感触ではない。
その時、さくやは強烈な苦しさを覚えた。
まるで全身を、内から業火で焼かれているかのようだ。
桐谷は待っていた。
妹の帰りを。
恋人の友樹と二人で、小型クルーザーで遊びに出たのだ。
桐谷は友樹を気に入っていた。
少し無神経で無鉄砲なところもあるのだが、基本的にはいい奴だと思っていた。
慎重なところがある妹のさくやとは、意外にお似合いなのかもしれないとも。
――もしかしたら、そのうち義理の弟ができるかもしれないな。
桐谷は時計を見た。
一泊のクルーザー旅行の後に、三人で食事をする約束になっていたのだ。
友樹はともかく、さくやは時間には正確だ。
そのため高級レストランを予約してあるのだ。
約束の時間がきた。
いつもは十分以上前に現れる妹が、来ない。
それでも待つ。
十分。二十分。
携帯にかけても「おかけになった番号は電波の届かないところに…」の音声があるばかり。
一時間待っても二時間待っても、妹は来なかった。
――もしかしたら。
桐谷は警察に連絡した。
その日はもちろんのこと、次の日になっても妹は帰ってこなかった。
恋人の友樹も。
海の上で事故があったと思われ、警察も一応探してはいるようだが、広い海の上だ。
どこをどう探せばよいのかもわからないようで、まるであてにはならない。
その点については桐谷も同じだった。
心配するばかりで、無駄に時間だけが過ぎていく。
そしてしばらく後、警察から連絡があった。
二人が乗っていたクルーザーが見つかったと言うのだ。
桐谷の住んでいるところからは離れていたが、桐谷はすぐにクルーザーが漂着したと言う浜にむかった。




