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今日、夫が釣りに出かけた。
たまに行く。
昔買った中古の小型漁船で。
朝早く出かけて遅くに帰って来る。
まれに泊りもある。
そんな時は結構遠くまで行っているようだ。
独身の頃は休みのたびに釣りに行っていたようだが、結婚してからは随分と数が減ったようだ。
何故なら私は釣りが好きではなく、おまけに船酔いが酷いのだ。
だから夫一人で行く。
休み度に妻を放置して出かけたら、それこそ離婚問題だ。
それは夫にはできない相談だ。
そんなことを考えていると、夜も更けてきた。
そろそろ夫が帰って来るころだ。
しかし夫は帰ってこなかった。
今回は泊りだと思った。
海の上では携帯も繋がらないし。
私はそのまま床についた。
次の日の夜になっても夫は帰ってこなかった。
さすがにおかしい。
警察に連絡を入れ、次の日から捜索が始まった。
しかしどこをどう探せばよいのか、警察にはわからなかった。
私も夫がどこに釣りに行っているのか、知らなかったからだ。
それでも海上保安庁あたりが一応捜索はしてくれたようだ。
だが夫は見つからなかった。
しばらく後、夫の船が浜に流れ着いた。
船はどこも損傷しておらず、不審なところはない。
ただ夫がいなかった。
一体どこに行ってしまったのか。
何もわからない。
彼氏の友樹と一緒に海に出た。
小型のクルーザーで。もともとは父のものだったが、今はさくやと兄の名義になっていた。
父から譲り受けたのだ。
友樹はクルーザーの免許は持っていないが、さくやも兄も持っている。
「さくや、今日は少し遠出したいな」
友樹がそう言うので、いつもよりも沖に出た。
GPSがあるから、少しくらい岸を離れても問題はない。
かなり岸から離れたと思った時、目の前に島が見えた。
友樹が言った。
「なんだあれは」
まさになんだあれと言っていい島だった。
横から見るとドーム球場の屋根のような形をしている。
目測だが島の大きさは二百メートルくらいだろうか。
そして島全体に草木が生えていたようなのだが、それが見る限りすべて枯れているのだ。
島の形といい、草木がすべて枯れていることといい、とにかく奇妙と言うか不気味な光景だった。
「ちょっと行ってみよう」
友樹が言う。
さくやも少し好奇心がわいてきた。
船着き場はもちろん、砂浜すらないようだが、島のすぐ近くにクルーザーを停めれば、島に上陸はできそうだ。
ドーム状の斜面は水際では少し急な傾斜だが、すぐにゆるやかな角度となっている。
さくやは友樹に言われるがままに島のそばにクルーザーを寄せた。
そして枯れた木の根元に、とも綱を結び付けた。
「ちょっと上陸してみよう」




