不安
お久しぶりです!1話がものすごく短いですがすみません><
布団は陽だまりの香りがする。まだあたたかい。太陽のぬくもりだろうか。そういえば、夕飯のオムライスをレンジにいれたままだっけ。もうとっくにさめているだろう。そう思いながらも布団から出る気はしない。お父さんのことをこれから知っていく。お父さんはどういう人だったのだろう。そしてなぜ死んだのだろう。様々な不思議だけが、頭の中によぎる。お腹はどうやら、ご飯が食べたいらしくてぐぅと音を鳴らしているが、私は食べようとかは思わなかった。
"深来、大丈夫か?"
拓斗からのメールの通知がくる。いつも拓斗は優しい。
"お願い、家にきてほしいの"
"わかった"
しばらくして、ガチャッと戸が開いた音がした。トットットッと階段を上る音さえする。
「…深来?」
不安そうな声。今にも崩れてしまいそうな声。まるで拓斗が苦しんでいるようにも思える。
「拓斗…私、お父さんのことちゃんと調べられるのかな。すごく知りたいよ。知りたいんだけど、怖いんだ。知りたい気持ちが大きいはずなんだけれど、それでも怖いの。どうしたらいいかな」
そばにきた拓斗の腕を掴む。なぜか拓斗は震えていた。
「…知らなくてもいいんじゃないか?」
「どうして?」
「知らない方がいい時もあるだろ?」
「そうなのかな…でも、もう賢汰のお父さんと…」
「一緒に調べるのか?」
「うん」
拓斗の顔から血の気が引くのがわかった。拓斗を布団の上から抱きよせる。
「…拓斗がそばにいてくれたら、怖いって気持ちもなくなるよね」
一言ボソッとつぶやくと、拓斗は布団を強い力で私から奪い、かぶった。
「ちょっと、それ私の布団なんだけどっ!」
「いいじゃん別に、寒いんだから」
「今は夏だからそんなに寒くないでしょうがぁぁぁあ!!」
それでも少し、拓斗の肌が冷たいように感じた。
1人残された部屋で、レンジであたためたはずの冷め切ったオムライスを口にする。さすが夏、そこまで冷たくはないかな。拓斗が来てくれたおかげで、抱えていた恐怖はいつの間にかなくなっていた。賢汰のお父さんとはすでに協力して調べることになっているのだ。ここでくじけたって何も変わることはない。私はこれからがんばって、どんなできごとでも受け止めていく必要があるのだ。そうして、苦しんだなら、いつでも拓斗がそばにいてくれるから…。そう考えて、オムライスを口へ運ぶ。
「おいしい」
お母さんつくってくれてありがとう。お母さんは私に、お父さんは北海道へ行っているって嘘をついた。お母さんは、知っているのだろうか。お父さんの死因を。またいつかゆっくり話す時に聞こうかな。
「…ちょっとケチャップ少ない気がする」
「深来さん、昨日うちのお父さん…行ったよねっ…?」
「うん、きたよ」
教室の席に座るなり、賢汰はすぐに私の顔をうかがいながら聞いてきた。なぜそんなに顔をうかがっているのだろうか。
「なんか、ごめんね?お父さんが、深来さんとお話した後に不安そうだったからさ」
「…なんで賢汰のお父さんが?」
「いや、深来さんがあまり元気じゃなかったみたいで、もしかして無理矢理調べさせちゃってるんじゃないかって」
「大丈夫だよ!!私は全然大丈夫なんだから!それより、これからよろしくお願いしますって言っておいて!」
「うん、了解!…ところで、拓斗くんは今日いないの?」
「あ、うん…」
今日の朝、1通のメールが届いていた。
"ごめん、体調崩しちゃったみたいで…今日は休む。迎え行ってやれなくてごめんな"
帰りになにかお見舞いでももって家に届けにいこうかな。昨日元気づけてくれたのは拓斗だし。
拓斗がいない教室は何かが足りない。やっぱりそばにいてくれないとだめなのかな。…こんな私が一番だめなんだろうけど。そう思いながら外を眺める。ふわりと小さな綿毛が見えた。