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Act.nine  作者: 夜空


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23/23

#21 「勧誘」


「……それで、茜ちゃんはどうしたいの?」


「それは……」


 過去。それは今も絡みつく因縁の鎖。再開したことで再びそれを意識させられた茜は、投げかけられた問いかけに答えることが出来なかった。


 今の紅坂茜には何もなかった。進むべき道はずっと見えているのに、共に進むはずの仲間を失いかけている今、その進み方が分からなかった。


「だったらさ、ちょっとうちに来てみない?」


「…………え?」


「ココノエザクラ。うちの一年生の子が前にも誘ってたみたいだけど、見学ならどうかな?」


 そんな茜に差し伸べられたのは、夜からの勧誘だった。チームココノエザクラ、夜のチームを一度見に来ないかと。


 突然の夜からの勧誘に、驚きを隠せない茜。本来、チームからの引き抜き行為やそれに準ずる禁止されている。


 にも拘わらず、茜は黙り込んで返事をどうするか考えていた。引き抜きは禁止だが、本人が望んで移籍を希望した場合ではその限りではない。


 しかし、今現在においては所属している以上はノインヴェルトの問題をどうにかしなければならないという思いはある。


 だが、それ以上に今は久しぶりに再開することが出来た夜と話してみたい、夜のチームも見てみたいという気持ちも茜の中にはあった。


 もし話すことで突破口が見えるなら。それとも、夜と一緒なら叶えられるというのなら。様々な期待を胸に秘めながら、茜は口を開いた。


「……なら、少しだけお邪魔します」


「茜ちゃん……! ありがとう!」


 もう戻れない過去を懐かしむように、そして新しい未来へ進む為に。後ろめたい気持ちにほんの少しだけ言い訳を含めながら、茜は夜の誘いに乗った。


 それからすぐに控室棟へ歩き出した夜と茜。二人はココノエザクラと書かれた木札が目立つ部屋の前で立ち止まり、夜の先導で部屋の中へと入る。


「ほんとに連れて来たんですか、夜さん……」


「……紅坂茜、か」


「もしかして、一年の学年一位とやり合ったって言う噂のあの子!?」


「ふうん、ボクたちを集めたのはその子が理由?」


「はい、その通りです。ようこそ茜ちゃん。これが私のチーム、ココノエザクラだよ」


 部屋に入り、夜と茜を迎えたのは四人の少女。ココノエザクラが設立されるよりも前から桜木夜と親しかった、二年生の少女たち。


 ココノエザクラのサブコマンダーであり、クールで落ち着いた雰囲気の少女、五十嵐(いがらし)咲良(さくら)。孤狼の二つ名を持ち、一人で戦っていたはずの元フリーランスの少女、狼屋(ろうや)直桜(なお)


 アイドルとして有名であり、可愛らしい雰囲気とストレートな言葉づかいのギャップが目立つ少女、桜乃(おうの)奈々歌(ななか)。自他ともに認める美しさを持ち、まるで王子様のような振る舞いが目立つ少女、九条(くじょう)桜花(おうか)


 一見すると点でバラバラで、チームとして気の合うようなところは何も見えない四人の少女。そんなチームメンバーたちに夜は説明したのだが……


「ボクは反対かな。夜の頼みでも、ライバルに戦い方を見せるなんてね」


「うーん、別に私はどっちでもいいですよ☆ どの道、実践では真正面から叩き潰しちゃいますから☆」


「リーダーに任せる。既に手の内を晒している私は、口を挟むべきじゃないだろう」


「私も反対です。今回のことがそこまで試合に響くとは思えませんが、チームに入らなかった時のために」


「反対二票、賛成二票かぁ……」


「しれっと賛成に入れてるのズルですよそれ。……ともかく、通したいならそれなりの理由をまずは話してくれませんか」


 説明し終わった夜に返ってきたのは、真っ向から反対する二人の意見と、否定も肯定もしない人任せな二人の言葉だった。


 咲良にその理由を求められた夜は、茜との関係や茜の今の状態について織り交ぜながら、わざわざ見学させるメリットについて語った。


 チームのことを魅力的だと思ってもらう。その内容はココノエザクラからしてさほどデメリットは無いように思えるようなものだった。


 その上、夜は自分の口からはっきりと茜をチームに加入させたいという意思を伝えた。ノインヴェルトの情報も手に入るし、何よりも一緒に戦いたいと。


 とても本人の前で話すような内容ではないが、夜は敢えて茜の目の前で語ることで裏表がないということを強調し、あくまでも利益の面で話をした。


「……ということなんだけど、どうかな。それでも二人は反対?」


「場合による、としか言えないね。今すぐにでも仲間になることを約束してくれるなら、ボクは構わないけど」


「まあ、そういうことなら……と言いたいところですが、茜さん自身はどうなのですか?」


「私は……」


 再び夜の話が終わり、改めて考えを問われた二人はあくまで紅坂茜がココノエザクラに入るなら、という前提で賛成に寄った返事を返す


 どうするのか。咲良から自分の意思を問われた茜だったが、こうしてチームルームまで付いてきたというのに茜自身は未だにチームのことで悩んでいた。


 ココノエザクラのことや、何より桜木夜のことは手放したくはない。でも、それと同じかそれ以上にノインヴェルトのことも思って考えてしまう。


 そんな煮え切らない様子の茜を見て面白そうだと思ったのか。否定的な立場だった桜花が一転して口角を上げ、楽しそうに口を開いた。


「まあ、一先ずいいよ。好きなだけ目に焼き付ければいいよ、ボクたちの戦い方を。それで満足したら帰るなり入るなり好きにしたらいいさ」


「わお! 桜花ちゃんにしては大胆だね☆」


「ええ、初めて見ましたねこんな桜花は」


「ボクだって、たまには敵に塩を送ってもいいとほんのきまぐれで思っただけさ。それで夜、どうやってボクたちの力を見せるんだい?」


「簡単なAI戦を行いましょう。AIレベルは当然最高設定で、数はこちらの三倍ほど用意すれば十分かな」


 随分と強気な態度を見せた桜花。普段は慎重な彼女からは考えられない発言に周囲が茶化す中、具体的にどうするのか問われた夜がやることを説明し始める。


 夜が考えたのはAI戦での証明だった。難易度は当然トップクラスの最高難易度で、AI機の数は常識では考えられない十五機。


 このレベルを相手に出来るとするなら、個人の戦闘力やチームの連携力は十二分にあり、学園でのトップどころか世界すら目指せるチームであるという根拠になる。


 普通ならこんなことはありえない。こんなことを出来るはずがない。だが、ココノエザクラには絶対的な自信があった。


「どうかな、茜ちゃん。これで問題ない?」


「……はい。ココノエザクラの皆さん、よろしくお願いします」


 実力を見せる方法について話し、この内容で問題ないか確認を取る夜。茜は改めて頭を下げながらお願いし、少女たちは格納庫へと向かう。


「それじゃあ、呼び出すね。……これがココノエザクラの、私たちの機体だよ」


 第一格納庫に着いてすぐに端末を操作する夜。チームの機体を呼び出し、ココノエザクラの五人が搭乗する五機の装動戦機が格納庫に姿を現した。


 五十嵐咲良が搭乗する全距離対応型射撃機の装動戦機神威乙式鳳凰、狼屋直桜が搭乗する接近戦特化型軽装格闘機の装動戦機神威丙式牙王。


 桜乃奈々歌が搭乗する近距離戦特化型重装格闘機の装動戦機神威乙式皇我、九条桜花が搭乗する遠距離特化型射撃機の装動戦機乙式。


 そして、コマンダーである桜木夜が搭乗する中近距離戦用に調整された万能機、最新AIによるサポートが特徴の装動戦機丁式帝王。


「これが、ココノエザクラの機体……」


「ちっちっち、驚くのはまだ早いよ☆」


「茜ちゃん、今からココノエザクラ最後のメンバーを紹介するね」


 機体に目を奪われている茜。ココノエザクラへの期待が高まる中、ここに来て夜が最後のメンバーを紹介すると言って端末を操作し始める。


 今から何が起こるのか期待を膨らませる茜。端末から光が放たれ、現れたのはホログラムによって映し出されていた小さな少女だった。


『……サポートAIシステム、起動完了。おはようございます、マスター夜』


「!? これは……」


「数ある超高額パーツの一つ、サポートAIシステムユニット。チェリア、茜ちゃんに自己紹介をお願い」


『はい、マスター夜。初めまして、ワタシの名前はチェリア。マスター夜の戦闘をサポートするため帝王に搭載されているAIアシスタントです』


 光と共に現れた少女。驚く茜のために夜は少女チェリアへ自己紹介をお願いし、礼儀正しい所作でチェリアは自身のことを簡潔に話した。


 全く違和感がない合成音声と、本当にそこに居るかのようなホログラム。まるで人間かのように振る舞う少女こそ、ココノエザクラの隠されし六人目のメンバーだった。


「さて、これで劇の準備は全て整ったかな。さあ始めようか! ボクたちの物語を」


「……そこまで大袈裟な物でもないだろう。むしろ普通に勝てなければ見せる意味がない」


「後輩ちゃんに、私たちのカッコいいとこたっくさん見せちゃお☆」


「はあ、どうしてこんなことに……まあ、やれと言われた以上は仕方ありません。やれるだけのことをやるだけです」


『メインシステム、戦闘モード起動。マスター夜のサポートを開始します』


「ありがとう、チェリア。……茜ちゃん見ててね。私たちココノエザクラの戦いを」


「……はい。ちゃんとこの目に焼き付けます、夜ちゃんの今の戦いを」


 全てのメンバーが揃ったところで、ココノエザクラの少女たちがそれぞれ機体のもとへ向かう。茜は一人格納庫に残り、夜と言葉を交わし少女たちを見送る。


 遂に始まるAI戦。圧倒的に不利なはずの戦いで、すぐに紅坂茜は思い知らされる。ココノエザクラというチームが持つ力の片鱗を。

――チームココノエザクラのちょっとした話#1


「今回はチームココノエザクラに関するお話だよ! ちょっと真面目なお話だから今回は私一人でじっくりと解説するからよろしくね!」


「さて、ココノエザクラは当時高校一年生の桜木夜がトップアクトレスを目標に作ったチームで、その強さはなんと初月の戦績でノインヴェルトに並ぶほど!」


「メンバーは現在とは少し違っていて、最凶の暴君とまで呼ばれた三分(みぶ)朱楼(しゅろ)先輩や指揮能力がトップクラスの四垂(しだれ)桜吏(ろうり)先輩など、中等部時点で名を馳せていた強者揃いだったんだ」


「そんなココノエザクラは桜木夜を襲った悲劇をきっかけに事実上活動休止となり、メンバーの殆どが離脱しちゃったんだ」


「これでもうココノエザクラはおしまい……かと思いきや、ここに来て新メンバーとAIアシスタントを連れてまさかの大復活!」


「これからの神威女学園はどうなってしまうのか、続きが気になるところで今回はここまで! 次回も涼凪ちゃんの後書きコーナーをよろしくね!」

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