8. 入学式
半年が経ち、私達は学園に入学する為に家を出ようとしていた。寮に荷物を置きに行ってから、入学式という流れらしい。
「気を付けて行くんだぞ。俺はポールと集合してから行く。また後でな」
「「は~い」」
「はい」
今日の為にパパは戦線から戻ってきてくれた。今はどの軍も睨み合いで動く気配が無いからと、私達の入学式を見に帰ってきてくれた。ポールとは入学試験で喧嘩を売って来た、マイケル・パーキスの父親だ。私達は手を振りながら家を出る。
「寮ってどんなところかな」
「綺麗で広いと良いな」
「男爵位用の部屋だからな、そこそこだろうな」
寮は爵位によって内装が変わるらしい。寄付額にもよって良い部屋になる事はあるだろうが、私達はそんな事もしていないので、普通の男爵位用の部屋だろう。平民よりは良い、といった具合らしい。
そんな話をしていると学園に着いた。門の前には行列が出来ていたので、私達は素直に後ろに並ぶ。ここ学園では建前上身分による差別を禁止している。寮の部屋から分かるように本当に建前上だが。そんな事もあってか、育ちの良さそうな人達は堂々と横入りをしていく。その為、私達が入れたのはそれから結構経ってからだった。寮に荷物を置いたら整理する間もなく、入学式の時間となった。
入学式は新一年とその保護者のみで行われる。私達は保護者でにぎわっている広い講堂のような場所の近くで入場を待つ。
「新入生、入場」
その言葉と共に私達は広い講堂に爵位の順に入場して行く。私達はほぼ最後だった。後ろに平民の女の子が居るくらいだった。
私達は指定された席まで行き、着席して式の進行を眺めていた。特に珍しい事も無く、退屈な物だった。眠りそうになっているステラやもう寝てしまったティナを横目に私は周囲の様子を探る。
(…?)
パパが見当たらなかった。
(…朝からお酒飲んで、遅刻しちゃったのかな)
そんな事を思いながら周囲を見渡していた。
「お姉ちゃん、何してるの?」
「パパが居ないの」
「本当だ」
ステラも魔力の薄い膜を広げて周囲を探りながら、パパが居ない事に気が付いていた。
そうして周囲を探っていたお陰か、異変に一番に気が付くことが出来た。上空から何かが落ちてきている。このままだとこの講堂に突っ込んでしまう。それに気が付いた私達は、頷き合って落下地点を計算し始めた。
(この距離、この速度、この角度だと……今話している校長の真上!)
そう気が付いた時、私は行動し始めた。
「ステラ、私に回復魔法を掛け続けて、あとパパに知らせて」
「分かった」
すぐに私の体に回復魔法が掛けられている感覚になる。そしてステラが首から下げていた魔導具に魔力を込め始めたのを横目に見ながら、私は校長の元へと走り出した。
(間に合え!)