月夜に太もも
「さーて、早いとこ『いいこと』しますかー。」
「おい、ちょっと待て。」
「ほえ?何さ?」
「いやいやおかしいだろ!この状況どう考えてもおかしいだろ!」
透たちは今、しっぽり仲良くやっている…………訳ではなく外に来ていた。
「説明しろよ!これは一体どういうことだよ!?」
「ん?さっき説明したよね?今からウ゛ォルザーク邸に行って偵察するんだよ。」
「いや、だってその……」
「あの演出の事?ふふんビックリしたでしょ?あ!もしかして期待してたのぉ?」
自慢げに顔の近くでピースサインを作るスピカ。
「ああ、くそ!ちくしょおおおおお!!!!」
男心、もとい童貞心を弄ばれた透の悲しき咆哮が夜に響いた。
ウ゛ォルザーク邸。七代目領主レメロン・ウ゛ォルザークが住むその館の広さは昼間買い物に出かけたメイクン区の商店街に匹敵する。
「おお、でけえな。」
「うーむ、大きいねぇ。」
透達は今木に登り館全体を見ている。
「つっても偵察なんてどうすんだ?見張りだっているみたいだし。」
館は二メートル程の壁に覆われていてよじ登るには無理がある。かといって正面の門には門番が二人立っているので迂闊には近づけない。
「大丈夫、ウチに任せといて。じゃあそろそろ始めるからついてきてね。」
そう言い残しスルスルと滑らかに木から降りていく。こういうところを見ると流石盗賊は手馴れているなと感じる。
「ちょ、待てよ。」
透も後を追うが生まれながらの運動音痴さと夜の暗さも相成ってスピカのように器用に降りることが出来ない。
「ねぇまだー?」
「だから待てって!もう少し……。」
出来るだけ下を見ないように少しづつ降りていく。
「よし、後もうちょいだなっ……ってうおっ!?」
後少しで地面に到達すると思いきや透が足を掛けた枝がポキっと小粋な音を立てて折れた。
「ちょっ!危なっ!」
「おおおお!!」
そのまま地面へ真っ逆さまの透。落下地点にはスピカがいて……。
どしーん!
「あいてて……」
身体中に鈍い痛みが走る。降りる寸前で高さがなかったので軽症で済むことが出来た。
ぷにぷにっ。
鼻先に何か柔らかい物が当たっている感覚がある。それに頭部を何かで包まれているような。人肌の様な温かいぬくもりに良い匂いが……。
すんすんとその匂いを確かめるため鼻を動かす透。
すると。
「ひゃんっっ!」
スピカの甘い声が聞こえた。一体何が起こっているのだろうか。
嫌な予感をしつつも恐る恐る目を開けると。
「っっっ!!!」
透の顔はスピカのすべすべな太ももに挟まれていた。鼻先に当たっていたのは乙女の秘部だったのである。
「ひゃああああ!!!」
事の全貌を知ったスピカがかわいらしい悲鳴を上げる。その度に柔らかい太ももが揺れて透の顔と擦れる。
「もうっ!早く離れてよっ!」
「わかった!わかったからジタバタするなって!」
混乱からか彼女のふとももは離れるどころかキュッと締まる。この心地よい圧迫感とスピカの良い匂いでもう頭がどうにかなりそうだ。
「えいっ!」
ズボっと髪の毛を引っ張られて引っこ抜かれる形になった透。
そのまま透を見下ろす形でジーっとジト目で睨みつけた後。
「…………えっち。」
プイッと真っ赤になった顔を逸らし透の髪の毛を持ったまま立ち上がりストンとその場に落とす。
顎にビリッと衝撃が走った。
「痛てて……。」
顎を摩りながら立ち上がる。そんな透にスピカは顔を向けないまま。
「……んじゃ偵察の続きするからついて来て。」
そのまま走り去るスピカ。一瞬呆気に取られるがハッと我に返りスピカの後を追う透。
頬にはまだほんのり彼女の温もりを残しながら。
僕も挟まれたいです。