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ご注文はけもみみですか?

 音を立てない素早い走りで闇夜を駆けるスピカに遅れまいと不恰好な走り方で奮走する透。


 一体何処までいくのか、いつまで走るのか軽く問い詰めたいが先ほどのこともあって切り出しにくい。


 なんなら立ち止まってもう少し太ももの余韻に浸っていたい気もするがそうはいかず息を見っとも無く切らしながら走るしかなかった。


 走ってから幾分、目の前にはウ゛ォルザーク邸の外壁が見えてきた。木から見た大きさよりも大分大きく、威厳を感じさせる。


 スピカが先に壁へと到着。透もその一分遅れ程でつく事ができた。


 「はぁっはぁっ」


 息を切らしながら壁に手をつき呼吸を整える。その間スピカはただジーっとこちらを見つめるだけ。


 さっきの事もあって非常に気まずい。エイダのように文句の一つくらい言ってくれたほうがありがたいくらいだ。


 「……なんだよ。」


 「いや、別に……。」


 気まずい雰囲気に耐え切れなくなり話を切り出すがそっけない態度で言葉少なく、プイッと顔を横に向けられてしまった。

 

 ――やりづれぇ。



 息が大分整ったが足に疲労が溜まり突っ立ているのも疲れるのでその場に座って足を伸ばす。


 そんな透を横目にスピカは外壁をぺたぺたと触り始めた。


 「うん、これなら大丈夫そう。」


 「なにが大丈夫なんだ?まさか壁を壊すとか言わないよな。」


 「いや、そんな事しないよ。……カトレアだったら出来そうだけど。」


 「いやいやまさか……。」


 

 あんな優しそうなお姉さんがそんなこと。と言おうとしたが脳裏に耳元で囁かれた時の笑顔が浮かぶ。


 ――あながち冗談でもないかも……。


 「さーてそれじゃあ始めますか。」


 「始めるって偵察を?どうやって?」


 「まぁ見てなって。」


 そういうと壁の傍まで寄り添いそこで立ち止まってからバサりとフードを脱ぎ捨てた。


 すると。



 ――ぴょこんっ。


 「なっ!?」


 フードを脱ぎ捨て現れたそれはキツネの様なピンと伸びた耳。


 ――意外!彼女はけもみみ属性だったのだ。


 「お前っその耳は?」


 「ふふん、かわいいでしょ?ウチはトオル達とはちょっと違っててさ。」


 耳をぴょこぴょこ動かしながら自慢げなスピカ。


 「んじゃ、偵察偵察っと。」


 そういうと壁に耳を傾けてそっと目を閉じる。


 透には何をしているのかさっぱりわからず、ただその光景を見つめることしか出来なかった。


 「ん……こっち側には男の守衛が三人、仲良く話してる。『師団長のおっぱいのサイズ』?……全く男ってのは。」


 神妙深い顔をしながら、うんうんと相槌をうっているスピカ。


 「お前もしかして聞こえてるのか?壁の向こうの声が。」


 「うん、聞こえてるよ。話し声から足音までばっちりね。」


 「そいつはすげーな。」


 「まぁでも聞こえすぎて逆に疲れちゃうから普段はフード被って聞こえにくくしてるんだけどね。」


 へぇーなどと適当に相槌をいれる。もう透の関心はそこではなく。


 「な、なぁ。触ってもいいか?」


 そう、けもみみ。コスプレなどの作り物ではなく本物のけもみみが今目の前にある。しかもかわいい女の子のだ。


 ヒキオタである透は勿論けもみみと言うジャンルは知っている。以前購入したエロゲ『私立けもみみ学園っ!』という種類様々なけもみみヒロインといちゃラブするゲームで、プレイしていた当時ドはまりしてしまいネットでコスプレ用のけもみみを購入し鏡の前でニヤニヤしてるまである。


 そこまで熱中していたのだ。触らない手はない。触りたいに決まっている。触って毛並みとかをもふもふしたいに決まっているではないか。


 「やだよ、恥ずかしいし。」


 「頼む!一生のお願い!な?」


 「……そこまで言われたら仕方ないなぁ。ちょっとだけだよ。ちょっとだけ。」


 渋々了承を得ることが出来た。


 「やった!……では早速。」


 手をにぎにぎさせながらスピカに迫る。傍から見ればどこぞの変態だがもうそんなことは関係ない。


 念願のけもみみっ!憧れのけもみみっ!


 もう少し……!もう少しで……!


 「あっ!」


 もう少しで触ることが出来る距離でスピカが右手を上げて透を止める。


 「…………えっちなのはだめだからね。」


 「わかってるって!そんじゃ!」


 念願のけもみみに透を手が触れた。


 「おお……!これがっ!」


 触った感覚としては人間の耳を触っているイメージに近いがやはりどこか違う不思議な感触だ。それに銀色の毛が柔らかく触っていてとても気持ち良い。


 「ちょっと、くすぐったいよぅ。」


 「むはー!もふもふだー!」


 もふもふ


 「ちょっ駄目っ!そこ敏感だからぁっ!」


 どうやらよりくすぐったい場所を触ったのかいじらしい声を上げるスピカ。


 「ほれほれ、ここか?ここが気持ち良いのかな?」


 念願のけもみみを触ることができ変なスイッチが入ったのか、スピカがくすぐったがった所を執拗に責める。


 「んっ!そこ。そこ撫でないでぇ。」


 「ここか?ここなんだなっ!?」


 「ふわぁ……だからそこ駄目ぇ……駄目だよぉ。」


 「ほらほらほらほらほらぁ!!」


 「はぁ、んぅ……駄目だって……もう駄目っ!」


 ドンっと押され尻餅をつく形で倒れる透。


 んんっ!とスピカが咳払いをして。



 「……満足したでしょ?もう次のところいくよ。」


 倒れたままの透を置いて一人先に行くスピカ。チラッと見えたその顔は真っ赤だった。


 「イエッサー!!!」


 けもみみパワーで完全に元気になった透は即座にたち上がりそのままスピカを追った。

僕もけもみみもふもふしたいです。

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