聖剣と領主はただ佇む
『聖剣』……この世の創造神である『スリーズ・テレンス』が大地と海との境界線を造る為に使用されたと云う。
一太刀振るえば大地が切り裂き、その襲撃は地平線の彼方まで達する。
そんな物が今、透の目の前にある。
白く微弱に光を帯びた神々しさがある聖剣が目の前にあるのだ。
「…………。」
透はその圧倒差な存在感に言葉がでず、ただ見とれるしかなかった。
――おい!トオル!どこ行きやがった!
どこかでエイダが自分を呼ぶ声に気づき、それでハッと我に返る。
そして周りを良く見渡して見れば先程いた金庫ではなくここが違う部屋なことに気がついた。
「おい!エイダどこだよ!あったぞ!聖剣!」
適当にそう叫んで見る。
――はぁ!?まじかよ!どこにいんだよ!
またしてもエイダの声は聞こえるが姿は見えない。
透は壁に手をつき、それを辿ってエイダの声が聞こえる方へ歩み寄る。
すると。
「ここからか?」
エイダの声が一番大きく聞こえる辺りでピタリと足を止める。
しかしそこにあるのは壁、一体どうなっているのだろうか。
――おい!どこだって聞いてんだよ!返事しろ!
またしてもエイダの怒号が聞こえる。
おかしい。何かがおかしい。
透がエイダにぶっ飛ばされ次に目を開ければ違う部屋、こんなこと普通ありえるだろうか。
ぶっ飛ばされ壁にぶつかりその衝撃で壁が破壊され繋がっている違う部屋に辿り着くなら話はあうが今のところそのような外傷はないし、透自身もそれほどのダメージは受けてない。
すると考えうる可能性としては。
透は壁に目を近づけて凝視する。
考えが正しければこの壁自体にその痕跡はあるはずだ。
隅々までくまなく痕跡を探す。
そして。
「……あ!やっぱりあった!」
見つけたのは石レンガで出来た壁にしてはレンガが他の壁とずれているおかしな部分、その部分は丁度縦に線が入っているようにも見える。
「おーい、エイダ。」
コツコツと壁を叩きエイダを呼ぶ。
――あん?ここか?
エイダがこちらに近づく度に彼女の声と足音が大きくなる、そしてピタッと足音が止んだ。
どうやら上手く誘導できたようだ。
「ちょっとその壁押してみ?」
――あん?こうか?
エイダが言われた通りに壁を両手で押してみる。
すると。
ゴゴゴゴゴゴっ
「おおっ!?」
石を引きずる重い音が響き、壁が反転する。
「うおっとと。」
急に動いた壁にバランスを失いつつもぎりぎりで踏ん張りが着きなんとか倒れなかったエイダ。
「んだよこれ、一体どうなってんだ?」
「隠し扉だよ。」
この部屋は隠し扉で隠された秘密の部屋のようだ。
金庫の中に隠し扉を作る、狙いは盗賊や泥棒が侵入してきた際に大量の金貨で相手の目の奪いその姿を眩ませる為だったりとそんなような推測ができるが今は関係のない話だ。
そんなことよりもまず。
「そんじゃ、パパっと回収して帰ろうぜ。」
エイダが聖剣の神々しさに目を光らせ一歩一歩近づく。
しかし。
ねちょお……。
「な、なんだっ!?」
ねちょりと粘着性の不気味な音が耳に届きエイダが足を止める。
「なんだこれっ身動きがっ……。おおっ!」
そしてバランスを崩し転ぶエイダ。
転んだ先でも床に張り付くだけで身動き一つとれないようだ。
「お、おいエイダ!大丈夫か!」
エイダの元へ駆け寄り助けようとした。
その時だった。
「ふふふ、ふはははは!!!あーっはっはっは!!!!!!」
バンっと部屋の明かりが一斉に灯り、大きな笑い声を上げながら姿を現したのは小太りの頭が禿げ上がった背の低いおっさんだった。
「ぶはははははは!!!掛かったなっ!盗賊どもめっ!」
某デーモンな閣下の様な低い声で笑いながらその肥えた腹を揺らすおっさん。
「おい!一体どーなってんだっ!?お前は誰だ!?いつからそこにいた!?」
そういうと小太りのおっさんは肩を揺らしながら笑って。
「ぶはははは!!我が名はレメロン・ウ゛ォルザークっ!七代目領主であるっ!いつからだってぇ?ぶはははは!!最初からだ!お前がこの部屋にぶっ飛んでくる前からここでお前らがくるのをまっていたのだ!!」
「最初からってことはあの暗闇の中ずっとスタンバってたのかよ!!」
「そうさ!そうだとも!」
透のツッコミにも馬鹿デカい笑い声を上げるウ゛ォルザーク。
「鐘がなった瞬間からずっとここで貴様らを待っていたぞっ!しかしぃっ!待っても待っても来ないから途中で守衛どもにでも捕まってしまったのかと少し焦った!だが貴様らは隠しドアを発見してここまでたどり着いた。よくここまでたどり着いたと褒めてやろう。そしてぇっ!我が策にまんまと嵌ったのだっ!ぶはははははは!!!」
「……なんなんだこいつは。」
いきなり登場するやいなや物凄いテンションで話すウ゛ォルザークに戸惑いを隠せない透。
「そんなことはどうでもよいのだっ!女が捕らわれている床を見よっ!!」
「床だと?」
ウ゛ォルザークの言う通り床を見て見ると。
「なっ!?」
その光景に思わず絶句した。
床は聖剣から三メートル付近だけ緑色の粘着質に変えられていて、そこにエイダが捕らわれていた。
「ぶははははは!!これが我が策っ!改良したデストロイドで造った名づけて『ねばねば床大作戦』だっ!!」
高々とそう宣言し勝ち誇ったように笑い声をあげるウ゛ォルザーク。
エイダが捕らわれているこの危機的状況、しかし透には解せない部分がある。
どーしてもツッコむしかない点があるのだ。
それは。
「いや、ねばねば大作戦ってネーミングだせーよ!小学生かお前はっ!」
ウォルザークっていちいち打つの正直面倒くさいです。




