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【11作品】クズと吸血鬼と青い春  作者: あぱ山あぱ太朗
2章 吸血鬼・花火はどうしようもないコミュ障である
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10/20

2-5

「ようやっと終わった。はぁー、クソねみー」

 四限目が終わりいよいよ昼休みとなる。大変ありがたいことに我が校の先生方は、居眠りしている生徒を放置してはくれない。今日は何回叩き起こされたことか。

「なんかずっと眠そうだったな。昨日何かあったのか?」

「常に喋りかけてくる奴がいて、三時くらいまで眠れなかった」

 士郎の質問にありのままを答える。

「誰か泊めたのか?」

「あぁ、ちと喧しい女を一人」

「おまっ、英吉! お前はまた女子といかがわしい事をして……!」

「誤解だ誤解。指一本触れてないわ」

 そんな色っぽい展開になるわけがなかった。

 ラーメン屋を出てからもコンビニで追加の酒を購入する。とにかく飲む飲む。かなりの量を飲んでいたのに潰れる気配もない。

 おまけにこっちが寝ようとすると妨害をしてくる。そんな花火に付き合って、おすすめ動画や音楽を見たり聞いたりしていたら、丑三つ時をとっくに過ぎていた。

 しかも、元凶である花火は「ぐーすか」といびきをかいて寝落ち。寝顔が可愛いとかそんなことを思うまでもなく、俺もその場で気絶した。

 朝は朝でどっちが先にシャワーを浴びるのかで揉めて、とにかく時間がなかった。

 このタイムスケジュールの中に『エロ』が入り込む余地は皆無だ

「英吉が女子を家に泊めて、何もなかっただと……? 今から台風でも来るのか!?」

「昨日、風香も全く同じボケしてたぞ。お前らの中で流行ってんのそれ?」

 カップルってのはボケ方まで似てくるのか。

「……いや、偶然だ。頼む、忘れてくれ」

 顔を赤くして士郎は恥ずかしがっていた。色んな意味で赤面ものだわな。普段ツッコミ側の人間が慣れないボケをかまして、しかも彼女とそれが被るというね。

「食って良いものと悪いものの違いくらいは、俺でも分かるってことだよ」

「どんだけやばい子なんだよ……」

 アレは間違いなくゲテモノの部類だ。食ったら身を滅ぼす。

 あいつ処女とか言ってたし、おまけに執念深いし、一度でも手を出したら「責任とれ」と半永久的に付き纏われそうだ。

「士郎も無関係ってわけじゃないけどな」

「は? どういうことだよ、それ」

 そのやばい女に、君の彼女が接触しているんです。まさに今ね。

 チラッと花火の方に視線を向けると、ちょうど風香と会話をしていた。事前に話していた通りの展開だ。

 けど、あとは二人次第だからな。俺から特に関与することもない。

「なんでもない。それより学食行こうぜ」

「ん、あぁ。そうだな」

 俺がいつも学食なので、弁当組の士郎にも付き合ってもらっている。

「ちょい二人とも! 俺のこと忘れてない!?」

「わりぃ、素で忘れてた」

 そのまま学食に向かおうとしたら大輝が涙目で迫ってきた。

「ひでー!?」

「すまんすまん。『しば漬け』やるから機嫌直してくれ」

 いつも当たり前のように居座っているしば漬け。あれば美味しくいただくが、なくても別に困りはしない。

 交渉材料としては弱すぎるが、これくらいでB定食の唐揚げはやれん。

「まじで!? やったぁ! サンキュー英吉!」

 まさかの交渉成立。

 しば漬け一つでここまで喜べるのは、日本中探してもこいつしかいないと思う。いつもご機嫌でハッピーなのが大輝のいいところだ。皮肉ではなく羨ましい。

「じゃ、行きますかー」

 学食が混み始める前に席を確保しておきたい。士郎と大輝を引き連れ、教室の外に向かって歩き出す。その途中で花火に軽くアイコンタクトをしておく。


「(がんばれー)」

「(う、うん……)」


 昨日は酒の力で強気だった花火だが、今日はどう見ても不安そうにしている。

 後ろ髪を引かれそうになるが、なんとか振り払って教室を出た。健闘を祈る。


   ***


「真中さん、よかったら一緒にお弁当食べない?」

「はい、私は食べます。お弁当を。あなたと共に」

「ど、独特な喋り方だね!?」

 ううう、緊張しすぎて下手くそな英文和訳みたいになっちゃったよ!

 英吉の言っていた通り、昼休みになったタイミングで風香ちゃんが声を掛けてくれた。それなのに、あーしはまともな受け答えすら出来ない。

 コミュ力が無さすぎて自分が嫌になる。これならお酒を飲んでくればよかった。……英吉に全力で止められたけど。

「じゃあさ、天気もいいし中庭で食べようよ」

「そ、そうね。中庭なら今こうして聞き耳を立てているクラスの人たちを、一切気にしないで食べることができるもんね。さすがは風香ちゃん」

 さっきから注目されている感じがあって気持ちが悪い。

 そのせいで喋る時に無駄に緊張する。無関心を装うなら徹底してほしい。

「全部言った!? 私の気遣いが水の泡だよ!? と、とにかく……! どっちにしろ、教室に居づらい空気になっちゃったから行こっか!?」

「あ、ちょっ!」

 風香ちゃんに手を引かれて教室を飛び出した。

 途中でお弁当がないことに気が付いたので、購買に寄ってヒレカツサンドと焼きそばパンを購入する。

 こういうのに憧れていたのよね。お昼休みに学食とか購買とか。

 高級料理なんてお金があればいくらでも食べられるけど、この学生時代の体験はお金で手にいれることが出来ない。

「はむはむ、むしゃむしゃ」

 高校の中庭。四方を建物に囲まれ、程よく緑で彩られた空間。そして心地よい風と水色の空。こういう場所ってどこにでもありそうで意外とないのよね。

 こんな開放感のある場所で食べるヒレカツサンドは絶品だわ。最高。

「真中さん、豪快に食べるんだね。量も結構多いし」

「ち、ち、違うの! ちょっと気まずくて食事に逃げているというか!」

「たぶんそれ、声に出して言わないほうがいいやつ!」

 あーし、またしてもやらかすの巻。思ったことをそのまま口にするのは良くない。

 理屈としては頭にあるんだけど、長年の癖を直すのは至難の業である。

「えと、風香ちゃんは今の政治についてどう思う?」

「話題の変え方が強引すぎるよ! あと、政治の話は避けたほうが無難だよ!?」

「正直、あんまり政治とか分かってない……」

「どうして話題にしたの!?」

 ぜぇはぁと風香ちゃんが大変そうにしている。

 ううう、あーしにコミュ力がないばっかりに本当にごめんよぉ。


「――――ふふふっ」

「え?」


 どうしたんだろう。風香ちゃんが笑っている。ここまでの会話で面白いことなんて何一つ言えてないのに。

 もしかして呆れすぎて!? だめだめ、ちゃんとフォローしないと……!

「真中さんってすごいボケる人なんだね。なんか意外というか」

「ボケ……?」

 どうも、あーしの発言が面白かったらしい。その実感は全くないのだけれど。

「なんか身構えて損しちゃった」

「あーし、警戒されてた!?」

「違う違う! 言葉の綾というか! それこそ真中さんの正直すぎる部分がうつっちゃったと言いますか……」

 両手を前に突き出し左右に振って、風香ちゃんは必死に言い訳している。

 いちいち挙動が可愛らしい子だなぁ。あーしが男ならこういう子を彼女にしたい。いや、既に彼氏さんいるんだっけ?

 ――――そういえば「彼氏がかまってくれなくて欲求不満っぽい」なんて英吉が言っていた気がする。緊張のあまり失念していた。

 そうよね。話題っていうのは、相手が興味あるものにしないと駄目じゃんっ!

「ねぇ、風香ちゃん」

「どうしたの、真中さん? 改まって」

「今、欲求不満なの?」

「~~~~~~~~~~!!」

 あ、やばいわ。風香ちゃんが信じられないくらい顔を赤くしている。脳内の英吉が「直接言うバカがいるか!」とめっちゃツッコんでいた。

「ご、ご、ごめんなさい! あーしってあんまりデリカシーがなくて!」

「…………手を、繋ぎたいんだよね」

「うへ?」

 顔は真っ赤なままなんだけど、風香ちゃんはポツリポツリと話を始めた。

「もう付き合って一ヶ月は経ったんだよっ! そろそろ良くない!?」

「そんなに繋ぎたいんだ……」

「繋ぎたいよ、そりゃあねっ! だって好きなんだもんっ!」

 眩しい、眩しすぎるよ……風香ちゃん!

 そんなキラキラした恋愛をあーしは知らないよ。どっちかというと擬音的には『ギラギラ』って感じのばかり見てきたし。ホス狂いとか、ホス狂いとか、ホス狂いとか。

「い、いっそ! 自分から繋いでみるのは?」

「こっちから行くのはなんか違うよぉ! 男子にリードしてほしいもん!」

「そ、それは確かに……!」

 やっぱり、あーしも女だから共感できてしまう。男が思っている以上に、選択や決断って疲れちゃうから。決めてもらって、引っ張ってもらうと嬉しいのだ。

 その方が愛されている感じがする。

「だよね!? バイト帰りとかも一緒に帰るんだけど、なんか不自然に距離があるし。こっちが勇気を出して半歩近づいたのに、士郎は一歩離れていくんだよ? むしろ、最初の距離よりも離れてるじゃん!!」

 体がむず痒いよ、風香ちゃん! もう可愛すぎて、あーしおかしくなっちゃう! 彼氏くんも彼氏くんで純情ボーイ過ぎるって! 

 英吉にもぜひ見習ってほしい。あいつは生意気すぎる。

「今は奥手な男が多いよねー、ほんと」

「そうなの! でも、そこが士郎の良さでもあるんだけどね! 衛藤くんとかはチャラい!」

「間違いない!!」

 思わずお腹から声が出た。それに関しては圧倒的に共感してしまう。リードしてくれない男も嫌だけど、可愛げがない男もそれはそれで嫌なのだ。

「そういえば真中さん。この間、衛藤くんとは大丈夫だった?」

「あ、うん。英吉ごときにあーしをどうこうできないよ」

「か、かっこいい………! 強い女って感じ! やっぱり、衛藤くんの大人っぽさに惹かれちゃう女の子が多くてさ……」

「違う違う。ただ背伸びしてるだけのお子様だから」

 英吉の同年代にはあいつがそういう風に見えるのか。高校生男子にしては、女心が分かっている感があるから錯覚してしまうんだろう。

 安心して。世の中にはあんなのよりも魅力的な男がわんさかいるから。


「――――真中さんって凄いね。あの衛藤くんも軽くかわしちゃって。そんな真中さんだからお願いするんだけど……その、あの、もし良かったらね? もうちょっとだけ、私の恋愛相談を聞いてもらってもいいかな……?」

「も、もちのろんよ!」


 恋愛経験ゼロなのは絶対に言わないでおこう。やっぱり頼られると嬉しい。

 エアプだけど、それっぽいことを言って何とかしよう。

「やったっ! でねでね、どうしたら士郎に手を繋いでもらえるかな……?」 

「……ば、場を用意すればいいのよ! 所詮、男なんて性欲の塊だからね! 状況さえ整ってしまえば、自ずと向こうから手を握ってくるわ!」

「な、なるほど!」

 言うだけ言ったけど『状況』ってどうやって整えるんだろう? 

 うん、そこは後で英吉に何とかしてもらえばいいや。

「ということで、放課後デートに行くのです!」

「えぇ!? いや、でも、それだと私から誘わないとだよね? そんな勇気があるなら、最初から手だって繋げると思うし……」

「そこはあーしに作戦があるの。その場には英吉とあーしも同行するわ。遊びとデートの中間。ダブルデートにするのよ。もちろん、英吉に提案をさせる!」

 とあるホストの話だ。そのホストは男女2:2で同伴をしたがったらしい。

 友達的な空間と二人だけの空間を使い分けることによって、相手をズブズブに沼らせることが出来るなんだとか。

 友営(友達営業)と色営(色恋営業)の合わせ技だ。同僚はそのホストに入れ込んでいた。えー、その後どうなったのかは割愛します。

 という訳で、今回はその技を見よう見真似で使わせてもらうことにする。

「はっ!? そんな手が……っ! よっ、中野一の知将!」

 あまりにも目から鱗だったみたいで、風香ちゃんが若干キャラ崩壊をしていた。

「あーしに任せておきなさい!」

 おそらく、たぶん、きっと、英吉が何とかしてくれる。

「……一つ気になったんだけどね」

「ん?」

「真中さんと衛藤くんは付き合ってるの?」

「それはないない! どっちかと言うと、英吉の方があーしにラブって感じかな!」

 英吉ごめん。設定が増えてるけど、頑張って何とかしてちょうだい。

「うえぇ! あの衛藤くんが!? あ、でもバイトの時も真中さんのことすごく心配してた! あれってそういうことだったんだ……!」

「えっ!?」


 何なのよ、それ……! 昨日はそんな雰囲気ちっとも出してなかったじゃない……!

 そんなに心配だったなら隠さずに言いなさいよね。ほんと素直じゃない。

 でも、ちょっとそこは可愛げあるというか……な、何を考えてるのよ! 花火! 年下だけは絶対にないからっ!

 だ、大丈夫かな? 顔赤くなってないよね……? 

 こんな初心な反応を見られたら、恋愛マスターとしての威厳が……っ!


「やっぱり、真中さんがハッキリと自分を持っているからかなぁ? そういう強さが衛藤くんみたいな人を手玉に取れるのかも! だからね、真中さん! 迷惑じゃなければ、これからも色々と相談してもいいかな……?」

「も、もちのろんよ!」

 それはあーしにとっても願ったり叶ったりの話だった。

「あはは、また変なこと言って~! とりあえず、連絡先交換しよっ!」

 交換のやり方が全然分からなかったので、風香ちゃんの指示に従って画面を操作する。

 こうして、使っていなかったSNSのアカウントに『友達』が一人追加された。

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