表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

十一月生まれの神楽能愛(かぐら のあ)

(まえ)から()()らなかったわよ、あんたのこと! 今日(きょう)こそ(けっ)(ちゃく)をつけてやるわ!」


 校庭(こうてい)神無月(かんなづき)西瓜(すいか)(した)から、()メートルほど(さき)のクリスティーナ師走(しわす)見上(みあ)げて(さけ)ぶ。二人(ふたり)(たが)いに(ちか)づこうとしているのだが、エネルギーが反発(はんぱつ)しあっているのだ。磁石(じしゃく)同極(どうきょく)同士(どうし)のようなもので、反発(はんぱつ)しあうエネルギーは周囲(しゅうい)(おお)きく影響(えいきょう)している。一言(ひとこと)で、(だい)迷惑(めいわく)(おお)騒動(そうどう)だった。


「こっちのセリフよ! ノアは(むかし)から私の大切(たいせつ)存在(そんざい)だったわ。(だれ)にも(わた)さないんだから!」


 クリスティーナ師走(しわす)(うえ)から(さけ)ぶ。クリスの(ほう)がスイカより()(たか)いのだが、そういうことではなく空中(くうちゅう)からの(こえ)だ。(すう)メートルほど(うえ)浮遊(ふゆう)していて、そこからエネルギー()というのか、ビーム(てき)なものでクリスがスイカに攻撃(こうげき)してくる。それをスイカが、バリア(てき)(なに)かで(はじ)いて防御(ぼうぎょ)していた。常人(じょうじん)なら、一撃(いちげき)でも()たれば大変(たいへん)なことになりそうな威力(いりょく)攻防(こうぼう)である。


非常(ひじょう)事態(じたい)です! 現在(げんざい)()(こう)生徒(せいと)である神無月(かんなづき)西瓜(すいか)とクリスティーナ師走(しわす)校庭(こうてい)(あらそ)っています! 危険(きけん)ですから(ほか)生徒(せいと)校内(こうない)避難(ひなん)して、絶対(ぜったい)()ないように! お(ねが)いだから大人(おとな)しくして、事態(じたい)(おさ)まるまで(なに)もしないように! 『学校(がっこう)責任(せきにん)』とか()われるんだから勘弁(かんべん)してよ、もぉ!』


 放送室(ほうそうしつ)から一斉(いっせい)放送(ほうそう)で、校庭(こうてい)(ふく)めた女子校(じょしこう)全体(ぜんたい)へと、女性(じょせい)教師(きょうし)によるアナウンスが(ひび)く。涙声(なみだごえ)になっていて、教師(きょうし)って苦労(くろう)してるんだなぁと、放送(ほうそう)()いた生徒(せいと)たちは同情(どうじょう)した。


「スイカちゃーん、クリスちゃーん。ダメだよー、お(ひる)(やす)みが()わっちゃうよー。(はや)く、お(べん)(とう)一緒(いっしょ)()べよー」


 (いま)無人(むじん)となった校庭(こうてい)中央(ちゅうおう)で、スイカとクリスが(あらそ)っている。その二人(ふたり)()かって、()()()()という擬音(ぎおん)がつきそうな(おそ)いスピードで、()びかけながら校庭(こうてい)(はし)女子(じょし)がいた。()うまでもなく校内(こうない)でも人気(にんき)()少女(しょうじょ)神楽(かぐら)()()である。教室(きょうしつ)では(みな)(まど)()けて、『ノアちゃん、(はし)ってる!』、『ペンギンが(ある)いてるみたい……可愛(かわい)い……』といった生徒(せいと)たちの(こえ)()れていた。


 スイカとクリスの周囲(しゅうい)には複数(ふくすう)稲妻(いなずま)()ちている。晴天(せいてん)なのに(そら)から(かみなり)発生(はっせい)しているのだ。ノアの周囲(しゅうい)にも(かみなり)()ちてきて、それでも彼女(かのじょ)(はし)るのを()めようとしなかった。


「クリスちゃーん。そんなところにいたら、パンツが()えちゃうよー。スイカちゃん、クリスちゃんを()ろすのを手伝(てつだ)ってよー」


 空中(くうちゅう)浮遊(ふゆう)するクリスに(たい)して、そんな心配(しんぱい)をする少女(しょうじょ)(めずら)しい。『ノアちゃん、(やさ)しい……』、『今日(きょう)(かがや)いてるわ。()せる……』と生徒(せいと)(こえ)()れて、一部(いちぶ)のファンはオペラグラスを()()して神楽(かぐら)()()姿(すがた)()つめていた。


 空間(くうかん)からの振動(しんどう)も、数々(かずかず)稲妻(いなずま)もノアの足は()められない。恐怖(きょうふ)というものを()らない幼児(ようじ)のようにノアは()(つづ)けて、しかしスイカもクリスも彼女(かのじょ)姿(すがた)()づけなかった。それほどに二人(ふたり)(あらそ)いは熾烈(しれつ)だったのだ。


 ノアが二人(ふたり)(もと)へと辿(たど)()寸前(すんぜん)、ついに(かみなり)彼女(かのじょ)直撃(ちょくげき)した。教室(きょうしつ)からは複数(ふくすう)悲鳴(ひめい)()がって、ようやく(あらそ)っていた二人(ふたり)が、幼馴染(おさななじみ)存在(そんざい)()づく。「ノアちゃん!?」、「ノア!?」と悲痛(ひつう)(こえ)(かさ)なった。


 (かみなり)直撃(ちょくげき)()きた周囲(しゅうい)からは白煙(はくえん)()がっている。最悪(さいあく)事態(じたい)()こったのか、そうでなくてもノアのピンク(いろ)(かみ)がチリチリのパーマになってしまったのではないか。教室(きょうしつ)にいた女子(じょし)一人(ひとり)(おそ)(おそ)る、(ゆか)へと()()としたオペラグラスを(ひろ)って、(ふたた)校庭(こうてい)へと()()けた。


()かったー。やっと(あらそ)うのを()めてくれたねー、安心(あんしん)したよー」


 場違(ばちが)いなほど、いつもどおりのノアの(こえ)()こえてくる。(けむり)()れて、スイカとクリスが()たのは黄金(おうごん)のオーラだった。キラキラとした神聖(しんせい)なエネルギーがあって、それがノアを(つつ)()んで(かみなり)から(まも)ったのだ。身体(からだ)はもちろん、ピンク(いろ)(かみ)無事(ぶじ)である。


「ノアちゃん!」、「ノア、(なん)ともないの!?」と、二人(ふたり)幼馴染(おさななじみ)がノアの(もと)(おもむ)く。地上(ちじょう)にいた神無月(かんなづき)西瓜(すいか)(さき)で、(ちゅう)から()りてきたクリスティーナ師走(しわす)(あと)(つづ)いた。


「うん、(なん)ともないよー。クリスちゃんには今日(きょう)授業中(じゅぎょうちゅう)()ったでしょー。私、(むかし)からケガってしたことないんだー」


 状況(じょうきょう)理解(りかい)してるのか、していないのか不明(ふめい)無邪気(むじゃき)さでノアが(わら)う。スイカとクリスは、ノアの頭上(ずじょう)()た。二人(ふたり)には()える。(いま)まで()えなかった高位(こうい)存在(そんざい)複数(ふくすう)、ノアのことを(しゅ)()しているという(いま)状況(じょうきょう)が。その姿(すがた)(ふね)()った七福神(しちふくじん)(おも)わせて、しかも(かず)(なな)どころではなく、およそ(かぞ)えきれないほど(おお)い。


 もしかしたら私たちは(ばっ)せられるのではないかと、(あらそ)っていた二人(ふたり)(おそ)れていると。そのスイカとクリスに()けて、頭上(ずじょう)からは(こえ)()こえてきた。


喧嘩(けんか)程々(ほどほど)にね』、『これからも、私らの()しと仲良(なかよ)くしておくれ』と。そう(つた)えると、ノアの守護(しゅご)(しん)(ふたた)び、姿(すがた)(かく)していった。


教室(きょうしつ)(もど)ろうよー。(はや)く、お弁当(べんとう)()べよー」


 そう神楽(かぐら)()()が、二人(ふたり)()()()る。三人(さんにん)笑顔(えがお)になって、校庭(こうてい)(ある)()して。(きょう)(しつ)(ない)ではドラマチックな出来事(できごと)(おお)()()がりとなっていて、『来月(らいげつ)同人誌(どうじんし)は、いつもの(ばい)()るわよ!』と一部(いちぶ)指示(しじ)()んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ