第37話 背負う者たち
「この力本当は使う気が全くなかった。けど、負けるわけにも死ぬわけにもいかねぇし使わしてもらうぜ」
「嘘でしょ……!なんでこんな力を……!!」
「神を殺して………その血肉を食らって得たのがこの力だ。この力を得て、己の過ちに気づく過程で殺してきた人や神は万に及ぶ」
「今俺はそんな屍と意志の上に立っている。いや、"背負っている"」
「……!!」
「お前は俺を殺すと言ったが、俺の意志だけでなく、俺が背負っているもの全てを抱えて生きる覚悟がお前にあるのか?」
「…っ」
レイチェルは唇をかみしめ、俯いている
無理もない。急に俺が問うたんだからな。
「別に答えなくてもいい。俺はただ知ってほしかったんだ、簡単に『殺す』や『死ぬ』と口にしているがそれがどれほど重いものかを」
「……背負ってやるわよ」
「背負ってやるわよ!!!!」
「私が今ここに立っているのは、マリーンとレイナの二人を倒したから!二人の分の想いや覚悟を背負って立ってるの!私はとっくに背負う覚悟ができてるわ!!」
「そうか…ならいいんだ。やっぱり強いな……お前」
レイチェル·アイスフィート……初めて会った時とはまるで別人。短期間でここまで変わったか。
いや、俺にプライドを折られて、元々の姿勢を思い出しただけか。
「それじゃあ、第2ラウンドと行こうぜ」
「ええ、どこからでもかかってきなさい」
さて、仕切り直したわけだが、早めに勝負を決めさせて貰うぞ。
「神炎・雷火之蝶」
一歩、また一歩と近づいて行く。
「そんな悠長にしてていいのかしら?私は待たないわよ!」
レイチェルは駆け出し、速攻を仕掛けてくる。
俺はこれを待っていた。
蝶のようにのらりくらりと攻撃をかわしながら、隙を見て斬る。
5回斬ったところでレイチェルが距離をとった。
「ぐっ……完全に速攻を逆手に取られたわ……少しまずいわね」
5回ともそこそこ深く入ったはずだ。
しかし、逆を突かれてなお瞬時に傷口を凍らせてふさいでいるのだから侮れない。
「もう私に残された時間は少ない……だから、今から行うのが最後の攻撃。そのためのイメージはマリーンとレイナが教えてくれた!!」
「獄門全開!!!」
レイチェルがそう叫ぶと、さっきまで閉まりかけていた門は大きく開き、今までで一番強く寒い風が吹き込んできた。
「塵も積もれば山となる…氷の粒も集まり固まれば、怪物となす!」
「大紅蓮氷雪・大蛇!!」
肉眼では見ることのできない極小の氷の粒が一か所に集まって固まり、大きな蛇へと姿を変えた。
見るものを威圧するかのような雰囲気だが、不思議と魅入ってしまう美しさも兼ね備えている。
レイチェルの技の完成系といってもいいだろう。
「この透き通るような色もすぐに赤く染まるわ。――貴方の血でね」
蛇は俺めがけて突撃してきて、そのまま地面ごと噛みついてきた。
幸い動きは早くないのでよけられたが、範囲がでかいからギリギリになってしまう。
「地面もさっきとは比べ物にならない速さで凍ってきてるわよ。もう貴方に逃げ場なんてない!」
レイチェルの言うとおりだ。
地面もさっきとは比べ物にならない速度で固く凍ってきている。
このままではやられるのは時間の問題だろう。
―――だが、それは地面にいたらの話だ。
「翔雷炎龍!!」
刀に炎を纏い、龍が空に昇るように天高く舞い上がる。
これなら足場を気にせず、対等に戦える。
「!!空に上がるとは……考えたわね……!」
「でも、貴方は私を切ることはできない!」
蛇はレイチェルの体に尻尾を巻き付けている。
とぐろを巻くように。
「これで、蛇が盾となり私まで攻撃は届かない」
「そしてこの一撃で貴方を打ち落とす!」
「絶対氷河之息吹」
蛇の口から巨大な冷波がこちらへと放たれる。
今更よけるなんてことはしない。
次の一太刀ですべてを斬る!!
「降龍炎雷!!!」
上昇した時の勢いを使い、冷波に突っ込むようにして急降下する。
この一撃は絶対に届く!―――いや届かせる!!
雷を纏った炎と最強の冷気が空中で激しくぶつかり合う。
押し込み押し込まれての攻防。均衡の膠着状態。
それを破ったのは―――炎だった。
「うおおおおお!!!!」
迦具土の咆哮が響いたと同時に炎は勢いを強め、ついに冷気を打ち消したのだ。
大蛇も熱波に耐えられず崩れ落ちる。
そしてその太刀はレイチェルへと届いた。
「ガハッ…………!!」
レイチェルは血を吐き、その場に倒れこんだ。
まさに技ありの一撃だった。
「…………勝ったぞ、勝った!幾万の覚悟と意思を背負って勝ったんだ………!」
「火雷神…………俺はお前の力に恥じないできたと思うぞ」
迦具土は天に刀を掲げ、勝利を噛みしめていた。
彼を照らす太陽の光はまぶしく、まさに彼が火の象徴であることを強調するような輝きを放っていた。




