表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の愛した桃源郷  作者: 魚精神
第二章 王位争奪武闘会編
36/38

第34話 違和感

 秋晴れの空の下、そよ風に稲が揺れている。

 その先に艶のある黒髪をなびかせた女性が凛とした佇まいで立っている。

 彼女は振り返ると、こちらに向かって手を差し伸べてきた。


 「さぁ、……様もこちらに」


 こちらも手を差し出したが、徐々に視界が眩い光りに包まれる。




 「はっ!!」


 目が覚めた。

 目を開けると、天井に向かって手を伸ばしていた。


 「今のは……夢?」


 なんとも不思議な夢を見たものだ。

 そんなことより今の時間は……


 「よかった、俺の試合まで15分余裕がある」


 「とりあえず準備をするか」


ーーーーーーー


 体を少し動かしていると、もうすぐ俺の試合が始まる頃になっていた。


 「よし、そろそろ出ようか」


 部屋を後にし、会場に向かう。

 今回からいよいよ準決勝だ。そして、俺の対戦相手はレイチェルだ。

 前戦った時は俺が勝った。

 けど1回戦を観た時、前とは比べ物にならないほど成長しているのがわかった。

 間違いなく難敵。だが、俺は乗り越えてみせる!


 


 会場に入り、観客席を見ると1、2回戦とは比べのにならないくらい人が入っている。


 「すげぇ……!」


 最初に出てきた感想がそれだった。

 それだけ会場の空気が俺を飲み込んでいた。


 「来たわね」


 奥から聞き慣れた声がする。

 レイチェルだ。


 「ずっと、ずっと待っていた。貴方に負けたあの日からずっと待っていたこの時を!」


 「今やって来た。貴方にリベンジを果たすときが!」


 「私はもう、前とは違うわよ」


 「わかってる。俺だって前とは違う」


 俺だって何もしなかった訳ではない。

 ずっと神の力無しでも戦えるようにしてきた。

 1回戦ではまさにそれが役に立った。

 出来ることなら素の状態でやりたいが厳しだろうな…


 「これより準決勝 神代八雲対レイチェル·アイスフィートの試合を執り行う!!」


 「よーーーい」


 「始め!!!」


 試合開始と同時にレイチェルに突撃する。


 「うおお!!」


 レイチェルは走って俺と距離を取りながらある程度の所で振り向く。

 両手に氷の球……!

 針になる前に斬る!


 「燕返し!」


 袈裟からの高速の逆袈裟で氷の球を斬る。

 よし、懐に入り込んだ!


 「龍臥突(りゅうがとつ)!!」


 刀の柄を左手で押し込んで強力な突きを鳩尾にお見舞いする。

 パキン! 何か硬い物に当たった音がする。


 「なに!?」


 目線を下に落とすと、鳩尾の部分を氷で覆っているのが見えた。

 あの一瞬でそこまで正確にできるか……


 俺もレイチェルも深追いせず、一度距離を取る。


 「30秒待ってあげる。あの剣で変身しなさい」


 「わざわざ敵に隙を与えて何のつもりだ?」


 「私が真にリベンジを果たしたいのは火之迦具土の力を使った貴方だからよ」


 そうゆうことかよ……

 ならお望み通り、迦具土に変わってやるよ。


 四神の宝剣を取り出し、抜く。

 何も言っていないがきっと応えて出てきてくれるはずだ。……そんな気がする




 


 久し振りに俺が出てきたな。

 最近は建御雷が応えてばっかだったからなぁ……


 「久しいな」


 「出てきたわね……!ずっと貴方と戦いたかったのよ!」


 「そうか。なら始めようぜ」


 勝負は振り出しに戻った。

 さっきとは打って変わってどちらも動こうとしない。

 

 「氷華乃鳥(ひょうかのちょう)!!」


 「以津真天(いつまで)


 静寂を打つように同時に動き出す。

 俺は下段からぐるりと円を描くように斬撃を飛ばした。

 その炎を纏った斬撃は怪鳥へと姿を変え、氷華乃鳥に向って行く。


 ぶつかった2匹の鳥は完全に相殺された。


 「油断してる暇はないわよ!」


 「乱氷弾(ピンボール)!」


 5つの氷の粒が地面や壁に当たるたび、複雑な反射をしてあちこち飛び回っている。


 「蛇行炎舞(だこうえんぶ)!」


 蛇のようなくねくねした動きで、避けながら距離を詰める。


 「龍昇炎(りゅうしょうえん)


 射程圏内に入った所ですかさず斬り上げる。

 斬り上げると同時に飛び上がった。


 「焔獅子(ほむらしし)


 間髪入れずに今度は空中から斬り下ろす。

 なんとかレイチェルは食らいついていたが、顎と額に傷を負っていた。


 「焔獅子·厄噛(ほむらしし やっかみ)


 少し怯んでいる隙を逃さず、高速の3連斬で畳み掛ける。

 レイチェルは両手をクロスさせて、さらに山勘で両腕や両肩、頭の一部分を氷で覆いガードしている。

 1、2発目は山勘があたり軽傷で済んだが、3発目を左腕の氷で覆ってない所に受け、ダメージを負う。


 「ぐぅぅ……!勘が外れたわね」


 傷を受けた所を凍らせて止血しているのを見るとまだまだ冷静だ。

 俺と一旦間合いを置いたようだが、俺はここからでも攻撃できる。


 「飛剣·火箭(ひけん かせん)


 縦に切り上げるようにして、斬撃を飛ばす。

 レイチェルに向かって飛んでいる斬撃は途中で無数の火矢に形を変えた。

 その内の5発ぐらいが命中した。火矢は刺さって傷口を燃やしている。


 「ああああっっっ………!!」


 傷口を焼かれ続けている想像を絶する痛みからうめき声を上げている。


 「苦しいなら降参しろよ」


 「い……や…よ!」


 「このまま続けたら死ぬぞ、お前」


 「フフ……!望むところよ!」


 まぁ、別にこの戦いで死んだとしても蘇生してもらえるけどな。

 だが、本当に一度死を経験することになるぞ。


 「神炎·篝神楽(しんえんかがりかぐら)!!」


 四肢に炎を纏い、今までよりも高速で動けるようになった。

 神楽を踊るかのように不規則な動きでレイチェルを斬りつけていく。


 「うっ……!」


 「がはっ………!」


 「あああ……!」


 レイチェルはもはや全く動きについてこれず突っ立ったまま、攻撃を受け続けている。

 この時俺の中であることが引っかかっていた。


 『余りに手応えがない』


 この違和感が俺の中でずっと引っかかっていた。

 ここまでレイチェルがしてきた攻撃もほぼ捻りのない単調な攻撃だ。

 何かあるのか?何か……何か……


 そんな事を考えながらレイチェルに目を向けた時、彼女の口角が少し緩んだ。

 !?こいつやはり何か狙っている!

 そう確信した俺は攻撃をやめ、一旦距離をとる。


 「フフッ、ハハハハ!やっとよ、やっと"掴んだ"わ!」


 「今まで受けて痛みも苦しみもこのためにあった!!」


 「逆転の時よ」


 レイチェルは両手の親指と人差し指を合わせ、縦の長方形を作る。

 それは普通、測量とかに使ったりするものだが測量なんてするわけない。

 あれは…………


 「扉……?」


 「惜しいわね。正確には"門"よ」


 「地獄のね」


 「なに!?」


 レイチェルの指で作られた小さな空間に彫刻の施された門が浮かび上がってくる。


 「開門」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ