↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憑物世界で少女は嗤う  作者: 四ッ谷アザメ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/9

プロローグ

 ――死んじゃうの……かな。


 焼けた二体の焼死体を眺め、少女は己の死期が近づいていることに気がついた。

 身体に力が入らず、手から先の感覚は全く無い。

 ただ、無気力で何もかもがどうでもよくなっていた。


 ――パパ……ママ……


 周囲では、赤々とした炎が棚や商品を燃やし尽くし、徐々に火の手が少女に近づいているのがわかる。

 黒煙も立ち上がり、息を吸うたびにその煙が肺に入り、咳き込む。

 咳き込むたびに喉から血塊が込み上げ、声を出そうにも出せない状態だ。

 

 ――まだ、死にたくないなぁ……


 零れる涙は透明ではなく、血のように赤々としていた。

 いや、これは涙ではなく血だ。

 身体中の水分が涸れ果てるまで泣いた。

 泣いて、

 哭いて、

 鳴いて、

 啼いて。

 泣いた後に残るのは「何もできなかった」という後悔だけだ。


 徐々に意識が遠のいていく中、誰かが私を呼んでいる気がした。

 お迎えだろうか。先に行ったパパとママが迎えに来てくれたのだろうか。


 コツン、コツン、と足音も聞こえる。

 ここには私と二人の焼死体しかないはずだ。

 それなのに、何故足音が聞こえるんだ?


「――うか?」


 何処かで聞いたことのある声だ。

 でも、何処でかは覚えていない。でも、懐かしくて、優しい声だ。


「たすけて……」


 声が、出た。

 が、すぐに血塊がごぼごぼと漏れ出る。


 一瞬だったが、声の主には届いたのだろうか。

 私の精一杯の力を振り絞って出した声だ。


 届いていてほしい。

 届いて。

 届け。


「大丈夫、ちゃんと届いてるよ」


 何もかもがぼやけた世界で、その声だけが私の心に鮮明に響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。