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『普通になれなかった僕は、社会の中で静かに壊れていった』  作者: こうた
第一章 「みんなと同じ世界なのに、少しだけ違った」幼少期編

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第7話 「周りを見るクセ」

直人には、いつの間にか身についていた“クセ”があった。


それは、人より周りをよく見ることだった。



---


誰かが動く前に、まず見る。


誰かが笑う前に、まず見る。


誰かが怒られる前に、まず見る。



---


気づけばそれが当たり前になっていた。



---


教室に入ると、まず空気を見る。


今日は静かか、騒がしいか。


先生の機嫌はどうか。


誰と誰が一緒にいるか。



---


その情報を全部頭に入れてからでないと、自分がどう動けばいいか分からなかった。



---


だから、いつも少し遅れる。



---


休み時間。


誰かが机を寄せて集まっている。


カードを見ている。


笑っている。



---


直人はその少し外側から見る。



---


「入ってくる?」


誰かが言う。



---


その瞬間、頭の中が一気に動き出す。


今入るべきか。 邪魔にならないか。 何を言えばいいか。 失敗したらどうなるか。



---


考えているうちに、会話は進む。



---


「じゃあまたあとで!」



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終わってしまう。



---


直人はその場に残る。



---


“また今度”は来ないことが多い。



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廊下でも同じだった。


先生が歩いている。


誰かが呼ばれている。


誰かが注意されている。



---


直人はいつも少し離れた場所から見る。



---


“今話しかけていいのか”


その判断が難しい。



---


話しかけるタイミングを考えているうちに、先生はどこかへ行ってしまう。



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結局、何もできない。



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その繰り返しだった。



---


ある日、体育のあと。


教室で着替えているとき。



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「直人ってさ、いつも見てるよな」


誰かが言った。



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悪い意味ではなさそうだった。


でも、直人は少しだけ固まる。



---


“見てるだけ”



---


そう言われると、何もできていないように感じた。



---


でも本当にそうだった。



---


自分はいつも、周りを見ているだけだった。



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その日の帰り道。


直人はずっと考えていた。



---


どうして自分は、すぐに動けないのか。



---


みんなは迷わず動く。


でも自分は一度止まる。



---


その違いが、どこから来ているのか分からない。



---


夜。


布団の中。



---


今日の教室の光景が浮かぶ。


笑っている声。


動いている体。


自然な流れ。



---


その中に入れなかった自分。



---


“見ているだけの人”



---


その言葉が、頭の中で少しずつ重くなる。



---


まだこの時の直人は知らない。


この“周りを見るクセ”が、

自分を守るためのものでもあり、

同時に世界から遅れる原因でもあることを。



---


ただ静かに、また一日が終わっていく。

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