表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トルサニサ  作者: 夏笆
47/51

46、生身ではなく







「人間じゃ、ない?」


「うん。人間じゃないよ。俺達、生身じゃないからね」


 さらりと言ったハーネスが、へらりと笑うのを見て、サヤは思わずナジェルとアクティスを見る。


「生身でないのに、茶を飲むのか?」


「うん。俺達は、人間に近しく作られているからね。元々、代理としても使うつもりで開発したらしいから、そのためにも、食事をしたり、何か飲み物を飲んだりっていうのは、必要だったみたい」


 『ほら、パーティなんかで自然に振る舞うためってことだよ』と言いながら、ハーネスはカップに口を付けた。


「うん、美味しい。この通り、毒なんて入っていないから、サヤちゃんも、それからナジェルとアクティスもどうぞ」


 『毒見役だね』などと笑うハーネスを、アクティスがぎろり睨む。


「生身では無い者が飲んだとて、毒入りかどうか定かではないだろう」


「確かに。俺達、毒も何も関係ないから・・・あ!そうか。俺達を開発した人間は、そういう時のためにも、俺達を使おうとしたんだね。納得」


「そんな・・・捨て駒みたいな扱い。生身じゃなくたって、生きているんだから生命体でしょうに」


 眉を寄せて言うサヤの肩を、ナジェルがぽんと叩く。


「生身でなくとも生命体というかどうかは、置いておいて。君たちは、本当に人間ではないのか?その、部分的に機械化したとかではなく?」


「うん。違うよ。全部、機械。無機物」


「しかし、先ほど体温も感じた」


 一瞬ではあるが、拳で殴り掛かった時にも、人と同じように体温を感じた、というナジェルに、アクティスとサヤも大きく頷いた。


「ああ。皮膚も瞳も、無機物という感じはしないな」


「それに、さっきハーネスは、感情に触れるのが初めてだと言っていたけど、ハーネスの瞳は、興味を持つことに対して輝いたりしているもの。それも、感情でしょう?」


「ですが、自分たちは、恐ろしく頑健です」


 キーラムのひと言に、先ほどナジェルとアクティスが攻撃を仕掛けた時の事を思い出し、三人は口を噤む。


「それに俺達、凄く速く走れるし、跳躍力も人間より優れているんだよ」


「・・・そういえばキーラム。学舎の硝子を突き破って飛び込んで、また窓から機体へ飛び移った、わね。それこそ、風のように速く走っていたし」


 そう言えばそうだった、と呟くサヤにキーラムが頭を下げた。


「あの折は、驚かせてしまい、本当に申し訳ありませんでした」


「キーラム。あの場には、他の者達もいただろう?何故、サヤを攫ったんだ?」


 不思議そうに問うナジェルに、キーラムは先にサヤにも見せた宝玉を見せる。


「これは、インディ王家に代々伝わる宝玉なのですが。特別に強いトルサニアンの力を有す方を判別できます」


「つまり、サヤの能力を差し出せということか」


 強い瞳になったナジェルに、ハーネスが瞳を落とした。


「悪意ある言い方をすれば、そうなります」


「でも!俺達は、マジェスティを助けて欲しいだけなんだよ?マジェスティは、今、本当に危険な状態で、だから」


「それもすべて、そちらの都合だろう」


「っ」


 アクティスにばっさりと言い切られて、ハーネスは辛そうに眼を伏せる。


「やっぱり・・・感情の動き、あるわよ?」


「え?」


「・・・サヤ。君ってひとは」


「はあ。今、それなのか?」


 ハーネスの瞳を覗き込むようにして言ったサヤに、ハーネスは驚きの目を向け、ナジェルとアクティスは、呆れたようにため息を吐いた。





ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ