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黒と青6

青龍は思案しているように首を傾げた。


「貴女の望みが聖女の力を無くし恋愛をして結婚をする、普通の幸せが欲しいということだったようですね」


黒竜からのメッセージが読み取れるというのは本当だったようだ。


アイリスは頷いた。


「望みを聞かれたので確かにそう言いました」


「その望みを叶えるために、貴女が絶命する瞬間に貴女から聖女の力を奪い、暫く延命していたようです。そして奪ったと同時に貴女に呪いをかけています」


「呪い?」


「はい。貴女から奪った力を使い、延命した黒竜ですがそれは僅かの時間です。静止の力が緩やかに効いてくる作用しかなかったので、貴女の亡骸を人間が持ち去るまで動かずに死んだふりをしていたそうです」


「そこにウルフがやってきたので聖女に危機が迫ったら、この魔石を渡して助けてやれと伝えてから息絶えています」


「私が生まれ変わってもウルフはわたしを見つけられると思ったのですか?それに呪いって一体何ですか?」


青龍は淡々と話をする。


「呪いの力で貴女に聖女の香りが残っているのですよ。黒竜がかけた呪いは『生まれ変わっても前世の記憶を持ち続ける』というものです」


「私がアリア………聖女の記憶を持っているのは黒竜のせいなんですか?何故そんなことを?」


アリアは黒竜に頼まれて生命を奪った。しかも自分の生命をなげうって叶えたのだ。


呪いをかけられる覚えがない。


「私に自分の最期を知らせるためです。私の性格上、黒竜が死ねばその理由を探し出すと思ったのでしょう。そして聖女を見つけ出してもすぐには殺さないと。つまり、自分のためにわざわざ貴女に呪いをかけたのです」



青龍は小さく息を吐いた。


「前世の記憶なんて持っていてもいいことはありません。現に貴女はそのせいで苦労しています」


確かにアリアの記憶があるせいで人を好きになることが出来ずに困っている。


アイリスが黙っていると


「安心して下さい。私はその呪いを解くことができます。黒竜の望みは叶いました。私に最期を伝えたいという望みはね。なのでその呪いを解きましょう」


アリアの記憶がなくなる。


それは嬉しいことなのかわからない。


どう答えるのが正しいのか困っていると


「貴女は人を好きになりたいのでしょう?それならば聖女の記憶は邪魔なだけです。もう、記憶に悩まされる必要はありません」


「そうですね」


確かに記憶はない方がいいのかもしれない。


「確かに邪魔かもしれません」


「では呪いと解いてもいいですね?」


「はい!」


過去に囚われずに前に進みたい。

 

せっかく聖女じゃないのだから。 


「貴女の名前を聞いてもいいですか?」


「アイリスと申します」


「アイリス、貴女の未来が素敵なものであることを祈っています。目を瞑ってください」 


アイリスは静かに目を閉じた。


「朝起きたときには前世の記憶はきれいになくなっています。黒竜の願いを叶えてくれてありがとう、アイリス」


身体が暖かい空気に包まれたと思った途端、そのまま気を失った。


自然と涙が流れ落ちた。


さよなら、アリア。


そのまま深い闇の中へと堕ちていった。


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