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ルミナス魔法学園物語 ~『私はお姉さまとゆるゆる学園生活したいだけです!』~  作者: 月羽


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第36話 穏やかな休日-1

 

 故郷を離れ、この街へやって来たあの日

 私を迎えてくれた花色の並木達

 彼女達も今は緑の衣へと着替え終えて

 春から新しい季節への移り替わりを教えてくれる……

 

「ふぅ…春花の季節ももう終わりですね……」

 蜜の入った熱いお茶を一口啜ると、私はほっとりと目を閉じた。

 そよぐ風は暖かく、私の白銀の髪も風に揺れてなびく

 本当に気持ち良くて、身体の中も外も温まりそのまま眠ってしまいそう。

 

 今日は七日に一度の学園の休校日。

 前回の休日は魔法の特訓で潰れてしまったけれど

 今日は誰に気兼ねする事無く、休日を楽しむ事が出来ます

 私は今、心の奥底から幸せと休日を満喫している。

 先日までの焦燥感が嘘の様で…うに。あ、頬を突かれましたよ?

 

「シルファったら蕩け過ぎだよー?日溜まりの年寄り猫みたい」

 瞳だけ動かして左横を見れば、そこには森妖精の少女コロネのにやにや顔。

 突かれた時点で誰なのか、私の中で二択になっていましたが。

「うに」

 また突かれましたよ、今度は、反対の右側から。

 

「なるほど…普段の貴女達ってこんな風なのね…?」

 突いたのはセレーネお姉さま、二択のうちのもう一方です。

 しなやかな白い指で私の頬をぷにぷにと突きながら、にこにこと微笑んでいます。

 でも、普段のお姉さまならこんな所で、しかも皆の前ではしないのに。

 どうしたと言うのでしょうか?

 

「あのお姉さま…えっと……」

 言葉が続きません。私はどうすれば良いのでしょう?

 コロネを怒ればお姉さまは指を引いてしまう気がするし

 かと言って、このまま突かれ続けるのも恥ずかしいのです。

 二律背反の葛藤とは正にこの事を言うのでしょうか?

 

「これはいわゆる修羅場ってやつなのかな~?」

「修羅場とは違う気がするけれど…でも、そうなの?」

 仲良し二人組がなにやら好き勝手な事を言っていますよ?修羅場って……

 まったく、相変わらず仲のおよろしい事で。

 私達の対面、我関せずと言った空気を醸し出しているのは

 ゆるやかな森妖精のクロワと、しっかり者な委員長ことルキア。

 

 ここに居るの五人。私ことシルファとセレーネお姉さま

 そして同じクラスの友人達である、コロネ、ルキア、クロワの五人

 他にも何人か顔を出し、街へ向かった子達もいたけれど

 今はここにいるのは五人。

 

 五人集って何をしているのかと言うと、寮の前庭にある東屋でお茶会の最中。

 丸い白テーブルには、寮の調理室から借りてきた白いティーセット。

 大皿には皆の差し入れの焼き菓子や甘菓子に蜜菓子、それに揚げパン。

 東屋の周囲では、新しい季節の花々が五色の装束を披露する

 なんて優雅で素敵な空間なのでしょう、これこそ私の望む平穏な日常。

 …ぷにぷにされているけれど……

 

 なぜお茶会かって?休日だから、と言うのも理由の一つではあるけれど。

『みんな魔王(アルカナロード)と契約出来たよ、やったね!』が一番の理由。

 そもそもの切っ掛けはコロネの提案。

 私が苦労の末、新しい魔法を習得出来た事をお祝いしたかったみたいです。

 それを言うのならば、無事に契約し新しい魔法を習得したのは皆も一緒。

 ならば、皆の分もお祝いしよう!って事となり。このお茶会に。

 

 本当はお姉さまと二人きりの休日をゆるゆると過ごす予定だったけど

 でも、これはこれでありかな?と。…ありかなとは思うけど……

 

「それで…わたしはいつまで突かれ続けるのでひょうか?」

 私はまだぷにぷにとされてます。

 顔の美容にはなりそうだけど、しゃべり辛いのです……

 しかも、左右で突くテンポが違うから余計に。

 なのにコロネはこんな事を言う。

 

「シルファの頬ってぷにぷにだから、飽きないと言うか癖になると言うか……」

 私としては、出来ればそろそろ飽きてほしいのですが?

 せっかくのお茶も冷めてしまうし、お菓子も食べたい。

 お姉さまはいつも私を触っていますし、そろそろ良いですよね?

 だから、横目でお姉さまの方を見るけど……

 

「…わかるわ」

「お姉さま!?」

 あの、お姉さま、急に何を言い出すのですか?

 何か納得した様に深く頷いていますし

 あまつさえ、コロネと何か通じ合った空気出しています。

 

 危険です!この流れは何か危険な気がします。

 具体的に言うと私の心と身が危ない。

 私で遊ぶのが好きなお姉さまと、私を弄るのが好きなコロネ。

 この二人が結託したのなら、私は一体どうなってしまうのでしょう……

 …いえ、少しだけいいかも?と思ってしまいました。

 

 でも、やっぱりダメです!

 ここは寮の庭、しかも今日は学園の休日で気付けばお昼も近い。

 もうすぐ街へ行っていた寮生達が戻ってくるかもしれない。

 それに、私達の様に寮で過ごしている子達も大勢います。

 だからと私はどうすれば良いのでしょうか?

 

「あー…その……」

 救いの手…声が聞こえました。ルキアの声です。

 やはりこういう時、場を引き締めてくれるのは委員長のルキアです

 当然の様にお姉さまとコロネの指も止まりました。

 二人共、首を傾げきょとんとしています。

 がんばってルキア、二人の興味を引ける話題を出してください。

 

「えーっとですね……」

 だけど、ルキアの言葉は止まってしまいそう。

 私が見ると困った表情を浮かべるし、これ以上無理はお願いできません。

 そこへ、さらなる助けの手が入りました。

 

「うんとさ~イベント、誰に投票するの~?」

 クロワです。ルキアの相方にして副委員長のクロワ。やっぱり仲がいいなぁ。

 とにかく好時機な話題は、お姉さまとコロネの興味を引く事に成功した様です。

 お姉さまは何かを思い出す様に考え始め、コロネは何やら唸っています。

 

 イベントとは、ルミナス魔法学園の一年生達が行う『婚礼祭』の事。

 私達一年生にとっては、入学して初めての大きな行事。

『婚礼』とは付くけれど、別に誰かと誰かの結婚式を行う訳ではありませんよ?

 あくまで行事としての婚礼です。

 

 由来は遠く古い時代。

 女性の魔法使いと『魔王アルカナロード』の契約は今よりも神聖な物で。

 契約の儀式とは『魔王アルカナロード』との婚姻を意味していたそうです。

 しかしその慣習も、時代流れと魔法使いの在り方と共に変化し。

 同時に『魔王アルカナロード』も寛容な存在である事がわかり、今の儀式の形になったとか?

 契約の儀式の時、お姉さまとフィール先輩が『介添え人』として立ち会ったのも、その古い時代の儀式の名残らしいです。

 その古い慣習を祭典と言う形に変化させ、今に伝えるのが『婚礼祭』

 昔があるから今がある、進歩発展しても忘れてはいけない事がある

 …とはセルティス先生のお言葉。

 

「あー…私はルキアかクロワにかな?本当は二人に入れたいけど…ね?」

「私…達?」

 話は戻り、ここぞと私は二人の名前を出してみたりするのです。

 ルキアは自分達の名前を出され驚いたけれど

 今はこの話の流れに乗ります!その方が健全で安全です。私の身が。

 だからと、苦し紛れにルキアとクロワの名前を出した訳ではありませんよ?

 理由はちゃんとあるし、私もそうあってほしいと思ったから。

 

『婚礼祭』では各クラスから『二人』の代表を選ぶ事になります。

 選ぶ基準は自由。

 祭り装束でもある婚礼衣装ウェディングドレスを着た姿を見たい子、クラスの代表として相応しい子。単純に仲の良い子に投票したっていい。

 でも投票出来るのは一人一票、これが曲者。

 選ばれるのは投票結果の上位二人、つまり仲の良い二人が選ばれるとは限らない。

 私も、本当ならルキアとクロワの二人に投票したいのだけど。悩ましい。

 だからルキア『と』クロワではなく、ルキア『か』クロワなのはそう言う事。

 でも、クラスの委員長と副委員長を務める二人なら、選ばれる可能性は高い気がします。私としても、この二人を推したい。

 なのにその相方さんは……

 

「んふふ~、私はシルファに入れようかな?」

「クロワ…?」

 確かに投票相手は自由。でもクロワさん、なぜここで私の名前が出ますか?

 見ればルキアもクロワの言葉に納得した表情をしてるし。

 この流れはなんでしょう?二人共仲が良いのわかっていますから。

 切実な願いとして、もうこれ以上目立つ事は避けたい。なのに皆は。

 

「シルファの髪って、婚礼衣装ウエディングドレスに映えそうだし。ほら、儀式の衣装もそうだったし~、ねぇ?」

 私の困惑を見たクロワがさらに言葉を続けると。

「わかる!シルファの髪っていいよね……」

 コロネまでがこんな事を言い始めました。確かに儀式の時に身に着けた、白の装束は『六花りっかの花嫁』なんて名前だったけれど。

 それとは別、ここは言う事は言っておかないと。自己主張は大事!

 

「できれば私は遠慮したいかな…?イベントとは言え……」

 言って横目でお姉さまを見れば、お姉さまは静かに紅茶を楽しんでいました。

 一年生達の話題と言う事で、一歩引いた位置に身を置いた様ですね。

 確かに、お姉さま方上級生の先輩達はイベントを観覧するのみだけど

 だからこそ『婚礼』と名の付く行事の代表となるのはためらってしまう。

 そんな事を想いながら、私もとティーカップを取り紅茶を啜る。

 はふぅ。やはり、紅茶は甘目のが好みです。

 

「シルファはセレーネ先輩とがいいんだねー」

「けふっ!?」

 盛大に咽ました。コロネさんいきなり何を言い出すのですか?

 確かにその通りだけど、その通りではあるのだけど…あるのだけど。

 直球過ぎて言い返せない。ルキアやクロワまで納得した顔をしてるし。

 私って、やはりそう言う認識なのですね……

 お姉さまはと言うと、先ほどからと変わらずにお茶を楽しんでいました。

 流石ですお姉さま!私もこんな冷静さを身に着けたい。

 

 

「シルファは可愛いなぁ。さて、冗談は置いて、いざ考えると難しいね……」

 いえいえ、コロネさん冗談には聞こえませんでしたよ?

 でも、コロネが言ってくれたお陰で、少し気が楽になったかも?

 だからとこの場にいない他のクラスメイドがどう動くかはわかりません。

 

 なんにしても、誰に投票するかを改めて考えないと。

 それはルキアとクロワも同じなのか、四人で考え込む事になってしまいました。

 自由とは言え、どんな子を選んだら良いのかわからない。

 ここから話が入り乱れる。

 ルキアとクロワが、今度は私とコロネの二人は?なんて言い出すし。

 ならばと、私は森妖精であるコロネとクロワを出してみたり……

 ここに居ない子の名前も出始め、話の収拾がつかなくなってきました。

 何か新たな意見が欲しい……

 

 そうです!この場にはイベントの経験者がいました!

 今の二年生は昨年度の一年生、その二年生の先輩がこの場にいます!

 先人の意見は大事、ならば聞いてみるしかありません。

 

「あの…お姉さま、よろしいでしょうか…?」

「…ん?何かしら…?」

 お姉さまは昨年度の一年生として、このイベントを経験しているはずです。

 文通していた手紙には、代表に選ばれた事は書いていなかったけれど

 投票だけでなく、何かしらの形でイベントに関わっていた可能性はあります。

 それに、私の知らないお姉さまの事を知る事が出来るかもしれない。

 とにかく、今は経験者であるお姉さまに聞いてみます。

 

「お姉さまの時はどうだったのですか…?」

 あえて短く簡潔に尋ねてみます。私も具体的に何を聞けば良いのかわからないし。

 短く聞く事で、多くを聞く事が出来る事だってあります。

 四人の視線が集まる中、お姉さまは静かに紅茶を啜り喉を潤した後

 答えてくれました。

 

「…フィールがいたから……」

「「「「あー……」」」」

 四人の声が一斉に重なりました。

 それ以上聞かなくてもわかります、もう納得するしか無い答えです。

 

 フィール…『フィール・レィザル』

 ルミナス魔法学園の生徒会会長にして、生徒達を魅惑するカリスマの持ち主。

 私達の教室にも、彼女に魅惑されてしまった信奉者が多くいます。

 もう名を聞いただけで納得出来る、これ以上に無い答えです。

 だけど、そうなると新たな疑問が……

 

「先輩、フィール先輩はわかるけれど…代表は二人ですよね…?」

 聞いたのはルキア。お姉さまの話から私と同じ疑問を抱いた様です。

 イベントの代表にフィール先輩が選ばれたのはわかるし、納得のいく話です。

 そうなると、もう一人の代表となったのはどんな子だったのか。

 気になってしまうのは当然の事。

 

「…マロン…今の生徒会の書記の子よ」

 お姉さまはそう言うと、また紅茶を一口啜りました。

 もう少し情報が欲しいところだけど、イベントに興味無かった様にも見えるし

 これ以上は聞けない気が。

 少なくとも生徒会に入るような子が選ばれていた事がわかりました。

 でも、マロン先輩ってどんな方なのでしょう?

 お姉さまのクラスメイトで、フィールさんと共に代表となった子……

 やはり気になるし、聞くしか。

「マロン先輩ってどんな……」私がそう問うた直後……

 

「あの、私、呼ばれましたか?」

「ごきげんよう子猫ちゃん達、私を呼んだかな?」

 ふわふわとした柔らかな声と、そして凛と通る澄んだ声。

 二つの声が私の後ろから降ってきました。

 

「え?わぁ!?」

 いきなりの登場に私達は驚きの声を上げてしまいました。

 だって振り向けば話題の主がそこに……

 フィール会長その人が立っていたのですから。

 そして、その隣には見覚えのある眼鏡の少女の姿……

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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