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昔遊び系非魔法少女メズミアちゃん  作者: 明石竜


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最終話 メズミアパパから予期せぬ報告 そして決戦へ(後編)

伸歩は目的地へ辿り着くと、

「ここに来たの、二年振りくらいだわ」

 懐かしさに浸った。

訪れたのは、かの〝東大赤門〟だ。

続いて、

「やはり東大といえば、この場所ね」

 赤茶色の煉瓦造りの外観が特徴的な、安田講堂の前に移動した伸歩は、デジカメで嬉しそうに撮影する。

 その最中だった。

「日本一頭のいい大学のやつらに、バカになる催涙弾くらわしてやろうと思ったのに、東大生の姿ほとんど見掛けないな」

「そりゃ今日は土曜日だもん。仕方ないよ」

「まあ東大生といえども、ジクコゴ王立大生の成績上位層よりはバカだろうな」

「きっとそうだよね」

 こんな話し声を聞いた。

(あの子達ねっ!)

 伸歩は即確信する。

 一二歳くらいの男女二人組だった。

 少年の方は緑髪七三分け、少女の方はピンク髪セミロングウェーブだった。

 二人とも水鉄砲のようなものを手に抱えていた。

「神聖な東大を荒らそうとしてるのは、あなた達ね」

 伸歩はその二人のもとへ歩み寄り、話しかける。 

「おう、きみ、東大生? いや、そのわりには幼いから東大志望の子か?」

 少年の方が問いかける。

「そうよ。二年十ヵ月半後に現役合格を狙ってるの」

 伸歩はきりっとした表情で答えた。

「そうか」

「ねえ、この食パンみたいな顔の女、バカにしちゃおうよ」

「そうだな。おまえをバカにして東大合格の夢を断たせてやる」

「やっちゃえ!」

 二人は水鉄砲的な形の銃を向けた。そして休まず発射する。

「そうはいかないわっ!」

 伸歩はすばやく手に持っていた日傘を広げて回避。

「バリアされた!」

「今度は当てるわよ」

 悔しがる少年少女。もう一度引き金を引く。

 しかし、

「動作遅いわよ。それっ!」

伸歩はポケットから取り出した石川五右衛門柄めんこを地面に叩きつけた。

「うおっ!」

「きゃぁっ! パンツが」

 すると少年少女は風圧に負けしりもちをついた。弾みで手に持っていた銃も遠くへ吹き飛ばされる。

「あー、くっそ」

「拾わなきゃ」

 少年少女、落ちた所まで拾いに行こうとする。

「さすがチタニーク星製のめんこね」

 得意げになる伸歩。

 しかし次の瞬間、

「きゃぁっ!」

 背後から攻撃を食らわされてしまった。

「後ろにもいたのは気付けなかったようね」

 伸歩の背後の立っていたのは、金髪ポニーテールの五歳くらいの少女だった。

「まさかもう一人いたなんて。不覚を取ったわ。まさに灯台下暗しね。納豆だぁー。ネバネバして、くさーい」

 伸歩は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「やったわっ!」

「まいったか?」

「わたちの存在に気付けないようじゃ、お姉ちゃんは東大生にはなれないね」

 TMS団三人組は大喜びする。

「もう、こんなイタズラして。あれ? 足が動きにくくなったわ」

「おまえの靴に水飴銃をくらわせたのさ」

「どうりで。というかいつの間に? きゃっ!」

 伸歩はバランスを崩し、ずてんっと前のめりに倒れてしまった。

「いたたたぁ」

「このお姉ちゃん、さくらんぼ柄のパンツを穿いてるな」

「こら、覗くのはやめなさい僕。きゃっ、きゃあっ!」

 伸歩、今度は五歳くらいの少女にきな粉をぶっ掛けられた。

「きな粉銃だよ。今度は熱々のこし餡銃を食らわせてあげる。えいっ!」

 五歳くらいの少女は肩に掛けていた鞄の中に銃をたくさん隠し持っていた。

「きゃぁん。髪がべとべとー。食べ物を粗末にしちゃダメでしょ」

 伸歩がピンチに陥っていたその頃、両国では、 

どすこーい、どすこーい。

 JR両国駅南側の車道を、高さ五メートル以上はあると思われる巨大な相撲ロボが掛け声を出しながら、のっしのっしと時速六キロくらいで闊歩していた。車は大迷惑している様子だった。

「これは手ごわそう。水風船や水鉄砲じゃ絶対通じなさそうじゃん」

「パパが持ってた、がんばれゴ○モンのスーフ○ミソフトにもこんな感じの敵が出てたよね。俊治お兄ちゃんの大きいお友達の、政人お兄ちゃんが突進すれば簡単に止めれそうなんだけどなぁ」

 歩道から眺める日香里と美羽、策を考えてみる。

「あの政人お兄さんよりも大柄なのが多いリアル力士は、まだ東京入りしてないのかな? そろそろ夏場所なんだけど」

 日香里は周囲をきょろきょろ見渡して探してみた。

 その時、

「うわぁっ! なんだ、あれ?」

 曲がり角の向こうでこんな声が。

「さっきの声、政人お兄ちゃんの声だよね?」

「間違いなくそうっしょ」

 美羽と日香里は声のした方へ駆け寄ってみた。

「やっぱり政人お兄ちゃんだぁっ!」

「政人お兄さん、お久し振りーっ! 両国で会うなんて思わなかったわ。ついに角界入り決意した?」

 予感的中。

「ハッハッハ。まっさか。おれ、両国はアキバのすぐ近くだからしょっちゅう訪れるけど、相撲にはいっさい興味ないぜ。美味いちゃんこ屋がいっぱいあるからなんだ。今から昼飯食いに行くところ」

 政人は苦笑いしながら伝える。

「勿体ないなぁ。政人お兄ちゃんなら絶対横綱になれるのに」

「おれが角界入りしたら三秒で逃げ出す自信があるぜ」

「ねえ政人お兄さん、あのロボに体当たりして動き止めてくれない?」

「無理。一トン以上はあるだろ、あれの重さ。ではまた」

 政人はにっこり笑顔で言い、そそくさここから走り去っていった。

「あーんもう。使えないな」

 日香里は嘆く。

「そうだ! 地面におはじきとビー玉を敷いて転ばせるのが良いかも」

 美羽はとっさに思いつく。

「それはいいかもね。先回りしよう!」

 美羽と日香里は走って相撲ロボを追い抜かし、これから通ると思われるルートにおはじきとビー玉をばら撒く。

 約三〇秒後、相撲ロボがその上を通りかかった結果、

ごっつぁんでーす。

と、呟きながらすてんっと転んでドシーッンとしりもちをついた。

相撲ロボ、身動き出来ず制御不能に。

「やったぁ!」

「そういえばこれ、中の人いるのかな?」

 日香里はふと気になった。

 次の瞬間、

「やるわね。こうなったら直接対決よ」

 相撲ロボの大銀杏の部分がパカッと開いて中から人が。

出た来たのは、七歳くらいの抹茶色お団子頭の女の子だった。

相撲ロボは鼻の部分一押しで手のひらサイズに。

「中の人いたね。あたしが三秒で片付けてあげる」

「あんたの弱点はすでに調査済みよ。それ、日本のおばけ攻撃!」

「きゃあああああああっ! ひっ、日香里お姉ちゃあああああっん」

 美羽はおばけもびっくりするような大声で叫び、日香里の背中にぎゅっとしがみ付く。

七歳くらいの少女が手に持っていた銃を発射すると、リアルなろくろ首の3D映像が現れたのだ。それは十秒ほどで姿を消した。 

「美羽。さっきのおばけはホログラムよ」

 日香里はくすっと笑う。

「あんた、ひょっとして今でも夜中に一人でおトイレに行けないとか?」

 少女にもくすくす笑われてしまった。

「そんなことないよぅぅぅ」

 美羽が震えた声で即否定した。

「美羽、服が伸びるから、あんまり強く引っ張らないでね」

 日香里はちょっぴり迷惑がった。

「ごめんなさい、日香里お姉ちゃぁん」

 美羽は今にも泣き出してしまいそうな表情で謝る。

「美羽のしぐさ、とってもかわいいわ」

日香里はにこにこ微笑みながら眺めていた。

「それそれそれーっ!」

 少女がさらに続けて銃を発射すると、

「ぎゃぁっ、のっぺらぼうだ。火の玉だぁ」

 美羽はますます怖がって逃げてしまう。

 その後も提灯おばけ、からかさ小僧、砂かけ婆、ぬりかべ、山姥、一反木綿などなど和風おばけ達の3Dホログラムがおどろおどろしい効果音と共に現れ十秒ほどで姿を消した。 

「あたちの勝ちね。あれれ? もう弾が切れちゃった」

 少女、予想外の事態に戸惑う。

「もう! 絶対に許さないもん」

 美羽はプラスチック製ヨーヨーで反撃開始。

「んぎゃっ!」

 見事少女のお顔に直撃。

「ごめんね、痛かった?」

 美羽は爽やかな表情で謝る。

「ものすごーく痛かったわ。仕返ししてるぅ!」

 少女はうるっとした表情を浮かべ、懐からなわとびを取り出した。

「鞭打ちの刑よ。えいっ、えいっ、えいっ!」

 そしてパチンッ! パチンッ! パチンッ!と地面に何度も叩き付けつつ美羽を追い掛け回す。ヒュンヒュンヒュンヒュン風の切る音も聞こえて来た。

「日香里お姉ちゃん、助けてーっ」

 美羽、ちょっぴり焦る。

「はいはーい」

 日香里は余裕の表情を浮かべながらピコピコハンマーを取り出し、少女を追いかける。あっという間に追いつくと後頭部を軽く叩き、ミニサイズに。

「しまった。この眼鏡の和風なお姉さんの方にも注意すべきだったぁ」

 少女、がっくり肩を落とす。

「あたしの勝ちだね」

 美羽はピースサインをとった。

「ちっちゃくなってすっごいかわいいじゃん」

 日香里はにっこり微笑む。

「二度とこんなイタズラしちゃダメだよ」

「はーい」

少女は美羽の手によってすみやかに横浜ランドマークタワー型懺悔ハウスに強制収監。

 その頃、スカイツリーの上空三百メートル付近では、一人用の小型飛行機がぐるぐる旋回していた。 

「あの飛行機、なんか霧みたいなもの撒いてるな」

「あんなことしたら、展望台からの景色が見えにくくなってる違いにないよ」

「これはかなり悪質なイタズラね」

 空飛ぶ畳に乗った、俊治と花菜乃とメズミアはその飛行機にどんどん近づいていく。

「今日は景色悪いな」「晴れてるからもっときれいに見えるはずなのにね」「損した」「あら、急に見えにくくなったぞ」

 花菜乃の推測通り、第一展望台からも第二展望台からも景色が見えにくくなっていた。お客さんは口々に不満を漏らす。

「どうだ地球人。人工霧で視界が悪くなっただろ」

乗っている一三歳くらいの少年は、楽しそうにこんなことを呟いた。

「こらーっ! お客さんは高い入館料払ってるんだからやめなさーい!」

「中の男の子、そんなことしちゃダメだよ」

「スカイツリー上って景色が悪かった時のがっかり感はけっこうでかいぞ」

 メズミア達は空飛ぶ畳に乗った状態で注意する。

「うるせえ、これでもくらえ地球人とメズミア」

 少年は飛行機から、ミサイルのようなものを発射して来た。

「まずいわこれは。きゃっ、きゃあっ!」

 メズミアは慌てて方向転換しようとした。

「きゃあああっ、落ちる、落ちるぅぅぅ!」

「花菜乃ちゃん、俺の腕にしっかり捕まって」

 しかし間に合わず。

 畳の裏側にドゥゥゥーンッと直撃し、さらに中央付近を貫通させられ、制御不能になってしまった。

「カナノさん、トシハルさーん、床にしっかり手を突いて下さいね。そうすれば安全ですのでーっ」

 空飛ぶ畳はふらふら中を舞いながら、地上へ向かって落ちていく。

「あいつの乗った飛行機、霧に隠れて見えないわ。一か八か」

 メズミアは霧に覆われた任意の場所へ向けて、Y字型のパチンコに石を当てて打ってみた。

 約三秒後、カツーンという金属音が聞こえて来た。どうやら当たったらしい。

「あれだけじゃダメージ受けるはずはないから、これも使うわ」

 メズミアはリュックから昨晩折った折り紙の数々が入った袋、さらに孫の手も取り出す。

「えいっ!」

 袋に向けて孫の手を振りかざした。

 すると中の折り紙は羽ばたき、飛行機の方へと飛んでいった。

「うわっ、折り紙で前見えねえ。ハンドルも言うこと聞かねえ。やっべ」

 機体やエンジンにまとわりつかれ、飛行機の方も制御不能になったようだ。ふらふら漂いながら、どんどん地上へ向かって落ちていく。

「よぉし! お仕置き成功♪ 折り紙も戦力になったでしょ?」

 メズミアはにこりと笑う。

「確かに。下は民家やビルだらけだし、落ちたらやばくないか?」

「中の男の子も無事じゃないよね?」

 俊治と花菜乃はしっかり捕まりながら、飛行機と操縦していた少年を心配する。

「大丈夫ですよ。チタニーク星製の飛行機は、墜落しても壊れずに操縦者にも衝撃が行かないように出来てるので」

 メズミアは伝えた。

 その直後に、空飛ぶ畳は近くの公園敷地内の地面に激突した。

 それでも俊治、花菜乃、メズミア、全くの無傷だった。

「けっこうな速さで落ちてったのに、全く衝撃なかったな」

「さすがチタニーク星の空飛ぶ畳だね。民家やビルや線路の上に落ちなくて良かったよ」

 俊治と花菜乃はほとほと感心する。

「これは偶然じゃなくて、制御不能になっても自動的に安全な場所へ墜落してくれるような仕組みになってるの」

 メズミアは自慢げに伝えた。

 飛行機もまもなく、俊治達のいる五メートルほど手前の地面に激突した。

 これもまた全く衝撃がなく、飛行機も、

「やるなぁ、メズミア」

 操縦していた少年も全くの無傷だった。

「そこのハーレム的環境の少年、おいらと地上で対決しようぜ」

 そいつは地面に降り立つや、宣戦布告。俊治よりも顔つきは幼いが、背丈は一七五センチほどあり、体格も俊治よりは良かったが、

「ああ、いいぜ。望むところだ」

 俊治は快く勝負に乗ってあげた。

 こうして俊治達三人も畳から降り、地面に降り立った。

「俊治くん、頑張って」

「トシハルさん、健闘を祈りますよ」

 花菜乃とメズミアは固唾を呑んで見守る。

「くらえ! 地球人死ね死ねキック」

 一三歳くらいの少年は、小学生が五秒で考えたようなネーミングの蹴りを、俊治のわき腹目掛けて食らわして来た。

「意外と遅いな」

 俊治は余裕でかわす。

「トシハルさん、低重力の場所で暮らして来た彼らは、地球人よりは反射神経鈍いかも」

 メズミアは爽やかな笑顔で伝えた。

「そうか。それ聞いて安心した」

 俊治は少年の腕をサッとつかみ、地面にごろーんと転がした。

「うぉっ!」

 そのまま身動きが取れないように地面に押さえつける。

「俊治くん、余裕だったね」

 花菜乃はにっこり笑顔で褒める。

「くっそ、おいらよりちっちゃいから勝てると思ったのに」

 少年は悔しそうに呟く。

「メズミアちゃん、こいつを小さくしてやれ」

「了解♪」

 メズミアはピコピコハンマーを手に持って少年の方に近寄っていく。

 しかしその時、

「地球人の少年、油断し過ぎ」

「うわっ! なっ、なんでだ?」

 少年に袖をつかまれた俊治の方が持ち上げられ、

「自在に馬鹿力の出る手袋のおかげさ。チタニーク星の科学技術を思い知れ地球人」

投げ飛ばされてしまった。

「きゃぁん」

 メズミアも巻き添えを食らう。俊治の体が当たってバランスを崩し、しりもちをつく。

「ごめんメズミアちゃ、ぐぁっ!」

「さっきまでの威勢はどうした? 地球人の少年」

少年は俊治の腹に蹴りを食らわす。彼は俊治に地面に押さえつけられた時、手袋をポケットから取り出して右手にはめたのだ。

「そんなの使うなんて卑怯よ」

 メズミアは側に落ちたピコピコハンマーを拾おうとしたが、

「こいつを使う方がよっぽど卑怯だろ」

 少年に手袋をはめた右手で先に拾われ、五〇メートルほど先まで放り投げられてしまった。

「あーん、あんなに遠くまで飛ばしちゃって」

 メズミアが悔しそうに呟いた。

 その直後、

「ん?」

「よぉし、捕まえた」

 少年は俊治に背後から抱きつかれ、両腕を固められてしまった。

「俊治くん、すごい」

「トシハルさん、ナイス」

 賞賛する花菜乃とメズミア、

 ところが、

「甘いな少年」

「そんなっ、ぐぉっ!」

 簡単に振りほどかれ、俊治は右手で突き飛ばされてしまう。

「地球人の少年、起き上がれるものなら起き上がってみろ」

「なんてパワーだ。全然動けない」

 さらにみぞおちの辺りを右手で押さえつけられる。

「このままじゃ俊治くんが負けちゃうぅぅ」

 花菜乃は心配そうに見守る。

「ここはカナノさんも協力してあげないと。こんなこともあろうかと、カナノさんのお部屋からいいものを持って来ましたよ。じゃ~ん」

 ピコピコハンマーをあの間に拾いに行って来たメズミアは、鞄からヴァイオリンを取り出した。

「メズミアちゃん、それも持って来てたんだ」

「さあカナノさん、早く何か演奏してあげて下さい」

「分かった。じゃあ、トルコ行進曲を弾こう」

 花菜乃はさっそくヴァイオリンを弾き始める。

「なんだこれ、し○かちゃんのヴァイオリンみたいな音だな」

 少年は思わず両手で耳をふさいだ。

「トシハルさん、今よ」

 メズミアはピコピコハンマーを投げ渡す。

「ああ! ありがとう花菜乃ちゃん、メズミアちゃん」

 相手が怯んだ隙に、俊治はすばやくそいつのおでこをピコピコハンマーで叩いた。

「しまった」

 少年は焦るが、まもなくミニサイズに。

「どうだ! これで俺の勝ちは決まりだな」

 俊治はにこっと笑う。

「くっそぅ。油断した」

「カナノさんの演奏攻撃、堪えたでしょ?」

「ああ、かなりな」

「中でしっかり反省してね」

 メズミアは悔しがる少年を指でつまみ上げ、懺悔ハウスへポイッ。

「あの、よく考えたらさっきの、俺に投げ渡さずにメズミアちゃんが直接叩いてもよかったような」

「それだとトシハルさんに見せ場がないじゃないですか」

 メズミアは俊治に向かってパチッとウィンク。

「べつにいらなかったんだけど」

 俊治は照れ笑い。

「なんか、複雑な気分だけど、俊治くん、おめでとう!」

 花菜乃が嬉しそうに俊治の健闘を称えていた。

その最中だった。

「姉ちゃん、こいつをくらえ」

 どこからか別の少年の声がして、

「きゃっ、きゃあっ!」

 花菜乃は大きな悲鳴を上げる。

 地球にはいないような形状の昆虫的な生き物が多数、花菜乃のまわりをまとわりついていた。

「大丈夫か? 花菜乃ちゃん?」

 俊治は慌てて花菜乃の方へ駆け寄っていく。

 その途中で、

「よそ見してていいのかな?」

「ぐわぁっ!」

 俊治、わき腹に蹴りを一発食らわされた。

「やぁ、昨日振りだね、メズミア。この少年の方ははじめましてだね」

 現れたのは、昨日銭湯に現れた少女っぽい風貌の少年だった。

「俊治くーん、大丈夫?」

 花菜乃は虫的な生き物を振り払おうとゆさゆさ体や両手を揺さぶりながら心配する。

「カナノさん、アタシが助けますよっ! もう一人隠れていたとは」

 メズミアは花菜乃の元へ駆け寄っていく。

 しかし、

「きゃぁんっ! 冷たぁっ!」

 途中で背後から何者かに水鉄砲で顔を攻撃されてしまった。

「しまった。さらにもう一人いたのね?」

 振り向いた次の瞬間、

「えっ! 嘘?」

メズミアは五センチくらいのミニサイズに。メズミア自身も驚く。

「メズミアちゃん、きゃぁぁぁ~。冷たぁいっ!」

花菜乃も背後から何者かにおしりを水鉄砲で攻撃され、五センチくらいのミニサイズにされてしまった。

「うちの存在に気付けないなんて灯台下暗しね。これはド○えもんのひみつ道具、『さいぼうしゅ○小き』を参考に作ったうちの自作水鉄砲よ」

こんな声がして、木の裏側から一人の少女が現れた。

「捕獲成功♪ うちらの仲間を虫みたいに捕獲した仕返しよ」

 その子はすばやくミニサイズのメズミアと花菜乃をつまみ上げる。

「俊治くぅぅぅぅぅぅぅん、たーすーけーてー」

「予想以上に手ごわかったです、TMS団」

「きゃぁっ! 蛾が襲って来たぁ。ヤスデさんにゲジゲジさんに、ヤモリさんまでいるよぅ。大蛇と恐竜に見えるよう」

「カナノさん、安心して下さい。アタシがけん玉とヨーヨーの二玩具流で退治しますから」

 花菜乃とメズミアは通常サイズの地球の昆虫や節足類、爬虫類達が蠢き飛び交うガラス水槽の中に入れられてしまった。

「ハーレムボーイのお兄さん、うち、TMS団団長のキュサリーよ。ちなみに一二歳の中学一年生」

 キュサリーと名乗った少女はホホホッと口元を押さえながら言う。背丈は一四〇センチに届かないくらい。黒髪三つ編み。まっすぐ伸びた細めの一文字眉。丸っこいお顔でぱっちりとした茶色い瞳。普通の日本人以上に日本人っぽかった。

「団長って女か。おまえじゃなかったのか?」

 俊治が問いかけると、

「昨日変わった。オレは副団長に降格した」

 少年は苦笑いを浮かべて言う。

「だって地球視察で役に立たなかったんだもん」

 キュサリーはむすっとふくれっ面で言った。

「まあそんなことはどうでもいい。おまえら、よくも花菜乃ちゃんとメズミアちゃんを」

「きみの彼女を返して欲しかったら、上野動物園まで来なさい」

「楽しみに待ってるよ、少年」

 キュサリーと副団長の少年はそう伝え、花菜乃とメズミアを閉じ込めた水槽を持って空飛ぶゴザに乗り、空高く舞い上がってしまった。

「ごめんなさいトシハルさん、アタシの空飛ぶ畳は、破けて使い物にならなくなっちゃいました」

「俊治くーん、絶対助けに来てねーっ!」

 ミニサイズのメズミアと花菜乃は懸命に叫ぶ。

「上野ならここからそんなに遠くはない。電車でもすぐに行けるな」

 俊治は旧業平橋、とうきょうスカイツリー駅へ向かって走りながら、伸歩と美羽と日香里の携帯に、花菜乃ちゃんとメズミアちゃんがさらわれたとの旨のメールを同時送信した。

とうきょうスカイツリー駅に辿り着き、電車に乗り込んだのと同じ頃。

東大安田講堂近くの人目につきにくい場所。

「あーん、眼鏡までべとべとー」

「お好み焼きソース攻撃も効いたみたいだな。催涙弾は全く効果なかったのは誤算だが、べとべとになったおまえの姿を見れておれは満足だぜ」

「ねえ、この子やっつけたら東京ドーム行って、巨人の試合をめちゃくちゃにしに行きましょう」

「そりゃいいな。レーザービームで目くらましして、ボールの軌道も孫の手で操ろうぜ」

「こら、ダメですよそんな妨害行為したら」

「お姉ちゃん、とどめだ。バター銃」

「きゃっ! パンツ狙わないで」

 伸歩、尚も苦戦中。三人組から何度も銃撃される。

 そんな時、

「んぬ、雪本さんではあ~りませんか。はてさていったいなぜこういう状況に?」

 なんと久光が近くに現れてくれた。

「あっ、久光さん、ちょうどいい所に。わたしを助けて」

「えっ、えええ」

 動揺する久光。

「こいつ、おまえの彼氏か?」

 少年に質問され、

「違うって。クラスメートよ」

 伸歩は慌ててこう伝える。

「これは、いったいどういう状況なのでしょうか?」

 呆然と立ち尽くす久光。

「東大の五月祭でやるヒーローショーの練習よ。わたし、ボランティアで参加することになったの。今、ヒーロー役のわたしが、敵役のこの子達に襲われてピンチに陥ってるって状況で」

 伸歩は久光が極力混乱しないように、こう嘘の内容を伝えておいた。

「そうでしたかぁ……」

 久光はぽかんとなる。

「そういうわけで、わたしを助けて欲しいの」

「いや、なんか、よく分からないのですがぁ」

「とにかく、このピコピコハンマーであの子達を叩いて欲しいの。軽くでいいから」

 伸歩はそう伝えて久光に投げ渡す。

「えー、その、あの」

 久光、まだ状況が把握出来ず。

「こいつ弱そうだな」

「でもめちゃくちゃ賢そう。次はこいつをやっちゃおう」

「ねえお兄ちゃん、わたちといっしょに数学クイズで遊ぼう」

「えっ、えっ、えっと、その、僕は、ふらりとキャンパス見学しに来ただけでして……」

 たじろぎ困惑する久光。

 果たして勝負の行方はいかに?

      ※

 俊治が上野動物園へ辿り着いた時、

「地球の珍獣パンダちゃん、かっわいい!」

「キュサリー、生パンダ、やっぱいいよね。ハシビロコウも見に行こうぜ」

 キュサリーと副団長の少年はジャイアントパンダをうっとり眺めていた。

 ミニメズミアとミニ花菜乃を閉じ込めた水槽は横に置いて。

「おいおまえら」

 俊治は呆れ気味に話しかける。

「あっ、ハーレムボーイ、よく来たわね」

「話があるならもう少し待って。オレ、これからパンダを写真に収めるんだ」

「待てるか。花菜乃ちゃんとメズミアちゃんを早く解放してやれ」

「うちとチャンバラで勝負して、勝てたら解放してあげるわ。ここじゃ人目につくから、場所を変えましょう」

「なんでそんなことしなきゃいけないんだよ?」

「きみ、うちに勝つ自信がないのね。うちよりずっと体格のいい男の子のくせに情けないなぁ。武士国家の子とは思えないな」

 キュサリーはくすっと笑う。

「……しょうがない、勝負してやる」

 俊治は不満そうにしながらも癪なので乗ってあげた。

 俊治達は動物園から出て、上野公園内の人目につきにくい場所へ。

「俊治くん、早くやっつけちゃって」

「トシハルさんならきっと勝てるはずよ」

 ミニメズミアとミニ花菜乃は、熱い眼差しで応援してくれた。

「任せて花菜乃ちゃん、メズミアちゃん、俺は絶対勝つから」

 俊治はその二人の方を向いて真顔で宣言する。

「かなりの自信ね。さあ勝負よ。うち、この服装でやるわ。身軽になるし、うち、パンダ大好きなの♪」

 キュサリーは上着を一枚脱いだ。するとパンダさんの刺繍が施されたTシャツ姿に。

「案外かわいらしいな」

 俊治はやや呆れる。

ともあれ決戦開始。

「くらいなさい! ハーレムボーイ」

「ハーレムボーイとか言うな」

 俊治は呆れた様子でチャンバラ棒をキュサリーの脇腹めがけてすばやく振りかざす。

「あぁんっ、いったぁい」

 直撃し、キュサリーは甘い声を漏らした。

「トシハルさん、いい振りですね。乗り気なようで嬉しいです」

「私とメズミアちゃんを救うために、本気になってくれてるね」

 メズミアと花菜乃は賞賛する。

「大丈夫か?」

 俊治は心配してあげた。

「敵に情けをかけるなんて、日本人らしいわね。まあチャンバラじゃ勝てそうにないな。相撲勝負に変更よ」

 キュサリーは自分のチャンバラ棒を投げ捨て、俊治の体にガバッと抱きついた。そして彼のジーンズの裾を両手でがっちり掴む。

「やったっ! いい形だ」

 副団長の少年はガッツポーズを取る。

「キュサリーちゃんちっちゃいし、これくらいで俺を投げ飛ばせるとは思えないな」

 俊治は余裕の表情だ。彼もチャンバラ棒を投げ捨てる。

「それはどうかしら? そりゃぁっ!」

「うわっ、嘘だろ」

「驚いてるね、ハーレムボーイ」

 キュサリーは俊治に寄りかかって体勢を崩させ、馬乗りになった。

「うっ、動けねえ。重い。俺より小柄なのに、なんてパワーだ」

「体重が重くなるシールを特殊なお尻に貼ってるから。うちのパンツ脱がぜばシールを外せるよ。やってみてね♪」

「……」

 俊治は対応に困ってしまう。

「ただいまの決まり手は、寄り倒しだな」

 副団長の少年はにこにこ笑顔で呟いた。

「俊治くーん、この子のおしりペンペンしてお仕置きしてあげて」

「トシハルさん、遠慮せずにやっちゃって下さい。泣かしてもけっこうですよ」

 花菜乃とメズミアからそう言われるも、

「それは、ちょっとな……」

 俊治は何も出来なかった。

「紳士ね、ハーレムボーイ。それっ、縦四方固」

「いってててぇーっ!」

 キュサリーは柔道の技を用いてさらに強く圧し掛かってくる。

 苦しがる俊治。

「そろそろ参ったって言った方がいいんじゃないかしら? きみの体、めんこみたいにぺっちゃんこになっちゃうよ。きみについてる二つのスーパーボールも潰れちゃうよ。きゃはっ♪」

 キュサリーは嘲笑う。

 その時だった。

「俊治お兄ちゃんをいじめちゃダメーッ!」

「俊治お兄さん、華奢な女の子に力負けしてしまってますね」

 美羽と日香里が駆けつけてくれた。

「こいつ、ケツに体重が重くなる特殊なシール貼ってるらしいからなんだ。いてててっ!」

 俊治は必死に言い訳する。

「そういうことか」

 日香里はすぐに納得してくれたようだ。

「そこのお嬢さん二人は、オレと勝負しようぜ」

「あっ、あなたはこの間の男の娘!」

 日香里は嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「ああそうだ。姉ちゃん、くらえーっ!」

 副団長の少年はそう言うや日香里に飛びかかり、両おっぱいを服越しに鷲掴みしてくる。

「こっ、こら。おっぱい揉まないで。力抜けちゃう」

 予想以上のすばやい動きだったため、日香里はちょっぴり動揺してしまった。

「お姉ちゃんみたいなお兄ちゃん、日香里お姉ちゃんのおっぱい触っても楽しくないよ」

 美羽は少年の背中をぺちぺち叩く。

「おまえのはまだぺったんこだから触りがいがないんだ。あと三年は待ってくれ」

 少年は尚も日香里へのおっぱい揉みをやめてくれない。

「みんな頑張れーっ!」

「アタシ、期待してるよ」

 ミニサイズの花菜乃とメズミアは檻の中から温かいエールを送ってくれた。

「お姉ちゃんみたいなお兄ちゃん、その言い方失礼だよ。くらえっ! 水風船爆弾っ!」

 美羽は手提げ鞄から水風船を取り出し、少年の背中に向かって何個も投げつける。

「ぎゃっ、うわっ、卑怯だぞおまえ」

 怯む少年、

「卑怯じゃないもん」

 美羽は続いて水鉄砲を取出し、顔面目掛けて発射。

「うおっ!」

 少年、とっさに右手で顔を覆う。

「次はこれだよ」

 美羽、今度はシャボン玉を吹いた。お子様ランチについて来たやつだ。

「ちょっと待て、シャボン玉液が目に入るだろっ!」

少年、顔の周りに多数のシャボン玉をまとわされ両手で目を覆う。ついに怒って日香里の体から離れ、美羽に襲いかかる。

「エッチな男の娘ね。さてと、あなたのパンツは、ワタシが脱がしてやるわっ!」

 解放された日香里は尚も俊治に圧し掛かり続けるキュサリーの側へ駆け寄り、スカートを捲った。

「あんっ、やっ、やめてぇ~」

 キュサリー、足をバタバタさせ必死に抵抗。

「パンダちゃん柄パンツかぁ」

 けれども敵わず。日香里にショーツを捕まれずるりと脱がされてお尻丸出しにしまう。

「なかなかきれいなお尻してるじゃん。手触りもいい」

「あーんもう、ぷにぷに触らないで。このお兄さんに剥がしてもらいたかったのにぃ」

「シールもパンダ柄かぁ。相当なパンダ大好きなのね」

日香里はにやりと笑い、キュサリーのぷりんっとしたお尻に貼られていた、直径五センチくらいの丸っこいパンダさんのお顔柄シールをべりっと剥がす。

「いったぁ~い。もっとゆっくり剥がしてよ」

 キュサリーは涙目に。剥がした部分がほんのり赤く染まっていた。

「剥がしたわ俊治お兄さん」

「ありがとう日香里ちゃん、急に軽くなった。これで動ける」

 俊治はキュサリーの両肩をぽんっと押す。

「きゃんっ」

 キュサリーの体は簡単に俊治の体から弾き飛ばされ、尻餅をついた。

「うわっ!」

 俊治は気まずい面持ちでキュサリーから顔を背けた。

「ぃやーんもう、見ないで!」

キュサリーはとっさに露にされた箇所を両手で覆い隠す。

「俺は見てないって」

「絶対見たぁっ!」

「見てないから」

 俊治とキュサリー、押し問答。

「まだ生えてなかったね。ってことはアノ日もまだ迎えてないっぽいね」

日香里はくすっと笑う。

「女の子に見られたのはもっと屈辱だよう」

 キュサリーは涙目に。



「俊治お兄さん、キュサリーちゃんのお尻の汗が染み込んだこのシールいる?」

「いらねえ、そんな汚いの。日香里ちゃん、手、洗った方がいいよ」

「お兄さん、失礼よ。うち、これ貼る前に桃の香りの石鹸で念入りに洗ったんだからね」

 キュサリー、ますます悲しむ。

 そんな中、美羽と副団長の少年が戦闘中。

「どうだ。オレの水飴銃の威力は」

「あーん、服がべとべとぅ。ママに叱られちゃうぅ」

 美羽は苦戦しているようだ。

「美羽ちゃん、俺が助けてやるからな」

 俊治は副団長の少年を取り押さえようと近づいていく。

 しかし、

「俊治くん、後ろ危ない」

「トシハルさん、後ろ、後ろ!」

 花菜乃とメズミアからこんな警告が。

「ん? ぐわっ!」

 俊治が振り返った瞬間に、細い紐に体中を巻きつけられてしまった。

「どうよ、必殺あやとり縛り♪」

 技のかけたのはキュサリーだ。得意げに笑う。

「身動きとれねえ。うわっ!」

 俊治、体を揺さぶってみたらバランスを崩して地面に転がってしまった。

「こらーっ、アタシの編み出した技パクらないで。著作権の侵害よっ!」

 メズミアは怒り心頭だ。

「俊治お兄さん、ワタシがほどきますよ」

「あたしも手伝うぅ」

 日香里と美羽は俊治の側へ駆け寄っていくが、

「あやとりはまだあと二本あるのよ。それっ!」

「きゃぁっ!」

「しまった。油断したわ」

 キュサリーに俊治と同じようにされてしまった。二人とももう一歩動こうとしたらバランスを崩し、地面に転がってしまう。

「これで攻撃し放題だな」

 副団長の少年、にやりと笑う。

「うち、日香里っていう腐女子っぽい子、ボコボコに痛めつけたい」

「いいぜキュサリー」

「やったぁ! うちのお尻までばっちり見られた仕返ししてやるっ!」

 キュサリーは日香里の方へ近づいていく。

「くっそ、紐さえほどければ」

「ワタシ達、大ピンチだよ」 

「誰か助けてーっ」

 俊治、日香里、美羽。自分で紐をほどこうとするがほどけず。

「俊治くん、美羽ぅ、日香里ぃ。助けてあげられなくてごめんねー」

「アタシ、何も出来ないのが悔しいです」

 花菜乃とメズミアは心配そうに見守る。

 そんな時、

「皆さん、お待たせしました」

 伸歩もようやく駆けつけてくれた。

「伸歩お姉ちゃんだ!」

「伸歩お姉さん、ぼろぼろだけど、大丈夫?」

「うん、かなり苦戦したけど、偶然通りかかってくれた久光さんのおかげで助かったわ」

 伸歩は疲れ切ってはいたが、嬉しそうに伝える。東大本郷キャンパスから走ってここまで来たらしい。

「あら、まだ仲間がいたのね。でも弱そう」

 キュサリーは余裕の表情だ。

「そこの姉ちゃん、今日は思う存分揉ませてもらうぜ」

 少年は伸歩に襲い掛かってくる。

「今日はくらわないわよ」

「それはどうかな?」

「きゃっ!」

 伸歩はあっさりつかまえられ、押し倒されてしまった。

「アハハッ、弱ぁっ。あの子、まるでヤ○チャね。日香里って子、生尻を拝見させてもらうわよ。それだけじゃつまらないな。あんたのきちゃないお尻の穴にう○い棒明太子味プスッて突っ込んでやろうかしら。ちょうど持ってることだし。それからなわとびの鞭で十発くらい叩こうかな?」

 キュサリーはにやにやしながら日香里の側でしゃがみ込む。

「あーん、屈辱だぁ」

 日香里は照れ笑いする。

「そう言いながらやけに嬉しそうにしてるじゃない。ひょっとしてあなた、マゾ?」

「いやぁ、嬉しくはないって」

「本当かしら? さてと、まずはあんたのパンツの柄を拝見……あっ、しまった。こんなに縛り付けたらスカート捲れないじゃない」

 キュサリーはそのことにたった今気付いたようだ。

「キュサリーちゃんったら、ドジッ娘ね」

 日香里はくすっと笑った。

「こうなったら、スカートの周りだけ紐外してやるっ!」

 キュサリーはスカートポケットから肥後守を取り出した。

「あんたの生尻とくと拝見してから、次はそっちのお兄さんの生尻を」

「おーい、俺の尻見たって何も特しないぞ」

 俊治は呆れた表情で主張した。

「ワタシも俊治お兄さんのお尻見たい! キュサリーちゃん、ワタシにも見せてね」

「いいわよ。まずうちが拝見してからね」

「よっしゃぁ!」

「二人とも、何打ち合わせしてんだよ」

 俊治はいらっとした表情を浮かべていた。

「あたしは俊治お兄ちゃんのお尻、一昨日見たばっかりだよ。今までにも何度も見たことがあるよ。しょっちゅうお風呂いっしょに入ってるもん」

 美羽はにこにこ笑顔で伝える。

「美羽ちゃん、そんなこと伝えなくていいから」

 俊治は穴があったら入りたい気分だった。

「羨ましい! どんな感じだった?」

 キュサリーは興奮気味に質問する。

「パパのお尻よりは小さかった」

 美羽はにこにこ笑顔のまま答えた。

「そっか。まだ成長途中だもんね」

「ワタシが最後に俊治お兄さんの生尻見たのは、もう五年以上は前になるかな?」

 日香里はにやついた表情で呟く。

「おまえら、いい加減にしてくれ」

 俊治、ますます居た堪れない気分に陥る。

「日香里って子も見たことあるのかよ。ますます許せなくなったわ。こちらの美羽っていう女の子はかわいいから、足の裏こちょこちょ攻撃で許してあげる♪」

 キュサリーはそう伝えてパチッとウィンクした。

「ええーっ、それは嫌だなぁ」

 美羽は苦笑い。

「日香里って子、大人しくしてなさい! 動くと肌までブシュッて切れちゃうよ」

 キュサリーは日香里のスカートに接している紐の結び目部分をチョキンッ、チョキンッ、チョキンッと三箇所切る。

「これでスカートずらせるわ」

 キュサリーがにやついた表情でそう呟くや、

「スカートずらせるだけじゃないよ、キュサリーちゃん」

 日香里はガバッと立ち上がった。

「あれ? 今ので全部ほどけちゃった?」

 唖然とするキュサリー。

「そうみたい。キュサリーちゃん、やっぱドシッ娘ね」

 日香里はにっこり微笑む。

「日香里お姉ちゃん、自由になれたね」

「キュサリーちゃん、自滅したな」

 俊治と美羽は安堵の表情を浮かべた。

「こうなったら、実力で」

 キュサリーは日香里に果敢に立ち向かっていく。手をグーにして日香里のお腹にパンチを食らわそうとしたが、

「ワタシにケンカで勝てると思ってるの?」

 日香里は余裕でキュサリーの体にガバッと抱きついた。

「よっと」

「あーん、おーろーしーてー」

 そして片手で持ち上げ肩に担ぎ上げ、そのまま美羽のもとへ。

「美羽、じっとしててね」

「うん」

もう片方の手で地面に落ちた肥後守を拾い、美羽の体に接している紐の結び目を何箇所か切る。

これで美羽の体は自由になった。

日香里は同じ要領で俊治の体に接している紐も、

「この格好のままの俊治お兄さんもなんか萌えるから、そのままに」

「こらこら日香里ちゃん。早く切れって」

「日香里、俊治くんで遊んじゃダメだよ」

「日香里お姉ちゃん、いじわるしないで早く切ってあげて」

「冗談、冗談。ごめんね俊治お兄さん」

 一回躊躇ったがすぐに切って、自由にしてあげた。

「日香里ちゃん、ありがとな」

「どういたしまして」

「さてと、あいつをなんとかしないとな」

 俊治はピコピコハンマーを持って、

「きみ、髪の毛の感触も良いね」

「あぁーん、やめて下さぁい」

尚も馬乗りで伸歩を襲う少年に背後からそーっと近寄っていく。

「ちょっと後ろ、後ろ!」

 キュサリーは少年に注意を促す。

「えっ!」

 少年はくるっと振り返って反応したが間に合わず。

「あいたぁっ!」

 ピコピコハンマー、おでこに直撃。少年は瞬く間にミニサイズに。

「あ~、また負けちゃった」

 少年、悔しがる。

「よぉし、上手くいった」

 俊治はにこりと微笑む。

「俊治さん、処女喪失の危機にあったわたしを救って下さり、誠にありがとうございました」

「いや、礼なら日香里ちゃんの方に言って」

 伸歩に満面の笑みで礼を言われ、俊治はけっこう照れてしまう。

「俊治お兄さんったら、謙遜しちゃって」

「あいてっ」

 日香里に背中をパシッと叩かれてしまった。

「この状況じゃ、勝てそうにないわ。降参よ、降参。うちを痛めつけるのはやめて」

 キュサリーはあっさり負けを認めたようだ。 

「はい、はい。もう悪さしちゃダメだよ」

 日香里はキュサリーをそっと地面に下ろしてあげた。

「おまえもそんな顔で悪さするのは勿体無いぞ」

「分かった、分かった」

俊治は副団長を元のサイズに戻してあげる。

 その直後、

「この水槽、ふたに鍵がかかって開かないよーっ!」

 美羽が叫んで伝える。

「キュサリーちゃんか女みたいな少年、早く花菜乃ちゃんとメズミアちゃんを解放してやれ」

 俊治が命令すると、

「分かりましたわ」

 キュサリーは素直にスカートポケットから鍵を取り出して水槽のふたを開け、中から出してあげた。ちなみにいっしょにいた昆虫や節足類や爬虫類達はメズミアの攻撃によって気絶させられ、隅っこに積み上げられていた。

「これは俊治お兄さんがやってあげた方がいいっしょ。好感度的に」

「俺がやるのか?」

ミニサイズの花菜乃とメズミアは、俊治にピコピコハンマーでそっと叩かれ無事、元のサイズへ。

「俊治くん、ありがとう」

「トシハルさん、サンキューです」

 花菜乃とメズミアは俊治の手をぎゅっと握り締めた。

「いや、べつに当たり前のことをしただけだから」

 俊治は慌て気味に主張する。マシュマロのようにふわふわ柔らかい感触が、俊治の両手のひらにじかに伝わって来たのだ。

「俊治お兄さん照れてる照れてる。ともあれワタシ達の勝ち決定ね」

「これでTMS団全員やっつけたね」

 日香里と美羽は満面の笑みを浮かべる。

「安心するのはまだ早いわ。じつはね、まだあとTMS団の残り二人が、今頃渋谷を荒らしてるはずよ」

 キュサリーは得意げな表情で伝える。

「渋谷か。人が多過ぎて落ち着かないから、私は好きな街じゃないな」

「俺も好きじゃないな」

「ワタシも渋谷は滅多に行かないよ」

「まだ残ってたのね。今から退治しに行かなきゃ」

 メズミアはやや険しい表情でそう呟いてほどなく、

「キュサっちぃ」

「キュサちゃん、聞いて聞いて」

 二人の少女が菱餅のような形の飛行物体に乗って、近寄って来た。

 二人ともキュサリーと同い年くらいに見えたが、派手な服装でギャルっぽい雰囲気の子だった。

(あのケバケバした風貌、政人や久光が一番嫌いなタイプだって言ってたな。まあ彼女らもオタクっぽい風貌のやつは一番嫌いなタイプなんだろうけど)

 俊治は心の中でこう思う。

「渋谷のハチ公とモヤイ像を盗むミッションは上手くいったの?」

 キュサリーが問いかけると、

「重過ぎて無理、無理。それよりウチら、渋谷寄ったあと原宿行ったんだけど、竹下通りで怖いお兄さんにからまれたの」

『原宿怖かったよぅ。もうチタニーク星へ帰りたぁーい』

 二人は震えた声でこんなことを伝えてくる。

「あーんもう。まあうちも地球人に結局負けちゃったし、人のこといえないけどね」

 キュサリーはてへっと笑った。

「これで完全に俺達の勝ちってことでいいな?」

 俊治が確認を取ると、

「うん、うちらTMS団の負けや」

 キュサリーはあっさり負けを認めた。

「あなた達の乗って来た宇宙船はどこにあるの? 教えなさい!」

 メズミアが問い詰めると、

「不忍池に沈めてあるわ」

 キュサリーがすぐに答えてくれた。

ここにいるみんなはそこへと向かって歩いていく。

「ノブホさん、ミウちゃん、きれいにしますね」

「ありがとうございます」

「ありがとうメズミアお姉ちゃん、これでママに叱られずに済むよ」

その時にメズミアは、あの掃除機で伸歩と美羽の服や体にまとわりついたべとべとした汚れをきれいに吸い取ってあげた。


「この場所よ」

不忍池の側まで辿り着き、キュサリーがリモコンボタンを押すと浮かび上がって来た物体に、

「だるまさんだぁっ!」

「これまたユニークな宇宙船だな」

「巨大だるまだね。私、乗ってみたいな」

「本当にあれ、宇宙船なのでしょうか?」

「他にそれっぽいの無いから、きっとそうっしょ。入口どこなんだろ?」

 俊治達地球人五人はあっと驚く。

それは地面と接するように浮かんでおり、高さは三メートルくらいあった。

「チタニーク星で造られた宇宙船は地球の工芸品や民芸品、動物、野菜や果物型がほとんどよ」

 メズミアが伝えた。

「ちなみにあの宇宙船は三十人乗りなの。見かけではそんなに乗れそうにないけど中はかなり広いわよ。隕石とかに衝突されない限り最高時速が一万キロしか出せないのは不満だけど」

 キュサリーは説明を加える。

「あの、それだとこの宇宙船、地球から脱出出来ないのでは? 重力が地球より小さく、赤道半径が三〇キロメートルほどらしいチタニーク星からは余裕で脱出出来たでしょうけど、地球から脱出するためには秒速約一一.二キロメートル、時速に換算すると四万キロメートルほど必要だから」

 伸歩はその物理学的欠陥に気付いたようだ。

「その点は全く問題ないわ。そこに気付くなんて賢いわね。チタニーク星製の宇宙船は、最高時速としてはこの宇宙船みたいに地球の第二宇宙速度未満のタイプでも、地球脱出機能で初速度は秒速一五キロ以上に達することが出来るようになってるから。重力圏出た途端に速度が一気に落ちて時速としては一万キロになっちゃうって仕組みよ」

 キュサリーは自慢げに伝えた。

「そうでしたか。ちゃんと考えられていたんですね」

 伸歩は感心する。

「やっと解放されたー」「暑かったなりー」「みんなやられたのか」「地球人人強いな」

メズミアは三つの懺悔ハウスから、収監したTMS団員達を出してあげ、元のサイズに戻してあげた。

「地球人の強さが分かってもらえたでしょ。みんな、今すぐTMS団は解散しなさい!」

 そのあとTMS団員みんなに厳しく命令する。

「分かったよ。オレ達じゃ地球や地球人を困らせることなんて、何も出来そうにないし。地球は広かった」

「うち、もうやらないって。地球人は手ごわかったわ」

 副団長も団長も、

「おいらももう地球荒らすの金輪際やめる」

「おらもだ。怖い思いはもうしたくねえ」

「ぼくちんももう地球征服作戦はこりごり」

 他の団員達もみんなすっかり反省しているようだ。

「本当にそうしてね」

 メズミアはにこって笑って念を押す。

その直後、

「こらーっ、たけしぃ、母ちゃんにナイショで地球行って油売ってたのね」

 上空からこんな声がこだました。

「かっ、母ちゃん」

 副団長に降格した少年は途端にお顔が蒼ざめた。

 こいつの本名ついに判明である。少女っぽい容姿だが名前はしっかり男だった。

「まったくあんたって子は、店番サボってこんなバカなことして」

「かっ、母ちゃん。オレが悪かったって。ぎゃぁっ!」

 副団長の少年は大根型の宇宙船から降り立った、恰幅のいい母ちゃんにサッと抱えられズボンとパンツをずるりと脱がされ、お尻ペンペンされる。

「この男の子、武くんっていうんだね」

「めっちゃ日本人名じゃん。生尻きれい、しっかり目に焼付けとこ」

「お姉ちゃんみたいなのに、ジャ○アンの本名と同じだね」

「お尻を叩いてお仕置きするのは、チタニーク星でも共通事項なんですね」

「宇宙人って感じが全くしないな」

「チタニーク星人は日本人名の子も多いよ」

 花菜乃達は思わず笑ってしまう。

「地球人の皆さん、うちのバカ息子武がご迷惑おかけして本当に申し訳ございません。二度と勝手に地球へ行かないよう、しっかり注意しときますので。これ、お詫びの品です。皆様で分けて下さいませ。地球の暦で五月いっぱいまで持ちますよ」

「あっ、どうも。重ぉっ」

 武くんの母ちゃんは俊治に、地球と月と、チタニーク星と思わしき星がデザインされた手提げ紙袋を手渡して来た。

 中を見てみると、パッケージにドリアンみたいな形状の果実と、中身が青紫に詰まったチョコレートと思わしきものの写真が付いたものが合計十箱。ちなみに一箱四〇個入りだった。

「これもチタニーク星自慢の名産品よ。ニュギュリャヴォンチョコっていうの。ニュギュリャヴォンは地球の唐辛子とハッカとコーヒーをミックスさせたような味に近いかな。チョコだけは地球産のが使われてるよ」

 メズミアは笑顔で伝える。

「メズミア、武を日本へ来させてしまってごめんね。ほら、武も謝りな」

「いっ、て、て、てぇ。ごめんメズミア」

 武くんの母ちゃんはメズミアに向かって深々と頭を下げて謝罪。武くんも無理やり下げさせられていた。

「いえいえ。アタシ全然気にしてないので」

 メズミアは苦笑いを浮かべる。武くんのことを少しかわいそうに思ったようだ。

「ほら帰るよ」

「痛いよ母ちゃん、耳引っ張るなって」

「帰ったらしっかり店番してもらうよっ!」

 武くんは母ちゃんに大根型宇宙船に無理やり乗せられ、一足先にチタニーク星へ帰らされた。

他の元TMS団員達もだるま型宇宙船に、胴体部分に設けられた横開き自動扉を通ってぞろぞろ乗り込んでいく。

「あなた達、二度と地球に攻めてくるようなことはしちゃダメよ。来るなら観光か留学目当てにしなさいね」

 メズミアは念を押して注意。

「分かった。日本のみんな、今度は普通に観光しに来るよ。ほな、おおきに」「それでは日本の皆様、グッバイ!」「地球人、またいつかお会いしましょう」「また来るぜ」「またアキバに行くなりー」「日本の皆様。またいつかお伺い致しますね」

 元TMS団員達は窓になっている目玉や鼻の部分から俊治達に向かって別れの言葉を告げる。彼らの乗った宇宙船は、窓が閉じられたのち空中へ舞い上がると、あっという間に見えなくなった。 

「周囲に何の衝撃も起こさずに静かに上がっていった。技術力凄いな」

「もう宇宙空間に出てるのかな? あたし、TMS団とまた戦いたいな」

「ワタシもーっ。TMS団のみんな、そんなに悪そうな感じじゃなかったね。平和な星の悪ガキ集団だし、地球の悪ガキ集団と比べたら大人しいっしょ」

「私、戦いはしたくないな。お友達になりたいよ」

「わたしも同じく」

 俊治と三姉妹と伸歩は、しばらく名残惜しそうに空を眺めていた。

「あいつら、口では反省してるように言ってたけど、また襲ってくる可能性は無きにしも非ずだと思うわ。指揮を執るはずのアタシが一番足手まといになってしまって申し訳ない。みんな本当にありがとう。みんなのおかげで地球の平和は守られました」

 メズミアは深く感謝の言葉を述べる。

「いやいや、俺はメズミアちゃんが一番活躍してたと思う」

「そんなことないですよトシハルさん。危険な目に遭わせてしまって申し訳ないです」

「気にしないでメズミアちゃん。俺、今回の戦いけっこう楽しかったよ」

「わたしもヒーローショーに出れたみたいで、すごく楽しかったです」

「私も、けっこう楽しめたよ」

俊治と伸歩と花菜乃は満足そうに伝えた。

「あたしはもっと戦い楽しみたかったな」

「ワタシももっと激闘を繰り広げたかったぁーっ!」

 美羽と日香里はちょっぴり名残惜しそうにする。

こうしてみんなは、それぞれのおウチへ帰っていった。

目的を果たせたメズミアも、まだチタニーク星へは帰らずに、当初の予定通り今夜も楠本宅でお世話になることにした。

      ☆

 三姉妹とメズミアが帰宅した午後六時半頃には、すでに夕食がほとんど出来上がっていた。

「おう、すき焼きだぁ! それに、お刺身もいっぱい♪」

 メズミアは並べられていたメニューに目を奪われ、大喜びする。

「メズミアちゃんと明日お別れだから、今夜は豪勢にしたわよ」

「ありがとうございます。おば様、おじ様。この度は大変お世話になりました」

「いえいえ、そんな」

「ぼくの方こそ、メズミアちゃんに感謝すべきだと思う。貴重な体験が出来たし」

 両親は謙遜気味だ。

「美羽と日香里と花菜乃は、メズミアちゃんとお別れの挨拶しなくていいの?」

 母ににっこり笑顔で問われると、

「だって月曜に普通に学校で会えるし」

「私も学校行く途中で会えるから」

「あたしは下校途中で会えるよ」

 三姉妹は爽やかな笑顔で嘘を伝えておく。

    ※

 午後八時頃。俊治の自室。

「駆け出せ動物の村3、すごく面白いですね。チタニーク星のゲームショップでももう売られてるかな?」

「メズミアさんにも楽しんでもらえて光栄です。おそらく今週の売り上げトップになること間違い無しの日本で大人気のテレビゲームですよ。海外でもこのシリーズ人気あるみたいです」

「ワタシと同じ部活の子にももう持ってる子が何人かいたわ」

「あたしのお友達も嵌ってる子が多いよ。3DS版もめちゃくちゃ面白いよ」

「俊治くんはこのゲーム、あまり興味なさそうだね」

「だってこれ、女の子向けだろ。あの、みんな、俺の部屋でやらなくても……それにしてもこのチョコ、ほんのり苦みと辛みもあって柔らかくてめっちゃ美味いな」

「あたしはそんなには美味しく感じないよ。苦い」

 メズミア地球滞在最後の夜ということで、俊治と三姉妹とメズミアと伸歩、みんなで集まりテレビゲームなどをして楽しむ。頂いたニュギュリャヴォンチョコを時折口にしながら。

 その最中、

「あっ、ママから電話だ」

 メズミアの携帯の着信音が鳴ると、メズミアはすぐに通話ボタンを押した。

『メズミア、TMS団退治、よく頑張ったね』

「うん、ほとんど地球人のお友達のおかげだけど。ママ、日本時間換算で明日の夜にはそっちへ着くように帰るね」

『いや、帰らなくてもいいのよ』

「えっ!」

 予想外の返答に、ぽかんとなるメズミア。

 そのあとママから衝撃発言。

『ママとパパも、日本へ引っ越すことにしたから。メズミアには言わなかったけど前々から計画してて、別荘のような感じだけど新居ももう決まってるの』

「えっ!! チタニーク星でお仕事あるでしょ?」

『それなら心配ないわ。最高時速五〇万キロ出せる最新式の超高速宇宙船を、ジクコゴ王立大学院の理工学研究者に造ってもらったから、すぐに行き来出来るし』

「そっ、そうなんだ。新居って日本のどこ?」

『住所は東京都の……』

「そこって、アタシがお泊りさせてもらったここの近くじゃ」

「地区名同じだし、番地も近い。俺んちからけっこう近いぞ」

「俊治くんちから四軒隣のあのおウチじゃないかな?」

 俊治と花菜乃の耳にも届いたようだ。

「そういえば、そこ、入居者募集中って看板があったな。あそこか?」

「ってことは、ワタシと同じ中学に通うってこと?」

 日香里も反応する。

「ママ、それじゃ、アタシの通う学校は?」

『市立楓塚中学よ。日本時間の明後日から通えるよう、もう留学手続きは済ませてあるの。制服その他学用品も用意してるわよ』

「あっ、そっ、そう?」

 突然の予想外の報告に、当然のように動揺するメズミア。

「同じ中学だ! やったぁ!」

「ということは、私達と近くで過ごせるってことだね」

「いっしょに学校も通えるね。メズミアお姉ちゃん、これからもよろしくね」

「メズミアさん、嘘から出たまことになったね」

 三姉妹と伸歩は大喜びする。

「まさかこんなことになるとはな」

 俊治はちょっぴり気まずい心境だ。

『メズミア、明日直接迎えに行くわ。メズミアが今いる場所の座標を教えてくれない?』

「分かった。ちょっと調べるね。えっと、東経一三九度二十……」

 メズミアが携帯電話を眺めながら地球の経度・緯度をミリ秒単位まで詳しく伝えると、

『あら、新居とほとんど同じ場所なのね。東経で一秒ちょっとしか違わないじゃない。緯度は秒単位まで同じだし』

 母は少し驚いた様子だった。

 三姉妹はこの事実は、両親にはメズミアちゃんの家族が、ちょっと遠い場所にあるマンションからこのすぐ近くの一軒家に引っ越してくるというように伝えたのであった。

    ※

 午後十一時頃、桐林宅。

「ハンマーで叩いたら小人になった、あの昼間の出来事は夢でありますよね? あんな魔法少女アニメ世界のような現象、現実世界では物理学的に考えて起こるわけがないしぃ。僕はきっと白昼夢を見ていたのでしょうね」

 久光は自室のベッドに寝転がり、今日買ったコミックを読みながら自問自答していた。


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