7話 前半ローリス 後半カエサル
「僕たちが身に付けるもの全てに、亡くなった辺境伯夫人の魔法がかかっております」
これはカエサルのご両親の話。でも、辺境伯夫人が魔法を使えたなんてはじめ聞く話だ。それよりも、どれくらいの魔法がかかっているのか気になる。
「タロさん、魔法を見せてもらっていい?」
「はい、僕が身につけているマントを見てください」
彼からマントを取り、鑑定魔法で魔法をみようとしたが、見えた魔法陣がグニャリと歪みこのマントにかかる魔法が見えない。もう一度やってみたが見えなかった。
「嘘、私の鑑定魔法で見られない? 私よりも魔力の強いお方……」
初めてのことに、私は瞳を大きくした。
「なんて素晴らしい。一度、お会いしたかった」
「素晴らしい、ローリスお嬢様がこうおっしゃるのだから、とても凄い方だったのですね」
「はい、おっしゃるとおり。とてもお綺麗で素晴らしい、辺境伯様と奥様でした」
タロが肩を落とす。それはまだお二人が亡くなって日が浅いからだ。ここで知らない私達が落ち込んでいては、ダメよね。
「タロさん、見せてくれてありがとう。明日、辺境伯についたら、お二人のお墓に挨拶をしたいわ」
「かしこまりました」
夜もふけ、明日も早くから移動をしようとテントで就寝することにした。テントの周りに結界魔法が張ってあるから、こちらへ向かっている謎の人はこの場に着いても結界を触ればすぐに気付ける。
私とキャロル、タロに別れてテントで眠った。
⭐︎
その謎の人物は、ローリスの夫となるカエサルだった。
「この森に妻がいる」
ぼくが「魔物の討伐は二、三日で終わる」と告げ宿屋に泊まらそうとしたのは、妻となるローリスの寝顔を見たいがため。
その思惑が崩れる。
仲間と魔物の討伐中、側近タロから通信が入る。
〈『こちらタロ。カエサル様、ローリス様は宿屋へ向かわず、現在スカーロンの森を進行中』〉
「なに? 妻が森を進んでいる⁉︎」
この通信の後、ぼくはさっさと討伐を終えて馬を飛ばし、一直線にスカーロンの森へ向かった。森の入り口でサーチ魔法を展開し、妻ローリスの魔力反応を探る。
「見つけた……待っていて、ローリス」
二十分ほど馬で駆けた先に、木々の合間に二つのテントが見えてきた。
「あのどちらかのテントに、ぼくの嫁が……」
テントに近づいた瞬間、ぼくは結界魔法の存在に気付く。
「へぇ、この結界、触れれば本人へ通知が飛ぶ仕組みか。なかなか、いい魔法陣だ」
妻の魔法に感心しつつも。ここで、ローリスに気付かれるわけにはいかない。なにせぼくの目的はこっそり寝顔を見ることだから。
(ごめんね、ローリス)
小さく胸の中で謝りながらぼくは魔法を発動して、結界の魔法式を書き換え、自分と馬が感知されず通れるよう細工した。
馬を連れて静かに結界内へ入り、テント近くで馬を休ませてぼくは自分に遮音魔法をかけ、足音ひとつ立てず妻のいるテントの中をのぞいた。
中にはローリスだけではなかく、彼女の専属メイドが眠っている。
(このメイド、かなりの手練れだな。起こすと面倒だ)
ぼくは、懐からドラゴンすら眠らせる特殊な眠り粉を取り出した。
「悪く思わないでね」
さらりと粉を舞わせ、メイドをさらに深い眠りへとみちびく。よし、これで邪魔は入らない。
「さて、ぼくの嫁の寝顔を、ぐはっ……!」
なんという破壊力。
普段も可憐で愛らしい。
だが。
「寝顔は反則だ。かなり可愛すぎる……!」
すやすやと穏やかに眠るローリスを前に、ぼくは胸を押さえて震えた。




