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プロローグ

「そうかそうか。頑張ってな」

開幕の歓迎会でタバコの煙を顔に態々吹き付けられて、顔をしかめると舌打ちされたのが、社会人生活の始まりだった。

 初めて触ったーーーでは老人が言う「遅い。チゲぇッつってんだろ」

「初めてなんだけど?ここじゃ基本たぞ。できんかったら何もできんからな」

老人は馬鹿にしたように鼻で笑う「ズレてんだろうが!」

「わかってるわかって本気出せよな」肩に触れる手を悍ましいと思った。なんで凄んだ後にそんな馴れ馴れしい声が出るの?

「研修ですが、私からは心構え、あ、私が思うにはですよ。私のやり方ですからね?実らなかったからといって私のせいではありません。内容ですが諦めなければーーー」

「やったことある?」「に、日曜大工程度なら」「日曜大工かぁ」

「あえて、放置してん。俺見とらんかったやろ。は?随分嫌そうやな」

「ここ、他よりマシやから」

 とんと、わざわざ通路で肩を当てて過ぎていく男がいる。


じゃま

「うっ」

 浮遊感、足と体が転がるようにして転倒する。


ははははは

 笑い声?一人じゃない。

複数人、あれこの紙は、ああなにか間違えたのか

 ひどく。遠い

ーーー

「うぁ?」

 どこだっけ、ここは

天井は白い。恐らくは貸し部屋だろう。

だが、暗い。真夜中だ。

おそらく。思った言葉を口に出してみると一つ理解する。

借りている部屋だ。なにが恐らくなのやら


「あ、コーヒー」

 体を起こすと1Lパックのコーヒーが半端な大勢で中身をこぼしているのが見える。

液だまりの中には一枚の紙

 何かはわかったけれど、電球をつける。

濡れた退職届がそこにはあった。

いや、出したんだっけ?


どっちだっけな。

 雨の音がする。バチンと電球が切れて明滅する。今夜は雨でその影響らしい。

ずんぐりと重く。

最低だ。空は暗い。いま、何時だ?

 ぷるるる。ぷるるるる。

反射的に出る

「はい」「今、どこにいるんだコラ!」

「ひぃっ」「はよ。来いやボケ」

そうだ。そこに丁度転がっている。

「た退職届」「半人前がなまいってんじゃねぇよ」


ドヤされた声にその部屋の片隅に転がっていたバックを引ったくるように飛び出す。


 ああ、雨だ。土砂降りだ。

アパートを飛び出すと光に包まれた。

多分ゴツい照明か何かだろう。

ーーーー

 平穏とは即ち人類の至るべき真なる約束にして、人或いは全ての生命に保障されるべき尊厳である。

「ふ、ぁ〜」

 リエントは確かにそう思っている。

そうだ。平穏だ。

 急かされる事なく音を聞き喉を潤しその日その日を微睡む。止まれば死ぬハムスターになろうなど正気の沙汰ではないのだ。


 異世界の知識でどうたらこうたらなど正気じゃいられない。

山菜を入れた籠を片手に自らのすむ小屋へと向かう。

「あれ」

 人が入っている?


すとんと、力が抜けしかるべくカゴが落ちる。

腰に差し込んだ剣に手を当てるとそろりと扉へ近付く。

やけに艶かしい意匠の剣身、恐らくは趣味的な特注にして見た目特化、これでも意外と斬れるのだ。案外業物なのだろ。親の遺産と言うやつだ。


古ぼけた小屋の中を覗こうとするが、しかし先に扉が開きだす。

 ぎいと扉が開くと黒衣の中年男と鉢合わせた。


 なんだ。知っている中年だ。

男は手をあてている剣を見ると明確に顔を顰めた。

 ふと、不愉快に感じる。

武器を構えそうなことではないだろう。


それに、よく見たなこの表情は

 嫌悪だろう。

「貴様。その首」

「首?」

 手を当てると何か棒状の物を掴んでしまった。

改めて引き抜くと木の枝だ。

ああ、チートというやつだ。気付かないうちに動いていたのだろう。

怪我してる。

黒衣の男は顔を伏せるとどこかへといく。

 たまにくるけど、そして恐らくは…今も小屋の中に増えている物を持ってきているのが彼だろう。

 警戒を、緩めはしても一応は武器を抜き身のまま扉をくぐる。

見渡すと、壁掛けされた罠猟の縄、古い暖炉に、隅に寄せた台所の鍋。別の部屋とこの小屋に似合わない隠し部屋

 中央にはテーブルが置かれている。

そして、テーブルの上には予想した通りの知らない物が置かれたいた。

 何かの袋だ。

小さな袋で、中にはわかりきってはいたものの金銭が入っている。

いつも黒衣のあの男がやってきた後には金銭が置かれている。

 オレが子供の頃から、或いは生まれる前からそうなのだろう。

正直関係性はよく知らないし、どう言う感情を持たれているのかもよくわからない。

一つ、思い続けていることは


別にいいか。知る必要はない。

 だって、知らない事である種の精神の圧迫から逃れられる。

平穏への道なのだから


 リエントは小袋を弄ぶと、楽しい事を考える。

楽しみは楽しみ。でも使うためには村まで下りないと


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