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それからピエロはハンサム王子とともにパンを配るために町に出ました。
「おい。ここらでいいんじゃねぇのか?」
ピエロはハンサム王子に話しかけます。
「だめだ。ここは富裕層が住む地域だ。配るならもうちょっと行ったところの・・・」
ハンサム王子は、慣れた様子で小道を進んでいきます。
「おい。ちょっと。」
ピエロたちがたどり着いたのは、貧しい人たちの住む地区でした。
「あっハンサム様だ。」
「おうハンサムさま。元気か?」
町の人たちはハンサム王子の姿を見つけると話しかけてきます。
「今日はなに持ってきてくれたの?」
「今日はパンだ。幸せパンという。」
「しあわせパン?なにそれ?」
「ほらっ」
ハンサム王子が見せたのはかごに山盛りに入れられた半分だけのパンたちでした。
「うわぁたくさんあるね。」
「けどどうして半分だけなの?」
「それはな。兄上に持っていくのだ。」
「そうか。ハンサムさまのおにいさんってくいしんぼうなんだね。」
「おい!」
ハンサム王子の言葉にピエロは慌てます。嘘がつけない王子だとは知っていたもののまさか喋ってしまうとは思わなかったのです。
「心配しなくてもいいですじゃ。」
慌てるピエロの前に現れたのは、一人の杖をついた老人でした。後ろには強そうな男が付き従っています。
「ハンサム様がなにをおっしゃってもここの者は、気にしませんのじゃ。皆日々の生活に追われそれどころではないのですじゃ。それにハンサム様は嘘がつけない。だから他の貴族や役人よりも信用できますのじゃ。」
「そうか。なんでも喋っちまうのもそんな利点が。それにしてもなんでまた‘様‘付けなのにまた敬語じゃないんだ?」
「それは、ハンサムさまがどうか普通に話してほしいとおっしゃったのですじゃ。ほかのものと変わらない対応をと。」
「やっぱり育ちの良さで分かっちますよな。」
「はい。ところで貴方はハンサム様のお友達のようですな。ハンサム様はどこの貴族のご子息なのですじゃ?教えてくだされ。」
「なっ!?」
老人の言葉を聞いたピエロは驚きました。あのなんでも喋ってしまうハンサム王子が正体をこの地区の人たちには隠してなんて考えもしなかったからです。
「俺はなにも知らねぇ。自分で聞いてくれ。」
「ですがそのことだけはいつもはぐらかされて・・・・」
老人の声をさえぎりピエロは叫びます。
「おい。ハンサム、これから用事があるんだろうがさっさと行くぞ!」
「だがまだ。パンを配りおえてなっ・・・・」
「そんなものこうだ!」
ピエロが魔法のステッキを取り出すと、呪文を唱えます。
「はらほろひれはれはむかつおいしい。」
するとどうでしょう。まだかごに残っていたパンが宙を浮かび地区の銃の手に収まったではありませんか。
「わぁ凄い!魔法だ。」
「俺知ってるぞ。白ぬりのおっさんは魔法が使えるんだ。魔法が使えるやつは魔法学校に行けて将来良い暮らしができるって父ちゃんが言ってた。」
「いいな。わたしもまほうがつかえたらな。」
「なぁなぁ」
こども達の無邪気な話し声に、ピエロのは頭には平民でありながら魔力があり魔法学校に入学した時のこと、そこで受けた身分差別、周りの優秀さに中途半端な魔法しか使えない自分との葛藤、その他もろもろのつらい過去が走馬灯のように浮かび上がりました。
「はははっ俺も昔はそう思ってたよ。これがあれば幸せになれるって・・・・」
ピエロは力なく笑います。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。さあ行くぞ!」
こうしてピエロはハンサム王子とともに城へと向かいます。
これからどんな出来事が待っているのかは、まだこの時のピエロは知りもしませんでした。




