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婚礼にて一幕閉め また一幕開ける(6) 

「リータはどうなんだ、彼女とかは。」


「___実は、兄さん達にも、教えておきたい事があって。」


「ま、まさか・・・・・!!」


「えぇ、最近になって、『婚約者』と同棲を始めたんです!」


 スライムオイルの実験を経て、すっかり『美形』になったリータ。

元からリータはそこまで顔も体格も悪くなかったのだが、今まで全然意識してこなかった事もあり、髪や肌が少し荒れていた。


 リータ自身、薬の新開発をきっかけに、ここまで自分の生活が変わるとは、思っていなかった。

___というより、彼は『ドロップ町の町長』 薬を作る事を生業としているわけではない。

 ある意味彼も、『一族の末裔』としての宿命を背負っているのかもしれない。

しかし、以前よりも綺麗になったヘレンの姿を見て、リータは心底安心した。


 今の彼女なら、王家の人間として、立派にグルオフの隣で咲き誇ることができる。

復興が済んでから、今度は他国との交流に積極的な王家にとって、外見はとても重要。

 ヘレンが不安に思う気持ちも、リータには何となくだが理解できた。

実際、婚礼の儀には、他国の王や重鎮も参加している。


 そして、この国で起きた『国命の乱』に関しても、グルオフが皆様方に説明した。

最初は彼の話を疑っていた重鎮たちだったが、犠牲となった王子の墓を見て、改めてこの国に蔓延っていた闇を認識していた。


 今まで偽・王家は、自分たちの仕事をほぼ他人任せにして、自分たちは遊んでばかりだった。

その為、異国の重鎮ですら、偽・王家と顔をあわせる機会がなかった。


 前々から他国でも、この国の根底が腐っている事は噂になっていたが、今まで『本物の王家ではな

 い人間』が実権を握っていた事は知らなかった。

そして、正統なる王家の人間が、たった一人だけ生き延び、仲間と共に王座を奪還した話すら信じてもらえなかった。


 一時期、「グルオフも『偽・王家と同類』じゃないのか?」という話も噂されていたが、彼の手腕

 は、明らかに一般人では成せない。

酷い環境にありながらも、王家としての自覚と誇りを持ち、様々な努力を重ねてきたグルオフ。


 今ではそんな陰口を叩く人は少なくなり、ようやくグルオフは、他国の王から認められるようにな

 ったのだ。

だが当の本人であるグルオフは、それに関して別に喜んでいるわけではない。


「認められる為に頑張っているわけではない。王として『最低限の仕事』をこなしているだけ。

 むしろ、認められる為に頑張っていたら、後々辛くなるだけ。」


 前にグルオフは、ヘレンにそんな話をしていた。

まだ王家の人間として修行している最中のヘレンに、グルオフはそんなアドバイスをしてあげた。

 ヘレンもかつては旅をしていたが、それは決して、『認められる為』にやっていたわけではない。

言ってしまえば『自己満足』である。


 しかし、その『自己満足』だけで十分なのを、ヘレンもつい最近知った。

相手の満足を求めてばかりいると辛いだけだし、自分自身を見失って、余計辛くなる。

 それに、ヘレンには困った時、相談に乗ってくれる人が沢山いる。

それこそ、『他者の満足』よりも重要である事を、ヘレンは知ったのだ。






「そういえば陛下、聞きたい事が・・・」


「どうしたんだ、ヘレン。」


「『あの二人』は、今日来ないんですか?

 招待状は送ったんですけど、まだ姿が見えなくて・・・」


「___あぁ、あの二人なら、あっちでもみくちゃにされているのが、多分・・・」


 グルオフが指差した場所は、教会の門付近。彼の言う通り、そこに多くの人々が密集している。

そして、あちこちから飛び交う『質問の嵐』 

 今日の主役はグルオフとヘレンなのだが、二人も負けず劣らない。


「モンスターとの生活はどんな感じなの?!」 「家事はいつもどちらが担当?」

「『子育て』は大変じゃない?」 「最近討伐したモンスターは?!」


 質問の内容自体、かなりグチャグチャである。

その質問の内容を理解できるのは、ヘレンを含めて五人のみ。

 ヘレンも『二人』の話は、よくグルオフから聞いている。

・・・が、最初はやはり信じてもらえなかった。


 そもそも、グルオフの王座奪還ですら信じてもらえなかったのに、その道中記は、それ以上に信じ

 てもらえない。

特に『彼女』に関しては、何もかもが逸脱しすぎて、ヘレンも最初は、話が頭に入らなかった。


 しかし、グルオフだけではなく、クレン達も同じような話をしていた為、嫌でも信じるしかない。

実際、彼女に命を救われた人間は、グルオフを含めてかなり沢山いる。

 復興が終わった後も、何だかんだ『彼女』と『彼』は、この王都で活躍していた。


 だが、最終的に二人は、特定の職に就かなかった。

そして、王都から少し離れた場所で、一軒家を建て、そこで静かに生活している。

 何故、王都から離れた場所で生活をしているのか、それは二人が望んだ事だから。


 もう、『普通の女性』になりたい 『普通のモンスター』になりたい

 それが、全ての復興が終わった際、二人が願った事。


 グルオフは、二人の願いに応え、王都から離れた、とても静かな場所に家を建てた。

そこで二人は『夫婦』となり 


 『親』となった。


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