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婚礼にて一幕閉め また一幕開ける(4) 

 その時だった、二人が『互いのパートナー』を見つけたのは。

実はグルオフが国王となり、兵士たちの『指導者』が変わったことで、王都でも覚醒者が多く誕生するようになった。


 アメニュ一族が結婚する最低条件、それは『相手も覚醒者』であること。

以前はそのハードルがとんでもなく高かったが、今では人間モンスター問わず、努力次第で誰でも覚醒者になれる。


 偽・王家の様々な悪事を調べている段階で、『我が子を覚醒者にできる学校です!!』という触れ

 込みで、純粋な憧れをもつ子供を集めていた学校の数件も、偽・王家との繋がりがあった。

その実態は、『覚醒者』を餌にした『荒稼ぎ』


 子供を通わせる親に、『覚醒者になるための特別授業料』という名目で、年に数回か、多額の教育

 費の支払いがあった。

しかし、実際にその特別授業を受けても、覚醒者になれた子供はごく僅か。


 理由は単純、その授業は、覚醒者になる為の『貴族たちの単なるおふざけ実験』であった。

試行錯誤する子供たちを遠くから眺めては、まるで『ペットを見る飼い主』のように、優雅に傍観していたのだ。


 それだけでもかなり非道は事だが、多額の授業料が流れる先は、やはり偽・王家。

自分たちの使えるお金が少なくなると、『子供を持つ親』を利用して、大金を巻き上げていた。


 この事実を知っている貴族は、子供を持つ他の貴族を勧誘しては、授業料を更に巻き上げる手助け

 をしていた。

もう殆ど『詐欺』と変わりない。


 巻き上げられたお金は帰ってこないが、もうこれ以上、搾取される人がいないだけマシ・・・・・

 とでも思わないと、ただ悔しいだけ。

だが、覚醒者になる為の方法が皆無・・・というわけではない。


 実際、翠は旅の道中、『二人』を覚醒へと導いている。

その時のことを、リータも含め、クレンは普通の兵士にも実践させてみた。


 『兵士』の枠組みに囚われず、『剣以外の武器』を持たせてみたり、『魔術に関する本』を無償で

 提供した。

その結果、クレンもまた、覚醒者を誕生させる事に成功。


 そして、兵士たちがこれまで抱えていた疑問も、この件をきっかけに、一気に解決した。

兵士たちのなかから覚醒者が排出される事も一応あったのだが、覚醒したのは『剣士』のみ、『魔術師』や『シーフ』のジョブが、覚醒に至ることはなかった。


 それはただ単に『覚醒者としての素質がないから』というわけではない

『剣士の覚醒者としての素質がないから』

 だから、クレンが様々な学びの場を兵士たちに設けてあげた結果、『剣士以外の覚醒者』も誕生。


 それからというもの、クレンとラーコは、『覚醒者の育ての親』という異名までつけられた。

覚醒者の更に上にある『真・覚者』についても、一つのジョブの覚醒に至るまでの月日と同じ程度の時間を費やせば、里の住民以外の『人間』でもなれる可能性がある。


 まだこの時点で、王都から真・覚者は排出できていないが、翠やリータも真・覚者になれたのだか

 ら、他の覚醒者でもなれる筈。

ただ、やはり覚醒者になるだけでも、かなりの試行錯誤を積まなければいけない。


 だから現時点で、人々が目指すのは、誰でもなれる可能性が高い覚醒者。

今までハードルが高かったものが徐々に低く慣れば、多くの人間やモンスターも、努力するモチベーションが上がる。


 覚醒者が増えれば、王都や地方で暴れ回っている『野良モンスター』の対処も、だいぶ簡単になっ

 てくる。

そして、今まで偽・王家の『収入源』でしかなかった学校の改革にも、グルオフだけではなく二人も協力したおかげで、子供たちの夢もどんどん広がっていく。


 護衛育成部隊の隊長をする傍ら、暇さえあれば学校に赴いて、真面目に頑張っている子供たちに会

 いに行くクレンとラーコ。

二人はまさに、子供たちからしても『憧れの存在』


 二人に尊敬に眼差しを向けているのは、子供たちだけではない。

護衛育成部隊での指導には、だいぶ悪戦苦闘している二人だが、やはり頑張っている存在が側にいるだけで、老若男女問わず頑張れる。


 護衛を務めるには、武術や魔術も当然重要だが、他にも身につけなければいけない事が沢山ある。

『国の歴史』はもちろん、『帝王学』や『マナー』 

 そして、それらを踏まえた上で、現場では臨機応変に、毅然とした態度で護衛に励む。


 兵士になる為の『知識』や『実技』よりもかなり難しいハードルではあるが、誰もがそのハードル

 を突破できない・・・というわけではない。

ただ、臨機応変に対応できたとしても、それでもうまくいかない時は、クレンやラーコにもある。


 今まで高かったハードルが低くなり、新たなハードルはまだまだ高い。

そして、そのハードルの先に、必ず『成功』や『勝利』があるとは限らない。

 ある意味これも、国の歴史や、現在進行形で変わり続けている証拠なのかもしれない。


 ハードルは高いものの、それでも兵士のなかから、護衛になりたい人が続出している。

兵士にとってのモチベーションアップは、『護衛部隊』そのもの。

 すると当然、兵士全体の力量も徐々に上がっていく。相乗効果だ。




 そして、護衛の募集に『性別問わず』を推奨したラーコによって、女でも護衛として働くのが、今

 ではほぼ当たり前になった。

これには、『男女平等』も大きな要因だが、ラーコは『王家の将来』を考え、この意向にグルオフも賛同した。


 これからグルオフは、『妻』を持ったり、『子供』を持ったりするかもしれない。

その時、『男だけの護衛』では、何かと困るシチュエーションが増えるかもしれない。


 まだ実践には至っていない場面はあり、まだ色々と決めないといけない事があるものの、これから

 『女の護衛の需要』が、グルオフの結婚を機に求められるであろう。

そして、クレンもラーコも、『生涯を共にするパートナー』と、その護衛育成部隊で巡り会った。


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