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198・忙しいのは 良い事ばかりではないけれど

「あ、グルオフもこっちに来てたんだ。」


「ミドリさん達も、リータのお兄さんを出迎える為に?

 僕は、これから『門の立て直し』の検討も兼ねてるんです。


 これからどんどん、王都に人やモンスターを入れたいので、もっと大きくて頑丈で、圧迫感のない

 デザインにしたいんですよ。

 でもある程度頑丈じゃないと、防衛にならないので・・・・・」


 もう既に門前で、兵士たちと話し合いをしていたグルオフ。

その隣にいるクレンとラーコは、もうすっかり護衛としての威厳が板についていた。

 だが、翠たちが来た途端、その威厳がシールの如くペリッと剥がれる。

ケロッと一気に変わった2人の表情に、周囲で見ていた兵士はちょっとびっくりしていた。


 普段の二人は、この国を導く『国王』の護衛として、常に周囲を警戒して、怪しい動きをする者を

 見逃さない。

その凛々しい姿には、兵士たちも見入っている。


 威厳が剥がれた二人は、今までの鬱憤を晴らすように、口が止まらない。

3人に会えたのがよっぽど嬉しかったのだ。


 忙しいながらも、お互いを心配していた6人。

同じ王都にいるのだが、なかなか顔を合わせる機会がないのだ。

 それは王都が広いことも要因だが、やはりお互い、あちこちに駆り出され、忙しかったのだ。

会いたくても、あちこちから頼りにされていると、どうしても後回しになってしまう。


「ミドリー! 久しぶりー!

 復興かなり頑張ってるみたいだけど、体とかこわしてない?」


「こんな事で体こわすような体なら、今頃『ハエの餌』になってるわよ。

 ラーコも、あんまり気を張りすぎないようにね。」


「いやー、グルオ・・・・『王』の側近として、王都の住民から認知されると、つい背伸びしちゃう

 のよね。」


「まぁ、気持ちが分からないわけでもないけど・・・」


 翠とラーコは、女子特有のハイテンションの会話を楽しんでいる。

そんなラーコの様子を、グルオフは微笑ましく見ている。

 

 いつも気を遣っているラーコとは違う、『自分の知っているラーコ』が、彼も安心する。

彼の知っているラーコは、元気で活発だけど、しっかり自分の考えを持っている、そんな女性。


「兄さん、お疲れ様です。」


「リータ、すまないな。最近全然顔も合わせられなくて・・・」


「いいんですよ、兄さんは毎日しっかり頑張ってるんですから。」


「___こんな俺でも、まだ『兄さん』なんて言ってくれるのか?」


「死ぬまで言い続けますよ。」


 若干サラッと怖いことを言うリータだが、そこまで深い意味はない。

それくらい彼は、クレンを尊敬しているのだ。


 リータをここまで導いてくれた存在は沢山いるが、ミドリのお供として、どうあるべきなのかを教

 えてくれたのは、他でもないクレン。

ちょっと暴走気味で、まだこの国のことを何も知らなかった翠を守りつつ、自分の身も守る。


 最初は少し大変だったものの、クレンの背中を見て学びながら、自分の先祖に関する過去や、この

 国で起きている『根腐れ』を突き止めるまで成長できたリータ。

ここまでリータが成長できたのは、やはり翠メンバーの古参であるクレンの存在が大きい。


 翠もそれに関しては、本当に感謝している。

クレンが彼女を見捨てず、この国の常識や問題を、あれこれ説明してくれたのだ。

 普通、この国の常識が分からない人に出会ったら、大抵『変な人』として、冷たい目で見られる。

だが、クレンはただただ、嬉しかったのだ。話しかけてくれる人が、どんな相手だったとしても。


 『野良犬』や『野良猫』のような生活をしていたクレンにとって、初めて自分と、対等に話をして

 くれた翠は、まさに『救世主』と言っても過言ではない。

だからクレンは、その気持ちを『恩』としてかえす為、彼女の側で、共に歩んできたのだ。


 互いに忙しくなると時間がとれなくなってしまうのは、兄弟姉妹にはよくある事。

それでも互いに信頼できているのは、とても大切だけど、難しいこと。

 翠は一人っ子であった為、そうゆう関係に憧れがあった。

だから余計に、リータ達がが輝いて見えるのだ。


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