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195・不足を補う

 家や家族を失った人々のケアも、翠たちは欠かさない。

主人を失った家庭には、定期的にお金や食料を提供して、不便な事はないか、頻繁に聞きに行く。

 犠牲となった住民の墓にかかる費用は、国が全部賄った。

・・・というか、城に残っていた調度品の数々を売って、それで補った。


 この件をきっかけに、城の中も一掃することにしたグルオフ。

最上階に飾られていた調度品はほぼ破損してしまったが、残っている物もまだまだあった。

 それらを全て売り払った結果、かなりのお金になり、それを復興の資金にすることに。

ちょっともったいない気もするが、復興のためのお金になるなら、無駄だったわけではない。


 翠たちも毎日ずっと歩き続けているが、一番忙しいのはグルオフである。

力仕事はほぼ翠たちの仕事だが、それらを全て指揮しているのはグルオフ。


 彼の的確な指示と、どんなトラブルにも冷静に対処できる対応力は、復興の速さにそのまま直結し

 ている。

ずっと王都のあちこちを移動しながら、その才能を遺憾なく発揮している。


 そして、彼の隣で護衛をしているクレンとラーコに関しても、グルオフの補佐として、常に『勉

 強』と『護衛』を重ねている。

グルオフの命を狙おうとする不届き者がいた話は聞かないが、彼の指示に反発して、手をあげる住民がいる。


 文句や愚痴なら構わないが、手をあげるのはまた別問題。

それを対処するのが、アメニュ一族の役目。

 復興が無事に進んでいるのは、二人がしっかりグルオフを守っているからである。

おかげで、二人の評判もうなぎ登りである。


 最近は復興が忙しいせいで、なかなか時間が合わず、ゆっくり話せない。

だが、周囲からの話で、皆がどうゆう形で復興に協力しているのかが分かる。


 この世界に『ネット』はない。

だから『口伝』でしか、自分の周りで何が起きているのか、確認できない。

 『時計』と同様、それも不便ではあるが、『それしかない状況』なら、口伝でも十分役に立つ。






「そういえば、もうすぐだよね、リータの兄が来てくれるのって。」


「あぁ、今日辺りだ。

 ___相変わらず、王様グルオフの計算高さには驚かされてばかりだよ。

 出発した馬車が、王都に来るまでどれくらいかかるのか、ある程度予想できるんだから。」


「そうだよね、普通そんなの分かるわけないのに・・・・・

 どうやって分かるものなのかな??」


「それは・・・もう『感覚』の話になるんじゃないのか?


 彼も凄いけど、『馬力』って凄いんだな。

 俺達が行きだけで半月かかった距離を、馬なら数日で行き帰りもできるんだから。

 俺も馬に乗ってみたいけど、ちょっと・・・・・」


「怖いの?」


「___馬が美味しそうに見えて、それどころじゃない。」


「それは・・・・・乗らない方がいいかもね。」


 庭仕事をしながら談笑するザクロと翠。

話の内容は若干おっかないものの、2人の顔はとても優しく、遠くで城の使用人が、2人の姿を微笑ましく観察していた。


 翠とザクロは、城のなかでも『友達以上 恋人未満』として、かなり有名である。

この国に蔓延っている差別意識は、完全に無くすのに時間がかかりそうだが、2人の仲睦まじい姿を見ていると、それらがもうどうでもよくなってしまう。


 それくらい2人は、日頃から仲良く過ごしている。

命の危機が無くなったぶん、相手を思いやれる心の余裕も増え、様々な『人間』とのつながりが増える中、ザクロはやはり翠と一緒にいる事が多い。


 ザクロにとって、翠と一緒にいる時が、一番心地良いのだ。

1人の時でもない、里では味わえない美味しい物を食べている時でもない、翠よりも美人の女性と言葉を交わしている時でもない。


 2人の仲睦まじい姿を絵にする為、わざわざ絵師が直接城に来たこともあった。

クレンとラーコのコンビも、『王を守る最強の一族の末裔』として有名だが、翠とザクロのコンビも負けていない。


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