表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
207/237

184・『綺麗なEND』なんて存在しない

「___まぁ、所詮はこんなものかな。

 私達が救えた命や国は大きいけど・・・・・」


 彼の祖先が犯した罪が、結局は後世の人々やモンスターを苦しめていた。

 その罪を、彼の親に償わせる事も、難しいのかもしれない。

 息子の苦しみの根底に自分たちがいる事に、全然気づいていないようだったからね、アレ。」 


「_____彼にもし、手を差し伸べてくれる人がいたら・・・

 翠が、僕を救ってくれたように。」


「クレン、『もしも』を考えるのは別にいいけど、私たちに歩める未来はたった一個しかないの。

 自分を責めていたら、王子様も浮かばれないよ。」




「そうですね、ここで『全てが終わり』というわけではありませんから。」


「グルオフ?! いつの間に・・・・・」


 5人でしんみりしていると、グルオフが瓦礫の奥から出てきた。

だが、彼は近くの遠征組に寄りかかりながら歩いている。

 よく見ると、グルオフは右足に木の枝を結んでいる。

出血はしていない様子だが、右足はほとんど動かなかった。


「グルオフ?!! その・・・足!!!」


「すみません、気をつけて住民の皆さんに避難させていたんですけど、飛んできた瓦礫で・・・」


 彼の変化に、一番早く反応したのは、やはりラーコだった。

ラーコは慌てて、彼の右足を確認する。

 だが、彼女が少し触れただけで、グルオフは痛みを顔に滲ませていた。

混乱してオロオロしているいるラーコの肩に、クレンが手を置いて落ち着かせる。


 だが、彼の肩にも血が滲んでいる。


「クレン?!! あんたまで・・・!!」


「あぁ、これ? 

 いや、瓦礫の下敷きになった時、リータを庇って、それで・・・・・」


 クレンはうまく自分の傷を誤魔化していた為、ずっと彼の側にいたリータですら気づかなかった。

だから、クレンの怪我に一番びっくりしたのは、彼に守られていたリータ。


 リータは、焦って回復魔法をクレンにかけてあげようとしたが、技を連発しようとすると、彼の体

 にも支障が出てしまう。

それを知っていたクレンは、リータの手を止めてあげる。


 怪我をしたのは2人だけだったが、必死になって戦った反動は、全員に響いていた。

ザクロも、勢いよく口から炎を出しすぎたのか、少し咳き込んでいる。

 翠は精神的ダメージが誰よりも大きい様子で、ずっと浮かない顔をしている。

リータやラーコは、そこまで目立った外傷はないものの、だいぶヘトヘトな様子。




 だが、グルオフの言うとおり、これで終わりではない。

まだまだ翠たちには、やりたい事も、やらなければいけない事もたくさんある。

 『後味』を今決めるのは、まだ早すぎる。

そう、偽・王家から解放された喜びや実感は、これから感じることができるのだから。


「___ミドリさん、ちゃんと持ってきてくれたんですね。」


「まぁ・・・・・

 駄目だった?」


「いいえ、むしろありがとうございます。

 私としても、彼のその『冷たい笑み』を見ると、色々と考えさせられるものがあって・・・

 まだ、偽・王家に関しての調査は始まっていませんけど、彼の亡骸から、色々と察せるんです。」


「そうね、それは私もよ。」


「だからこそ、『今後への意気込み』も踏まえて、彼のお墓は、しっかり建ててあげたいんです。」


「きっと、彼も喜んでくれるよ。」


 冷たくなった王子の頬を、グルオフは優しく撫でてあげる。

因縁の相手でもあるが、彼の内情を知ってしまった翠たちは、『許せない気持ち』と『かわいそうな気持ち』を抱えた。


 彼にとって、この結末が王子にとっての『解放』となってくれる事を祈るばかりである。

だが、こうでもしないと、彼は解放されなかった。だから翠たちも同情してしまうのだ。


 もし彼が、もっと『自由の身』だったなら、こんな一大事件を起こさなくても、別の方法で偽・王

 家を戒めることができたかもしれない。

もしかしたら、『翠たちと協力する未来』も、あったのかもしれない。


(『私たちに歩める道はたった一個しかないの』

 って、自分で言ったけど・・・・・

 私たちの歩んだ道って、『幸運』に見えて、『残酷』なのかもね。


 道は同じだったのに、目指す未来も同じだったのに、それでも一緒に手を取りあえなかった。

 彼と一緒に頑張る道も、歩んでみたかったな・・・・・




 でも『彼ら』とは、どっちみち決別するしかなかったよね。)


 翠は、一旦王子の亡骸をザクロに渡し、後ろに振り返る。


 そこには・・・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ