熾天使と死の騎士を召喚し生と死を司るモブになったようだがそもそも生と死を司るモブは本当にモブキャラなのだろうか?
異世界生活六十二日目 場所精霊の森
【リーファ視点】
「――篠突く雨」
剣を掲げると同時に猛烈な雨が降り始めた。
予想した通り、今の私はファンテーヌの技を使えるようになっているみたいね。
「――雨天の水鏡」
〈雨天の水鏡〉を使用して分身を七体創造する。
私の身体は半水精霊化しているから、分身と見分けがつかなくなっている筈だ。
『無限の光矢』
リヒトの背後に無数の光の矢が生まれ、一斉に解き放たれる。
「どっかのホムンクルスの魔●の矢みたいな技だな。……だが、そんなんじゃリーファさんは倒せねえよ」
『勿論、理解している。これはほんの小手調べだ』
……なんで草子さんとリヒトがヒートアップしているんだろう? リヒトと戦っているのって私よね??
それだけ草子さんに信頼されているってことかな? それとも、自意識過剰??
「広がる雨弾」
剣先に水を集中させ、無数の水球を光矢に向かって放つ。
よし、成功。光だからすり抜けるかと思ったけど、ちゃんと攻撃が効くみたいだ。
「――洌流の鞭刎」
剣に収束した水が鋭い鞭のように変化させ、鞭のように操る。
『断闇の光鞭』
ッ! リヒトも同種の技を使えるのか!
「……裁●の光鞭擬きか? あっちのリヒトさんの技も使えるんだな」
『何を言っているのか分からんが、あまり驚いていませんな。私の相手が草子さんだったら厄介だった』
「……俺じゃなくてもお前は負けるよ。今のリーファさんは前よりも格段に強くなっているからな」
『そうかな? 私は“光の精霊王”――最速の精霊。その速度に草子様、貴方の友人はついてこれるでしょうか!! ――光速移動!!』
――あれ! 完全に私、忘れられてない!! 草子さんとリヒトの戦いになってるよ!!
「――無音の長雨」
リヒトの光速移動に、私は雨の無音移動を利用して対抗する。
……やっぱり早い。というか、既に眼で終えていない。
だから意識する前に動く。不規則に、無作為に、動いて、動かしてリヒトを翻弄する。
それを分身達と共に行っているから戦場は大混乱だ。
通常でも判別がつかないくらいなのに、それが物凄い速度で移動していたらもう判別をつけるどころの騒ぎじゃなくなるからね。
速度は歴然の差だけど、私は向こうよりも数がいる。
だから拮抗する。ずっと続けていたらいつかはリヒトに負けるけど、リヒトだって無限に光速移動を続けられる訳ではない筈。それが終われば私は向こうよりものターンだ。
『放射の光球』
動きを止めたリヒトが無数の光球を放った。そして、そこから四方八方にレーザーが……マズイ!!
「……ッ! 痛い!」
しまった、貫かれた。……それに分身もさっきのレーザーに射抜かれて形態を保てなくなっている。
このままだと……やられる!!
『終焉の光劍』
無慈悲の表情でリヒトが光の大剣を振り下ろす……その動きがスローモーションに見えた。
……このままやられるくらいなら、一か八か。
「雨色の輪廻転生」
自らの身体を全て水へと変化させ、雨の中に溶け込ませる。
そして、リヒトの背後に収束させ、身体を再構成する。
「リーファが終焉●炎擬きを喰らっていたら流石にヤバかったな。一応回復魔法の用意をしていたが無駄だったみたいだ。……だが、リーファ。今の技は即興でやっちゃあかん奴だよ。自分自身の体を完全に水に変化させて再構成するってのは使い方次第ではとんでもない技になるが、その分制御に失敗したら二度と体を取り戻せなくなるという大き過ぎる欠点がある。青●輪廻を即興でやって成功させた制御能力は賞賛ものだが、あんまり感心しないよ」
「……心配してくれて、ありがとう。ごめんなさい、心配を掛けて。でも大丈夫、もうコツは掴んだ」
『――水を差すようで申し訳ないが、まだ試練は終わっていない。束光の弾丸!!』
リヒトが手で銃の形を作ると、人差し指に光が集まってくる。
「オモチ●の銃か、指鉄砲か……バリエーション豊富だな。範囲は狭いが一撃のダメージは大きい。……大丈夫か?」
「うん、問題ない。――明鏡止水の雨色同化」
〈雨色の輪廻転生〉と〈無音の長雨〉、〈雨天の水鏡〉を融合し、新たな技を作り上げた。
神出鬼没に出現と消滅を繰り返す。そこに分身達の〈無音の長雨〉が加わる。
この技の欠点は雨が降っていないと使えないことかな? まあ、それは〈雨色の輪廻転生〉も同じなんだけど。
「これで終わりよ! ――激流の斬撃・連斬」
『これで終わりではない! 煌光の穿閃』
私はオレイミスリルの細剣を構え、十連撃を放つ。
リヒトは光を収束したレーザーで反撃しようとするも……撃った先は私の分身。
まさか、最後の最後に引っかかってくれるとは。
試練を無事に達成したのは良かったんだけど……なんだか締まりの悪い最後だな。
◆
『治癒の光粒』
リヒトに刻まれた傷を光の粒が覆い、瞬く間に傷を消し去った。
「全ての物質を貫通する確定条件が付与されている光線を放つ流●群擬きに、光の粒子により傷を癒す、癒やし●光粒擬きか……どんだけ多芸多才なんだよ」
草子さんはそんなリヒトを白眼視しているけど……草子さんも大概だと思うよ。
『改めて、“光の精霊王”リヒト=ルーチェだ。“精霊王”の試練に打ち勝った勇敢なる者よ! 我は貴女に従属することを誓う』
これで、“精霊王”全員と契約ができたのか。
「リーファさん、おめでとう。貴女は、“精霊王”全員に認められるのと同時に、新たな力を手に入れた。もう、リーファさんは白崎さんや聖さんに勝るとも劣らない。……みんな俺を置いて強くなっていくよな」
『草子様、僭越ながら申しますと……草子様を超えることは今ここにいる何人にも不可能だと思います』
ファンテーヌの言う通りだ。
ようやく私は聖さんや白崎さんと同じ舞台に立った。今の私はそれくらい強くなったと自信を持って言うことができる。
でも、強くなったからこそ分かる。草子さんの立つ地平は、私達の立つところよりも遥か高みにあるんだって。
この試練。もし、草子さんが一人で挑戦していたら半日も掛からなかったと思う。
どの“精霊王”でも戦いが成立しない。戦わずして従属させることだってあり得たと思う……実際、草子さんが断らなければ従属していた訳だし。
私は強くなった。でも、これは更なる強さを目指すための始まりに過ぎない。
私はもっともっと強くなる。そして、誰よりも先に草子さんの隣に立つ。
……いつまでも勝っていると思ってはいけないわよ、聖さん、白崎さん。私だって恋のライバルの一人なんだから!!
◆
屋敷に戻り、そのままベッドに横になる。
この部屋の掃除は後回しになっていて、他の部屋を片付けるために出した荷物が、そのまま無造作に積まれている。
一度本格的に掃除をしないといけないな、と思いつつ、俺はスマートフォンを起動した。
【草子さん、こんな夜遅くにどうしたの? もしかして、ムラムラするの? オカズが欲しいの??】
「……エレシ、割とガチで消してもいい? 正直もう用済みなんだけど」
【……全く、冗談キツイよ。……消さないよね?】
「いや、割とガチで消そうかって真剣に悩んでいるところ。俺っていらなくなったアプリとかすぐ消す派だから」
正直、この五月蠅くて人を茶化してくるアプリはすぐにでも消したい。
でも、一応超古代文明マルドゥークの叡智の結晶だからな……もっといいもの作れよ。
「んじゃあ、オレガノさんにプレゼントしよう。ほら、技術系同士だしいいだろう?」
【……あの人に渡したら、変な調整を加えられてワタシがワタシじゃなくなりそうだよ。真面目なワタシって最早ワタシじゃないでしょ! ウザ可愛いのがエレシちゃんなんです♪】
「お前はミレディさんかよ! ……まあ、しゃあなしだ。もう少しだけ消さずにいてやるよ」
【草子さんはツンデレさんだなぁ♪ このこの♪】
「……やっぱり消そう」
エレシを放置して電子書籍アプリを立ち上げる。
【明日って遺跡探索でしょ? 休養を取らなくていいの?】
「エレシって気遣いできたんだな」
【えっ、へん。エレシちゃんは気遣いができて空気の読めるスーパー美少女アイドルAIなのです。……ただし、読めても従わないけどね♪】
「……それ、空気は吸うもんだタイプよりもタチが悪いからな。……体力的には問題ないし、無理に休養を取る必要はない。それよりも、自分のやりたいことをしてリラックスしてから明日の挑戦に備える方が俺の性に合っているんだ。まあ、メインの白崎さん達はきっちり休養を取っているし、問題ないだろう。……さあ、エンドレス読書を始めよう」
【……この言語って難しいね。表音文字と表意文字が混ざっているよ……ワタシじゃなかったら解析できなかったんじゃないかな?】
「日本語ってのは世界でもかなり複雑な方の言語らしいからな。その言語を短時間で解読できたのは、こう言うところは素直に尊敬するよ」
平仮名、片仮名、漢字……これほど多種多様な文字を使っているのは多分あの国だけだろう……まあ、漢字は輸入品だしそれを崩した平仮名、片仮名も純日本産ではないけど。
しかも漢字には音読みや訓読みなど、複数の読み方がある。
それに加え、英語やフランス語など他国の単語も文の中に織り交ぜられる。
これほど貪欲な言語だからこそ、できる表現というのもあると思うんだけど……この利点を活かしきれている作家って多分少ないんじゃないかな?
今回は電子書籍に入っているものを上から順に読んでいった。
朝日が昇る頃には三十冊くらいは読めてたかな? 勿論長編ばかりだよ。
さてと、そろそろ行きますか。……と、その前にまずは朝食だ。
◆
全員で朝食を摂った後、各自装備を整え、俺の〝移動門〟で十二合目に移動する。
迷宮の外観はただの洞窟だったが、一歩足を踏み入れたらただの洞窟だった。……うん、とどのつまりただの洞窟だ。
「んで? 洞窟っていうか行き止まりなんだけど……本当にここで合ってる? いや、【智慧ヲ窮メシ者】はこの下に途轍もなく巨大な空洞があるって言ってんだけど……というか、マジでなんなのこれ! ほとんどの部屋が廊下とかで繋がっていない。……ワープホールか?」
【凄いね♪ この迷宮には外部からのかなり強固なマッピングを無効化するシステムが組み込まれている筈なんだけど……ここからでも全貌を視れちゃうんだ。その通り、この迷宮は全てワープホール――離れた空間同士を繋げるシステムで繋がっているのです!】
……案の定さんか。男の娘が魔法少女に変身する異世界ものにSF要素が濃い迷宮が登場していたけど、ワープホールは無かったな。魔法陣はあったけど。
しかし、宇宙エネルギーの開発を謳っているどっかの悪の組織の基地みたいだな。
【そこの床を開けると入力装置があるから、そこに今から表示する文字列を入力してね♪ ちなみに一度間違えると電流が流れるよ!】
……うん、嬉しそうにいうことじゃないな。
床板を一枚外すと、その中から入力装置が現れた。
エレシの表示した文字列を入力してみる。……成功か?
【……パスワードの入力を確認。システムコマンド、 LABYRINTH TRANSFERをジェネレートします】
その瞬間、洞窟の床に巨大な魔法陣が現れ、眩い光を放った。
◆
目を開けると、そこは機動要塞の内部と同じ壁の間に無数の光が駆け巡る部屋だった。
部屋からは二本の通路が伸びている。そして、周りに白崎達の姿はない。
「……どういうことだ? エレシ?」
【この迷宮には四つのスタート地点が存在していて、迷宮に入った人達は四箇所に割り振られるんだよ♪ 個人の戦闘力や人数で換算して割り振るらしいんだけど、草子さんは強過ぎて一人で一つの部屋に割り振られちゃったみたい】
白崎達がどのように割り振られたかは……うん、【智慧ヲ窮メシ者】を使ったら一発で分かった。
聖、朝倉、北岡、常盤、アイリス、クリプ、進藤のグループ。
リーファ、柴田、八房、高津、久嶋のグループ。
白崎、岸田、ロゼッタ、イセルガ、大門、レーゲンのグループ……うわ、見事に脳筋が三グループに均等に割り振られているよ。
まあ、足手纏いを三人抱えるよりはこっちの方がマシだけど。
「合流は……ゴールでしかできそうにないな。まあ、白崎さん達は勇者パーティだから、俺如きが心配するのも烏滸がましいと思うけど……というか、俺が一番ヤバくね! だって俺、モブキャラだよ!!」
この迷宮は絶対おかしいと思う。普通、勇者パーティのモブキャラAを一人孤立化とかさせないだろ! 即死亡が目に見えているじゃん!!
「……まあ、いいけど。丁度試してみたかったことがあるし」
……さて、敵さんも来たようだし始めよう。
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NAME:使徒ツァールライヒ
LEVEL:1000
HP:99999/99999
MP:∞
STR:199999
DEX:199999
INT:12000
CON:199999
APP:1300
POW:199999
LUCK:1000
JOB:ホムンクルス、天使剣士、双剣士、治癒師
TITLE:【造られた使徒】、【天使の剣士】、【無限の魔力を有する者】
SKILL
【二刀流理】LEVEL:MAX(限界突破)
→二刀流の真髄を極めるよ! 【二刀流】の上位互換だよ!
【神聖剣 極】LEVEL:MAX(限界突破)
→神聖剣の極致だよ! 【神聖剣】の上位互換だよ!
【翼理】LEVEL:MAX(限界突破)
→翼使いの真髄を極めるよ! 【翼術】の上位互換だよ!
【羽撃】LEVEL:MAX(限界突破)
→羽を飛ばすのが上手くなるよ!
【飛行】LEVEL:MAX(限界突破)
→飛行が上手くなるよ!
【空歩】LEVEL:MAX(限界突破)
→空中を歩くのが上手くなるよ!
【全属性魔法】LEVEL:MAX(限界突破)
→全属性の魔法を使えるようになるよ!
【回復魔法】LEVEL:MAX(限界突破)
→回復魔法を使えるようになるよ!
【結界魔法】LEVEL:MAX(限界突破)
→結界魔法を使えるようになるよ!
【複数魔法同時発動】LEVEL:MAX(限界突破)
→複数の魔法を同時に発動できるよ!
【複合魔法】LEVEL:MAX(限界突破)
→複数の属性の魔法を融合できるよ!
【全属性耐性】LEVEL:MAX(限界突破)
→全属性に対する耐性を得るよ!
【状態異常耐性】LEVEL:MAX(限界突破)
→状態異常に対する耐性を得るよ!
【気配察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→気配察知が上手くなるよ!
【魔力察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔力察知が上手くなるよ!
【熱源察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→熱源察知が上手くなるよ!
【振動察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→振動察知が上手くなるよ!
【駿身】LEVEL:MAX(限界突破)
→駿速の領域まで速度を上げるよ! 【瞬速】の上位互換だよ!
【魔力吸収】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔力を吸収できるようになるよ! 【魔力回復】の上位互換だよ!
【再生】LEVEL:MAX(限界突破)
→失った部位を再生できるようになるよ! 【体力回復】の上位互換だよ!
【自己治癒】LEVEL:MAX(限界突破)
→自己治癒できるようになるよ!
【恐慌】LEVEL:MAX(限界突破)
→恐慌を起こせるようになるよ! 【恐怖】の上位互換だよ!
【掣肘】LEVEL:MAX(限界突破)
→掣肘が上手くなるよ! 【威圧】の上位互換だよ!
【覇潰】LEVEL:MAX(限界突破)
→覇潰が上手くなるよ! 【覇気】の上位互換だよ!
【無限の魔力】LEVEL:MAX(限界突破)
→無限の魔力を得るよ!
【分解のオーラ】LEVEL:MAX(限界突破)
→オーラに触れたものを分解するよ!
【瞬間移動】LEVEL:MAX(限界突破)
→瞬間移動が上手くなるよ!
【擬似限界突破】LEVEL:MAX(限界突破)
→擬似的に限界突破するよ!
ITEM
・神聖双大剣アーティキュルス・エーアスト
→神聖なる加護が宿った双大剣だよ!
・天女の戦装束
→純白の天使を彷彿とさせる戦装束だよ! 胸当てとワンピースが一体化しているよ!
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NAME:魔鉱金の自動人形
LEVEL:800
HP:69999/69999
MP:99999/99999
STR:399999
DEX:49999
INT:-99
CON:49999
APP:-99
POW:49999
LUCK:999
JOB:ゴーレム
TITLE:【自動人形】
SKILL
【マーシャルアーツ】LEVEL:MAX(限界突破)
→格闘術が上手くなるよ!
【振りかざし】LEVEL:MAX(限界突破)
→振りかざしの威力が上がるよ!
【拳理】LEVEL:MAX(限界突破)
→拳での戦闘の真髄を極めるよ! 【拳術】の上位互換だよ!
【蹴理】LEVEL:MAX(限界突破)
→蹴りの真髄を極めるよ! 【蹴撃】と【跳び蹴り】の上位互換だよ!
【豪打】LEVEL:MAX(限界突破)
→豪快に殴るよ! 【猛打】の上位互換だよ!
【金剛】LEVEL:MAX(限界突破)
→金剛の如き硬さまで硬化するよ! 【部分硬化】の上位互換だよ!
ITEM
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敵は機動要塞エレシュキガル内に出たものとほとんど変わらないな。まあ、ちょっと強化されているっぽいけど。
んじゃ、俺も新魔法をお披露目しますか!
「〝天を守護する大使徒達よ! 今こそ我らが前に現れ、遍く敵を薙ぎ払え〟――〝神ノ使徒ノ降臨-Summon the apostles of God-〟」
天使を召喚し、一時的に使役する【召喚魔法】。〈天●降臨〉を基にした天使召喚魔法だ。
この【召喚魔法】によって召喚される天使のレベルや数もまちまちで、かつ使役型ではないため、毎回同じ個体を狙って召喚することはできない。
だが、最高ランクで召喚できる剣神の熾天使のレベルは10000……うん、意味が分からない。
召喚できたのは剣神の熾天使、賢者の知天使二体、守護の座天使……上級天使が揃い踏みか。よく、こんなモブキャラの召喚に応じたよ。
だが、まだ終わりじゃない。天使達を後ろに下げつつ、新たな魔法を諳んじる。
「〝死せる騎士達に捧ぐ。我が黒き祈りにより、受肉し無敵の騎士となりて、我が敵を斃せ〟――〝死セル騎士達ヘノ供物-An offering for dead knights-〟」
「〝殺せ、殺せ。我が死へと導く指揮よ! 振れる指揮棒よ、死と音楽を奏で、汝らの魂を冥界へと送れ〟――〝死の行軍-Death march-〟」
手に現れた黒い指揮棒を4/4拍子で振ると同時に一体一体、使徒天使と自動人形が命を落としていく。
永続即死魔法――〝死の行軍-Death march-〟は、指揮棒を一回動かすことで、認識している敵一体の命を奪うという魔法だ。一度の詠唱につき最大で二十分間効果を持続させることができる。
……うん、殺した数は八十体くらいか。まあ、初回だしこれくらいにしておこう。
さてと……もう、そろそろかな?
〝死セル騎士達ヘノ供物-An offering for dead knights-〟の元ネタは〈黒●豊穣への貢〉だ。
だけど〝死セル騎士達ヘノ供物-An offering for dead knights-〟には広範囲内の敵を即死させるという効果はない。
その前効果を、二十分間に【即死魔法】や【即死】を使用し殺した数と変更をしているんだ。
広範囲を無差別に即死させるってのは使い勝手が悪いからね。まあ、インパクトは広範囲の方が大きいけど。
その分、広範囲の効果は強めに設定してある。向こうがそのレベル合計に応じた数のレベル九十超えモンスターを召喚するのに対し、こちらは殺した数だけ、死霊騎士を召喚する……つまり、こちらの方が圧倒的に数が多いということになる。
そして、ここに〝死が確定する十三分-The god of death keeps ridicule of life for 13 minutes-〟が加われば……うん、モブキャラが使える魔法じゃないな。死●支配者とかが使う技だ。
これは恐らく、〝DIES IRÆ〟と並ぶ俺の切り札になるだろう……そういえば、最近〝DIES IRÆ〟使ってないな。まあ、〝DIES IRÆ〟を使う敵が出てきた時点でかなり危ないんだけど。
んじゃ、実験ついでにずっと構想していたアレも試してみるか。
「〝偽りの破滅の光よ〟――〝ディエスイレ・フェイク〟」
呪文を呟くのと同時に使徒ツァールライヒを包むように光の柱が出現。それが数秒続いた後、使徒ツァールライヒが完全に消滅していた……ダメじゃん。
この魔法は〝DIES IRÆ〟と全く同じ見た目の魔法だ。だが、〝DIES IRÆ〟のような消滅効果はない。ただの最上級【神聖魔法】な訳だが……うん、これだけでも普通に実戦に投入できるな。
それじゃあ粗方試したいことも試し終わったし、後は剣神の熾天使達と死霊騎士達に任せますか。
というか、対教国用に作った魔法だけど、これって生と死を司る存在とか、そんな感じに側からは見えるよね。……生と死を司るモブって何だろう?
……おっと、すっかり忘れてたよ。
「concasseur continu invisible」