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【汐見海視点】突如魔法陣で召喚され白い部屋では何ももらえず飛ばされた先は洞窟でドラゴンに襲われる。こんな絶望的な状態で挙句……。

 テレビの絶景特集で目にするような、鍾乳石が彩る洞窟がどこまでも続く。

 耳を澄ませば水の滴る音が耳朶を打つ。


 都会暮らしの僕は一度も嗅いだことがない匂い……多分、洞窟特有の匂いなのだろう。

 その匂いが、音が、景観が……僕に現実を突きつける。


 僕、汐見(しおみ)(かい)は首都のベッドタウン出身というだけのごく中学二年生だ。

 いつもの通り学校方面への電車に乗り、中学校に登校し、いつもの通り授業を受け、いつもの通り帰る筈だった。

 このような洞窟に足を運んだ経験もないし、当然自らこの場所にやって来たという訳ではない。


 一体どういうことなのか分からない。何が起こったのか、どうしてこんなことになっているのか皆目検討がつかない。


 いや、断片的に持っている情報を精査すれば、この状況がどのようなものなのかを予想することは可能だ。……まあ、到底信じられることではないが。


 下校後、誰もいなくなった教室に現れた奇妙な幾何学模様。白一色の奇妙な部屋。……いや、本当に待ってください。まだ結論付けちゃいけない。もしかしたら、あの魔法陣に見えるものは魔法陣じゃなくて魔方陣だったりするかもしれない。異世界じゃなくて数学世界かもしれない。……それはそれで嫌だけど。

 ……もう、異世界ものは巷に溢れかえっているんだから、いい加減魔法陣によって異世界に召喚されました展開は恥ずかしくてできないと思う。


 まあ、どっちにしろ確認しようがないんだけど。まあ、仮に神様がいると仮定して、白一色の奇妙な部屋が神様の部屋だということにしよう。

 多分スキルを選ぶのであろうタブレットは全スキルグレーアウトで、部屋にはメモに殴り書きをしたような謎の置き手紙が一枚。


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 ごめんね♡ 今神格会議に出ているよ。

 頭の固いヒトしかいないから数日帰れないと思うよ。

 後日、日を改めて来てね♪


 訪問販売の方へ。もう二度と来ないでねぇ。貴方達は歓迎していないから!

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 なんだろう? もしかしたら、金髪女子高生ギャルな女神様なのかもしれない。

 それなら、会ってみたかったなぁ……って違う! よく考えたら神様がいることが確定しちゃっちゃん!!


 ……うん、もう諦めよう。ここは異世界だ。

 そして、最悪なことに何ももらえなかった。スキルも神器もアイテムも称号も……多分、ここまで追い詰められた異世界ものってそんなにないと思う。せいぜい残り物を押し付けられるくらいだよ……。


 とりあえず、ステータスを見よう。というか、本当にあるのか? ステータスがないパターンの異世界かもしれない?


「ステータス」


 ……普通に表示されちゃった。もしかして、ヌルゲーパターン? 無限の魔力とか成長チートとか最初から付与されてるの?


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NAME:汐見海 AGE:14歳

LEVEL:1 NEXT:10EXP

HP:15/15

MP:10/10

STR:20

DEX:20

INT:25

CON:20

APP:10

POW:20

LUCK:9


JOB:-


SKILL


ITEM

・スマートフォン

・学ラン

・学校指定の第一鞄


NOTICE

・通知一件

→未使用のポイントが後200あります。

-----------------------------------------------


 恐ろしいまで何もない。アイテムはスマートフォンと学ランと学校指定の第一鞄という名のリュックだけ? スキルもないし、レベルも一。武器もない……本当に、これ、戦えるの?


 リュックの中に入っているのは、今日の授業で使った国語、数学、理科、社会、英語の教科書とノート。残りわずかになった水筒。非常食として隠し持っていた飴玉が二つ。ソーラーパネル付き充電器、財布、折り畳み傘、筆箱、カッパ、ゴミ袋用のビニール袋、読みかけのライトノベル一冊……筆箱の中にはシャープペンシルが二本と消しゴム、定規、コンパス、カッターナイフ、ハサミ、油性ペン、三色ボールペン、蛍光ペン……使えるとしたらカッターナイフとハサミくらいか……多分魔獣とか出てきたら速攻死ぬな。


 とりあえず、食料と水をどこかで補給しないと。


 ――グギュグバァッ。


 ん? 何か聞こえた? ……もしかして、鳴き声?


 ――グギュルーグバァァァァァァァァ。


 ……もしかして、異世界到着早々危険な状況!!

 これって、かなり大きな魔獣だよね。……例えば……ドラ……ゴン?


 ――グギュルーグバァァァァァァァァァァ!!


 ヤバイ、本当にドラゴンだ。水晶の鱗に覆われた巨大な胴体。広げると二メートルはある巨大な翼。樹齢の長い木の幹のような太さのある手足。鋭く尖り、黒光りする鉤爪。青白い水晶のような角。獰猛に見開かれた金色の目。

 向こうはもうこちらに気づいている。逃げるしかない……けど、足が震えて動けない。


 僕は死ぬの? 突然意味の分からない世界に飛ばされて、たった一人で?

 大好きな女の子に、こんな根暗でオタクな僕にも、声を掛けてくれた一ノ瀬梓ちゃんに告白できずに? ……そんなの、そんなの嫌だ!


 ……突如、スマートフォンが輝いた。……一体どういうことだろう?

 スマホの画面に何か表示されている。……こんなの見ている場合じゃないのに。


-----------------------------------------------

 同名称ノ違ウシステム体系ヲ確認シマシタ。

 システムデータヲ統一化シタノチ、新バージョンニアップデート改変ヲ行イマス。

 統合後モスキルニヨリ作成サレタカード並ビニ、ソレヲモトニ再現サレタカードハ消滅シマセン。


 システム名、『FANTASY CARDs』。


 アップデート……5%……45%……69%……82%……98%,99%,100%……改変完了。

 システム、再起動。……アプリヲ起動シテ下サイ。

-----------------------------------------------


 ……どういうこと? アプリの画像が――『FANTASY CARDs』のアイコンが変わっている。

 これを起動しろってこと?


 突如、身体が縮んだように感じた。というか、明らかに縮んでいる。ドラゴンが一層巨大になった。

 視線に金色の髪らしきものが見える……触ってみたら、よくドリルなどと表現される巻き髪だった。

 その手は精緻な刺繍が施された純白のロンググローブに包まれ……肌も明らかに白くすべやかなものになっている。手にはフリフリでゴテゴテのピンクの杖が。

 服もだ……純白のプリンセスラインドレス……これは、どういうことだ?


 画面には見慣れた画面が映し出されている。キャラクターを選ぶ場面。しかも見たことがあるのばかり……全部僕の持っている乙女(プリンセス)だ。

 だけど、五枚セットできるデッキには一枚しかセットできない……どういうこと?

 とりあえず……。


「ランク:SSR(ダブルスーパーレア) 属性:月 『魔法騎士クリステラ』……『魔法と剣を極めたその者のみが魔法騎士を名乗ることができる。国を滅ぼされ、仕える相手がいなくなった今も、彼女は大切なものを守るために掴み取ったその力を振るうのだ』」


 国を滅ぼされ、仕えていた姫を殺された騎士が、涙を流しながら敵を駆逐する姿が描かれている……このゲームって相当鬱なフレーバーテキストが多いんだよな。制作グループの指揮をとっていたのは、ハードゴアでバッドエンドで余韻を残すゲームで有名な高槻斉人だし……。


「魔法騎士クリステラをセット!」


 その瞬間、僕の身体を光が包み込み……。


「……どういうこと……ん! 声が!!」


 さっきのソプラノ声じゃない。いつのまにかアルトくらいの低さになっている。

 それに、さっきまで来ていたドレスじゃない。……それに、このミニスカートに改造された鎧は……魔法騎士クリステラ!!


-----------------------------------------------

魔法騎士クリステラのスキル

◆通常攻撃・斬撃

 斬撃攻撃。物理系スキル。クールタイム無し。

◆スクエア・スラッシュ

 四方向を連続で斬る物理系スキル。使用後25秒のクールタイム。

◆インシネレーション・スピア

 炎の槍を飛ばす魔法系スキル。使用後30秒のクールタイム。

◆フリージング・ハリケーン

 氷の竜巻を発生させる魔法系スキル。使用後60秒のクールタイム。

◆ライトニング・ダブル

 雷を纏わせた剣で攻撃する魔法・物理系スキル。使用後45秒のクールタイム。

-----------------------------------------------


 つまり、この四つのスキルを使って戦えということか。

 あのドラゴン相手に? 確かに少しは戦えるようはなったけど……本当に勝てるの?


「弱気になっちゃダメだ。ここで諦めたら、何も成せないまま終わってしまう。……僕は、負けない!!」


 画面からフリージング・ハリケーンを選択――発動。

 吹雪を伴った竜巻がドラゴンに命中する。


 ――グギュルーグバァァァァァァァァァァ!! ――グギュルーグバァァァァァァァァァァ!! ――グギュルーグバァァァァァァァァァァ!!


 もしかして、効いてる? なら!


「インシネレーション・スピア!!」


 言っただけで発動するのか。なら、次からは音声で発動しよう。

 ドラゴンに炎の槍が命中……かなり削れた、か?


 ――グギュルーグバァァァァァァァァァァ!!!!


 しまった、襲ってきた。……それなら!


「ライトニング・ダブル!!」


 魔法騎士クリステラの最強の攻撃で迎え撃つ!

 一閃――急所に命中したのか、ドラゴンは沈んだ……助かったー。



 ドラゴン以外に魔獣は現れなかった。魔獣が出てこない今のうちに、色々と確認しておかないと。

 まずは、ステータス。


-----------------------------------------------

NAME:メーア・ゼーエン AGE:14歳

LEVEL:15 NEXT:650EXP

HP:250/250

MP:250/250

STR:400

DEX:400

INT:28

CON:350

APP:100

POW:350

LUCK:13


JOB:小国の王女リトルキングダム・プリンセス


TITLE:【乙女に掛けられた呪いを解くもの】、【小国の王女】


SKILL

【乙女憑依】LEVEL:1


ABILITY


ITEM

・スマートフォン

・プリンセススタッフ

・プリンセスラインドレス

・ハイヒール

・学ラン

・学校指定の第一鞄


NOTICE

・通知二件

→未使用のポイントが後800あります。

→未使用の想片(ハート・フラグメント)が後10000000ポイントあります。

-----------------------------------------------


 ステータスどころか、名前まで変わっている。

 というか、メーア・ゼーエンってもしかして。


 スマホに入れてあった鏡アプリを起動したら、目の前に見目麗しい姫の姿があった。

 潤んだ瞳、長くカールした睫毛、小ぶりの鼻、艶やかな唇、ウェイブのかかった姫カットに巻き髪……間違いない、TCG風ソーシャルゲーム『FANTASY CARDs』の主人公、オリヴィア……は、デフォルト名だから、メーア・ゼーエンだ。


 TCG風ソーシャルゲーム『FANTASY CARDs』は、二年前にサービスを開始したスマホゲームだ。

 主人公はとある小国の王女だったが、奇跡の力を持ち、魔王の力を跳ね除けた。カードに封印された乙女達を復活させる力を持つ。

 その力でカードに封印された乙女(プリンセス)達を解放し、旅をするネットゲーム。乙女(プリンセス)達を封印した魔王を倒すことを目的としている。

 ……確か、師団長との戦いまでがイベント化されていたっけ。今のところオープニングのバトル以外では、魔王のマの字も出てきていない。


 乙女(プリンセス)とは、カード化された乙女達の総称でデッキには五枚入れられる。火・水・風・土・陽・月の六属性が存在する。ガチャでも入手可能で、実際『魔法騎士クリステラ』は期間限定のガチャで出した頼れる相棒だ。


 そして、もう一つが想片(ハート・フラグメント)。魔獣を倒すことで手に入る力。主人公専用の魔導技(アビリティ)を発動するのに使用する。基本的には援護技。習得にも想片(ハート・フラグメント)を使用する。……この辺りはどうなるんだろう? 戦闘中は乙女(プリンセス)と融合する訳だし。


 だけど、これで戦力は整った? このドラゴンがどれほどの強さだったのは分からないけど、多分そこそこは戦える部類に入ると思う。

 想片(ハート・フラグメント)乙女(プリンセス)はゲーム時代から引き継いでいるのか。ABILITY――魔導技(アビリティ)は消滅。……ABILITYを購入できるページがあるから、ここで買い直すしかないのか。

 衣装チェンジは……ゲームからでは無理と。自分でなら脱げるけど、これ以外の服って言っても学ランしかないし、縮んだからブカブカで着れない。……胸が大きすぎて入らないってことはないけどね。ロリ体型だし。


 とりあえず、水と食料だな。……食べられるものがあるといいけど。後はお金か……日本円は使えないだろうし。

◆クリスタルドラゴン

 水晶の鱗に覆われた巨大な胴体。広げると二メートルはある巨大な翼。樹齢の長い木の幹のような太さのある手足。鋭く尖り、黒光りする鉤爪。青白い水晶のような角。獰猛に見開かれた金色の目と描写されるドラゴン。


-----------------------------------------------

NAME:クリスタルドラゴン

LEVEL:100

HP:9000/9000

MP:6000/6000

STR:1000

DEX:30000

INT:12

CON:7000

APP:-10

POW:7000

LUCK:1


SKILL

【爪理】LEVEL:10

→爪使いの真髄を極めるよ! 【爪術】の上位互換だよ!

【尾理】LEVEL:10

→尾使いの真髄を極めるよ! 【尾術】の上位互換だよ!

【翼理】LEVEL:10

→翼使いの真髄を極めるよ! 【翼術】の上位互換だよ!

【飛行】LEVEL:10

→飛行が上手くなるよ!

【不意打ち】LEVEL:10

→不意打ちが上手くなるよ!

【躱避】LEVEL:10

→攻撃を躱すのが上手くなるよ! 【回避】の上位互換だよ!

【噛み砕き】LEVEL:10

→噛み砕きが上手くなるよ! 【咬みつき】の上位互換だよ!

【頭突き】LEVEL:10

→頭突きが上手くなるよ!

【閃駆】LEVEL:10

→閃光の如き速度で走れるようになるよ! 【疾駆】の上位互換だよ!

【剛力】LEVEL:10

→剛力を得るよ! 【怪力】の上位互換だよ!

【金剛】LEVEL:99

→金剛の如き硬さまで硬化するよ! 【部分硬化】の上位互換だよ!

【全属性魔法】LEVEL:10

→全属性の魔法を使えるようになるよ!

【状態異常耐性】LEVEL:10

→状態異常に対する耐性を得るよ!

【気配察知】LEVEL:10

→気配察知が上手くなるよ!

【魔力察知】LEVEL:10

→魔力察知が上手くなるよ!

【熱源察知】LEVEL:10

→熱源察知が上手くなるよ!

【振動察知】LEVEL:10

→振動察知が上手くなるよ!

【駿身】LEVEL:10

→駿速の領域まで速度を上げるよ! 【瞬速】の上位互換だよ!

【掣肘】LEVEL:10

→掣肘が上手くなるよ! 【威圧】の上位互換だよ!

【覇潰】LEVEL:10

→覇潰が上手くなるよ! 【覇気】の上位互換だよ!

【プラズマブレス】LEVEL:10

→プラズマ化した息を吹くことができるようになるよ! 【火炎放射】の上位互換だよ!

【迅雷縮地】LEVEL:10

→迅雷の如き速度で相手と距離を詰めるよ! 【爆縮地】の上位互換だよ!

【重縮地】LEVEL:10

→【縮地】を連続で行えるよ!


ITEM

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