蜘蛛のような足を持ち主砲を含めいくつか装備を持っている兵器――機動要塞エレシュキガル。多分異世界ファンタジーに存在しちゃいけない奴だと思う。明らかにミリタリーな装備だし。
【ロゼッタ視点】
その事実を知った時、私の頭は真っ白になった。
こんなことになるのなら、私だけが破滅すれば良かったのに。
図書館でいくつかの歴史書を読んでいた私は、ある日、機動要塞エレシュキガルが二十五年周期で自由諸侯同盟ヴルヴォタットの首都ファルオンドのある地点を通過するということを発見した。
そして、その周期に当たるのが明日……。
私はこの証拠となる物品を持ってセリスティア学園長のものに向かう。
セリスティア学園長に相談したところで機動要塞エレシュキガルを止められるとは思えない。でも、何かを変えられる可能性がまだ残っているのなら、伝えるべきだと思う。
「…………なるほど、機動要塞エレシュキガルが。もしこの事実が本当ならば、早急に手を打たなければならない。だが、もしこの推測が間違っていたとしたら、誰かが責任を被らなければならないことになる」
「それなら、私が――」
「ロゼッタ嬢が被ってどうする? 生徒を守るために、学園長というものがいるのだ。とりあえず、私は教師陣を急ぎ招集して会議を開く。ロゼッタ嬢は、生徒会と学生連合の上層部にこのことを伝えてくれ。その際、他の生徒には箝口令を敷くこと……まあ、その意味はロゼッタ嬢もよく分かっていると思うが」
「パニックを避けるために、最低限の人員に情報を伝達するということですね。分かりました」
◆
学生連合の上層部に伝えた私は、生徒会室に向かった。
まだ、片鱗すら見えないのだから、「何を馬鹿なことを」と思うのは当然だし、実際に学生連合の上層部の方もそんな感じだった。
だけど、ことが起きてからでは何にもならない。セリスティア学園長には申し訳ないと思っているけど、もし私の読みが間違っていたのなら、私はその責任を取って死を選ぶ。
最初は破滅を回避したいからだった。そのために、打算的に動いていた。
だけど、今の私の気持ちは本物だ。ジルフォンド様、シャート、ヴァングレイ様、フィード様、ノエリア様、プリムラさん――みんなを絶対に失いたくはない。
「ということです。……私の読みが間違っていなければ、機動要塞エレシュキガルは首都ファルオンドを通過し破壊の限りを尽くします」
「……それは、本当なのですか」
やはり、みんなも信じられないという表情だ。本当は私だって信じたくない。こんなのは、ただの悪夢だって、そう思いたい。
「……ロゼッタ様、こちらにおられたのですね。機動要塞エレシュキガルが明日首都ファルオンドを通過するという話は本当ですか?」
どこからともなく草子君が現れた。気配は無かったけど、多分あの時唐突に現れたのと同じなのよね?
「はい……私が歴史書を読み間違えていなければ」
「なるほど……はあ、ようやくか。全く一ヶ月も待たせやがって」
えっ、一体どういうことなの! なんで、怯えないの。寧ろ、待ってたってどういうことよ!!
「あっ、誤解しないでください。別に首都ファルオンドに滅べと言っている訳ではありませんし、滅ばせません。あらゆる探知スキルを駆使してもあの要塞は何故か見つけられなかった。この国を出る前にあの要塞を探索しようと思っていたので、丁度良かったという話です。……まあ、有力ではあるけど、遺跡ジグラートの時みたいに過度な期待をするとアレだし、ほどほどでいいか」
草子君が元の世界に戻る目的のために、超古代文明に関わる遺跡を調査していることはなんとなく分かっていた。
その標的の一つに機動要塞エレシュキガルが入るのも、分かる。……分かるけど、まさか本気であの厄災製造機を倒そうだなんて考えるとは思わなかった。いくら強くても、あの機動要塞は誰にも止められない……そうじゃ無かったら既に誰かに止められている筈だから。
「ロゼッタ様、資料から侵入角とか予想できますか? それを元に機動要塞エレシュキガルの進路予想を立て、攻め入られる前に通せんぼしようと思います」
「分かりましたわ。……それから、草子君。私も機動要塞エレシュキガルを止めるために現地に赴いてもよろしいでしょうか? もし、これが私の――この世界のロゼッタの破滅の運命だとしたら、当事者の私が何もしない訳には参りませんから。勿論、微力にすらならないとは思いますが」
「……ロゼッタ様は、これがある種の世界線の収束であるとお考えなのですね。ロゼッタ様が破滅を回避しようとして、実際に回避できそうなところまで関係が作られてしまったから、運命が直接ロゼッタ様を殺そうと牙を剥いたと……うん、考え過ぎたと思う。ですがそう思うのでしたら、お止めする訳には参りませんね。先にお伝えしておきますが、失敗したらみんな死にます。機動要塞相手にどれくらい戦えるのか流石に想像がつかないので。ということで、悔いが残らないようにしてください」
多分、これが草子君の優しさなのよね。
伝えるなら今しかない。今までずっと恐ろしくて伝えられなかったけど。どんな風に思われるのか怖くて言い出せなかったけど、今この瞬間しかないのなら、言わなかったらきっと後悔すると思う。未練になると思う。
「皆様、よく聞いてください。私は――」
◆
異世界生活五十五日目 場所コンラッセン大平原
白崎達に機動要塞エレシュキガルを迎え撃ちに行くと言ったら、何故かついてくると言い出した。
全く物好きだな。まあ、機動要塞というからにはきっとカッコいいんだろうし、プラモデルでミニバージョンとか作ったらそこそこ金になりそうだけど。
機動要塞の予想進路を逆走すると、本当に機動要塞エレシュキガルがいた。蜘蛛のような足を持ち、主砲を含めいくつか装備を持っている兵器……多分、これ異世界ファンタジーに存在しちゃいけない奴だと思う。明らかにミリタリーな装備だし。
とりあえず止めようと思ったんだけど。見事に邪魔をされた。
濃紺の軍服を着た銀髪に眼帯の小柄な男? シング●ンなのだろうか?
まあ、いつも通り【看破】させていただきましょう。個人情報保護とか今更だよねー。
-----------------------------------------------
NAME:インフィニット=ショットシェル AGE:18歳
LEVEL:10000 NEXT:15000000EXP
HP:1000000/1000000
MP:1000000/1000000
STR:2500000
DEX:2400000
INT:2000
CON:2200000
APP:50
POW:2200000
LUCK:1600000
JOB:超帝国大将軍、職業軍人
TITLE:【超帝国の切り札】、【大将軍】、【水に愛される者】、【至高の剣域に至りし者】、【至高の狙撃を行う者】、【無数の加護を持つ者】、【ディストピアからの転生者】
SKILL
【片手剣理】LEVEL:MAX(限界突破)
→片手剣の真髄を極めるよ! 【片手剣】の上位互換だよ!
【唐竹】LEVEL:MAX(限界突破)
→唐竹が上手くなるよ! 上から下に斬るよ!
【逆風】LEVEL:MAX(限界突破)
→逆風が上手くなるよ! 下から上に斬るよ!
【袈裟斬り】LEVEL:MAX(限界突破)
→袈裟斬りが上手くなるよ! 相手の左肩から右脇腹を斬るよ!
【逆袈裟斬り】LEVEL:MAX(限界突破)
→逆袈裟斬りが上手くなるよ! 相手の右肩から左脇腹を斬るよ!
【左斬り上げ】LEVEL:MAX(限界突破)
→左斬り上げが上手くなるよ! 袈裟斬りの逆に斬り上げるよ!
【右斬り上げ】LEVEL:MAX(限界突破)
→右斬り上げが上手くなるよ! 逆袈裟斬りの逆に斬り上げるよ!
【居合い】LEVEL:MAX(限界突破)
→居合が上手くなるよ!
【飛斬撃】LEVEL:MAX(限界突破)
→斬撃を飛ばすのが上手くなるよ!
【斬痕】LEVEL:MAX(限界突破)
→空中に斬撃の跡を残すことができるよ!
【無拍子】LEVEL:MAX(限界突破)
→無拍子が上手くなるよ!
【無念無想】LEVEL:MAX(限界突破)
→雑念を生じる心を捨てて無我の境地に至るよ!
【兜割り】LEVEL:MAX(限界突破)
→兜割りが上手くなるよ!
【刺突】LEVEL:MAX(限界突破)
→刺突が上手くなるよ!
【狙撃】LEVEL:MAX(限界突破)
→狙撃が上手くなるよ!
【狙撃必中】LEVEL:MAX(限界突破)
→狙撃が必中するよ! 【照準】の上位互換だよ!
【発砲時反動消滅】LEVEL:MAX(限界突破)
→発砲した時に反動が消滅するよ!
【究極挙動】LEVEL:MAX(限界突破)
→エネルギーのロスを削りきった研ぎ澄まされた動きで無音神速の領域に至るよ! 初速終速の概念がなく動いた瞬間に終わったように見えるよ!
【全属性魔法】LEVEL:MAX(限界突破)
→全属性の魔法を使えるようになるよ!
【複数魔法同時発動】LEVEL:MAX(限界突破)
→複数の魔法を同時に発動できるよ!
【複合魔法】LEVEL:MAX(限界突破)
→複数の属性の魔法を融合できるよ!
【看破】LEVEL:MAX(限界突破)
→看破が上手くなるよ! 【鑑定】の上位互換だよ!
【クライヴァルト語】LEVEL:50
→クライヴァルト語を習得するよ!
【ミンティス語】LEVEL:50
→ミンティス語を習得するよ!
【マハーシュバラ語】LEVEL:MAX(限界突破)
→マハーシュバラ語を習得するよ!
【ジュドヴァ=ノーヴェ語】LEVEL:50
→ジュドヴァ=ノーヴェ語を習得するよ!
【エルフ語】LEVEL:50
→エルフ語を習得するよ!
【獣人第一共通語】LEVEL:50
→獣人第一共通語を習得するよ!
【掣肘】LEVEL:MAX(限界突破)
→掣肘が上手くなるよ! 【威圧】の上位互換だよ!
【覇潰】LEVEL:MAX(限界突破)
→覇潰が上手くなるよ! 【覇気】の上位互換だよ!
【殺気圏域】LEVEL:MAX(限界突破)
→殺気を放って一定の領域に足を踏み入れなくするよ! 踏み入れると傷つくよ! 【殺気】の上位互換だよ!
【気配察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→気配察知が上手くなるよ!
【魔力察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔力察知が上手くなるよ!
【熱源察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→熱源察知が上手くなるよ!
【振動察知】LEVEL:MAX(限界突破)
→振動察知が上手くなるよ!
【危機感知】LEVEL:MAX(限界突破)
→危機感知が上手くなるよ!
【全マップ探査】LEVEL:MAX(限界突破)
→今居るマップ情報を完璧な状態で得るよ! 【空間把握】の上位互換だよ!
【虚偽看破の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→嘘を見抜ける加護だよ!
【加護看破の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→相手の加護を知ることができる加護だよ!
【言霊の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→発声器官を持っていれば誰とでもお話しできる加護だよ!
【風除けの加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→風の抵抗を無効化できる加護だよ!
【快晴の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→快晴の時に強くなる加護だよ!
【曇天の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→曇っている時に強くなる加護だよ!
【雨天の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→雨が降っている時に強くなる加護だよ!
【早朝の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→朝の時に強くなる加護だよ!
【昼間の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→昼の時に強くなる加護だよ!
【黄昏の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→夕方の時に強くなる加護だよ!
【夜天の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→夜の時に強くなる加護だよ!
【未知攻撃回避の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→初見の攻撃を奇襲を含めて回避する加護だよ!
【既知攻撃回避の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→二度目以降の攻撃を奇襲を含めて回避する加護だよ!
【読心の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→相手の心の中を読むことができる加護だよ!
【時刻理解の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→現在の時間を知ることができる加護だよ!
【剣士の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→剣士としての圧倒的な才能を与える加護だよ!
【狙撃手の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→狙撃手としての圧倒的な才能を与える加護だよ!
【魔法使いの加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→魔法使いとしての圧倒的な才能を与える加護だよ!
【希求加護獲得の加護】LEVEL:MAX(限界突破)
→望んだ加護を望んだだけ獲得できる加護だよ!
【三体操作】LEVEL:MAX(限界突破)
→固体、液体、気体を自在に操れるよ!
ITEM
・〈装甲祥瑞・ジズ〉
→超帝国が開発した兵器だよ! 四つの特殊武装と祥瑞装を装備しているよ!
・前世感応板×10
→前世に愛用していた武器を顕現する板だよ! 超帝国の秘密兵器だよ!
・超帝国軍の軍服
→超帝国軍の軍服だよ!
・九魂の腕輪
→腕輪だよ! 九つ入れられるよ! 【即死無効・スキル】、【即死無効・魔法】、【因果無効】、【物理無効】、【属性魔法乱反射】、【状態異常乱反射】、【魔力回復】、【体力回復】、【電脳保存】が入っているよ!
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後100あります。
-----------------------------------------------
……あっ、これどう見てもあかん奴だ。異世界最強の帝国大将軍……なんでこんなところまで出張ってきているの!!
しかも、ステータスがね。見たところ、剣技は『比翼』のエーデル●イス、加護はライン●ルト・ヴァン・アス●レアって感じか?
いや、【狙撃】スキルも所有しているし、まだまだ強者要素を持っている可能性も……というか、前世感応板? どこの認識票ですか!!
「……これはこれは、超帝国の大将軍様。こんなところになんの御用で?」
「その黒髪と東洋人の顔……Reincarnaterではなく、Travellerだな。悪いことは言わん、回れ右をして今すぐこの場を去れ」
うぉ、怖え。【覇潰】と【掣肘】か。まあ、柳のように往なせるんだけど。
「俺の【覇潰】と【掣肘】を喰らってなお、表情一つ変えぬとは。後ろの小娘らと違って少しは見所がありそうだな。――なおさら、帰ってもらわなければならん。お前らのような者達が足を踏み入れるべき問題ではない。転生なり転移なりでこの世界に運良く行き着くことができたのなら、その日常の中に居ろ。Curiosity killed the cat――好奇心は破滅を招く。知らぬ方がいいということもあるのだ」
「残念ながら、ご忠告には従えません。俺は元の世界に帰るためなら、どんな危険だって犯す覚悟でいます。――例え、ヴァパリア黎明結社と対立することになろうとも」
「ふん、くだらんな。元の世界に帰るために命すら投げ出す覚悟を決めるのも、そんなお荷物にしかならない小娘共を連れているということも。確かにその小娘共は猛者になり得るかもしれない。だが、それは表側の世界でという制限付きだ。表側で最強にならなければ裏側では即死する。それこそ、【即死】スキルを使わなくてもな。――俺の邪魔をするというのなら、ヴァパリア黎明結社の関係者でなくともここで消す」
「……まあ、どうあがいても戦いを避けることはできませんよね。……かなり厄介そうですが、ここで倒させていただきますよ。表側の世界最強さん!!」
◆
【白崎華代視点】
少しでも草子君の力になれるなら、そう思って努力を続けてきたつもりだけど、その考え自体甘かったのかもしれない。
草子君とインフィニットさんの戦いは、私達の届く領域の遥か先だった。
ユェンなんかに絶望していたら、あの戦いに参加することなんてできない。
もしかしたら、どんなに強くなってもあの戦いに参加する資格はないのかもしれない。
たった一歩、足を踏み出そうとしただけで頬が切れた。
切られた訳じゃない。インフィニットさんの殺気に触れた――ただそれだけで傷つけられた。
本当に、私達と草子君達の間には隔絶した差がある。
旅を続けると、次から次へと真実を突きつけられる。
私達が、草子君の足手纏いってことを――。
「……一体どうなっているのよ! 私達の強さは一体なんだっていうのよ。チートってなんなのよ! そんなの、あの二人の前では無意味なものじゃない」
あの部屋で選んだチートスキル――【完全掌握】でも、あの二人を掌握し切ることはできない。
柴田さん達は絶望している。私だって絶望している。
分かっていた筈なのに……この旅はそういうものだって何度だって突きつけられた筈なのに。
ううん、絶望なんてしてられない。絶望していたら、また草子君と差が開いてしまう。ただでさえ大き過ぎる隔たりがあるのに、これ以上開いたら、私に草子君の隣にいる権利が無くなってしまう。……そんなの、絶対に嫌!!
【完全掌握】を発動する。掌握なんて不可能なことは理解している。でも、掌握する。何が何でも掌握する。掌握できなくなって掌握する。
たった一つでもいい、それだけで私は少し飛躍できる。それを続ければ、いつか大きな強さを手にすることができる。
最初から全部掌握しようとするからいけないんだ。部分的にも掌握できれば、それで一歩前進できる。