【高津寧々視点】私は見た目だけ黒髪の大和撫子なんじゃなくて、代々続く茶華道の名家出身の本物の大和撫子なんだよ!
異世界生活十六日目 場所コンラッセン大平原、古びた洋館
「ギャル風メイクのビッチの次は黒髪の見た目だけは大和撫子なビッチ? うん、絶対にお淑やかじゃないね」
私の番になって早々、草子君から罵られた。
信じられていないかもしれないけど、私の実家は代々続く茶華道の名家で、丁寧な所作も子供の頃から教え込まれているんだから!!
「私は歴とした大和撫子よ! 茶道も華道も書道も日本舞踊も一通り習ってきたわ」
「まさかの名家のお嬢様!? ……まあ、その技術で異世界を生き抜けるかっていうのは甚だ疑問だけど。で? ……えっと、高津寧々さんだっけ? 見た目からも明らかなように巫女みたいだけど……巫女って異世界だとどんな職業なのかあんまり検討がつかないんだよね? 多分回復職? ダメージ遮断とかするの? 聖女との違いは【障壁魔法】と【神楽】かな? ……どっちも知らないんだけど」
いきなり雲行きが怪しくなってきた。
和風な感じで親しみが湧いたから巫女を選んだんだけど、もしかしたら失敗だったかもしれない。
よくよく考えたら、巫女が異世界でどう戦うのか想像もつかない。今までは鬼切安綱を型も何も関係なしにひたすら振り続けできたけど……。
「一応到達目標的なものを聞いてからどんなことを教えるのかを組み立てているんだけど、具体的にどうなりたいとかある? あっ、【障壁魔法】と【神楽】を教えるのは無理だよ。分からないから」
とりあえず、「ステータス!」と呟いてステータスを表示してみる。
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NAME:高津寧々 AGE:16歳
LEVEL:12 NEXT:600EXP
HP:280/280
MP:400/400
STR:50
DEX:50
INT:10
CON:50
APP:45
POW:50
LUCK:70
JOB:巫女、魔法師
TITLE:【祈りて仲間を援護する者】
SKILL
【刀術】LEVEL:5
【弓術】LEVEL:1
【火魔法】LEVEL:2
【水魔法】LEVEL:2
【氷魔法】LEVEL:2
【風魔法】LEVEL:2
【雷魔法】LEVEL:2
【生活魔法】LEVEL:5
【回復魔法】LEVEL:1
【障壁魔法】 LEVEL:1
【祈祷】LEVEL:1
【神楽】LEVEL:1
【マルドゥーク語】LEVEL:1
【クライヴァルト語】LEVEL:2
【マハーシュバラ語】LEVEL:1
【エルフ語】LEVEL:2
ITEM
・鬼切安綱
・梓弓
・破魔矢
・巫女装束
・学生服
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後510あります。
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まず一つ目は矢の調達。破魔矢は一本しかないから今まで使えなかった。
矢が使えるようになれば、多少なりは戦えるようになると思う。弓矢の扱いには自信があるから。
次に【回復魔法】と【祈祷】――【回復魔法】は草子君も使えると思うし、【祈祷】については説明できないと言わなかったから多分教えられるんだと思う。
後は草子君に任せるしかないかな。みんなの役に立てるようになりたいけど、具体的にどんなスキルを得ればいいのか分からないから。
「決まったか?」
「はい。まずは破魔矢以外の矢がないから何本か調達したい。【回復魔法】と【祈祷】について教えてもらい。後は草子君にお任せかな? みんなの役に立てるようになりたいけど、どうすればいいか分からないから」
「オーケー。……ところで一つ質問なんだけど、巫女装束の緋袴の膨らみには何か入っているの?」
…………え?
調べてみると確かに膨らんでいた。なんで気づかなかったんだろう?
なんだろう? 四つ折りにした紙だ……なんて書いてあるのかさっぱり分からない。
「これは……細筆だな。ソ●プ刀に刻まれて奴みたいな? 日本語ではあるみたいだけど……細か過ぎて読めねえ。【看破】使ったらどうだ!」
草子君は私から受け取った紙を数秒凝視した後、紙から視線を戻した。……一体何って書いてあったんだろう?
「えっと、読めばいい?」
「お願いします」
「……巫女専用魔法【障壁魔法】とは障壁を張る魔法である。一定以上のダメージを受けると解除されるので注意。MPの量とスキルレベルにより強度が変化する。基本は〝守護する盾よ〟――〝障壁〟。【火魔法】との複合である〝清浄なる聖火を宿した守護する盾よ〟――〝忌火の障壁〟。浄化効果を持つ上級魔法〝邪なるモノから護れ〟――〝禊祓の障壁〟。この三つが存在する。巫女専用スキル【神楽】とは能力上昇の効果を持つスキルである。攻撃力の上昇効果がある〝攻撃鼓舞の舞〟、防御力の上昇効果がある〝防御鼓舞の舞〟、魔法攻撃力の上昇効果がある〝魔法攻撃鼓舞の舞〟、魔法防御力の上昇効果がある〝魔法防御鼓舞の舞〟。神楽舞が見える範囲内の味方に効果を発揮する。ただし効果が発揮されるのは神楽舞を舞っている時のみ……だそうだ。動きも書いてあるが、ここで読んでも覚えられないだろうから後で記述を写して渡すよ。……【障壁魔法】は見所がありそうだけど、〝邪なるモノから護れ〟――〝禊祓の障壁〟……あれ、普通にできたんですけど!? 巫女専用じゃなかったの!?」
よく分からないけどできちゃったみたいだ。しかも、よりにもよって一番難易度の高い【障壁魔法】。
草子君って一体何者なんだろう? 職業の縛りも全く関係なしにスキルを会得しているらしいし、白崎さん達の話によれば【時空魔法】や【天体魔法】などのこちらの異世界では御伽噺にしか登場しない魔法を息を吸うように放つらしい。
特にアルルの町近くで起きた〝星降り〟はアルルの町の住民のほとんどを恐怖のどん底に突き落とし、冒険者ギルドが草子君を災害指定するほどの衝撃を与えたらしい……うん、なんでそんな人に喧嘩を売っていたんだろう? 殺されていても文句言えなかったよね?
「えっと、どこまでいったっけ? 教えて欲しいって言ったことは何も教えてないか。脱線してごめんね。収穫はあったけど。……まずは矢か。オレイミスリルで作ればいいとして、毒でも塗る? 【猛毒生成】とか【麻痺毒】とか【眠毒】とかあるよ!」
……なんで毒を生成できるんだろう? 草子君って本当に人間なのか疑いたくなるよ! それって魔獣が持っているスキルとかじゃないの!?
「……お任せで」
お任せしたらオレイミスリルの矢、オレイミスリルの矢(猛毒塗り)、オレイミスリルの矢(麻痺毒塗り)、オレイミスリルの矢(眠毒塗り)をそれぞれ三十本ずつ作ってくれた。
……白崎さん達から事前に武器を作ってくれることを聞いてたとはいえ、改めて間近で見せられると本当に圧巻ね。
私達には分不相応な最強クラスの装備。……勿論、神話に出てくるような武器に比べたら劣るのかもしれないけど、間違いなくこの世界で制作できる最高ランクの武器だ。
「とりあえず、これで矢の問題は解決だな。それじゃあカリキュラムだけど……まずは刀剣の扱いに関するもの。剣に関するスキルはほとんどないみたいだからね。弓矢に関するスキルは自力で会得できると思うから、後は【回復魔法】と【祈祷】、【結界魔法】の三つかな? 巫女だから【結界魔法】も使えるだろうし」
まずは剣術から。五行の構えと呼ばれる五つの構えを順に見せてもらい、真似をしていく。
正眼の構えとも呼ばれるらしい水の構え。
最も攻撃的な構えだと言われるらしい火の構え。
機敏に動けない為に攻撃には向かないと言われるらしい土の構え。
八双の構えとも呼ばれるらしい木の構え。
刀身の長さを隠すことができる金の構えをそれぞれ試したら、いよいよ実際に太刀筋を教えてもらう。
相手は何故かカカシ……しかも増殖した。
うん、全く意味が分からないけど気にしない方が良さそうな雰囲気だから何も言わなかったよ。
上から下に斬る【唐竹】、相手の左肩から右脇腹を斬る【袈裟斬り】、相手の右肩から左脇腹を斬る【逆袈裟斬り】、袈裟斬りの逆に斬り上げる【左斬り上げ】、逆袈裟斬りの逆に斬り上げる【右斬り上げ】の動きを一つずつ丁寧に確認していく。
「右に薙ぐ胴と左に薙ぐ逆胴は【薙ぎ払い】とか【払い】とかに分類されるらしい。……そういえば、下から上へ斬り上げ【逆風】の存在をすっかり忘れてたよ。……ゴブエン師匠も使ってなかったし、仕方ないよね! 朝倉さん、柴田さん、岸田さん、八房さんには後で教えるということで」
すっかり忘れていたみたいだ……でも、問題なかったんだね。無くても。
「次は【回復魔法】だな。……最初から心を折るようで悪いが、【回復魔法】は単体では使用できない。特に相性がいいのは【光属性】系……というか、【光属性】以外に回復魔法はほとんど存在しない」
……早速無理宣告された。えっ? 【回復魔法】使えないの?
「【光魔法】や【闇魔法】といった魔法は魔術師では獲得できない。まあ、生まれつき持っているとかそういう例外は除くけど。大体は大魔導師とか枢機卿とかの職業で会得できるんじゃないかな? ちなみに、勇者と聖女は弟子入りできないので、そこんとこよろしく」
……うん、なんで嬉しそうなんだろう? 他人の不幸は蜜の味なのかな? ……草子君って結構捻くれてるけど、他人の不幸を笑うことだけはしないと思っていたんだけど。
「で、このクソ仕様な異世界カオスの魔法にも一応逃げ道を用意してくれているみたいで、【火魔法】と【水魔法】にも申し訳程度に回復魔法があるんだよね。ただ、【火魔法】の〝不死鳥の涙〟は中級魔法、〝不死鳥の血〟に至っては上級魔法で今すぐにとはいかない。使えるとすれば初級魔法の〝水輪の治癒〟だけということになるけど、それでもオーケー?」
……なんだ。一応あるんだ。ただ数が少ないってだけで。
私に使えるとしたら〝水輪の治癒〟だけ――なら、その魔法を教えてもらうしかない。
「〝水輪の治癒〟を教えて下さい」
「オーケー……と、その前に魔法を発動する時に杖があった方が若干だけど威力が上がるらしいんだよね。この際だから作ろっか」
オレイミスリルの矢の時のようにオリハルコンとミスリルを生成して【錬成】で融合してから整形する。
なんて説明すればいいんだろう? 鈴が沢山ついた錫杖? 振るたびにしゃんしゃんと小気味良い音が鳴る。
「オレイミスリルの鈴錫杖とでも名づけよう。はい、どうぞ」
「ありがとう」
「それじゃあ、魔法を試してもらおっか。呪文は〝水の輪よ! 汝の傷を癒せ〟、名は〝水輪の治癒〟」
「〝水の輪よ! 汝の傷を癒せ〟――〝水輪の治癒〟」
草子君に向けて魔法を唱えたら、草子君の周りを水の輪が包み込んだ。
傷ついている人にやれば分かりやすいんだと思うけど、草子君は異世界で再会? (地球では同じクラスなのに面識がなかったけど)した時から無傷だからあんまり成功した実感がないな。
というか普通、武装した奴隷商人と戦ったら多少なり傷を負うよね!? ……本当に無職なの? 実は勇者とか魔王とかじゃないの? 隠しているとかじゃなくて?
「次は【祈祷】か。これは簡単、両膝をついて目を閉じ、両手を組む。このスキルの利点は周囲の仲間のHPとMPを回復させることができること。【体力回復】と【魔力回復】がなくても微量ながら回復はできるんだけど、それでも気休め程度にしかならない。【祈祷】を使えばそのレベルを【体力回復】と【魔力回復】並みにできる。……ただ、ずっと祈りのポーズをとっていないと回復量が維持できないから、一人戦線を離脱すると考えるとあんまり使い勝手がいいとは思えないな」
結構デメリットが大きいスキルみたいだ。だけど使い方によっては戦況を変えることもできる。
まあ、草子君なら薬のがぶ飲みを推奨すると思うけど……というか、それなら回復職も必要ないよね。
「最後は【結界魔法】。四つあって、初級魔法は〝防禦の結界〟と〝守護の結界〟、中級魔法は〝鉄壁の結界〟、上級魔法は〝護法の結界〟。後の魔法になるほど消費MPが多い代わりに耐久性と範囲が増していく。今使えるのは〝防禦の結界〟だけだな。呪文は〝一線を引き、結界を張れ〟」
「〝一線を引き、結界を張れ〟――〝防禦の結界〟」
よし、成功。私の周りに小さな結界を張ることができた。
「これで教えることは大体教えた……よな? とりあえず、ステータスを確認してみたらどうだ?」
草子君に言われた通り、ステータスを表示する。実は、どれくらい変わったのか気になっているんだよね。
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NAME:高津寧々 AGE:16歳
LEVEL:12 NEXT:600EXP
HP:280/280
MP:400/400
STR:50
DEX:50
INT:10
CON:50
APP:45
POW:50
LUCK:70
JOB:巫女
TITLE:【祈りて仲間を援護する者】
SKILL
【刀術】LEVEL:6
【唐竹】LEVEL:1
【逆風】LEVEL:1
【袈裟斬り】LEVEL:1
【逆袈裟斬り】LEVEL:1
【左斬り上げ】LEVEL:1
【右斬り上げ】LEVEL:1
【刺突】LEVEL:1
【薙ぎ払い】LEVEL:1
【弓術】LEVEL:1
【火魔法】LEVEL:2
【水魔法】LEVEL:2
【氷魔法】LEVEL:2
【風魔法】LEVEL:2
【雷魔法】LEVEL:2
【生活魔法】LEVEL:5
【回復魔法】LEVEL:2
【障壁魔法】 LEVEL:2
【結界魔法】LEVEL:2
【祈祷】LEVEL:2
【神楽】LEVEL:1
【マルドゥーク語】LEVEL:1
【クライヴァルト語】LEVEL:2
【マハーシュバラ語】LEVEL:1
【エルフ語】LEVEL:2
ITEM
・鬼切安綱
・オレイミスリルの鈴錫杖
・梓弓
・破魔矢
・オレイミスリルの矢×30
・オレイミスリルの矢(猛毒塗り) ×30
・オレイミスリルの矢(麻痺毒塗り) ×30
・オレイミスリルの矢(眠毒塗り)×30
・巫女装束
・学生服
NOTICE
・通知一件
→未使用のポイントが後510あります。
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かなりスキルも増えて装備も充実した。
これで柴田さん達にも迷惑を掛けずに済むね。
ここから先は自分で技を磨くしかない。訓練あるのみだよ!