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なんだよ!2(仮)  作者: 剛田豪
第三章 魔王城編
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極悶島上陸!

「よいしょ」「よいしょ」

「よいしょ」「よいしょ」

 ルーとラー、二人の妖精の掛け声とともに、俺は空を飛んでいる。

 アルカンタ湾沖合の海上、高度千メートル・・・

 俺は空を飛んでいる。

 ブランコに乗って・・・

 って、なぜ?ブランコ!


 二本の超長いロープに付けられた小さな板。

 ロープを持っているのはルーとラー。

「は、は、離さないでね・・・ぜ、ぜ、ぜ、絶対離しちゃダメだかんね・・・」

「大丈夫よ。もし、落ちても・・・」

「下は海・・・」

「だっちゅーの!」

 いやいやいや!この高さから落ちたら、下が海だろうがマシュマロだろうが確実に死ぬわ!


「な、ななな、なぁ、ももも、もっと低く飛んでもいいんじゃね?」

「これより低く飛ぶと・・・」

「伝説の白鯨クーちゃんに呑み込まれちゃいます・・・」

「だっちゅーの!」

 どのみち海に落ちたらアウトじゃねーか!

 てか、『だっちゅーの!』が繋がってませんけど?

 ロープはちゃんと繋がってますよね?

 なんかこれ・・・

 往年の名作アニメのオープニングみたいじゃね?

 大丈夫なんだよな?教えて!おじいさん!


「もう、ビビりすぎですよ、【アルプスの変態ヤンキー】ケントさん」

 ルールルールルルル♪と鼻歌を歌いながら

 なんちゃって天使がブランコの横で白い翼をはためかす。

 偽海賊少年コスから、黒の魔女っ娘フォームに戻っているカレン。

 ローブを脱いだエロい背中から、天使の翼が生えている。

 飛べるんだったら、お前が連れてってくれればいいじゃん!

 こんな恐ろしいブランコに乗る必要無かったじゃん!


「あ~、無理ですよ、ケントさん。

 この『天使の羽』は【不浄なモノ】に触れることができませんから」

 誰が不浄だ!俺は心も体も清い!

「やだな~、世間じゃ童貞を清いだなんて思ってませんよ。

 ひょっとして、『三十路まで童貞守ったら魔法使いになれる』

 とか信じちゃってます?あれ、デマですからね、ケントさん」

 知っとるわ!

「まぁ、ケントさんなら『魔法使い』どころか『大魔導士』にでもなれそうですけど」


 くそぉ~自分一人だけ安全に飛びやがって・・・

「でも、実はこれ反則なんですよ」

 反則?

「ええ、天界と地上の往来の時以外は、天使の羽を使っちゃいけないんです。

 天界の鉄の掟。バレたら上司に滅茶苦茶怒られますよ~始末書もんですよ」

 上司って誰だよ!後で、そいつにチクってやる!

「ケントさんが『一人でイクのは嫌だ!』って駄々こねるから

 仕方なく付き合ってあげてるんですからね!

 いつも『イク』時はボッチのくせに、どんだけ見せたがり屋さんなんですか?」


 俺一人で魔王城になんか乗り込めるか!

 戦った事も無いのに・・・

「大丈夫ですよ、ケントさんは、変態で童貞の『チート持ち』ですから」

 だから、チートってなんだよ!

「あ、ケントさんのチートって、何なんですかね?」

 お前も知らねーのかよ!

「そういえば、『パート1』から、その伏線回収してませんね」

 すぐに回収して!

「魔王城に『行けばわかるさ』ですよ」

 いい加減だな!バカヤローっ!


 そもそも、なんで空飛んでんだよ!

 『転移魔法』じゃなかったのかよ!

 名前を『ルー』と『ラー』にする必要ないじゃん!

「いいえ、我々は魔法でヒッグス場を『転移』した・・・」

 は、はぁ?・・・

「WボソンとZボソンに干渉し、量子真空の相転移による角運動量を変化させた。つまりは、物質粒子のスピン変更による質量変異を行ったのだ・・・」

 いや、あの・・・

 ルーちゃんもラーちゃんも口調変わってねぇ?

 妖精さんですよね?

「・・・だっちゅーの!」

 語尾は一緒かい!


 全く説明になってない・・・

 ヒッグスってなんだよ!

 スピンってなに?

「もう、これだからヤンキー校出身者は・・・」

 なんだよ!カレン!今の説明で解るのかよ?

「ヒッグス粒子なんて小学校低学年の理科で教わる項目ですよ」

 そうなの?

 Wなんちゃらとか、Zほにゃららとかも?

「ええ、いつもWXYって書いて、『女体』とか言って喜んでるケントさんにも解り易く言うと・・・」

 うん・・・

「インフレーションによる対称性の破れで生じた電弱力の崩壊を、魔法で疑似的に遡行させたという事です」

 悪いが、日本語で説明してくれる?

 まったくわからん・・・


「ねぇ、ラー」

「なぁに?ルー」

「勇者ってバカなの?」

「うん、変態なだけじゃなく、バカかも・・・」

 聞こえてるぞ!でも、カワイイから許す!


「よいしょ」「よいしょ」

「よいしょ」「よいしょ」

 何事も無かったように、また妖精さんたちは俺をブランコに乗せて飛んでいる。

「よいしょ」「よいしょ」

「よいしょ、よいし・・・」

「ょ」

 だから、そんなとこでセリフ分けるな!


「あらっ?ルー・・・」

「うん・・・まずいわね、ラー」

 ん?なんだ?

「どうしたんですか?妖精さんたち?

 ケントさんがバカすぎて、運ぶのイヤになっちゃいました?」

 おい!

「いえ、魔王城に近付いたので・・・」

「魔王の魔力で、私たちの魔法が消えそう・・・」

「だっちゅーの!」

 ええ?魔法消えたらどうなんの?

「そんな事もわかんないんですか?ケントさん」

 だって、さっきの説明わかんないもん!

「ヒッグス場が復活して・・・」

 だから、ヒッグスって誰?

ゼロだったケントさんの体重が元に戻って・・・」

 あ、そういや体が、なんか重い・・・

「非力な妖精さんたちでは、ロープを持てません」

 えっ・・・

 あああああっ!

 落ちてる!俺!


「勇者さん」

「勇者さん」

 ええ?ルーちゃんもラーちゃんも、なんで俺の目の前にいるの?

 ロープ引っ張ろうよ!

 もう少し頑張ろうよ!

「私たちが、あなたをお連れできるのは・・・」

「ここまで・・・」

 どうせ最後も語尾は『だっちゅーの!』だろ!

 チュッ!

 チュッ!

「えっ!」

 ルーとラー、二人の妖精が俺の頬にキスをした。


「ご武運を・・・」

「祈っております」

 ブランコに乗ったまま落ちて行く俺、手を振り見送る妖精たち・・・

 その横で、一緒に手を振るカレン・・・

「いってらっさ~い!ケントさん!」

 いってらっさ~い!じゃねーよ!

 助けろよ!落ちてるんですけど!


「はっ!気をつけて!妖精さんたち!パンツ覗かれますよ!」

 こんな時に覗くか!

 スカートを押さえるカレンと、同じように股間を押さえる妖精二人。

 その姿がどんどん小さく遠ざかる・・・

 妖精さんたち、スカート履いてないよね・・・・


「さすがは、伝説の・・・」

「変態勇者・・・」

「だっちゅーの!」

 こら!カレン!一緒にポーズ取ってないで助けろ!助けてください!


 爆音と衝撃を伴い巨大クレーターが島の形を変えた・・・

 勇者一名、極悶島上陸。

 だが、生死は不明・・・




【次話予告】

 ありがとう!ケントさん!

 あなたの死はムダだったけど、すぐに忘れてカレンは前へ進みます。

 次回より、美少女魔女っ娘カレン様の華麗な冒険がスタートです!

 

次回「天使と悪魔」


 いやいやいや、俺は死んでねーぞ!


 あれっ?ケントさん・・・

 今度の職業ジョブは、ゾンビですか?アンデッドですか?



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ここが原点!
【PART1】


異世界転生ってなんだよ!
~ゲームやらないアニメ見ないラノベ読まない男子高校生って変ですか?

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ヨロシクお願い致します。

part1 第21部
『明るい家族計画』
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