王都崩壊
「おお、これは勇者殿、呼び出してすまんのぉ」
俺とカレンは、王に謁見していた。
「カレンちゃまも、相変わらず美しいのぉ、でへへ」
でへへじゃねー!このスケベ王!
ちゃまって、なんだよ!ちゃまって!
「実はな、消えていた魔王城が、湾の沖合に現れたそうなのじゃ」
「ああ、その事なら聞きました。王都が大騒ぎになってるみたいで」
「そうか、やはり都は大騒ぎか・・・」
ん?なんだ?情報がスケベ王の耳に届いてない?
ガセネタ・ジェームスは、なにやってんだ?
「でな、勇者殿には、選抜軍を率いて魔王城に行って貰おうと・・・」
仕方ねーな、まぁ、そうなるだろうな。
ま、優秀な選抜軍がいれば、そんなに危険じゃあ・・・
「思ったのじゃが・・・軍を編成できんのじゃ」
なにそれ?戦闘未経験者の俺に、なんのサポートも無し?
バイト初日に、いきなりクレーム処理させるブラック企業かよ!
「王様、軍を編成できないとは、どのような事情なのでしょうか?」
「うむ、カレンちゃま、でへへ、遠慮はいらん、暑かったらローブ脱いでもいいよ!」
こら!そんな話じゃねーだろ!
さっきの深刻そうな顔はどこいった!
「なにやら、新しい魔王が超絶カワイイらしくての、彼奴を倒せば、えっちぃことし放題らしくての・・・」
「それは、前から言われてた事じゃないんすか?」
「うむ、そうなんじゃが、そんな噂だけでも騎士や冒険者の男どもが色めき立っておるというのに・・・」
全く、どんな世界なんだか・・・
「此度は、『魔王を倒せば、聖女でも女騎士でもヤリタイ放題好きにできる』などという噂が立ってな、男共が目の色を変えて我先にと魔王城へ向かってしまってのぉ・・・」
そ、その噂は・・・俺のせいか?
「もう、軍の統制もあった物じゃない、王都崩壊の危機なのじゃ」
「あらら、ケントさん、あなたが変態過ぎて、王都崩壊ですってよ・・・」
「いやいやいや、俺のせいじゃねーし!」
「ん?なんじゃ?勇者殿が何かしたのか?」
「いや、別に、俺はなんにも・・・」
諜報員ジェームスがいないおかげで、スケベ王の耳に変なガセネタが届いてないんだから、余計なこと言うなカレン!
「実はですね、王様」
だー!カレン!だから、余計なことを言うなって!
「なんじゃ?カレンちゃま、苦しゅうない、近う寄れ、近う近う」
クソ、このスケベジジイ!鼻の下伸ばしやがって・・・
「ふむふむ・・・ほうほうほう・・・」
カレンに耳打ちされて、大喜びしながら、しっかり魔女っ娘の胸の谷間をガン見するスケベ王。
「ななな、なんじゃと!誠か?勇者殿!」
おい、カレン、この爺さんになんて伝えた?
「女騎士の胸を揉みまくっただけじゃ満足できず、シスター・ジルの口に押し込んだとは!」
だから・・・事故なんだって・・・
「しかも、カイコは歓喜の声を上げ悶えまくって、シスターに至っては失神させたじゃと!」
いえ、カイコさんは肩こりのツボが効いただけで・・・
シスターは、懺悔室に引き籠ってしまったんです・・・
「そ、それでも物足りず、カレンちゃまにエロいことして、またカエルになったとな!おぬし、どんだけ性欲強いんじゃ?いや、どんだけ怖いもの知らずなんじゃ!」
話の順序が逆になってますけど!
カレン!話は正確に伝えろよ!
「王様!失礼致します!」
衛兵が王の間に血相を変えて入って来た。
「何事じゃ!今、ひそひそプレイ中じゃぞ!」
なに?そのプレイ?
「申し訳ありません、火急の件で諜報員がご報告を!」
「諜報員?何奴じゃ?苦しゅうない、申せ」
そう言いながら、カレンの体を舐め回すようにガン見するスケベ王。
「はっ!0073、ジェームス殿でございます!」
「何、ジェームスか・・・仕方ない、通すが良い」
「はっ!」
衛兵が下がると、別の衛兵と共にジェームスが現れた。
「!?」
「ジェームス!!」
衛兵の肩を借りながら、かろうじて立っているジェームスの顔は血だらけだった。
「セバスチャンさん!どうしたんですか!」
執事の名を呼んだのはカレン・・・
この期に及んで、まだ変装に気付いていない・・・
そんな事はともかく
「どうした!傷だらけじゃないか!何があったんだ!ジェームス!」
「おお、これは勇者殿・・・私の事より、大変なんです、リリス様が・・・」
リリスちゃんがどうした?
「リリス様が、連れ去られました・・・」
「なんじゃとぉ!」
すごい形相でスケベ王が玉座から転げ落ちるように立ち上がった。
ん?確かに事件だが、なんでアンタがそんなに驚いてんだ?
「あの・・・ケントさん」
「なんだ?カレン」
「さっきから、セバスチャンさんの事を『ジェームス』って呼んでますけど・・・」
だから、いい加減気づけよ!この安い変装に!
「誰がリリスを連れ去ったんじゃ!リリスがいなければあの計画が!」
あの計画ってなに?
てか、なんで王様がそんなにオロオロしてるの?
「ケントさん、ケントさん、執事のセバスチャンさんですよね」
「ぬぬぬ!リリスは何処じゃ!すぐに連れ戻すんじゃ!」
ああ、話がまとまんねぇ!進まねぇ!
「二人とも黙って、コイツの話を・・・」
「セバスチャンさん?ジェームス?」
「おおお!リリス!」
・・・ダメだこりゃ。
ページ数使いすぎ・・・悪いが、報告は次回な、ジェームス。
次話予告
始まりがあれば終わりがある
全てのものに終わりがある
終焉の開始
終わりにも始まりがあるのだ
次回「カンケツ」
ただし、下ネタには終わりがない。




