むしろマーイ・・・
真っ暗だった。
暗闇の中を漂う俺・・・
なんだこれ?
死んだのか?俺・・・
ん?誰だ?
誰かが俺の手を握っている・・・
なんだろう・・・ほのかに甘い香りが・・・
あ・・・俺、目を醒ます・・・
「ああ、良かった。お気づきになりましたね。勇者様」
ベッドの上で目を開けると、シスター・ジルが微笑んでいた。
「あの・・・あなたは?・・・」
はぁ?何を言っている?俺・・・目の前にいるのはシスター・ジルじゃないか!
「わたくしの名はジル。このサンタマエリア大聖堂の修道女です」
「あ、どうも、はじめまして・・・」
あれ?なんだこれ?俺の意思に反して勝手に受け答えしている・・・
なんだよ!これ?
「もう、忘れたのか?ほんの数か月前の出来事を・・・」
こ、この声は、女神さまっ!
どこにいるんですか?お姿を!あの美しい裸体をお見せください!
「姿を見せるのは無理じゃな、御主に見る事が出来るのは、過去の御主が見ている世界だけじゃからの」
あれ?しょぼくれジジイ神の声に変わった・・・
そんな説明じみたセリフはいらないんで、女神さまのお姿を!
「君の意識は、過去の君の深層心理として存在しているんだよ。せっかく僕が作った『認識世界』を壊しちゃったからね」
今度は少年神の声だ・・・
だから、男の声はもういいので、女神さまのお姿を!
「ええ、リリスは再び幼女の姿に戻りました。彼女自身がそう望んでいなければ、『封印』は成功しなかったでしょう」
画面というか俺の視界の中では、シスター・ジルが事の顛末を語ってくれていた。
悪魔リリスが封印された事。
白と黒の騎士ことカイコさんとアベオが教会の使者であった事。
冒険者行方不明事件の犯人が、魔導士のスドさんとエムプさんたち三姉妹だった事。
ああ、色々と思い出した・・・
確か、この後、カレンが部屋に入ってきて・・・
ちょっと待て、俺はこれからずっとこんな感じで過去をリプレイする事になるのか?
「大丈夫よ。そなたの意識は、いずれ実体と融合されるわ」
ああ、女神さまっ!ひと目お姿を!
え?実体と?ゆうごう?
「今までの記憶は、深層心理にわずかに残るだけじゃ、たまに、妙な既視感に襲われるかもしれんがの」
なんだよ!それ!結局、また、魔王城のグダグダを繰り返すってことかよ・・・
てか、爺さんはいいから、女神さまのお姿を見せてください!
「大変です!シスター・ジル!」
血相を変えたカレンが部屋に飛び込んで来た。
「どうしたというのです?カレンさん!そのような格好で・・・」
カレンは、裸にバスタオルを一枚巻いただけの姿だった。
「司祭さまが!マルコさまが!」
「司祭様がどうされたと?」
カレンに歩み寄ろうとするシスターだったが、俺に握り返されたままの手がそれを阻んだ。
「あ、あの、勇者様、そろそろお手を離していただけますか?」
「あ、スミマセン・・・つい・・・」
そう言って、手を放そうとする過去の俺に、深層心理の俺が叫んだ。
離すな!
「あれ?おかしいなぁ、手が・・・」
離すな!
「あの、勇者様・・・」
離すな!
「スミマセン・・・なんだろ・・・手が離れない・・・」
離すな!
「あれ?ケントさん!目覚めたと思ったら、もうセクハラしてるんですか?しかも、聖女という聖職者に!」
「ち、違うんだ!カレン!ホントに手が離れないんだ!」
離すな!
「この非常時に変態もほどほどにしてくださいよ!ケントさん!」
「非常時って、なんだよ?」
離すな!
「司祭さまが、カエルになっちゃったんですよ!」
カレンがそう叫んだ時、ヤツの豊満な胸の谷間から一匹のカエルが顔を出した。
と、同時に、カレンが纏っていたバスタオルが、はらりと落ちた。
「いや~ん!」
慌てて前を隠し、しゃがみ込むカレン。
過去というか、以前この場面では、咄嗟にシスターが俺の目を手で塞いだのだ。
シスターの手を握りつつ、カレンの裸を見る。まさに一石二鳥だ。
「勇者様!見てはいけません!」
シスター・ジルが俺の視線を遮るべく、俺の頭を抱き締めた。
シスターの胸に顔を埋める俺・・・
おおっ!なんというご褒美!なんという感触!二鳥どころか三鳥?いや、超気持ちイー!
でも、ちょっと魔女っ娘の裸も見たいような・・・
って、あれ?顔が動かない・・・
シスター・・・意外と力が強い・・・い、息が・・・できない・・・
く、首の辺りも変に締め付けられて・・・あ・・・やば・・・
意識が・・・飛んじゃう・・・
あ・・・堕ちる・・・
俺は、また、気を失った・・・
次話予告
人はどんな最期を迎えれば幸せなのだろう?
生き様とは死に方と心得たり。
やっぱり、男の夢は腹上○かな・・・
でも、どうなんだ?途中で死ぬのは?
イッちゃった後に逝っちゃう方が良いのか?
気持ちいいのか?苦しいのか?(以下、自粛・・・)
次回「ヤマトスサノヲ七変化」
いよいよ第一章完結す?




