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彼はそれ以上だった

幼馴染(男)視点です。

 俺には生まれたときからの幼馴染がいる。隣に住んでいる白石つむぎだ。小さい頃の写真のほとんどにつむぎが一緒に写っている。

 今日は彼女の結婚式で、俺は両親ともども招待されている。彼女は今日結婚する。俺じゃない男と。彼女の両親と楽しそうに話すうちの両親から離れて俺は庭園が見えるソファにすわってしばしぼんやりした。

 つむぎとは小学校に入ってしばらくして距離が出来てきたなと思っていたら中学の頃になってもそれは変わることはなかった。その原因が俺の外見にあったと知ったのはその頃だ。

 どうやら俺の外見はイケメンとよばれる類のものらしく、女子から手紙とかプレゼントをもらうようになっていた。メールアドレスやラインのアカウントなどが書かれた紙をいきなり渡されたりすることもあった。そんなことが続くとそのぶん、つむぎが遠くなっていく。

 決定的に距離ができたのは中学3年のときだ。



 受験シーズンになると、誰がどの高校に行くのかという話題になることが多い。

「青山くんと同じ高校にいけたらいいのになあ」

 甘えるように言う今の彼女は学校でも人気のかわいい子だ。告白されてつきあってるけど、俺は彼女の進路より、つむぎの進路が気になる。

「ねえ、私の話聞いてる?」

「聞いてる。同じ高校に行けたらいいよね」

「そうだね!」

 この子は確かにかわいい。でも俺はいつもつむぎと比べてしまう。あいつは俺に対してこの子みたいに甘い感じもないし、むしろ淡々としすぎてこっちがいらつくのに。俺たち高校は違うのかな…聞いたらどんな顔をするんだろう…そんなことを思っていたらチャンスがめぐってきた。

 帰り道、俺の前をつむぎが1人で歩いていた。たいていは仲がいい佐久間が一緒なんだけど、今日は違うようだ。佐久間は生徒会副会長を務めるしっかり者で弁が立つ。俺はちょっと苦手だ。

「つむぎ!」

 後ろから声をかけると、びくっとしたように振り向き俺だとわかると何の用かという顔をする。

「……成利、なにか用?」

「なにか用って、これから家帰るんだろ。俺も帰るところだから一緒に帰ろうぜ」

「……彼女と一緒に帰りなさいよ」

「家の方向逆だしさ、俺だっていつも彼女と一緒に帰ってるわけじゃないし。たまには幼馴染同士でいいじゃん」

「…………わかった」

 つむぎがため息をついたものの承諾してくれて、俺はちょっと浮かれていた。彼女と並んで歩いて気づく。つむぎってこんなに小さかったのか。頭のてっぺんが見えるし肩だって俺よりもろそう。

「前は俺たち同じくらいだったけど、お前小さかったんだなあ」

「む。成利が大きすぎるんだよ。私はこれでも標準なの」

「はいはい、つむぎは標準ってことで。ところでお前、高校どうすんの」

「また急に話題を変えるなあ。うーん、まあ親とも相談してるけど志望校はだいぶしぼったよ。成利は?」

「あー、俺もぼちぼちってところだな」

「ふーん。互いに志望校に受かるように頑張らないとね~」

「そうだな」

 結局、あいつがどこを志望しているのかを聞き逃してしまった。


「昨日、白石さんと一緒に帰ったってほんと?」

 なぜか彼女がむっとした顔で聞いてきた。なんで昨日の今日で知ってるんだ?

「帰ったけど、どうして知ってるんだよ」

「友達が見かけて教えてくれたの!ねえ、彼女以外の女と帰るってひどくない?!」

「え、だってあいつ家が隣で幼馴染だし。別にいいじゃんか」

「なにそれ。2人で示し合わせたようなこといって」

「ちょっと待て、2人で示し合わせって…まさかつむぎに何か言ったのかよ」

「彼女以外の女を名前で呼ばないでよ。白石さんにも昨日のことを聞いただけよ…」

 そこで彼女はちょっとおびえた感じになった。俺が怒っているのが分かったからだろう。

「……ふざけるなよ。俺が幼馴染と帰ろうが誰と帰ろうがお前に関係ないし」

「か、関係あるもん!私、青山くんの彼女だしっ」

「だったらもういい。金輪際俺に近寄るな。俺たち別れよ」

「そんなっ…青山くん、ごめんなさいっ。もう何も言わないからっ!!」

「そんなとってつけたような言い訳なんて聞いても無駄だし、うんざりだよ」

 俺は泣いてる彼女をその場に残した。その後、廊下でつむぎと佐久間に出くわしたけど、つむぎの視線はとても冷ややかで、佐久間も同じようだった。

 それからはもう、つむぎは俺と一緒に帰らなくなったし顔を合わせても挨拶と少しの雑談しかしなくなったのだ。高校も別々で俺は共学、彼女は女子高。そこの制服である特徴ある襟にえんじ色のリボンのセーラー服がよく似合うなあ、と見かけるたびに思った。


 彼女とふたたび同じ学校になったのは大学生になってからだ。向こうは俺と再会したときに呆然としてたけど、俺は偶然を喜んだ。もう中学の頃の二の舞はしない、ちゃんと彼女に近づくんだと思っていたのに。

 彼女は俺と必要以上の会話をしない。避けられてはいないけど近寄ってもこない。そのうち互いに忙しくなり、気がつくと俺は大学でも女の子に告白されてはつきあうという同じパターンに陥っていた。そんな恋愛は続かない…俺の隣にいる女の子が変わるたびに、彼女が遠くからやれやれという感じで見ているのが分かっていた。

 それからしばらくして、つむぎが長谷部先輩と一緒にいるのをよく見かけるようになった。院生って暇なのか…そう思ってしまったのは妬みだ。実際のところ、先輩はつむぎと会う時間を懸命に捻出していたらしい。もうその時点で俺は負けだったのだ。




「久しぶりだね、青山くん」

「佐久間」

「いまは佐久間じゃないの、田崎。つむぎもよく招待したわよね、幼馴染とはいえ」

「結婚してたのか。いまさらだけどおめでとう。幼馴染だから招待してくれたんだろうが」

「ありがとう。なるほど、何の含みもないからか。納得納得」

 つまり含みがあるのは俺だけ、という…佐久間、こいつは俺の傷口に塩をすり込みにきたのか。

「ま、青山くんはモテモテだからね~。何も心配することないし。じゃあね」

「……おう」

 やっぱり俺、佐久間は苦手だ。

長谷部先輩視点を書くかどうか考え中です。

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