表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/60

外伝 ガラムとメリイ

―ガラム視点


シエの村。

もともと小箱等の木工品の品質が良く

重く硬い丈夫な物から

軽く柔軟性のある家具や小物まで

幅広く作成している小さな村。


とくにマローネさんの作る小物類は

細かな模様で人気があり

取引をした分だけ捌くことができる

商人としては有難い品だ。


その小さな村に最近新しい風が吹いていた。

ミノリという青年。

見た目は成人したばかりに見えるが

話した感じは寧ろもっと歳を重ねているような

雰囲気を感じる不思議な方だ。


ミノリが考案したという木吊り台は

我が商会のみならず

商会や倉庫を抱える人々には

有難い物だった。


井戸の仕組みを応用したらしい。

木を吊り上げて重ねるだけの単純な構造だが、

その効果は計り知れない。


事実我が商会は木吊り台を使うようになってからは

倉庫の大きさは変わらないのに

収容数は跳ね上がった。


それほどの物を考案したというのに

その権利を売る為に求めたのは

村に必要な鉄…

子供の為に考案したであろう

肩たたきも、

人気が出そうな物なのに

その権利を子供へ譲渡し

その見返りが子供が欲しがる家族に

必要な物だけだった。


それをただ嬉しそうに見つめていた

あの青年。

底なしのお人よしなのかもしれない。

実際メリイザザが保護した子供を

何も言わずに

保護しても構わないとまで言ってきた。

何も見返りも求めずに…


お人よし過ぎる性格。

子供を優先する考えかた。

ただ家族を楽にしたいが為に

とんでもないものも考え付く。


私の中であの青年は重要な顧客として

判断し、あの青年との取引は

誠心誠意答えたいと思っていた。

今後新しい考案品が出来た場合、

その権利を是非我が商会へと思っていた。


シエ村に到着し村長とメリアさんと会話をすると

何やら新しい交易品が出来たらしい。

文字と絵が描かれた板。

しかしそれだけではない。

その簡単なつくりの物で

子供が遊びながら文字を覚える機会にもなる。

それを考えるとこれは商品として成立すると

即断し交易品として、

全て引き取る事を決めた。


村を歩いていると

村の子供の一人が何かを飛ばしていた。

メリアさんに聞くと「竹とんぼ」というらしい。

絵文字板同様、これもミノリという青年が

子供たちに教えて

一緒に作ったそうだ…


あの青年の頭の中はどうなっている?

木吊り台だけでも巨額の富を作る事が出来る。

それなのに見返りは鉄のみ。

その上「絵文字板」に「竹とんぼ」だ…

工業品のみならず教育、娯楽と

次々に作っている。

その事実に私の中でミノリという青年の

重要性がまた一つ上がることになった。


その青年からお願いがあった。

鉄を加工出来ないので

鉄製品の完成品をお願いできないかという

相談を受けた。


私はもちろんそのお願いを引き受けた。

この程度の投資で、

この青年の新たな権利が手に入るかもしれない。

このチャンスを逃す手はない。


その思いは実を結ぶ。

絵文字板と竹とんぼの交換と権利を

村人の冬服で交渉が成立、

次の行商時に契約書での取引。

これは大きい。


冬服は確かに高価だが、

竹とんぼなどの娯楽品は幾つあっても困らないし、

絵文字板もまた商会の従業員の子供に渡せば

遊びながら文字を覚える事も出来る。


商会として将来、

文字の読み書きが出来る人材が増えるかもしれない。

そう思うと今回の取引も商人として

心が躍るほどの成果になった。


ただ一つ、問題もあった。


青年が鉄の加工を甘く見ていたらしく

半分以上を完成品に変えてほしいという事だった。


その話を聞き、先に注意しておけばと、

思い私自身も反省していると、

その青年は申し訳なさそうに私に頭を下げた。


自分の間違いを理解して

此方に頭を下げる。

その当たり前が出来ない者が多い中

それを平然と行動でしめす青年に

私の中で評価がさらに上がった。


そして一つの決定を下した。

今回は特別に早馬車を準備して

臨時便を出すことに決めた。

近いうちに冬が来る。


それまでに届けてあげたいと思ったからだ。

その提案に青年とセリア、アニスも喜んでくれた様子で、

その判断は良い結果となって表れていた。

今回の取引も期待以上に素晴らしい取引となった…



― メリイ視点


トルヴェール商会

商会長の息子ガラム率いる商隊が

今日、到着するらしい。


冒険者というのは

乱暴な者も居るため、

護衛で雇われて来た冒険者には

警戒をしつつ行動する事を決めていた。


交易市当日、

ルカとソエルと村を歩いていると

変な場所で冒険者を見かけた。


村の西側、石工場と木工場の近くで

今回来ていた冒険者の二人を見かけた。


なにやら探していたようだが、

今はルカとソエルが一緒に居るので、

行動を起こさずにいた。


ミノリの交渉時にルカとソエルも一緒に行動していたので

私も同行していた。

交渉が終わり外に出ると村を探るような

動きをしていた冒険者のPTだろうか、

ミノリの事を見て何やら話をしていた…


ソエルとルカを家まで護衛して、

食事をとり、ゆっくりとした時間。

その時間に私は外へ出ていた。

日が落ちる前にと

急いで集会所馬車の前まで来ていた。

そこにはミノリへ視線を向けていた冒険者の一人がいた。

私は近寄り話しかける。


メリイ「私は元、鉄鎖の盾の前衛を務めていたメリイザザ。

貴方に話がある。

何故ミノリという男の事を見ていた?

なぜ石工場にいた?

普通なら交易品の集まる場所に行くはずだ。

それなのになぜ人のいない場所へ行っていた?」


メリイザザの名前を聞いて

警戒し、少しおびえる男にそう問いただすと、

その男は慌てて謝ってきた。


男「すまない。ただ興味があっただけなんだ。

最近名前が売れている鉄鎖の盾。

そのPTがよく護衛をしていると聞いた。

前回の行商時に

その商隊が目的地であるメルカティスを目前にして

魔物に襲われた。


その時、鉄鎖の盾が無傷で討伐したらしい。

前衛の大剣使いが抜けた後なのにだ。


その事を鉄鎖の盾と一緒にいたPTが話してくれたんだ。

メルカティスに向かう途中に、

腕のいい鍛冶師でも居るんじゃないかって…

俺はそれが気になってこの村を見て回ってただけで

それ以上の考えはない。」


メリイ「ではなぜ、

私と一緒に居た男をあんなに注視してたんだ?

私が気が付かないとでも?

どう見ても鍛冶師には見えないだろ?」


目つきが鋭くなり

その言葉を聞いて、

誤解を受けたと思ったのか必死に説明する。


男「そりゃ見るだろ。

こんな小さい村の普通の若い男が、

大店の商会長の息子と長い時間

交渉をしているんだ。

気になるのは当然だろ?

ただ気になって見ていただけで

何かしようとはこれっぽっちも思っていねえよ!」


その言葉に嘘はないと判断して話す。


「そうか…

私の勘違いだったようだ。

失礼した。」


そういって頭を下げたら


男「こっちも勘違いするような行動を詫びる、

すまなかった。

以後気を付ける。」


お互い納得したので私は出来たばかりの疑問を解消するために

ガラムさんへ会うために集会所の中に入ろうとすると


男「なあ、あんた。

もし鍛冶師の情報を知っていたら教えてくれないか?

鉄鎖の盾の元PTなら何か知ってないか?」


「すまない。私はPTを抜けてからはずっとこの村にいる。

この村には鍛冶師は居ないよ。

石工が鍬などの手入れなどはするそうだがその程度だ。」


男「そうか…

いやありがとう。

貴重な情報だ」


「では失礼する」


そういって中に入る。

受付に居る商隊の人に声をかけ

ガラムさんとの面会を伝える。


ガラムさんが良しと判断したのか

部屋へ通された。


ガラム「珍しいですね。」


心底驚いた顔をしていた。

私は気にせずに、話し始める。


メリイ「大事な話がある。

私が抜けた後の鉄鎖の盾はどうしている?」


ガラム「その事ですか。

前回我が商隊は魔物に襲われましてね。

貴方が抜けた直後だったので。


不安だったんですが、

鉄鎖の盾のおかげで、

皆無傷で切り抜ける事が出来ました。


その事を聞いたギルドが、

鉄鎖の盾に依頼をする事が増えたという感じです。

私が知っているのはそれだけですね。


ああ…何かその道中で、

腕の良い鍛冶師にあったのでは?

という噂がありましたが、

私が知っている限りそのような人にはお会いしていませんので、

否定しておいたのですが…」


メリイ「なるほど…

では貴方の方からは何も言っていないと?」


ガラム「当然です。情報は宝ですよ。

誤った情報は訂正しますけど

それ以上無駄に話す必要もないでしょう。」


メリイ「その事を聞いて安心した。

実は今日、貴方が連れていた冒険者の二人が

誰も居ない石工場の前で話しているのを見た。


普通なら人のいる場所か交易品のある場所にいるはず。

それなのに誰も居ない石工場の前で話し合っていた。


その場所は普段は締め切っている西の入り口のある場所だ。

普通ならまず行かない。

行ったとしても通り過ぎるだけだ。」


ガラム「なるほど、

その噂で気になって探していたのかもしれませんな。」


メリイ「私もそう判断した。

ただ興味本位で探していただけらしい。


直接話をしたが悪意を感じなかったし

好きにさせて良いとは思うけど、

一応報告と確認をしたいと思ってここにきた。」


ガラム「そうですか……」


暫く考えた後に言葉を続ける。


ガラム「では村長と話をして、

村に技術提供の為に鍛冶師を一人派遣しましょうか。

鉄鎖の盾が世話になった鍛冶師が居るのに

新しい鍛冶師を派遣するというのは

矛盾する事にもなります。


今のシエにとっては技術の向上と、

シエ村の平穏を守るにも良さそうです。

今後付き合いが盛んになるのに、

冒険者に邪魔されるのは面白くありませんからね。」


メリイ「そうしてもらえると安心出来る。

ただ一度ジーク達を雇ってほしい。

一度直接確認したい。」


ガラム「それは構いませんよ。

鉄鎖の盾PTなら旅も安心できます。

ただ前回の交易後ギルド長が

熱心に仕事を斡旋しているので、

雇えるかは疑問ですが…

夏ごろの依頼なら何度かしているので、

ジークさん達も受けてくれるとは思うんですが、

それ以外に雇えた事がないので

何とも言えませんよ?」


メリイ「それでいい。

少し考えて貰えれば十分だ。」


ガラム「ではそのように…

わざわざありがとうございました、

メリイザザさん。」


メリイ「ありがとう。

あと私の事はメリイで良い。

ソエルもそう呼んでくれるし

ソエルが混乱しないようにしておきたい。」


ガラム「分かりました。メリイさん。」


そう言ってメリイは集会所を後にした。

外伝をお読みいただき、ありがとうございました。


本編では、これまで通り平和な日常を中心に描いていきます。


一方で外伝では、村の外で何が起きていたのか、

そして村のために動く大人たちの姿など、

少し違った側面を描ければと思っています。


本編と外伝、それぞれの視点を楽しんでいただければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ