七章 外伝 蒼鱗1
この話は外伝の話になっています。
本日二話目の投稿になりますので、
お気を付けください。
蒼鱗
―ゼニス交易共和国 ギルド本部―
「ギルド長に面会を……」
ヴァレリアの一言にギルドの受付嬢は息をのんだ。
普段呼ばれることはあっても、
自分たちから声をかける事はほとんどないからだ。
隣にいた受付嬢が急ぎ足でカウンター内の階段から二階へと駆け上がって行った。
その様子に視線を向けることなく、
前だけを見つめるヴァレリアに、
周りにいる冒険者たちは息をのんだ。
凛と立つ姿には美しさがあり、
そのピンと伸びた背中からは、
どんな状況も覆せそうなほどの力強さが感じられた。
いやヴァレリアだけではない。
見た目はかわいらしい獣人の少女も、
笑顔を絶やすことのない令嬢も、
そして……一人のエルフ……
一人一人が周囲を威圧しているわけでも無いのに、
その存在感を、その場にいるすべての冒険者は感じ取っていた。
「お待たせしました。
ギルド長がお会いになります。
奥へどうぞ……」
「ありがとう」
受付をした女性と案内をしてくれる女性にお礼を言い、
奥へと歩いて行った……
「おい、どんな要件だと思う?」
「あの蒼鱗が直接だろ?普通じゃないだろ」
「龍が出たとかか?」
「いや蒼鱗なら直接対処するだろ?」
「蒼鱗の直近の依頼って確かトルヴェール商会長の護衛だったよな?」
「ばか、やめとけ!守秘義務に触れる可能性が出てくる。」
「何にしても物騒な事にならなきゃいいけどな……」
「蒼鱗が動くんだろ?普通ではないと思うがな…」
―ギルド長室
部屋の中にはギルド長と案内をしてくれた女性がいた。
「珍しいなヴァレリアが俺に用があるとは」
「ギルド長。
我々蒼鱗は正式にゼニス交易共和国のギルドに所属する」
「なに!?ほんとうか!」
それは今まで何度打診しても首を縦に振らなかった蒼鱗からの、
嬉しい報告だった。
しかしその裏に何かあったことも理解した。
「こちらとしては嬉しい話だが、どういう風の吹き回しだ?
今まで何度こちらが誘っても、
依頼は受けても所属は受けなかったのに……」
「私の居場所を見つけた」
ロアが微笑みながら一言……
「私はそれを指示する」
ヴァレリアがロアの言葉を肯定する
「私も家も全面的に支持しますわ」
フローラは笑顔のまま、自らの家の支援まで持ち出した
「僕も皆に賛同」
シェラもまた賛同の意思を示した
「お前たちが決めたことなら反対はしない。
むしろ私たちゼニスギルドにとっては朗報だ。
感謝する」
「お礼はいらないわ。
私が、私たちが決めたことだもの。
それでね、お願いがあるの」
(本題か……)
「なんだ?出来る限りは引き受けるが……」
「ゼニスとメルカティスの国境沿いにあるローディス。
そこにあるギルドに協力を要請したい。
その為に本部の口添えがほしい」
「ローディスか……
確かに重要な拠点だが、
今のままでは駄目なのか?
一応蒼鱗の話ならそこの支部でも動くだろう?」
「それだけじゃダメ。
子供を守るために力を貸す」
珍しくシェラが三人より先に口を出した。
その事に驚く他の三人。
ロアは嬉しくなって無言で後ろからシェラの頭を撫でた。
顔を見上げて嬉しそうに目を細めるシェラ。
驚いた様子のギルド長にヴァレリアが説明を始めた。
「今度、ローディスにトルヴェール商会と協力して孤児院を作る。
ローディスのギルド支部にその後ろ盾になってほしい」
「ちょっとまて!?
ローディスに孤児院だと?
それはルミナリアが黙っていないのではないか?」
「そうよ、だからお願いしているの。
国王様にはすでにガランさんが話を通してくれてるわ。
あとはギルドの協力があれば、
たとえルミナリアでも簡単に邪魔は出来ないはずよ。
まあ万が一、私たちの孤児院に手を出すつもりなら、
私が喜んで相手をする。
でも面倒は避けたいの。
その為に力を貸しなさいとお願いしているの」
「お願い?これでは脅迫に……
いや何でもない……
ローディスの孤児院設立への支持を表明すればいいんだな?」
「ええ、それだけで良い。
後は私たちで勝手に動く。
万が一の時の為の事前報告のようなものだ」
凛としたヴァレリアの声が決定事項として伝える。
「反対されても結果は変わらないわ」
すでに決まったことを、面倒を避けるために報告しているだけ。
ロアの言葉は、そう語っていた。
「僕の目の前で子供に手を出す馬鹿は僕が潰す……
たとえ獣王国だろうと東の国だろうと……」
「私もですわよ?
私たち蒼鱗の名前で関わる以上、
その孤児院の邪魔な存在には一切の容赦はしませんわ……」
シェラとフローラもまた、普段ありえないほどの圧を出していた。
蒼鱗がこの孤児院設置にどれだけ本気かが伝わった。
「わかった……
お前たちがそこまで本気なんだ。
私もまた出来る限り協力をすると約束しよう」
「「ありがとう、ギルド長」」
「ありがとうございます、ギルド長」
「ありがと、ギルド長」
四人の声が重なった瞬間圧が消えた。
「では話すことは話した。
私たちはこれで……
お時間を頂き、ありがとうございました」
ヴァレリアは一礼して部屋を出て行った。
「ふう……
寿命が縮む思いをした。
大丈夫か?」
秘書に声をかける。
「は、はい……
初めて蒼鱗の方々を目の前にしましたけど、
あんなに怖いんですか?」
「普段は大人しい。
ただ今度の話はそれだけ彼女たちの中では重要なんだろう。
トルヴェールの会長までこの話に乗っている。
国王にまで話が言ってるらしいし、
私も本気で動かざるを得んか……
しかしなぜ急にローディスに孤児院という話になったのか、
気になるな……」
「お調べしてみましょうか?」
「いや構わん。
ヴァレリアの事だ。
必要になれば話してくれるはずだ」
「わかりました」
「さて、さっそく動くか。
支部に連絡をとれ」
「わかりました」
「ルミナリアが龍の尾を踏まん事を願うばかりだ……」




