六章 二十一話 外伝
本作をお読み頂き、ありがとうございます。
この話は本文の六章二十一話と同日投稿になっている、
外伝作品になっています。
お間違えの無いようにお願いします。
―ガラン
「父上。
いかがでしたかシエ村は。」
「想像以上に良い村だった。
大きくはない。
だが、町にも負けんほど人々の笑顔が明るかった。
いや、むしろ普段見て回る町以上か……
そしてミノリ。
あれもまた想像を超えていた。
飛人……
あの男との交流を大事にした。
それはお前の英断だ。」
「ありがとうございます。」
「ワシらであの村の防波堤となろう。
あの村は守るべき場所のような気がしている。
今後ますます我が商会へ富を運んでくれるぞ。
そして子供にとっての光になるかもしれん。
それはロアが認めたことでもあるからな。」
「ロアですか…
まさかあそこまで気に入るとは思いませんでした。」
「ワシもだ。
だが気に入った。
そして後ろ盾になるとまで言った。
ならワシらも付き合うまでだ。
白金のロアとのつながりと思えば安いものだ。」
「父上……
素直に子供の為とは言わないのですか?」
「うるさい。」
「とくにルカ君とソエルちゃんを、
お気に召したご様子でしたな。」
「……他国におる孫と変わらん。
手の届く距離におるのなら、
力を貸す。
それだけだ……」
「さようですか…」
「ガラムよ。
手を抜くなよ?」
「もちろんです。」
「ワシは国に戻り次第、王へと謁見を申し出る。
ローディスの支店と孤児院の後ろ盾になって貰うつもりだ。」
「わかりました。
此方の方はお任せください。
まあ、蒼鱗が動く以上、
他国も手を出せないでしょうけどね。」
「そうだな。
蒼鱗を敵に回せば竜災のときの備えの半分は失う。
そこまで馬鹿な真似をする国もおるまい。」
「それともう一つ。
シエ村に滞在する商会員ですが、
私はヨハンを推薦します。」
「ヨハンだと!?
それは流石に問題ではないか?」
「最近はヨハンの跡継ぎも育ちつつあります。
私の行商には今後その者を連れて回ります。
そしてもっとも信頼するヨハンにこそ、
シエ村の支店を任せるべきです。
ヨハンであればローディスとシエ村のやり取りも、
迅速に行えると思います。
シエ村の人たちにも顔を覚えて貰っています。
シエ村の人たちもその方が安心でしょう。」
「一理ある。
しかしワシらが困ることになるな。」
「仕方ありません。
それに遅かれ早かれかと……
ヨハンはシエ村の空気を気に入っていました。
老後は妻と子を連れて移住したいと言っていましたよ。」
「そこまで気に入っていたか。
まあ、気持ちは分かるがな……
分かった。
その件もお前に任せよう。」
「ありがとうございます。」
会話が終わるころ、
馬車の外が少し騒がしくなり、
馬車が止まった……
――ロア視点
川側から魔物化した熊が二頭この商隊へと向かってきた。
真っ先に気が付いた私は風刃を二つ飛ばす。
やせ細った二頭の首が切り落とされ、頭部が後方へと飛んだ。
熊はしばらく進んだ後、頭のない胴体を地面へと倒した。
「これは凄いわね。
私の風魔術の階位が一段上がった気分だわ。」
杖を眺めながら、思わず笑みがこぼれた。
「見事だな、ロア。
いくらやせ細った魔物とは言え大型を一撃か。」
「軽い風刃を飛ばしただけよ。
確実にこの杖のお陰ね。
ヴァレリア、シェラ。
気をつけなさい。
本気を出すと目立ちすぎるわよ。」
「そのようだ。」
「うん、わかった。」
その視線の先、魔物の元に、
すでに他の冒険者が集まっていた。
そしてそのうちの一人が皮をはぎ取る作業を始めた。
「では、我々は先に進む。
後は頼んだぞ。」
ヴァレリアが剥ぎ取りをしているPTに声をかけて、
そして御者へと馬車を動かすように指示を出した。
「シェラ念のため、あのPTの護衛を頼む。」
「え?任せないの?」
「万が一がある。
我々が護衛する以上、
他のPTに任せっぱなしは性に合わん。」
「そっか。
分かった。
折角だしもっと魔物出てほしいな。
本気で武器を試したいし。」
「お前は話を聞いてたのか?
本気を出すのは良いが気をつけろよ。」
「はーい」
「シェラは可愛いわねー。」
「ロア、お前は甘すぎる。」
「でもあの無邪気さがシェラの魅力ですわ。」
馬車から降りてきたフローラが話す。
「お前まで……」
「そういう貴方こそ私たち以上に、
シェラを可愛がっているではないですか。」
「……無駄口はいい。
フローラ、あのPTの代わりを頼むぞ。」
「もちろんです。
仕事はしっかりとこなしますわ。」
「ヴァレリアも大変よね。
周りに人が居ると……」
「ロア…何が言いたい。」
「私の様に気楽に生きればいいのにと思ってね。」
「そうはいかない。
お前たちの為にもな……」
「だから好きなのよ。」
「……ありがとう……」
「あらあ、素直ですわね。」
「もう言わん…」
「ああん、ごめんなさいヴァレリア。
もう言わないから許してください。」
「ほらほら、ヴァレリア、フローラ。
しっかり索敵をしなさい。」
ほんとこのPTは楽しいわ。
皆良い子だし、
心の中でそれぞれが大切に思っている。
良いPTに恵まれたわね。
お陰でトルヴェール商会の仕事で、
シエ村に来ることも出来た……
今後が本当に楽しみだわ。
久しぶりに見る飛人に
シエ村。
そしてその周りに集まる子たち。
しっかり守ってあげないとね……
次は私が恩返しをする番。
イルミナ様、見ていてください……
―――
※補足
商隊の護衛は、複数の冒険者パーティーで行うことがあります。
魔物を倒した際、素材を無駄にしないよう、
当番中のもう一組のPTが剥ぎ取りを行うこともあります。
その間、休憩中の冒険者の一部が、
剥ぎ取りに向かったPTの代わりに護衛につきます。
今回は、休憩中だったフローラが交代で護衛につきました。
今回は革のみを回収するため、馬車は先へ進み、
解体を終えたPTが革を運んで後から合流することになります。




