五章 九話 計画の変更
私たちがため池の前で話し込んでいると、
トトさんが昨日と同じようにスコップと剣をもって現れた。
「おはよう。待たせてしもうたかの?」
と私たちを見たトトさんは、遅れたかと思ったのか、
挨拶の後、すぐに謝ってきた。
「いいや。問題ないよ、トトさん。」
サウロさんが挨拶を返すと、
トトさんは無言でうなずき、ココちゃんの元へ歩み寄った。
「ココ。もう平気か?」
「大丈夫。元気になった。」
笑顔を見せるとトトさんも笑顔を見せた。
「そうか。それじゃあ、今日も頼むとしようかの。」
そう言って、カカさんに顔を向けると、
カカさんは無言でうなずき、トトさんの元へ行った。
「では、ワシらは水路掘りに向かうとしようかの。」
そう言うと先を進む出した。
「ココ、また後でね。」
「ココー、がんばってね。」
ルカとソエルの声を聞き、笑顔を見せ、
「うん。ルカとソエルも。」
そう言って、トトさんの後を追いかけた。
カカさんは無言で頭を下げ後に付いて行く。
昨日はトトさん達の間に何があったか分からないけど、
気まずい感じが無くなっている気がした…
私は少し嬉しくなり、笑顔でトトさん達の背中を見つめていた。
「よし!それじゃあ始めるか。
ミノリ今日も縁を固めるのか?」
サウロさんの声を聞き、ため池の底を見てみる。
昨日はあった水たまりが無くなって少し湿っていた。
これなら底を固められそうだ。
そう思った私は、底を先に固める事を伝えた。
また雪や、雨で作業が遅れるかもと思ったからだ。
「わかった。じゃあそれで頼む。
お前が動けなくなっても俺とメリイが居るからな。
思いっきりお前の思う様にやれ。」
と心強い言葉をかけてくれた。
「はい。その際はよろしくお願いします。」
そういって底へと降りた。
そして[クリエイト]で圧縮していく。
ニ十センチほどへこんだ部分がどんどん広がっていく。
一時間ほど続けると、三分の一は圧縮できただろうか。
縁を綺麗に整える時と比べると、ずいぶん早く進んだ。
そして休憩しながら圧縮した底のへこんだ部分を確認してみる。
確かに固まっているけど、水をためるとなると少し不安に感じた。
その事をサウロさんに相談する。
「サウロさん、底の部分なんですけど、圧縮だけでは、
水をためる事が出来ても、
時間が経てば土が混じってしまうかもしれないです。」
どんなに固めても結局土だけだ。
どうしても、水の流れで削れてしまうかもしれない。
「やっぱり石が必要か?」
サウロさんが察したように話した。
「そうですね。一度このまま固めます。
その上に土と石を混ぜて固め直します。
恐らくその方が良いと思います。」
「わかった。ではそのまま続けてくれ。
おれは一度、石工へ行って石を運ぶ準備をしてもらう。
以前お願いしていたからな。
そこまで時間はかからんだろう。」
「お願いします。」
生前、土木の経験があったとしてもやっぱり本格的となると、
私の知識では、やってからではないと気が付かない部分が出るな……
そういう意味じゃ、ロクさんから助言を貰えたことは有難いことだった。
少し反省しつつも、作業を続けた。
マローネさんが確認するように聞いてきた。
「ミノリさん。土と石を混ぜるのなら、
今まで集めていた土を使うのかしら?」
私は少し申し訳ない気持ちになった。
「ええ…そうなりますね。
と言ってもすぐにではないですが、
一度集めた土をもう一度ため池の近くに、
集めることになると思います。」
それを聞いたマローネさんは笑顔になり、
「じゃあこれからは一度、
ため池周りに土を集めたほうが良いかしら?」
と、確認を取るように聞いた。
「そうですね…石の準備と、私のスキル次第でしょうか。
私は一度、ため池を圧縮した後に確認しない事には…
周りに集めて土が散らばると面倒な事になりそうな気もします。」
「それじゃあ今はそのまま集めることにするわね。
でもため池から離しすぎると、混ぜる時に大変かしら?」
私の過ちを何も気に留めることなく、そのまま話し続けている。
私はただ心で感謝しつつ話を続ける。
「ため池周りに残っている土はそのままにして置いて下さい。
そして、しばらくは私がスキルで固め終わるまで…」
そこまで言って、少し考えた。
そのまま待たせるのは違う気がする……
「ミノリさん?大丈夫?」
私が黙り込んだことで心配した様子で私の名前を呼んだ。
私とマローネさんのやり取りを黙って見ていた、
ルカとソエルも少し不安そうにしている。
しばらく考えた後、後にしようと思っていた考えを話すことにした。
「私がため池を固めている間、
マローネさん達には別のお願いをしても良いですか?」
「別の事?」
マローネさんは首をかしげながら聞いてきた。
ルカとソエルもお互いを見つめた後私に視線を戻した。
「ええ。ため池は安全の為に村の柵の外に作っていますけど、
誰かが落ちる可能性はないわけじゃないです。
なので、ため池の周りに小さい柵を付けようと思っていました。
その柵を作って頂けないでしょうか?
マローネさんとソエルには柵を作って貰って、
ルカとメリイは私の監視をお願いします。」
自分の監視をお願いするという、
少し変な役割になってしまったけど、
私一人でため池作りを進めるのは違うと思うし。
それなら分担したほうが早く出来そうだ。
そう判断して提案してみた。
「そういう事ならその方が良さそうね。
ルカとソエルちゃんはそれでいい?」
「うん。」
「いいよ!」
ルカとソエルも元気に返事をしていた。
「それじゃあミノリさんの言うとおりにしましょうか。
ルカ、しっかりミノリさんを見ているのよ?
そしてメリイさんのいう事をちゃんと聞いてね。」
「わかった!おにいちゃんをちゃんと見てる!
ソエル。おかあさんと柵づくり、頑張ってね。」
「任せて。またマローネねえに新しいことを教えてもらえる。
たのしみー!」
ルカはしっかりマローネさんの言葉を聞いて元気に返事をして、
ソエルは、マローネさんと初めての柵作りが楽しみな様子だった。
今後の話が終わり作業を続けた。
私は圧縮を続け、マローネさん達は、
周りに散らばっていた土の塊をため池の外周へ綺麗に並べていった。
そうしているとサウロさんが戻ってきた。
「おとうさん、どうだった?」
ルカが最初に気が付き、声をかけていた。
私もその声で気が付いてサウロさんを見ると、
話し始めた。
「石の準備は大分進んでいたぞ。
いつでも運べる状態になっていた。
細かい石くずから、削った石粉まで準備してくれていた。」
石粉まで準備してくれていたのはありがたい。
色々と試せそうで安心する事が出来た。
「それは有難いですね。それでいつからになりましたか?」
私がそう聞くとサウロさんは「天気が良ければ明日からだな」
と答えた。
話が早くて助かる。
私とは違うな……
改めてサウロさんとロクさんを尊敬する事になった。
いやサウロさんとロクさんだけじゃない。
二度手間になりそうな事を何も気に留めることなく、
話を続けてくれたマローネさん。
別々の作業になったのに何も言わずに聞いてくれた、ルカとソエル。
私は改めていい家族と仕事が出来ているんだと、
申し訳なさと、その幸せを静かに噛みしめた。




