第7話 対決、エルフ魔導大隊
僕は獣人形態で、エルフの軍勢に追われているという怪獣がいる森の東にある岩山地帯へと向かう。
僕はリアナと合流して、エルフに狙われている怪獣の元へ到着する。
「ブモゥッ! ブモゥッ! ブモモ?」
そこにはエルフに狙われ、鳴き声を発しながら、オロオロしている怪獣がいた。
その見た目は、牙が特徴的な顔は猪のようで、ぽっちゃりとした体型は豚、明るい茶色に黒の模様と尻尾の形状は牛に似ている。
巨大ではあるが、かなりキュートな見た目の怪獣だ。
ところどころ体表が焦げているが、あれはエルフによる攻撃のダメージだろうか。
僕が呆気にとられて怪獣を眺めていると、リアナが名前を教えてくれた。
「あの怪獣が【ピグモー】だよ」
「ピグモー!?」
「そう、ピグモー。レオっち、助けてあげて」
「りょ、了解」
リアナに「ピグモー」と呼ばれる、その怪獣。
それを狙うエルフたちは、武装した兵士が五、六十人ほどで、全員が規則正しく行動している。
どうやらエルフ魔導兵二個大隊程度が、捕縛用の魔法陣を展開するための作戦行動をとっているようだ。
僕はどうやって助けようかと考えたが、迷ったところで僕の手持ちのカードは、怪獣形態に変身することだけ。
ここは出し惜しみせず、最初から最大戦力を投入することにした。
僕は体内にあるガラ結晶に集中する。
ボワンッ!
特訓の成果もあり、スムーズに怪獣形態に変身することができた。
怪獣形態で立つ僕は、体長およそ四十五メートルの巨体で、エルフ魔導兵たちを背後から見下ろす。
うーん、小さいし、なんだか弱そうな集団だな……。
そのまま悠然と見下ろしていると、エルフ魔導兵がとても貧弱な集団に思えてきた。
身体中にパワーがみなぎり、全く負ける気がしない。
奴隷だった子どもの時には、エルフリーダー程度の暴力にすら反抗できなかった僕だというのに。
そこで、僕は思い出した。
──そうだ、エルフリーダー。
色々なことがあり過ぎて、すっかり忘れていたけれど、今度あいつに会ったら、この姿で驚かせてやるとしよう。
僕はエルフリーダーに復讐してやろうと思いつき、ついニヤニヤしてしまう。
だが、今はニヤけている場合ではない。
エルフ魔導大隊が相手だ。
今の僕なら簡単に倒せそうな気がするけど、虐殺など趣味ではないし、恨まれても厄介だ。
この場から追い払うだけにして、終わりにしよう。
「グオオオオンンンッッッッ!!!」
さっそく威圧するように、唸り声をあげてみる。
すると、唸り声を聞いたエルフ魔導兵たちが一斉にこちらを向き、驚きの声をあげる。
「な、なんだ、このデカい奴は!?」
「突然、どこから現れたんだ!?」
「こんな奴、見たことないぞ! 新種か!?」
「皆、落ち着け! 我らは王国軍兵士だぞ! 総員、牛豚怪獣の捕獲準備を一旦解除、ひとまず後ろのデカい奴から距離を取れ!」
隊長の命令だろうか、エルフ魔導兵たちが僕から素早く離れていく。
一定の距離をとったあと、エルフ魔導兵たちは僕の方へ向き直った。
なんだろうか。
今のところ脅威を感じないので、相手の出方を見ていると、エルフ魔導兵たちは攻撃体勢を取り始めた。
「新型の【魔導矢】に爆炎魔法を込めて攻撃する。総員、構え!」
【魔導矢】とは、様々な魔法を込めることができるエルフ特製の弓矢。
対象に命中した際、込めた魔法が発動する。
複数の魔法を込めたり、魔法の威力をアップさせたりする魔導矢も存在する。
減衰するため攻撃直前に魔法を込めた方が、その威力は大きい。
「はい、隊長! 消し炭にしてやりましょう!」
「食らえ! 爆炎魔法!!!」
エルフ魔導兵は隊長の命令に従い、魔法を込めた魔導矢を一斉に放ってきた。
何本もの魔導矢が、オレンジ色の光をまとって、一直線に僕へと向かってくる。
ただ、今の巨大な僕には、小さく貧弱な攻撃にしか思えないので、避けなくても大丈夫な気がする。
それに、そもそも避けられるほど、素早く動けない。
結局、僕は為されるがまま、放たれた魔導矢のすべてを全身で受ける。
ドガガッッァァァ! ドッガガアアアッッッッ!
魔導矢は見た目の貧弱さに反して、大爆発をした。
何本もの魔導矢が命中したこともあり、僕の巨体が爆煙で見えなくなるほどの大爆発だ。
お、おおぅ?
完全に油断していた僕は、魔導矢の威力に驚いた。
長さ一メートルにも満たない火矢に見えたが、ロケットランチャーのような爆発力だ。
これが神聖エヴァリス王国で盛んに行われている研究により、効果が増大しているという魔法攻撃ということか。
僕は予想外の大爆発に驚いたが、実際のダメージは皮膚の表面がプスプスと焦げた程度で済んでいた。
痛みは、若干ヒリヒリと感じるぐらいだ。
威力のある魔導矢にも驚いたが、僕は自分の頑丈な身体にも驚いた。
そして、僕の頑丈さに驚いているのは、エルフ魔導兵たちも同様だ。
「な、なに? ほとんどダメージがないだと!?」
「新型の魔導矢に爆炎魔法なんだぞ、そんなバカな!」
僕自身も驚いているぐらいなので、自信満々だったエルフ魔導兵たちが驚いて動揺するのも無理はない。
僕は動揺しているエルフ魔導兵たちに向けて、足を一歩だけ踏み出してみる。
ズズーーーーーーーーンンンンッッッ!!!
踏み出した僕の巨大な足により、例によって地面は陥没して、周辺にはバリバリと亀裂が走る。
さらに、僕は追撃として、二本の長い尻尾を振り回す。
振り回すといっても、死人が出ないよう控えめにしておいた。
ブオンッッ!!!
それでも巨大な尻尾が二本なので、かなりの風圧で岩石を吹き飛ばし、それによりエルフ魔導大隊は総崩れになる。
「ダ、ダメだ。どうしようもない!」
「このデカブツはヤバ過ぎる!」
「くっ、これは仕方ない。全員、速やかに撤収しろ!!! 被害を出さないのも王国軍兵士の務めだ!」
そう言い残してエルフ魔導兵たちは、僕の元から去って行った。
力加減を間違えて死傷者を出してしまうこともなく、それでいて僕の強さを示すことができたと思う。
これは完璧な勝利と言えるのではないか。自画自賛だが。
驚異的な視力を誇る怪獣王の眼で周囲を見渡し、エルフ魔導兵たちが一人もいなくなったことを確認したあと、僕は獣人の姿にさっさと戻る。
なにしろ怪獣形態は疲れるし。
獣人形態に戻った僕を見て、リアナがニコニコ顔で走り寄ってくる。
「レオっち、すごーい、ありがとー! 完全勝利だね♡」
リアナも褒めてくれた。




