第14話 透明怪獣ホロウホー登場
村の外へ出て、のんびりと散歩する。
周囲にエルフの気配はなく、静かな空気が辺りを包んでいる。
しばらく歩くと、まったりと陽にあたっているモフモフが見えてきた。
真っ白なモフモフなので、モフ美の方だ。
今日もふわふわしていて、とても可愛い。
「モフ美だね。こんにちは」
「モフ美もレオっちに『こんにちは』って言ってるよ」
リアナがモフ美の言葉を念話で教えてくれる。
とても便利で、ありがたい。
僕は周囲を見渡す。
モフ美から少し離れたところにモフ菜もいた。
モフ菜も陽に当たって、気持ち良さそうに過ごしている。
しかし、この付近にその他の怪獣はいないようだ。
「ここにはモフモフしかいないね。新しい怪獣は、もっと先にいるのかな?」
「いえ、たぶんこの辺のどこかにいるはずです。なにしろモフモフのストーカーですから」
「モフモフのストーカー!?」
モフモフにストーカーがいたとは驚きだ。
モフモフは可愛いのでわかるけれども。
それにしても怪獣をストーキングする怪獣とは、一体どんな怪獣だ。
危ない奴でなければ良いのだが。
「あ、いました。レオン様、あちらをご覧ください」
数百メートルぐらい先だろうか。
エレナが前方を指差す。
「ん? 何も見えないけど? 小さい怪獣なのかな?」
「小さくないですよ。よーく見てください」
僕は怪獣王の脅威的な視力を凝らして、じっと見る。
すると、なにやら空気が僅かに歪んでいるような空間がある。
僕が不思議に思った瞬間、宙に浮かぶ金色の瞳と目が合った。
何者かが潜んでいるようだ。
僕は驚きつつも、さらに凝視をすると、金色の瞳の下に小さなクチバシを発見した。
「んん!? 目とクチバシだけが浮いている?」
「あれはね、【ホロウホー】の目とクチバシだよ」
「ホロウホー!?」
リアナが怪獣の名前を教えてくれた。
それにしても、今度は目とクチバシしかない怪獣なのか。
なにそれ、怖い。
「目とクチバシしかないの? ちょっと怖いんだけど?」
「レオン様、違いますよ。ホロウホーは全身が透明なんです」
「えっ、透明!?」
「そうです。ホロウホーは本来フクロウのような姿をしてるんですけど、羽毛による光の屈折と背景を幻影することで、透明なるんですよ」
「へぇ、そうなんだ。なんだか凄いね」
今度の怪獣は透明か。
光学迷彩の羽毛を纏っている感じだろうか。
僕はホロウホーに近づき、ぐるりと周りを歩いてみたが、どこから見ても透明だ。
ただし角度によっては、目とクチバシだけは見えてしまってるところが、お茶目な感じだ。
「いつも透明なの?」
「そんなことないよ。わたしが姿を見せてくれるように頼んでみるね」
リアナが念話で頼むと、ホロウホーは透明化を解除してくれた。
姿を現したホロウホーは、フクロウのような鳥型の怪獣だった。
体色は白をベースに赤、青のトリコロールカラーでキラキラと輝いている。
透明のときとは全く違う、派手でカッコイイ姿だ。
ホロウホーは一定の距離を取ったまま、じっと動かず地面に立っている。
僕が珍しそうに見つめていると、また透明に戻ってしまった。
「あらら、また透明になっちゃった」
「ホロウホーはシャイなんだよ」
派手なカラーリングなのにシャイな怪獣か。
目立ちたくないから、透明な怪獣になったのだろうか。
「ホロウホーは羽根があったし、飛べるんだよね?」
「もちろんですよ。透明で飛べるので、偵察にピッタリだと思います」
エレナの言う通りだ。
透明で飛べる上に、音もなくじっと立ち、シャイな性格――これほど偵察向きな怪獣もいないだろう。
ホロウホーには、ぜひ協力を頼みたい。
「ホロウホーは、この辺の見回りを手伝ってくれるかな?」
「はい、大丈夫だと思いますよ。ホロウホーは元々よく見回りをしてますから」
「へぇ、そうなんだ」
「そだよ、レオっち。エルフに虎刈りにされたモフモフを助けたのも、きっとホロウホーだし」
僕は前回モフモフに会ったときに聞いた話を思い出した。
森を離れてしまったモフモフがエルフに襲われて毛を刈られたていたとき、別の怪獣が助けたと。
その助けた怪獣が、モフモフのストーキングをしていたホロウホーということか。
ホロウホーにエルフが来る可能性が高まったことを伝えた。
ホロウホーは今まで以上に注意をしながらこの地域の見回りをして、もしエルフを発見したときは、エレナかリアナに連絡すると約束してくれた。
これなら神聖エヴァリス王国が、もし軍勢を出してきたとしても、早めに発見することができそうだ。
◇◇◇
ホロウホーに見回りを協力してもらうことになり、僕は一息ついた。
数日後、さっそくエレナとリアナにホロウホーから念話が届く。
それによると、この村へ向かってくる人間の男を見つけたらしい。
人間がこんな場所を歩いているのも不自然だし、男の目的はなんだろうか?
ホロウホーの連絡からしばらく経ち、歩いてくる男の姿が見えてきた。
男は埃だらけの服で肩を落とし、疲れきった様子だ。
エルフの目を盗んでここまでやってきたのだろう。
ふらふらとしながらも村に到着した男は、村のリーダー役と話を始めた。
僕とエレナ、それにリアナも遠巻きに眺めながら、その男の話を聞く。
「この村に怪獣が現れて、エルフを追い払ったという噂を聞いた。本当か?」
村のリーダー役は静かに頷き、落ち着いた口調で経緯を語った。
その話を聞き、男は頭を下げて願い出る。
「俺たちの村も救って欲しい。その怪獣に頼めないだろうか?」
村のリーダー役がエレナとリアナの方へゆっくりと視線を向け、静かに問いかけた。
「エレナさん、リアナさん。お二人の力で怪獣へ頼むことはできないかね?」
◇◇◇
⭐︎怪獣豆知識コーナー⭐︎
【透明怪獣ホロウホー】
体長約二十〜三十メートルのフクロウ型の怪獣。広大な森に三体程度の個体が存在している。
透明化していることが多く、その姿を見ることは稀。ホロウホーの羽毛は光を屈折・吸収し、背景を虚像として投影、ほぼ完全な透明化を可能とする。例外的に小さな目とクチバシは透明化せず、宙に浮かぶ光点として観測される。
シャイな性格で姿を見せることは少ないが、モフモフが大好きで時折りストーキングをして、モフモフ成分を吸収している。モフモフの守護神。




